さて、小淵沢を目指していた山梨行きでは、中央自動車道を途中の韮崎ICで下りて、ちと寄り道を。

中央線や高速の走る川沿いから南西側の斜面をどんどん登って行きまして、結構な高台に到着。

見晴らしはこんな具合になりますです、はい。

 

 

韮崎の市街地を挟んで向こう側、奥に見えている山並みの裏には昇仙峡があるという位置関係ですな。

とまれ、そんな高台に建っておりますのが、こちらの韮崎大村美術館でありますよ。

 

 

韮崎はこの場所の地名ですが、大村は?となれば、館長さんのお名前ですな。

入り口前にその大村さんの像がで~んと置かれてあったりする、いかにもな個人美術館です。

 

 

しかつめらしいお顔の故か「何者?」感を出しまくっていますけれど、かつてはTVなどでもよく見かけた、

笑顔を見せたようすではもっとひとの良さそうな印象ではなかろうかと。

要するに、2015年にノーベル医学・生理学賞美術館の受賞した大村智博士その人でありまして。

 

何でも40年あまりにわたって美術品を蒐集してきたコレクターでもあるようで、

そのコレクションを展示するのがこちらの美術館というわけですな。

畑違いとも思うところながら、2度にわたって都合12年、女子美術大学の理事長を務めたというのも、

こうした背景があってのことでありましょうかね。

 

とまあ、そういう美術館では企画展(といっても、コレクションからのテーマ展示企画でしょうけれど)として

開催中だったのが「鈴木信太郎-ぼくの日常-」展でありました。

 

 

大村博士は長年、鈴木作品を愛好し、初めて手に入れた油絵作品は鈴木信太郎作品だったということで、

コレクションも豊富なのでしょうね。おそらくは研究に邁進してきた中で、鈴木作品に目を止め、愛好してきたのは

そのほのぼの感でもありましょうか。展覧会タイトルに「ぼくの」と、特にひらがな書きで示されているあたり、

画家の人柄を思い、絵の雰囲気と実にマッチしていると感じたものです。

 

ではありますが、画家の作風には変化が付き物でして、鈴木信太郎もまたフライヤーに見られるような、

いわば「かわいい」(その実、筆跡はかなりダイナミックだったりします)印象は結構、後年のことなのですよね。

年老いて子供に返るとは言い古された言葉ながら、熊谷守一などを思い浮かべてみても「そうかも」と。

まあ、年を重ねてたどり着いた境地が、そう見えるというふうに感じるのでもありましょうけれど。

 

ちなみに館内には「大村智記念室」として、博士の生い立ちや研究業績などに関わる展示もありまして、

これはこれで興味深いところではありますが、実用的な新薬を作り出したことで儲かったことが

コレクションの源でもあったのだろうなあ…などと俗っぽいことも考えてしまったり。失礼いたしました。

 

この手の美術館は豊富なコレクションから選んで、都度都度の展示替えがありましょうから、

また改めて訪ねてみたいものです。車でないと行きにくい場所ではありますけれど、

途中、美術館まで登っていく道沿いに「幸せの小径」と名付けられた遊歩道があり、

ところどころに彫刻作品が置かれてあったりもしますので、韮崎駅からゆるりと歩いてみるのもありかも。

Googleマップによれば歩いて40分ほどはかかりそうですが、天気の良い日にのんびりと。