ちとあちこちに遠出したことの振り返り話ばかりが立て込んで、日常の見聞やら思い巡らしやらを綴る機会がとんと失せてしまっておりますが、並走していたうちのひとつ(岳南富士見紀行)がなんとか終結したところで、日々のことにも触れてまいりましょうかね。例えば昨日、東京オペラシティコンサートホールの「ヴィジュアルオルガンコンサート」を久しぶりに聴いてきた…てなあたりから。
前回出かけたのは6月ですのですでに半年近く経ってしまいまったとは、月日の過ぎ去るのは早いもの、まさに光陰矢の如しかと。で、12月に入ったことでもあり、プログラムは「祈りの調べ 〜オルガンが紡ぐアドベントのとき〜」と、クリスマスというか、アドベントを意識したものとなっておりましたよ。会場のコンサートホールにもクリスマスツリーが飾られておりましたしね(どうやら假屋崎省吾デコレーションらしい)。
ただ上で「クリスマスというか、アドベント」と申しましたのは、両者には違いがあると改めて。当日のプログラムにはかように説明がありましたですよ。
ラテン語の「アドベントゥス」(到来・来臨)に語源を持つ「アドベント」は、クリスマスの4週間前の日曜日~クリスマスイブの間で、「クリスマス(イエス・キリストの誕生)を待ち望むための準備」をする時期にあたります。人々は、お祝いであるクリスマスの前に、静けさ、振り返り、希望といった気持ちを大切にしてこの時期を過ごします。
つまり、「もうすぐクリスマス!」とばかりにお祭り騒ぎの先取りをする時期ではないのであるなということ。この日のオルガン奏者の方がフランス留学時に、日本人の感覚で?アドベントの期間にクリスマスの曲をみてもらおうと、オルガンの先生のところへ楽譜を持っていって行ったものの、相手にされなかった…てな経験もあるようで。ことほどかほどにクリスマスとアドベントには違いがあるということのようです。
ですので、プログラムには基本的に穏やかな曲が並んでいましたが、最後を飾ったヴィエルヌのオルガン交響曲第2番からフィナーレはかなりにぎにぎしくある曲でしたですが…。
ところでところで、日本のクラシック音楽業界で12月、師走といえば「第九」の演奏会目白押しという現象がありますですねえ。自らも下旬の一日、読響の演奏で聴く予定がありますけれど、要するに年末の第九演奏会は奏者たちの餅代稼ぎとして始まったと伝えられるようなところがありますな。同じように、といってはなんですが、オルガン奏者の方々も欧米のように教会があってオルガンがあって礼拝の都度都度耳にするなんつうことの非常に少ない日本ですから、クリスマスのシーズンあたりは稼ぎ時であったりするのかも。
そんな思い巡らしから思い出すのは、先頃に出かけた信州・浅間温泉の宿で夜な夜な開催されているミニ・ロビーコンサート(火、水、木曜日の20時から)の出演者のことでありました。近隣で活動しているミュージシャンが日替わりで登場しているようでして、宿泊した晩に出演したのが「espresso」というピアノとドラムのデュオ、珍しい組み合わせながら信州安曇野を中心に活動中であるそうな。
昼間は上のようなロビーが夜にはコンサート会場となる(まあ、椅子をセットしなおすだけといえばだけですが)わけでして、当日は宿泊客の年齢層を意識してか、養護施設のお楽しい会であるか?といった曲目が並んでいました(なにせ「リンゴの唄」なんかが演奏されたりして…)。が、それはそれでよし、大勢が詰めかけたわけではないものの、それなりに盛り上がりを見せておりましたよ(下の写真は「みやま荘YouTubeチャンネル」より)。
で、気になるのはこの人たちがノー・ギャラで出演している(らしい)こと。音楽が好き、発表の場が欲しい…といったことは音楽をやっている人たちに共通(よほどの有名プレーヤーは別でしょうけれど)することで、たとえノー・ギャラでも聴く機会を設けてもらえるなら、その場で演奏に接した人の中から新たな出演依頼が舞い込んだりする可能性も全く無いではないでしょうしね。
とはいえ、オケ奏者の「第九」、オルガン奏者のクリスマスといった農繁期があるでなし、やっぱり何かしら副業を持たないと大変なのかもしれんなあ…と思ったり。ついつい、八ヶ岳総合博物館で見た茅野市の農家の副業(寒天づくりやら鋸づくりやら)が浮かんできてしまいました。
師走といって、昔のように年間の経費精算が一気に押し寄せ、それを乗り越えないと年が越せない…てな状況もなかろうとは思いますが、どうにも世知辛さばかりが目立つご時勢にあって迎える師走だけに、そんなこんなの思い巡らしが巻き起こってきたのでありました(オルガンコンサートの話はどこへやら…でした)。


