単純な感情論による「敵基地攻撃能力」では日本は守れない。(その2) | じろう丸の徒然日記

じろう丸の徒然日記

私こと、じろう丸が、日常の出来事、思うことなどを、気まぐれに書き綴ります。



前回の記事からの繰り返しになりますが、大事なことなのでもう一度書きます。

山本太郎さん街宣用モニター画面からの引用)
敵国条項の削除は、第1段階として、国連における改正案の採択では、総会における総加盟国(193ヵ国)の3分の2(現在は129ヵ国以上)の賛成が必要。この段階では5大国の賛成は不要。
 
第2段階として、採択された案の発効には、5大国も含めた加盟国の3分の2における議会での批准が必要。
(引用、終わり)
 
現時点では、国連憲章から「敵国条項」削除されていない。削除に必要な手続きのうち、第1段階は終わっているが、第2段階がいまだに実施されていないため、日本国際社会において今でも「敵国」のままなのである。
 
再度繰り返しになるが、この「敵国」とは、第2次世界大戦時に、国際連合の母体である連合国に敵対していた国々のことを指す。
そして、この「敵国」に該当する国が再度侵略行為を行うか、またはその兆しを見せた場合、連合国側国際連合安全保障理事会を通さずに、その国に対して軍事的制裁を行う事が出来ると、国連憲章第53条77条及び107条(=敵国条項は定めているのである。

 
国際社会においていまだ「敵国」という立場にある日本が、「敵基地攻撃能力」を保有したりすれば、あるいは核兵器を保有したりすれば、たちまち国際社会から「日本は再度侵略行為を行おうとしている」と見なされ、かえって逆に日本攻撃する口実中国北朝鮮に与えてしまう。
いくら日本政府「敵国条項」なんてとっくに死文化している だとか、とっくに意味を失くしているなどと言い張っても、ロシア中国北朝鮮はそう思っていないのだから、自分に都合のいい解釈は禁物である。

 
ちなみにロシア北方領土の返還を拒む理由もう一つある。
もしも北方四島日本に還したならば、たちまちアメリカがそこに軍事基地を造ってしまう恐れがあるからだ。
アメリカがそうしようとした場合、日本それを止める力があるか?‥‥ロシア「無い」と見なしている。何となれば、日本アメリカ本当の意味での同盟国ではないからだ。
逆に言えば、北方四島米軍基地を置かないことを日本アメリカ公式に合意したならば、北方領土返還への道筋が開けるわけだ。


 
ところで、「敵基地攻撃能力」を保有することの危険さを示す具体的な例がある。
ここのところ増えてきた北朝鮮によるミサイル発射のことである。
ほら見ろ、現に北朝鮮がミサイルをしきりに発射しているのだから、「敵基地攻撃能力」の保有は日本にとって必要じゃないか、と多くの人は言うだろう。
だが実は、あのミサイルは、在日米軍基地を叩くことを目的としたものであり、自衛隊基地攻撃対象外なのだ。

 
このことは、かの「よど号ハイジャック事件」(1970年)の犯人の一人で、北朝鮮に亡命後、今も平壌で暮らしている若林盛亮(わかばやし・もりあき)氏月刊誌『紙の爆弾』2023年1月号で述べている。
(こういう人の手記を載せる『紙の爆弾』も凄い雑誌だ。)
 
若林氏が述べるところによれば――。
現在の自衛隊は専守防衛に徹していて、「敵基地攻撃能力」を有していないのだから、北朝鮮にとっては脅威ではない。
したがって、わざわざ北朝鮮側から自衛隊基地を攻撃する理由が無いのである。
ましてや、日本の一般国民をミサイルで殺す理由などさらさら無い。

 
しかし、日本国内米軍基地となると、話は別だ。
次に若林氏が述べる北朝鮮についての私たちにとって意外な事実を引く。

(以下、『紙の爆弾』2023年1月号より引用)
 在日米軍基地は、いったん朝鮮半島有事ともなれば米空母・戦闘機・爆撃機・海兵隊の出発拠点であり、その存在自体が朝鮮にとっては現実にある戦争の脅威そのものなのだ。
 
 周知のように朝鮮戦争は1950年6月に勃発、1953年7月27日に停戦協定が締結され、戦火は止んだ。でもそれは“停戦”であって“終戦”ではない。以来、70年近く朝鮮政府は米国に「停戦協定の平和協定への転換」、すなわち戦争状態の終結を呼びかけてきたが、米国はこれに一度たりとも応じようとしなかった。逆に在韓米軍基地・在日米軍基地を朝鮮半島有事の軍事拠点として強化の一方を繰り返してきた。
 
 朝鮮半島で「戦争状態の継続」を望んでいるのは米国なのだ。
(引用、終わり)
 
つまり早い話が、北朝鮮今でもアメリカと戦争状態にある国なのだ。
だから北朝鮮本気で日本国内米軍基地を攻撃することを考えているが、自衛隊基地は先に述べたように対象外だ。
それなのに、「敵基地攻撃能力」日本政府「反撃能力」と言い換えたりしているが)を保有したりすれば、北朝鮮「日本はついにアメリカと本格的に手を結んだ」と見て、自衛隊基地をも攻撃目標とするだろう。
もっと言えば、それは日本「アメリカ vs 北朝鮮の戦争」の当事者となることを意味する。

 
最後に、外交評論家孫崎享(まごさき・うける)さん今年の12月23日「日刊ゲンダイDIGITAL」で述べていた意見を紹介して、今年最後のブログ更新を終えたいと思う。
(以下、引用)
 戦争の歴史で、「敵基地攻撃」が戦術的に最も成功した例として、真珠湾攻撃がある。戦艦、爆撃機などに多大な損傷を与え、米側戦死者は約2400人に上った。
 
 確かに「敵基地攻撃」は成功した。しかし当時の日本と米国の国力の差は「1対10」ぐらいの格差があり、結局、日本は軍人212万人、民間人は50万~100万人の死者を出して降伏した。
(中略)
 つまり「敵基地攻撃」や「反撃」が仮に成功しても、それが終わりではない。そこから新たな戦いが起こるのだ。
 
 中国は今や2000発以上のミサイルで日本を攻撃できる。北朝鮮も300発以上のミサイルで日本を攻撃できる。さらに両国ともに核兵器を保有している。
 
 日本が中国や北朝鮮に「敵基地攻撃」や「反撃」すれば、中国や北朝鮮の軍備を一掃できるとでも思っているのであろうか。彼らが怯えて「ごめんなさい」とでも言うと思っているのか。
 
 「殴り返したい」。そんな単純極まりない感情論で日本の国は守れない。
(引用、終わり)
  
それでは皆さん、良いお年をお迎えください。

(平和を願う天使の像:Karina CubilloによるPixabayからのフリー画像)