マルトリートメントと私63.甘かった父への期待 | ASD【自閉症スペクトラム】女係長 鹿島じゅんの日常生活はサバイバル!

ASD【自閉症スペクトラム】女係長 鹿島じゅんの日常生活はサバイバル!

25年以上1つの会社に健常者として勤務し、係長として人の上に立つようになった私が、
どのようにASD(自閉症スペクトラム)の特性と折り合いをつけて生活しているか、
その方法をお伝えしていきたいと思います。

私がなぜ、自分の生育歴を振り返るようになったのかは、

マルトリートメントと私1.私の1番古い記憶をご覧ください。

 
幼少期のまでの記事はこちら。
小学生までの記事はこちら。
中学生時代の記事はこちら。

※自分の記憶に基づいて書いているため、

事実と違っている可能性があります。
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出稼ぎから家に帰ってきても、
そんな父を可哀想に思い、
出来るだけ側にいようとする私と、
話すことが少しだけ増えてきました。

小学生の頃に父から受けた、
父の前に出ると、
体は緊張して固くなっていたものの、
その現実をキチンと受け止めていたら、
気が狂うかもしれなかった私の意識は、
その事実をまるでなかったかのように、
記憶の奥底に沈み込ませていたため、
父の前では無意識に、
なるべく肌が露出しない服を着るといった、
自分で意識していない制限はあったものの、
父の前で場面緘黙症に陥っていた私も、
父の機嫌が良い時には、
2人で会話が出来るようになるまでに、
何とか親子らしい振る舞いが、
出来るようになっていました。

そんな前振りがあったため。

父が家に帰ってきていた時に、
たまたま地域の花火大会があったので、
私は父に対して、
友達と夜店を回ってくるけれど、
お土産は何がいいかを聞きました。

人に対して気配りといったものを、
全くしない父は、

「焼きイカの下足じゃない方を3本でいいや」

という、
1本でも夜店の商品の中ではかなり高額のものの、
本数まで指定してきました。

父の言う通りに買おうとしたら、
私がその日に持っていく予定だったお小遣いの額を超えてしまい、
私は自分のものは何も買えなくなってしまいます。

それは買えないと私がいうと、

「お前が自分で聞いてきたんじゃないか!!」

と父はまた怒り出し、
私は自分が優しい気持ちで言った言葉に、
このような態度しか取らない父親が、
本当に情けなくて悔しくて、
涙が出そうになりました。

そんな私と父とのやり取りを見ていた母が、
私をそっと呼び出して、

「お母さんも食べたいから買ってきて」

と言って、
私に父が言った分の焼きイカを買ってこれるだけの、
お金を渡してくれました。

私は父に自分のお小遣いの中から、
お土産を買ってきてあげたかったのですが、
そんな人の気持ちなど考えない父は、

「お前達が食べるような子供のオヤツなんかいるもんか!!」

と怒鳴っていたために、
私は母が気遣って出してくれたお金を受け取り、
使いっ走りのように、
父が食べたいと言った焼きイカを買ってきました。

焼きイカを差し出しても、
父はお礼を言うこともなく、
ただガツガツと食べて満足すると、

「後はもう要らねー、お前らで食べろ」

と放り出しました。

それは1本残すとか言った形ではなく、
本当に食べかけで、
私は自分達を侮辱されたように感じて、
とても腹が立ちました。

それでも私を気遣ってか、

「美味しそうねぇ」

と言って、
父の食べかけを食べてくれた母に、
私も気を取り直して、
夜店での楽しかった話をしました。

「ハムスターが売っていてね、
とっても可愛かったんだよ」

私にとってハムスターは、
幸せな家族の象徴でした。

それは優しくて常識的な、
父の弟の叔父さんの子供達(私の従兄妹)が、
ハムスターを飼っていて、
その叔父さんと一緒に、
ハムスターを囲んで可愛がっている姿が、
とても羨ましかったからでした。

けれど、その話をした時の母は、
とても嫌そうな顔を私に向けました。

「お母さん、ネズミだけは嫌よ!!」

母のあまりの嫌悪ぶりに、
私はとても驚いたのですが、
動物が好きな父が、
この時だけは私の言葉に反応しました。

「じゅんはハムスターが飼いたいのか?」

父の言葉に私は戸惑いました。

私は皆んなで可愛がりたいと思っていたので、
お母さんが嫌がっていることを気にしていました。

でも、動物好きな父がとても嬉しそうな顔で、

「飼いたかったら、お父さんが一緒に夜店までついていってやる」

とまで言ってきたために、
私は母の反対を気にして飼わないという言葉が、
言えなくなってしまっていました。

そして私の心の中には、
私がハムスターを飼ったら、
昔、リスを飼いたいと言っていた父と、
仲良く過ごすことが出来るのではないか、
という期待も、
湧き上がってしまったのです。

それは、生まれた時から、
父に要らないと言われていた私にとって、
とても魅力的な想像でした。

そのため私は母から、

「お母さんは絶対面倒見ないからね!!」

と言われながら、
父と一緒に夜店に出かけました。

そして、私は夜店で、
目の黒い1匹のハムスターを、
買って帰りました。

私のお小遣いでは、
ハムスターと餌を買うのがやっとで、
ケージまでは買えませんでした。

父はそんな私を見ながら、

「お前の好きなようにしたらいい」

と、一切何のアドバイスもしませんでした。

そのため浅はかな中学生だった私は、
飼ってきたハムスターを、
入れる場所が無いからと、
ネズミの嫌いな母の目に触れないよう、
自分の部屋に大きな段ボール箱を置き、
その中にハムスターを入れて眠りました。

父と一緒に夜店に行ったという、
楽しい思い出のまま眠りについた私が、
異変に気付いたのは夜中でした。

カリ、カリ、カリ、、、

電気を消した暗い部屋で、
異様な音がしたため、
私は布団から起きて電気をつけました。

音のした方を確認すると、
段ボール箱に入れていたはずのハムスターが、
私の部屋の隅の襖を、
かじっているところでした。

ハムスターを入れていた段ボール箱には、
ハムスターが出られるくらいの、
丸い穴が空いていて、
段ボールをかじって外に出たのだと、
分かりました。

私の頭の中には、
木造の我が家の柱をかじったことで、
怒り狂う母と、
また私が余計なことをしたと、
侮蔑する兄の顔が、
かわるがわる浮かびました。

私の部屋の隣の居間からは、
アルコールを好きなだけ飲んで、
気持ちよく寝ている父のイビキが、
大きな音で聞こえてきていました。

私は自分で何とかするしかないと、
布団から這い出して、
部屋の隅にいたハムスターを、
段ボール箱の中に入れ、
ハムスターが逃げ出すたびに、
捕まえて段ボール箱に入れるといった作業を、
一晩中繰り返しました。

父のイビキが響き渡る部屋で、
私はハムスターが、
部屋から逃げ出さないよう見張るため、
一睡も出来ませんでした。

翌日の朝をようやく迎え、
起き出した父に状況を説明しても、

「段ボールなんて食い破られるのは当たり前だろう」

というばかりで、
何の解決策も教えてはくれず、
結局、母が、
昔鳥を飼っていた時に使っていた、
プラスチックの鳥籠を、
物置から出してきてくれました。

そんな父の態度に、
私は自分の迂闊さを呪いました。

私は父の喜ぶ顔が見たくて、
うっかり忘れていたのです。

父が自分の面倒さえ他人任せにする人間だということを。

そんな人間が、
買ってきた動物の面倒など、
私と一緒に見てくれる訳がなかったのでした。

そういえば。

我が家には、兄が小学校に入学する時に、
父の希望でもらってきた犬がいて、
その犬に幼い頃、崖から突き落とされた私は、
トラウマで犬に近づけなかったのですが、
兄が飼うという前提だったにも関わらず、
父も兄も可愛がって、
散歩などに連れて行っていたのは最初だけで、
結局、最後には、
母が1人で面倒を見ていました。

父が私のやりたいこと(ハムスターを飼うこと)を、
支持してくれたのが嬉しくて、
私はそのことをすっかり失念してしまっていたのでした。

父は動物を可愛がるけれど面倒は見ない人でした。

私は母から鳥籠を受け取り、
ハムスターを中に入れました。

従兄妹のように、
家族皆んなで可愛がる夢は、
叶わなかったけれど、
私がちゃんと面倒をみてあげよう。

私は鳥籠の中で、
新聞紙をくしゃくしゃにしている、
ハムスターの愛らしい姿を見ながら、
そんな風に思いました。

けれど、そんな私の思いを。

叶えることは出来なかったのでした、、、