レース・ローズ ◇19 | 有限実践組-skipbeat-

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 前話こちらです↓ ※色が違うのはキョコside

 レース・ローズ【1 10 11 12 131415161718】


■ レース・ローズ ◇19 ■





「 れ~~~~~ん、やっと来たか! 」



 足早に近づいてきた社さんが気さくに俺の肩を叩く。

 人懐っこそうな笑顔は相変わらず、年上であることを忘れさせるもので、なぜか俺は最上さんを、社さんから見えないように自分の後ろに隠してしまった。



「 社さん、お久しぶりです 」


「 本当にな!8月の終わりに不動産屋の前でばったり会ってから音沙汰無しでびっくりだ! 」


「 あー、そうでしたね、そういえば 」


「 そうでしたね、じゃないだろ!今日だって朝からいるだろうと思っていたのに影も形も無いから、何かあったのかと心配していたんだぞ 」


「 本当ですか。それはすみません 」


「 すみませんじゃないだろ。どうした、あれから。期間限定ギャラリーの会場は決まったのか? 」


「 はい。実はあのあと割とすぐに… 」


「 決まったんなら俺に声をかけろよ。それとも俺は用無しなのか? 」


「 いえ、そんな…。ここでの買い付けが終わったら連絡する予定でいたんですよ。だからまさかここで社さんに会えるとは思っていなくて、正直驚きました 」


「 なにおう?ウチだって一応、協同組合に加盟しているんだ。確かに存在自体は地味かもしれないけどな、ウチが居なきゃお前だって困るだろうが? 」


「 はい、確かにその通りで… 」


「 ……ところで、蓮 」


「 はい? 」



 不意に表情を曇らせた社さんは、俺の腕を肘でつついて俺の耳元に口を寄せた。



「 一時間ぐらい前だったか、高園寺のお嬢さんが会場前をウロウロしていたぞ。たぶんお前の事を探してたんだと思うんだけど 」


「 あ…ああ、はい。さっき別の場所で会いました。もう帰ったと思いますけど… 」


「 本当か。しかしあの手合いはしつこいから注意した方がいいぞ~。8月末にお前と不動産屋の前でばったり会ったときな、あの時もあのお嬢さんがうろついていたのを見かけたし 」


「 え?……それは知らなかったです 」


「 だろうな。お前の態度から何となくわかってた。たぶん、お前がギャラリー会場を探していることを知って、場所提供でもしようとしていたんだろうな。いっそお前も上手いこと利用してやればいいのに 」


「 社さん。冗談でもそんなこと言わないで欲しいです 」


「 悪い、失言だった。それよりどこだよ、会場は。来月やるんだろ?期間と場所を教えろ。どこに決めたんだ? 」


「 あ、その件なんですけど…… 」



 後日ちゃんとお話します、と俺は言おうとしたのに、それまで黙って俺たちの会話を聞いていた最上さんがご丁寧にも自分のバッグからあのチラシを取り出した。


 俺の脇からひょっこりと顔を出して、手にしたチラシを社さんにそっと手渡す。



「 あの……ここです。期間も書いてあります 」


「 ちょっ…最上さん?!ちょっと待って、なに勝手に社さんにチラシを見せてんの!! 」


「 え?ダメだったんですか?でもお知らせするつもりだったんですよね? 」


「 そうだけど……あっ、社さん!! 」


「 わはははは!!なんだ、このチラシ?お前の顔写真が入っているのか。なになに?イケメン・ギャラリストが提供する魅力あふれる絵画展示即売会?!あははははー!! 」


「 笑いすぎです!だから嫌だったのに!返してください!! 」


「 あっ!!なんだよ、ケチ臭いな 」


「 ケチ臭いとか言わないでくださいよ、いい大人が! 」



 文句を吐きながら俺は取り返したチラシをぐしゃぐしゃに丸めた。すると今度は最上さんが俺の手首をチョップしてきて、あまりに予想外な展開すぎて俺は丸めたチラシをポトリと落とした。



「 やだ、やめて下さい、敦賀さん!何をしているんですか!! 」


「 …っ!!な……チョップするか、普通? 」


「 しますよ!!だってそのチラシは私にくれたものじゃないですか!なのにヒドイです、ぐしゃぐしゃに丸めるなんて!!あーあ。シワシワになっちゃったじゃないですかぁ 」


「 いや、だって…… 」



 落ちたチラシを拾い上げ、唇を尖らせた最上さんがシワだらけになったチラシを丁寧に広げる。

 だって…と、俺が言い訳をしようとしたとき、両手を組んでニヤニヤ笑いを浮かべた社さんが目を細めて楽しそうに口を挟んだ。



「 おっや~?お前、一人なら同伴が許されているからって、自分の彼女を連れて来たのかぁ~? 」


「 …っ!!違います、この子はそういうんじゃなくて… 」


「 彼女じゃないなら何なんだよ。仲良さそうにイチャついちゃって。だいたい、俺はお前が女の子と一緒に入って来たのを見ていたんだ。なのに紹介もせずに知らんふりで背中に隠すからよっぽどベタ惚れしている子なんだろうなって察しちゃっていたんだけど? 」


「 えっ、見ていたんですか… 」


「 お前、自分が目立つ人間だってことを少し自覚したほうがいいぞ。それで真実は? 」


「 ベタ惚れしてるっていうのは確かにそうかもですけど… 」


「 やっぱり彼女じゃないか!なんだよ、一人前になるまで作らないとか言っておいて!! 」


「 だから彼女じゃないですって!! 」


「 はぁ?彼女じゃないなら誰なんだよ。まさかお前、ギャラリーを持つ前に人を雇ったのか?しかも女の子ぅ? 」


「 それも違うんです。とにかく説明は後でしますから… 」


「 あと?後あと後でだと?俺に紹介する気は無しってか。俺を邪険に扱っていいと思っているのか?それならもう知らん!お前の期間限定ギャラリーに俺は協力してやらん! 」


「 えぇぇっ?ちょっと、それは困りますよ、社さん!!あ~もう、やっと彼女にも協力してもらえることになったのに… 」



 ふと最上さんに視線を移すと、最上さんは不審そうに俺を見上げていて、その視線に含まれている意図が分かった俺は慌てて右手を左右に振った。



「 違うよ!!最上さん、確かにこの人、俺と年は近いけど、そもそもギャラリストじゃないから! 」


「 え?違うんですか?私、てっきり敦賀さんに騙されたのかと… 」


「 なんだ、蓮。この子を騙して連れてきたのか。悪い奴だな 」


「 社さん!わざとややこしくなるように口を挟まないでくださいよ!なんですか、その楽しそうな顔! 」


「 うん、否めない。実際、楽しいから 」


「 彼女は!今日の買い付けに協力してくれることになった最上さんです 」


「 へぇ? 」


「 初めまして。最上キョーコです 」



 最上さんが丁寧に頭を下げると、社さんはこれ以上ないほど人好きしそうな笑顔を浮かべた。

 人当たりが良く誰にでも気さくに話しかける社さんは、俺が最上さんに社さんを紹介すると、やはり気負うことなく最上さんに話しかけた。



「 それで最上さん。この人は社さん。社さんは額縁専門業者の社員なんだ 」


「 額縁専門業者? 」


「 そ。社員って言っても社長の他に俺ともう一人の従業員しかいないちっちゃい会社だけどね。

 初めまして、キョーコちゃん…でいいかな?俺は社倖一といいます。蓮がギャラリストになってからの知り合いなんだ。

 ちなみに、君はコイツといつ付き合い始めたの? 」


「 え?えっと……。敦賀さんと知り合ったのはつい最近です。先月…でいいのかな? 」


「 うっそ?!蓮くん、手が早… 」


「 だから!社さん、判っててそういうこと言うの、やめてもらえます?しかも初対面で下の名前を呼ぶとか、どれだけフレンドリー思考なんですか 」


「 あははは。若造か!俺はこういう奴なんだよ。この方が断然商売に有利なんだ。ケチ付けて来るな 」


「 あの…? 」


「 ああ、ごめんね。額縁専門業者って聞いて君が驚いた顔をしたから、二人がどのぐらいの付き合いなのかちょっと知りたくなって…。そうすると、もしかしたらキョーコちゃんは絵画に関しては素人な人? 」


「 はい、実は… 」


「 なるほどね。最初は新鋭の作家でも連れてきたのかなって思っていたけど違うんだ。…ってことは、デパートの催事場でギャラリーをやることになったから、だから彼女に協力を依頼したとか? 」


「 ……ほら、判っているじゃないですか 」


「 チラシを見せてもらったからだよ 」


「 あの……額縁専門業者ってあるんですね。そうですよね。よく考えたら絵画を飾るには額縁が必要ですものね 」


「 そこだよね!!額縁って本当に地味な印象だから存在自体も地味なんだ。でも俺はそれでいいと思ってる。なぜなら額縁はあくまでも絵を引き立てるための枠だからね 」



 たとえば画廊に行くと当たり前のように額に入った絵画が飾られているけれど、そこに付いている値段はあくまでも絵画だけのもの。

 そう。基本的にギャラリストが販売するのは絵画のみなのだ。


 俺が彼女にそう説明をすると、最上さんは素直に目を丸くした。



「 ふえぇぇぇ、知りませんでした。じゃ、この会場に飾られているのもすべて絵だけの値段であって、敦賀さんは額縁を別に揃えないといけないってことですか? 」


「 そういう事になるね。中には作家のこだわりで額縁がセットになっている物もあるけど、そんなのは本当に稀。…で、額縁専門業者が重要になるんだ。

 実際、絵を買ってくれるお客さんだって展示されているその状態のまま買うとは限らないだろ。人によってはもっと豪華なものにしたいとか、シンプルにしたいとか、部屋の雰囲気に合わせたいとか、色々な事情や好みがある。だから俺たちは大抵、額縁をレンタルしているんだけど… 」


「 レンタル?それもまた意外です。あれ?じゃあLMEデパートで販売するときもやっぱりそうなるんですか? 」


「 そこ!俺も考えた。ここで逆に聞くけど、最上さんならどうする?絵を買うと決めたけど額縁はセットじゃないって言われたら… 」


「 それ、私だったら買うのを躊躇う…。だって飾れないんじゃ意味ないし、自分で額縁を買いに行かなきゃならないのは面倒ですから 」


「 ね。だからLMEデパートで販売するときは社さんにも協力してもらおうと思っていたんだ。…ってことです、社さん 」


「 了解。販売できる額縁をある程度のバリエーションを揃えて…って感じでいいんだろ? 」


「 はい。取り敢えず絵の買い付けを優先したいので、サイズや色展開などの詳細はあとで打ち合わせってことでいいですか? 」


「 そりゃごもっとも。あー、やっと安心した。これで大手を振って会社に戻れるわ。けど限度はあるからな。早めに知らせてくれないと数を揃えられないぞ 」


「 分かっています。明日にでもご連絡します。よろしくお願いします 」


「 ああ、よろしく 」


 じゃあ明日な、と言って軽く右手を挙げた社さんは、用事が済んだのかそのまま会場を後にした。






 ⇒レース・ローズ◇20 に続く


このお話でのヤッシーは誰とでも仲良くなれるという性格設定。


明るくて気さくでちょっと面白いお兄さん♡…って言っても、年齢差は原作通りなので、蓮くんが27歳なら社さんは33歳ということに。


会ってみたい!そんなヤッシー(〃∇〃)



⇒The Lace Rose◇19・拍手

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