間が空いてしまいましたが現代パラレル蓮キョ、お届けいたします。
お楽しみ頂けたら幸いです♡
前話こちらです⇒レース・ローズ【1 ・2 ・3 ・4 ・5 ・6 ・7 ・8 ・9 ・10】
■ レース・ローズ ◇11 ■
土曜日だけあって最上さんの家から有明までの道のりは想定通りの40分。さらに会場周辺の道路は混雑していて、駐車場に入るまでに15分を要した。
「 ね。そんなに遠くなさそうだろ。お互い近くて良かったよな 」
「 はい、本当に!! 」
最上さんと約束をしたあと、俺はインターネットで会場のイベント情報をチェックしていた。
それによると、偶然にも彼女の目的地である即売会の会場と、自分の目的地である販促会の会場が目と鼻の先だった。
本来、ビックサイトの駐車場は時間ごとにお金がかかる。けれど大抵の場合は自分が参加するイベントの主催側に申請をしておけば、固定料金を支払うだけで一日駐車が出来るというメリットが生まれるだけでなく、利用会場から近いスペースを確保することも出来るのだ。
元々俺自身は予約したそこに停める気でいたし、最上さんもそのつもりでいると思った。だから俺は事前に彼女のイベント会場を確認しておいたのだ。
所がビックサイトの姿が見えた頃、その駐車場から彼女が利用するイベント会場まではそれほど離れていない旨を伝えたら、最上さんはいま気付きましたと言わんばかりに俺の隣で顔色を変えた。
「 はい、到着したよ。お待たせしました 」
「 敦賀さん、ありがとうございました!本当に助かっちゃいました。それと、すみませんでした。私、駐車場のことを何も考えていなくて…。駐車料金、私が払います 」
「 気にする必要ないよ。もともと俺は自分の用事があってここに来て、そのついでに君を乗せて来ただけなんだから。
それより、結果として君の方の受付開始時間より20分も前に着いちゃったけど、どうする?車の中で少し待機する? 」
「 いえ、このまま搬入口に向かおうと思います。もうみんな並んでいると思いますから私もその列に並びます 」
「 そう。じゃあ荷物を下ろそうか 」
「 それなんですけど、大丈夫です!大丈夫なんですけど、敦賀さん。申し訳ありませんが少し車で待っていて下さい。私、台車を借りて来ますので 」
「 なんで。わざわざ借りて来る必要ないよ。この車に積んであるから 」
「 へ? 」
運転席を降りて車の後部に回る。
ハッチバックを開け、側部に固定しておいた台車を下ろし、玄関と車を3往復で済ませたそれなりに大きな段ボールを2箱ずつ、今度は手早く台車に下ろした。
「 ええぇぇっ?!自前の台車があるんですか?すごい。これ、貸して頂けるんですか? 」
「 ……その前に聞くけど、台車を借りて来るのっていま思いついたんじゃない?君、どうやって会場まで荷物を運ぶ気でいたの? 」
「 …あうっ……すみません。正直、そこまで考えていなくて…。車でここまで連れて来てもらえるだけで十分だと思っていたから、あとはとにかく販売出来る物を一つでも多く作らなくちゃって、それしか考えていなくて。…で、さっき敦賀さんに駐車場の話をされてハッと我に返って、そういえば荷物をどうしようって思いついて。そしたら過去のイベントが脳裏を過ぎって、会場で台車を借りられた事を思い出したので…… 」
「 ぷっ。なるほど。それで大丈夫って言ったんだ? 」
「 はい、そうです!抜けだらけですみません! 」
「 確かに。君、しっかりしているようでどこか抜けているよな。バンが車の名前だと思っていたり。じゃ、行こうか 」
「 え?敦賀さんも一緒に行って下さるんですか?…って、そうか。その方が早く台車を返せますものね? 」
「 違う。抜けている君が本当に心配だから付き添うことにした 」
「 心配ってどういう意味ですか~~!!私、一人のときは案外しゃっきりしているんですよ! 」
「 ははっ、どうだか…。自己申告ほど信頼性に欠けるものはないよ。意外と講師の仕事もそんな感じなんじゃないの?そう言えば忘れ物が無い様にあれもこれも持って行くから荷物が多くなっちゃうって君、言っていたし 」
「 そっ、それは…あうっ!!敦賀さん、歩くの早いです。待ってください 」
「 早く道案内して。でないとこの荷物、勝手にどっかに持って行っちゃうよ 」
「 それは困ります!!でもお願いですからもう少しだけゆっくり歩いて下さい 」
「 えー?台車を押している俺より遅いなんて、そんなにゆっくりで大丈夫?夜になったりしない? 」
「 少しだけでいいんです!もう、本当にときどき意地悪っ 」
「 はははは… 」
冗談めかして付き添う…なんて言ったけど、実は始めからそうするつもりだった。
ここへ連れて来るだけじゃない。彼女には何の了解も貰わなかったけれど、俺は搬入も付き合う気でいた。
だって見てみたかった。
彼女が心血注いで作り上げた沢山の作品を、限られたスペース内でどう展示販売するつもりなのか。その飾りつけを俺は自分の目で見たかったのだ。
「 あ、敦賀さん!ちょっと止まって下さい。並ぶ前に飲みもの買って来てもいいですか? 」
「 自販機?うん、いいよ。俺も買おうかな 」
「 それなら私が敦賀さんの分も一緒に買って来ます。缶コーヒーでもいいですか? 」
次いで、俺は今日こそこの子に言おうと思っていた。
まるでいま思い出したかの如く、自分が拾ったミニチュアバッグ・キーホルダーのことをさりげなく告白したかった。
「 缶コーヒー…でいいけど…… 」
「 なんですか?もしかしたら別のが良いですか?なに? 」
「 いや、缶コーヒーで良いんだけど…。それ、まさか君のおごりのランチ…とか言わないよな? 」
「 言いませんよ!どうやったら缶コーヒー1本がランチになれるんですか。お礼は後日にちゃんとしますから! 」
「 そう、なら良かった。いや、俺ときどきコーヒーがランチになったりするから、つい 」
「 なにそれ。とんだ不健康ですね、敦賀さんってば 」
「 なにを?君だって人のこと言えないんじゃないのか?作るのに熱中し過ぎて食べるの忘れたことがあるだろう? 」
「 なっ…なんでそんな見て来たように… 」
「 君、以前、手芸をしていて俺に電話してくるのを忘れたことがあっただろ 」
「 あれは忘れたんじゃなくて… 」
「 そうだ、間違えた。気付いたら時間が過ぎちゃっていたんだよな 」
「 うにゅう……いじわるぅっ!! 」
お揃いのコーヒーを買ったあと、笑いながら搬入待ちの列に続いた。
手芸品の即売イベントだけあって並んでいたのはさすがに女性ばかりで、身長190cmのしかも男が来れば注目されるのはもはや当然。
我ながら浮いているなと思ったけど、前方に並んでいたのに列から離れ、こちらに近づいてきた二人の女性の言葉が何よりそれを証明していた。
会話内容から察するに、どうやらイベントを通じて知り合った最上さんの顔見知りだと思われた。
「 京子さん、お久しぶり~! 」
「 きゃー♡お久しぶりです! 」
「 先日のイベント以来ですね。今回も無事スペース取れてお互い良かったぁ! 」
「 うん、ほんと、ほんと!でも今回、逸美ちゃん、愛華さんとスペース離れちゃって残念ですー 」
「 それ、私も思った~。12月は近いといいね 」
「 うんうん。それより、京子さん、今日は彼氏連れ~?誰かを連れて来るなんて初めてじゃないですか。ひゅ~ひゅ~。紹介して下さいよぉ! 」
三人の会話を横で聞いて、あ…と思った。
ギャラリストとしてやっていける見通しが付くまで女性を避けていたはずだった。
なのに誤解されても仕方のない状況に自ら飛び込んでいたことに今さら気付く。
「 え?えっと、いえ、この人は…… 」
俺を見上げた三人から咄嗟に顔を逸らしたものの、最上さんがそう言いかけた所で俺は慌てて彼女の肩に手を添えた。
俺の反応が意外だったのか顔を跳ね上げた彼女と目が合う。
小さく首を横に振った俺のジェスチャーに最上さんはきっと気付いた。
彼女は否定的な言葉を避け、えへへ…と照れたように頭を掻きながら二人の女性に向き合ってくれた。
「 えっと、この人のことは……内緒にしてね? 」
「 んまっ、内緒?なにそれ、内緒になんてならないでしょ。ね?逸美ちゃん 」
「 ふふ、うん、だってあり得ないものね。こういうイベントで一緒に並んでくれるなんて。でも分かった。京子さんがそう言うのって、もしかしたら彼氏さん、今日はお仕事のはずなのにここに来てくれたとかじゃない?だから内緒なんでしょ? 」
「 あ、なるほど。ワイシャツにスラックス…。確かに 」
「 もしかしたら偶然、こっちに仕事があったとか? 」
「 …う、うん、実はそうなの。だから、ごめんね 」
直後、入場開始を知らせるアナウンスが響いた。
「 始まった!じゃあまたね 」
「 うん、お互い頑張りましょ 」
「 わざわざこっちに来てくれてありがと~。二人も頑張ってね 」
二人の女性も元の場所に戻り、徐々に列が進み出す。
踏み込んだイベント会場は俺には未知の世界だった。
既にあちらこちらで準備が進められている。
最上さんの後に続いて台車を押していくと、会場のほぼ中央、壁際に沿ったスペースで最上さんが足を止めた。
「 ここが私のスペースです 」
「 了解。中に入って良いんだよね? 」
「 はい。……あの、敦賀さん? 」
「 うん? 」
「 本当にアレで良かったんですか?敦賀さん、私の彼氏みたいになっちゃいましたけど… 」
そう言って最上さんは申し訳なさそうな顔つきで俺を見上げた。
⇒レース・ローズ◇12 に続く
ビックサイトのイベント…懐かしすぎる思い出(笑)
⇒The Lace Rose◇11・拍手
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