レース・ローズ ◇6 | 有限実践組-skipbeat-

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 一葉です。良かった、お届け出来ます、現代パラレル蓮キョ。

 その前に一つだけ。特に明言していた訳では無いのですが、ここからこのお話、完結まで予定より長くなることを覚悟して下さい…。


 少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです。


 前話こちらです⇒レース・ローズ【15】


■ レース・ローズ ◇6 ■





 手芸…なんてことをしていると、出会いなんてほとんどナイ。

 だから、偶然でもなんでも敦賀さんみたいな素敵な人と出会えたことが嬉しかった。


 通話時間はたったの2分もなかったけれど、私はものすごくドキドキしていた。



「 明日、会えるんですって!!誘われちゃった、誘われちゃった!!

 電話で話してハイ終わり、になると思っていたのに、敦賀さん、会ってくれるんですって!!! 」



 正直浮かれていました。

 明日会って話がしたい…と言われた途端に右手はタブレットを操っていた。


 とっておきのあの場所は既に予約が済んでいる。


 出来るならもう一度、会って話が出来るならそうしたい。それは心のどこかで望んでいたことだったから、だからとても嬉しかった。



 敦賀さんには、お礼とお詫びをしなきゃいけない。


 昼間、コーヒーをごちそうしてもらったお礼と、私なんかに声をかけてくれたお礼と、にも拘らずそのお願いを引き受けることが出来ないお詫びをしなくちゃいけないと思った。敦賀さんの都合なんて考えもしないで…。



「 そうと決まれば準備をしなくちゃ!! 」


 思いつく限りの荷物を布袋に詰め込み、パンパンに張ってしまったそれを左肩にヨイショと提げる。右手には大ぶりのカゴバッグ、そしてリュックも背負った何とも言えない出で立ちで、翌日私は敦賀さんとの待ち合わせ場所に立っていた。



「 ……最上さん。もしかしてこれから納品に行く…とかじゃないよね? 」



 大きな車の運転席から顔を出した敦賀さんが、私を見つけるなりそう言った。こんな大荷物を持った私の姿を見ればそれは当然の反応かもしれなかった。



「 敦賀さん、おはようございます。本日は宜しくお願いします!! 」


「 うん、宜しくしたいのは俺の方だけど…。それでその荷物は… 」


「 あ、違いますよ。これ、納品じゃないです 」


「 そう?……じゃあ、荷物は後部座席に乗せて、君は助手席に乗って貰える? 」


「 助手席?は…はい、助手席!!お邪魔しますっ! 」



 助手席に、なんてそれだけで嬉しかった。

 彼女に見えたらどうしよう!


 笑い出しそうになるのを必死にこらえて乗り込んだ。



「 これ、すごく大きな車ですね。中もひろーい 」


「 うん、俺、自分の車を持っていなくて…っていうか、これが自前と言えばそうかもだけど。この車、仕事で使うバンなんだ 」


「 バン?敦賀さんって、車に名前を付けているんですか?ちょっと意外です 」


「 違う、違う。バンっていうのはキャラバンを略した呼び方 」


「 キャラバン? 」


「 主に貨物を運搬する際に使う車のことをこう呼ぶんだ。俺が付けた名前じゃないよ。それより、俺、もしかしたら待ち合わせ時間を間違えていたかな? 」


「 ああ、いえいえ。私も敦賀さんがあんまり早くいらしたから驚いちゃったぐらいで…。実は私、社会人になってから5分前行動を取るっていうのが身体に染み付いてしまっていて約束時間より早く動くのが癖になっているんです。…というのは建前で、本当はプロの手芸作家になったから。

 プロって言うと聞こえいいですけど、手芸作家なんて所詮は自由業ですからね。こういうことで信用を損ないたくなくて、つい早く行動してしまうんです 」


 それに加えて本当はすごく楽しみだったから。

 早く着いてしまうのは判っていたけど、それでも早く逢いたくて、出て来てしまっていたのだ。



「 最上さん、それ俺も 」


「 え?敦賀さんも、ですか? 」


「 ギャラリストって自由業なんだ。顧客やアーティストからそっぽを向かれたら仕事そのものが出来なくなる。だから待ち合わせをした時は常に10分前を心がけているんだ 」


「 わ……わぁ、そうだったんですね。そうですよね、判る気がします。だって昨日お話を聞いた時にも思いましたから。敦賀さん、そのお仕事に誇りを持っていらっしゃるんだなって 」



 私に向かって薄く笑顔を浮かべた敦賀さんを本当にステキな人だと思った。


 何てカッコいいんだろう。この人は自分の仕事に情熱とプライドを持っているのだ。

 外見だけじゃなく、敦賀さんは間違いなく中身も素敵な人だと思った。



 だから余計に残念だった。

 せっかくこんな人と知り合えたのに、快い返事が出来ないことが。



「 …で、行き先なんだけど、この近くのホテルに星が付いたレストランが入っているの知っているよね?そこで話をするでいい? 」


「 へ?……今なんて? 」


「 だから、この近くにあるホテルの中に、星が付いたレストランがあるから…… 」


「 それっっっ!!敦賀さん、まさか予約しちゃってあるとか?! 」


「 いや、さすがにあの時間では予約は無理だったけど、今朝確認をしたら早い時間なら予約なしでも入れるって言われたから大丈夫… 」


「 いえイエいえイエ!!良かった、していないんですね?!あー、びっくり、良かった、本当に。ごめんなさい、星が付いたレストランなんてそりゃ一度は行ってみたいとは思いますけど、でもとてもじゃないけど今の私には分不相応です!払えないです!! 」


「 え?いやいや、ちょっと待って?そういうのはもちろん俺が払… 」


「 ダメです、そんなこと!! 」


「 いや、ダメって、だけど君だってそれを… 」


「 敦賀さん!!そのホテルの前にある公園の駐車場に行ってください。お願いします 」


「 公園の駐車場?ホテルの駐車場じゃなく? 」


「 公園の駐車場です!お願いします!! 」


「 ……分かった 」



 そう言うと敦賀さんは間もなく車を発進してくれた。


 駐車場までは10分とかからず到着して、私は急いで荷物を下ろした。


 パンパンに張った布バッグと重たいカゴバッグは敦賀さんが持ってくれて、私はといえばリュックだけを背負い、恐縮しながらこちらです…と敦賀さんを案内しつつ公園内の建物に踏み入った。




「 最上さん、ここって… 」


「 大丈夫ですよ。こっちです 」



 そこは私が以前勤めていた会社の福利厚生施設だった。

 数年前までは社員とその家族しか使うことが出来なかったのだけど、いまは利用料さえ払えば退職した元社員でも使える施設となっている。


 建物は2階建てで外見は飾り気のない鉄筋コンクリートにしか見えないけれど、6室を備えているそこの部屋は茶道部屋として使われていたため、一つずつの室内はさほど広くはなく、けれど空調が完備されている建物だから夏でも快適に過ごせる。

 そして個室だから誰かに話しを聞かれる心配もなく、しかも持ち込み自由の場所だった。



 部屋の入り口でしばし敦賀さんをお待たせし、持って来た荷物を配置した。

 座布団とふかふかクッションを上座に置いて、我が家にあった折り畳みのテーブルを拡げて手作り弁当をセットする。


 そして一番の目玉となる襖を開け、ベランダとはとても思えない和風庭園を久しぶりに眺めて、私は自己満足に浸ってから敦賀さんをお招きした。



「 大変お待たせしました!どうぞお入り頂いて、こちらの座布団とクッションをお使い下さい。テーブルが小さくてスミマセン。我が家にはこれしか無くて… 」


「 これは…… 」


「 それは私が作って来たお弁当です。もちろん水筒もあります!中身は麦茶なんですが、もしお水の方がいいなら自販機で買って来ます。敦賀さん、どっちがいいでしょうか? 」


「 え?ちょっと待って、それよりこれ何?どうしてこれ? 」


「 どうして…って、それはお礼のつもりです。本当なら素敵なレストランで、先日はご馳走様でした、とか言ってお返しするのが礼儀だと思うのですけど、あいにく私、いまそういう余裕がなくて… 」


「 え?え?お礼ってなに?そもそも今日は俺の話を聞いてもらうってことだったよね? 」


「 それなんですけど!!そのお詫びも兼ねているんです、ごめんなさい!! 」


「 なに、お詫び?どういうこと? 」


「 敦賀さん、トローニーで私に言っていたじゃないですか。ギャラリーは10月に予定しているって… 」


「 そう言ったけど 」


「 それ、私には絶対無理なんです。私、来月の9月と年末12月に大きな即売イベントがあってそれに参加するんです!年内中その準備で手一杯になってしまうので10月に開催予定だという敦賀さんのそれに協力するのは無理なんです!ごめんなさい!! 」


「 ……それって、始めから断るつもりだったってこと?じゃ、どうして昨日そう言ってくれなかったの?今日だって、俺の話を聞くなんて… 」


「 …っっ!!! 」



 険しい目つきになった敦賀さんに見つめられ、ぐっと喉を詰まらせた。


 そうだ。私、自分の事しか考えていなかった。


 ただもう一度この人に会いたい、そんな気持ちが先に立って。

 本当に申し訳ないけれど、依頼を受ける訳にはいかないから、せめておもてなしをして許してもらおうと考えた。


 あわよくば自分を良く見せ、次につながったらいい、だなんて、そんな事しか考えていなかったのだ。


 断るしかないのなら、自分と会う時間は敦賀さんにとって無駄以外の何ものでもないというのに。敦賀さんの都合そのものを全く考慮していなかった自分の愚かさにこのとき私は初めて気付いた。



「 ……あ、の…… 」



 ごめんなさい。謝って済むような問題ではないかも知れないけれど、そのたった一言さえ自分の口からは出て来てくれなかった。

 敦賀さんの口から吐き出された重く深い溜息を、私は申し訳ない思いでただじっと受け止めることしか出来なかった。






 ⇒レース・ローズ◇7 に続く


レース・ローズは蓮くんsideだけで書き綴っていくつもりだったのですが、この6話がどうにも進んでくれなくてですね…。

気分転換にキョーコちゃんで書いてみるか…なんて試してみたらスラスラ行ってしまいまして…。


やっぱり私、二人sideから書かないとダメなのかも知れない。そんな訳で、長くなりますよ予告を入れてみました。ふへへへへ…



⇒The Lace Rose◇6・拍手

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