レース・ローズ ◇9 | 有限実践組-skipbeat-

有限実践組-skipbeat-

こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


※出版社様、著作者様とは一切関係がありません。
※無断での転載、二次加工、二次利用は拒断致します。
※二次創作に嫌悪感がある方はご遠慮ください。

 お付き合い頂きまして感謝です。現代パラレル蓮キョ、お届けいたします。

 お楽しみ頂けたら幸いです♡


 前話こちらです⇒レース・ローズ【18】


■ レース・ローズ ◇9 ■





 それから2時間があっという間に過ぎてしまった。

 利用時間いっぱいまでそこに居て、そのあと車で別の場所に移動して、さらに2時間ほどを彼女と過ごして荷物と一緒に最上さんを送り届けた。



 今日、移動手段として俺が車を選んだのは正直に言えば個人的な事情からで、車を運転するなら酒を勧められることはまずないし、適当な理由を付けて即座に居なくなれて便利だからだった。



 でも今日は逆だった。

 車で来て本当に良かったと思った。


 おかげでこの子の住所もバッチリ把握できてしまった。



「 はい、到着。君の家ってそこの建物? 」


「 そうです。本当にありがとうございました!荷物があったから助かっちゃいました 」


「 いや、本当にね。朝、駅で君を見た時はどこのお上りさんかと思ったよ 」


「 やだ、もう!恥ずかしい!!本当にすみませんでした!でもあそこの施設の備品は社員しか使えないんです。だから自分で持てる限りを持ち込もうと思って…… 」


「 うん、分かった、分かった。それ何度も聞いたって。大丈夫、いま俺、それを承知の上で言ったから 」


「 もおぉぉ!!敦賀さん、ちょっと意地悪です! 」


「 ふっ、ごめん、ごめん。だって君の反応、素直で可愛いからつい 」



 会話を通して一つ変わったことがある。

 それは彼女の印象だ。


 最上さんはただ可愛く元気なだけじゃない。彼女は自分をしっかりと持った女性だと判った。



 学生の頃から人気のあったプロの手芸作家なんて、いかにも順風満帆そうで羨ましい…とそう思っていた。

 自分より年下の女の子が、自分には無かった、ものを作る才能に恵まれて成功しているなんてハッキリ言って妬ましい。


 昨夜、待ち合わせの約束をした時、本当はそんな風に俺は思っていたのだ。



「 からかわないで下さい!! 」


「 からかってないって。ごめんね、大変だっただろ、こんなに荷物を持ってくるなんて。おかげで俺は楽しかったよ 」


「 えへへ。良かった、嬉しいです。おもてなしの甲斐がありました!!でも私、荷物が多いのは慣れているから平気なんです 」


「 ん? 」


「 有難いことに今は生徒さんがたくさんいるので、教室がある時に持っていく荷物がとにかくすごい量になるんですよ 」


「 ああ、教室ね。そうか。火曜と金曜の内容って同じなの? 」


「 あ、いえ、違う風にしています。火曜日は10時に終わる教室なので、そのあとお買い物に行ったり遊びに行ったりする生徒さんもいらっしゃるだろうから…と考えて、小さなものを作る教室にしているんです。で、金曜日は午後の教室なので、大ぶりの布バッグをメインにした教室にしているんです 」


「 へえ、そうなんだ 」


「 はい。生徒さんに作ってもらう材料は講師が自分で用意するんです。それを生徒さんに購入してもらう仕組みになっているから気を抜くことは出来ないし、何より手芸を楽しんで欲しいから忘れ物が無い様に、あっても対応できるように…って考えて、ついあれもこれもって持って行っちゃうからあっという間に荷物が嵩張ってしまうんですよ 」


「 目に見えるようだな 」



 そう言えば、とふと気づいた。

 昨日は火曜日だったから彼女は講師の仕事があったはず。


 つまりこの子は……。



「 もしかしたら昨日は火曜日の教室が終わったあとトローニーに来ていた? 」


「 そうですよ。トローニーがオープンしてからずっとお邪魔しています。週に一度、火曜日だけのプチ贅沢です 」


「 だから荷物が少し多かったんだ? 」


「 多かったですか?あらかたの荷物は生徒さんに渡したあとだったのであれでもだいぶ減っていたんですよ。あ、でも確かに、あれほどがっちりしたお裁縫セットは火金以外はさすがに持ち歩いたりしませんから、やっぱりそうだったかも 」



 手芸の話をしているとき、彼女の笑顔は一層輝く。


 好きなんだな…。

 何の疑いもなくそう思える顔だった。



「 小さいものって、たとえばミニチュアのバッグとか? 」


「 はい、そういうのも作った事ありますよ。印鑑入れにしたり、キーホルダーにしてバッグのワンポイントにしたり。案外好評で嬉しいです 」



 一ヶ月前の交差点。

 思わぬ拾い物をした。


 やけに精巧な手作りのミニチュアバッグ・キーホルダー。

 裏にKの刺繍が施された……。



「 そう言えば、K…ってどういう意味? 」


「 え? 」


「 トローニーの布小物にKの刺繍がしてあるだろう?あれって… 」


「 あ、そっか。Kは京子のKです。それ、コースターで見たんじゃないですか?小さいものはKだけにしているんですけど、クッションとか座布団とか大きなものには横文字でkyokoと刺繍をしています。タグの時もありますけど 」


「 京子? 」


「 手芸作家としての私の名前です。本名は最上キョーコっていうんですけど 」


「 あ?ああ、そうか。そう言えば俺、君のフルネームを知らなかった 」


「 そうですよね。名乗っていませんでしたから 」


「 君って俺のフルネームは知っていたっけ? 」


「 知っていますよ。だってお名刺いただきましたから 」


「 あ、そうだったね。そうだ…… 」


「 敦賀さん、本当にありがとうございました。また機会があった時に色々お話を聞かせて下さいね 」


「 …っ!!最上さん! 」


「 はい? 」



 言い出せずにいたキーホルダーはビニール袋に入ったまま。


 だけど今さらそれをどう切り出せばいいのか正直迷った。



「 荷物、俺が部屋まで持って行ってあげるよ 」


「 い?いいいいいいですよ!!大丈夫です!! 」


「 遠慮しなくてもいいよ。すぐそこの部屋だろ? 」


「 遠慮します!!だって私の家、本当にすごいんです!!布、布、布ばっかりで… 」


「 うん、布に占拠された一人暮らしの1DKなんだろ。俺も似たようなものだから大丈夫 」


「 敦賀さんも? 」


「 そう。本当は絵画をたくさん飾りたいんだけどね。そんなスペースないから画集をこれでもかと持っているんだ。部屋は本棚に占拠された一人暮らしの1DKだよ…って言いたい所だけど、実はもう本棚からも本が溢れていて、家で足を伸ばせる場所がロフトだけになってしまった。ちなみにそこで寝ている 」


「 ぷっ!!私と同じです。私もミシンの周りが布に占拠されてしまって、いまは来月販売する物もそこに加わってしまっているから本当に凄くて…。家で足を伸ばせる場所ってロフトだけです 」


「 ね、同じだろ 」


「 ふふふっ。やだ、おかしい 」



 手芸と絵画なんて全く違う分野なのに、彼女とは意思疎通が図り易くてつい会話が弾んでしまう。


 この子もそうならいいと思った。


 もっともっと親しくなれたら、最上さんは俺に協力してくれる気になるだろうか。



「 ……来週の火曜日に、俺もトローニーに行こうかな 」


「 え? 」


「 ツケを払いに行かないと 」


「 ああ… 」


「 それに、もう少し君と話がしたいかなって 」


「 …っ?! 」


「 最上さん。来週、良かったら俺と一緒にお昼を食べない?今度は俺がご馳走するから。いい? 」


「 う……はい。ありがとうございます 」



 次の約束を強引に結び、お世話になった彼女の荷物を持って、少しだけ見せてもらえた彼女の部屋はその言葉通り、布に占拠されていた。






 ⇒レース・ローズ◇10 に続く


9月にならなかった。このままだと確実に30話コースだ……。



⇒The Lace Rose◇9・拍手

Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止



◇有限実践組・主要リンク◇


有限実践組・総目次案内   

有限実践組アメンバー申請要項