レース・ローズ ◇16 | 有限実践組-skipbeat-

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 割と間を空けてしまいましたが忘れてはいませんよ。


 だいぶ進んだ気がする現代パラレル蓮キョ、お届けいたします。

 お楽しみ頂けたら幸いです♡


 前話こちらです↓

 レース・ローズ【1 10 11 12 131415】  


■ レース・ローズ ◇16 ■





 結果として俺たちは、椹さんの一人娘が使っていたその席を譲って貰って二人で一緒にお昼を摂った。


 どうやら娘椹は昼食後、本当に再び京子ファクトリーに来る気でいたようで、俺たちに向かっていくらお昼だからってスペースを空にするなんて…と苦言を呈したので全てが売り切れたからこその行動だと告げると思いの外ガックリと肩を落とした。



「 そうなんだ。売り切れちゃったんだ。……そうなるって分かっていたら悠長にお昼なんて食べなかったのに… 」


「 さっ…さわちゃん、ごめんね? 」


「 それ、京子さんが謝ることじゃないでしょ。それにいい。12月に出る新作をまたゲットするから!…あれ?12月って参加するよね? 」


「 うん。12月は土日、二日とも受かっているからどっちにも参加する 」


「 分かった!!じゃあ二人とも、お昼を注文してきなよ。それまでここで待っていてあげるから 」


「 そう?ありがとう、悪いね。最上さん、行こう 」


「 はい 」



 お礼を言ってから一時的に席を離れ、最上さんと二人でお昼を求めて少し歩いた。

 少し、というのは彼女がすぐ足を止めてしまったからだ。


 視線を固定したままジッとしてしまったので何を凝視しているのかと目線を辿った。するとそこには卵焼きを乗せたハンバーグセットのメニュー看板が立っていた。



「 ……ぷっ…最上さん。ひょっとして君の今日のお昼はこれに決まり? 」


「 あ…う…はい、そうしようかな、と… 」


「 じゃ、俺も同じのでいいかな 」


「 え?いえ、私に合わせなくてもいいんですよ、敦賀さん。どうぞお好きなものを選んで来て下さい! 」


「 うーん。そうは言ってもね。ここのフードコート、まだこんなに混んでいるし、彼女も席で待ってくれているだろ。そこで俺が君と同じメニューを選ぶ。それなら同じタイミングで提供される。…ね。その方がいいだろう? 」


「 それもそうかも。じゃ、2つで注文しちゃいましょうか。いいですか? 」


「 うん、いいよ。そうしよう 」


「 敦賀さん、ご飯大盛り? 」


「 ……普通で 」



 最上さんと一緒にそれぞれのトレーを持って席に戻った。

 当然のことながらさわちゃんはすっかり食べ終わっていて、だから俺たちが席に着いたと同時に彼女は腰を上げた。



「 じゃあ京子さん。12月ね! 」


「 うん。ありがとう、さわちゃん。楽しみに待ってるね 」



 笑顔を見せてはいたものの、どこか意気消沈した様子で席を離れてゆくさわちゃんのカバンから、最上さんから貰ったというミニチュアバッグ・キーホルダーが顔を出していた。


 それを見つけた俺はそうだ…と思った。

 このタイミングを逃したらもう二度と言い出せないに違いない。



「 ……最上さん 」


「 はい。あ、お醤油ですか?どうぞ 」


「 違うよ。あれ、彼女が持っているキーホルダーってトローニーの仕事を紹介してくれたお礼に…って、君が渡した物だって言っていただろ 」


「 はい、そうですよ。非売品の…ですよね? 」


「 あれって……なんていうバッグ? 」


「 へ?あれは、一般的にはテリーヌ・バッグって言いますけど 」


「 テリーヌ…って、食べ物の? 」


「 はい、そうです。底側が平らな半円形のバッグのことをそう呼ぶんですよ。フランス料理のテリーヌの形状から付けられた名前なんですけど…。それが? 」


「 じゃあね… 」


「 はい 」


「 これは?なんていうバッグ? 」



 そう言ってポケットに忍ばせていたミニチュアバッグ・キーホルダーを最上さんの前に差し出した。

 俺の手の平でコロン…と向きを変えたバッグを見て、最上さんは大きく目と口を開いた。



「 ……っ…え?…どうしてこれ、敦賀さんが…? 」


「 君がこのキーホルダーを椹さんの娘さんに渡そうとしたのって、トローニーに納品に行った日じゃないかな 」


「 そうです。納品の品物と一緒に確かに持って行ったはずなのに見当たらなくて…。交差点で誰かとぶつかった時に落としてしまったのかもって、気づいた時点ですぐ戻ったんですけど見つからなくて… 」


「 そのぶつかった相手って俺だよ 」


「 ええっ?冗談でしょう?!それ、本当に?? 」


「 ほんと、いま思えば冗談みたいだけどね。その日、交差点で最上さんとぶつかったのは俺なんだ。…と言ってもそのときの人物が君であることは後で気づいたんだけどね。

 あのとき俺は椹さんと専属契約を結んだ直後で、そのあと最上さんがトローニーに納品に来たって話を後で椹さんから聞いたんだ 」



 嘘みたい…と言いながら、最上さんが俺の手からキーホルダーを拾い上げる。

 あの日、拾った時と同じ、ビニール袋に梱包されたままのミニチュアバッグが制作者の手に戻った。



「 ごめん。あの日、たくさんの荷物を持った人とぶつかって、でも君はあっという間にどこかにいなくなってしまって…。君と知り合ってからこのキーホルダーの落とし主が君だって気づいたんだけど、タイミングがなかなか掴めなくてずっと言い出せなかったんだ。ごめん 」


「 ……そんなこと。むしろ嬉しいです。交差点で落としちゃったなら間違いなく車に踏まれてぺっちゃんこだって覚悟して交差点に戻ったのに何処にもなくて…。だからせめて優しい人が拾ってくれていたら…って祈ったぐらいだったんです。だから、信じられない。用意したあのときと同じ状態でいま自分の目の前にあるなんて 」



 そう言って優しくはにかんだあと、これはアコーディオンバッグって言うんですよ、と最上さんが教えてくれた。



「 アコーディオン?ああ、この横のシワのこと? 」


「 シワじゃありません!これは日本語で蛇腹って言うんです 」


「 あ、そうなんだ。蛇腹… 」


「 そうです。底や脇の部分が蛇腹になっていて、厚さを調整できるバッグのことをそう呼ぶんです。さわちゃんから、まだ私が作ったことのないバッグがいいなーって言われて、それで試しに作ってみた物です 」


「 試し… 」


「 あっ!試しって言っても本気で作りましたよ!試作品としてではなく本気で作った物です。ミニチュアですけど! 」


「 ……うん、分かる。これを拾ったとき俺もそう思った。こんなに小さいのに精巧すぎるだろうって 」


「 え?……えへへ。本当ですか?ちょっと嬉しい。蛇腹のバッグは布では作れない形の物ですから、だからミニチュアで作ってみたんですよ。革製品じゃないと活かせない特徴ですからね 」


「 そうなんだ 」



 やっぱり、彼女に返すのが筋だよな、と思った。


 ちょっと…。いや、本音を言えばかなり欲しいと思っていたけど…。



「 ごめんね、今さら。拾ったとき、きっと落とし主なんて見つからないだろうから俺が貰っちゃおうかな、とか実は思っていたんだ。でも良かった、君に返せて 」


「 ……敦賀さん。これ、使いたいと思って下さったんですか? 」


「 あ、うん。けど、思っただけだよ?返せるなら返したいとも思っていたし。だから俺、あの周辺に手芸品を取り扱っている店舗があるんじゃないかって調べたりもしたんだ!…見つけられなかったけど 」



 言い訳っぽいセリフを口にした俺を見て、最上さんはプッ…と口元を緩めた。軽く握られた右手が唇のふもとに運ばれて、その仕草がなんとなく可愛いと思った。



「 じゃあぜひ使って下さい 」


「 …本当に?でもこれ、もともとは椹さんの娘さんに渡そうと思って作った物だろう? 」


「 そうですね。でもさわちゃんにはもう代わりのものをプレゼントしちゃいましたから 」


「 え…じゃあ、本当に俺、これ貰っていい?あ、お金!俺、金払うよ!!こんな精巧なミニチュアバッグ、作るのにずいぶん時間がかかっただろうし 」


「 ふふっ。そういう評価を頂けて素直に嬉しいです。でもお金はいいですよ。確かに時間はすごくかかってしまいましたけど、自分で作ってみたいと思って製作した物ですから。……でも、後悔しませんか?敦賀さん 」


「 後悔?…って、なんの? 」


「 実はこのバッグ、双子なんです 」


「 は? 」


「 さっきも言いましたけど、さわちゃんが欲しいって言ったのは今まで私が作ったことのないバッグだったんです。だからそれ、京子ファクトリーとしては初の双子なんですよ 」


「 ……あっ!?そう言えば。京子ファクトリーは、色違いはあるけどそっくり同じ物は作らないんだっけ? 」


「 はい。それは自分で決めたことでした。だからそれを無くしちゃったとき、自分が決めたルールを破っちゃったからかも知れないって反省したんです。…幸いなことにさわちゃんには双子を作ることは伝えていなかったから、だから今さわちゃんが持っているバッグは違う形のものなんです 」


「 あー、そう…そうだったんだ。ちなみにその双子の片方はどうしたの? 」


「 私が使っています。見ますか?家の鍵に付けているんですけど… 」



 そう言って最上さんは朝からずっと肌身離さず持っていたショルダーバッグのポケットから家の鍵を取り出した。

 鍵には確かに俺の手の内にあるのとそっくり同じミニチュアバッグ・キーホルダーが付いていた。



「 本当に双子だ。へぇ…。じゃあ俺も家の鍵を付けようかな 」


「 え? 」


「 本当にこれ、貰える?俺も自分ちの鍵を付けてもいい? 」


「 は…あの、どうぞ。そんなのでよろしければ… 」


「 嬉しいな。今まで他のキーと一緒にしていたから… 」



 早速キーを取り出した。今まで車のキー、倉庫の鍵、家の鍵を一緒くたにまとめていたけど、そこから家の鍵だけを取り外し、ビニール梱包を破ったばかりのキーホルダーを取り付けた。

 それを見せびらかすように最上さんの前でぶら下げる。



「 いいね、これ。世界にこれ一組しかないなんて、何だか自分が特別になれた気分だ。正直すごく嬉しいかも 」


「 ……っ…敦賀さん、笑顔がまぶしっ… 」


「 ね、最上さん。二人そろって家の鍵を付けるなんて、いかにも彼氏彼女っぽくない? 」


「 あー確かに。私、今度、教室で生徒さんに恋バナを振られたらこのネタをしゃべっちゃうかもです 」


「 いいよ、いいよ!付けているのは本当のことだし、全然構わないよ 」



 なんとなく、浮かれていた。

 お互いの鍵がついたキーホルダーを真ん中に、俺は最上さんとの会話を楽しんでいた。



 けれど不意に外野から俺の名を呼ぶ女性の声が聞こえて、その瞬間、俺は思いっきり眉間にシワを寄せた。






 ⇒レース・ローズ◇17 に続く


やっと中盤にさしかかってきました♡ぶひ(〃∇〃)



⇒The Lace Rose◇16・拍手

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