お話がうまくまとまらない時には萌え妄想で自分を奮い立たせる一葉。
お久しぶりの成立後蓮キョでどうぞお付き合いください。
こんな二人に会えるのは何年後~?
■ 想像してみて ■
立ち直れそうにない。
そんな事態に遭遇したとき、海より深く落ち込んでしまいそうになるけれど、それでは何も解決しない。
だからそういう時、私はそれよりもっと最悪なことを想像するようになった。
「 ……っ…コフッ、こほっ…… 」
昨日の夜、コーンが軽い咳をしていた。
マネージャーの社さんが言うには、新しい仕事の打ち合わせをしたあと、こうなってしまったという。
話を聞く限りでは、どうやら打ち合わせに来たうちの一人が風邪気味だったらしく、それが感染ったのではないか、と推察できた。
朝、コーンはちゃんと起きて来たけれど、ぼーっとした顔でソファに座ったまま動かない。
一晩寝れば治るとコーンは言っていたけど、今はまるで鳴き方を練習しているキツネの子のようにコンコン咳をしながらずーっと肩を揺らしていた。
「 ……っ!!ゴホッ、ごほっ…… 」
そんなコーンを見て、マネージャーの社さんは顔を横に振りながら眉をひそめた。
「 ……休ませる以外にないな。コイツの風邪を誰かにうつしたら、それこそひんしゅくものだし 」
私もそう思った。
どう見たってコーンの風邪は昨夜より悪化している。
でもコーンの気持ちを考えたらとてもじゃないけど同意できなかった。
なぜなら今日、新しいドラマの顔合わせのあとに台本読みまであるとかで、絶対に休めないのだとコーンから聞いていたのだ。
だから私はもう少しだけ待ってあげて欲しいと社さんにお願いをした。
「 分かります!でも社さん、もうちょっとだけ待ってあげてください 」
「 いや、でもキョーコちゃん 」
「 コーン、熱はあんまりないんです。咳が酷いだけ。だから薬を飲んで症状が落ち着けば大丈夫だと思うんです! 」
「 大丈夫?いや、でもさ、今日は顔合わせだけじゃなくて台本読みもあるんだ。だから極力喉を使わない方がいいと俺は思う 」
「 違う!!コーンはどんな時だって仕事をしたいと思っています。ずっと前、ぶっ倒れるまで自分は演じ続けるって私に言ったことがあるんです。起きてきたってことは、仕事をする気があるってことです。休むのは倒れてからすればいい。その時は私が看病します!だから… 」
「 でも、そうは言ってもさ…… 」
社さんはそう言って深いため息をつき、片手を顎に運んで口をつぐんだ。
私は慌ててその場を離れ、コーンのために風邪薬とお水を運んできた。
「 コーン!!コーン? 」
「 ……ん? 」
「 大丈夫?あのね、薬を飲む?そうしたら少しは良くなるかも 」
「 …………飲む…… 」
「 うん、じゃあこのお薬を飲もう!はい、口を開けて 」
「 ん 」
「 はい、お水を飲んで 」
「 んんんん~~~~~~っ 」
ぱっくりと開かれた口の中に錠剤を放り込み、口元にコップの縁を当ててそっとお水を流し込む。
それすら大仕事だったみたいでコーンはまた深くソファに沈み込み、再びぼーっとし出した。
「 大丈夫。直ぐ良くなるよ。ならなかったらその時は休もうね? 」
返事はなかったけれど、このとき私は思っていた。
もしかしたらこの為だったのではないか、と。
実は私、先日、仕事で大きな失敗をしてしまった。
確実に獲れると思っていたオーディションに落ちてしまったのだ。
泥中の蓮でのオーディションのとき、モー子さんもこんな気持ちだったのかなって想像して辛くなった。
なによりたくさんの人に応援してもらっていたのに、期待に応えることが出来なかった自分を情けなく思うと同時にとても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
だから行く先々でごめんなさい、ごめんなさい、と謝罪をして歩いた。
そんな私を見てコーンと社さんはこう言ってくれた。
「 キョーコちゃん。謝罪なんて要らないんだよ。応援した人はキョーコちゃんを応援したくてそうしただけなんだから 」
「 でも社さん…… 」
「 うん、気持ちは判るよ。応援してもらったのにってすごく落ち込んじゃう気持ちもね。でもそれはソレとして切り替えたほうがいい。なるべく早く 」
「 ……はい 」
「 大丈夫。簡単にできるよ、キョーコなら 」
「 …簡単って…… 」
「 簡単だよ。秘訣を教えてあげる。俺はね、それよりもっと最悪な事態を想像するようにしている 」
「 へ? 」
「 想像するだけ想像して、ふと我に返ってみるといい。そうしたら気付くよ 」
いま自分が悩んでいることは
決して立ち直れないほどじゃないな…って。
「 ……っ… 」
言われて私が想像したことは、コーンに捨てられちゃう未来。それを想像しただけで悲しくなって、立ち直れないって思った。
そうしてふと、コーンを見上げた。
大きな手で頭をナデナデされて、まばゆい笑顔で見つめられたらすごく気持ちが軽くなった。
確かにそうかもって思う。
起こってしまったことはとても残念で落ち込み要素満載の出来事だったけれど、それは決して立ち直れないレベルじゃなかった。今度また頑張ればいいんだ。
「 ……キョーコ 」
「 うん?なに、何か欲しい? 」
コーンに話しかけられて我に返った。
いつの間にかコーンの咳は止まっていて、顔色も穏やかで何より視線が定まっている。
風邪薬が効いたのだと思った。
「 なんか、不思議とだいぶ楽になってきた 」
「 良かった。それ、さっき薬を飲んだからだと思うよ? 」
「 クスリ?…飲んだっけ、俺? 」
「 ぷっ、飲んだよ。さっき自分で飲んだでしょ? 」
「 ……っていうか、正確にはキョーコちゃんが飲ませていたけど 」
「 キョーコが?!うそ、俺その記憶が無い…… 」
「 ええっ?!ちょっと大丈夫!? 」
「 ん、大丈夫は大丈夫。けど…… 」
「 けど? 」
「 俺、もしかしたらキョーコに殺されても気づかないかもしれない。一服盛られたやつでも、ハイこれいつもの薬だよ、とか言われてキョーコから出されたら絶対飲んじゃう自信がある!!! 」
「 盛りませんっ!!! 」
鋭くツッコミを入れた直後に三人で吹き出して笑った。
そしてふと思った。
もしかしたら、私がオーディションに落ちたのって、今日ここでコーンに薬を飲ませる為だったのかも知れないと。
あのオーディションに受かっていたらそのまま地方ロケに行かなければならなかった。そうなったらいま私はこの場に居られなかったはずなのだ。
だから良かったと素直に思えた。
私はきっとオーディションに落ちて良かったのだ。応援してくれていた人には本当に申し訳ないと思うけれど。
「 蓮、行けそうか?今日じゃなくても平気な仕事は極力後ろ倒しにしてみようと思うけど 」
「 大丈夫です。行けます 」
「 ……コーン、念のためにお薬持ってく? 」
「 持ってく。ありがとう、キョーコ 」
「 どういたしまして 」
「 じゃ、着替えて来い。キョーコちゃんと一緒にすぐ仕事に出掛けるぞ!! 」
「 はい 」
そう言って力強く腰を上げたコーンを見て良かった、と頬を緩めた。
あのね
これは誰にでも言えると思う。
もし今日、あなたが立ち直れそうにないほど落ち込むことに出会ったら、どうかそれよりもっと最悪な事態を想像してみて欲しい。
そしたらきっと気付ける。
現実は自分の気持ち次第で優しく好転するということに。
E N D
イチャイチャが少なかった…。
上手くいかない事って絶対ありますよね。
気持ちの切り替えすら難しいレベルの時もあるけれど、それでも落ち込んだら沈んじゃうだけだから、一葉は空を見上げます。
⇒想像してみて・拍手
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