【大解剖】ボーイング767-300/-300ER
気づいたら前の大解剖シリーズ公開から2年が経ってしまいました。体感は1年ないくらいかなーと思っていたのですが、とんでもないですね。何だかおよそパーツの説明はどの機種でも同じになってしまうのが気になって書いては放置を繰り返していましたが、どうしようもありませんね。今回はまたもや中型機として、設計がいちいち興味深い767を扱います。独特な設計は興味深いのに、その経緯は論争になっている..というところも767らしい(?)ところだなと感じる次第です。本当はA320の下書きもあるものの、いまいちまだ理解が追いついていない部分もあるのでこれはまた近いうちにやろうかなと思っています。今回の767はまだあまり搭乗経験がないことと、システム類の勉強がまだまだな部分もありますが、何とか挑戦してみた次第です。さて、いつもの通り開発経緯や諸元はwikiの方が詳しいと思います。今回はあくまで767-300/-300ERが主体ですが、共通部品や必要な箇所については-200型の写真も含める時があります。小牧や岩国で間近にKC-767が撮れてしまったので、そっちの方が綺麗に写っているケースが多いんですね。[data-toc]{background:#ffffffd9;border:1px solid var(--color-border-medium-emphasis,#08121a4d);border-radius:8px;display:flex;flex-direction:column;gap:8px;padding:12px 16px}[data-toc] h2,[data-toc] ol,[data-toc] p{margin:0}[data-toc] .toc-header{align-items:center;display:flex;font-weight:700;gap:12px}:is([data-toc] .toc-header) h2{color:var(--color-text-medium-emphasis,#08121abd);font-size:.875em}[data-toc] 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※...767-200ERベースの空中給油機(伊向け)のみ2ドア767では日本企業が設計に参画したという経緯もあるほか、また時代的な都合もあって3%に留まるとはいえCFRPが使用された点も画期的です。当初は米国内の乗員側の意向もあり3メンクルー(航空機関士付)の設計で進む予定でしたが、ライバルのエアバスが2メンクルー機を開発したことを受け(試作機は3メン仕様という状態から)2メンクルー運航の設計に切り替えられました。今では当たり前の2人運航の先駆けを作ったモデルといえます。2.胴体胴体は幅5.03mが設けられていますが、外寸なのでキャビン自体の幅は5mを僅かに切っています。Yクラスであれば座席は2-3-2配置になることが多く、真ん中の一列を除いて窓側か通路側の2択になる点は乗客的には好評の模様です。ただ床下貨物の観点から見ると一般的な規格の貨物コンテナLD-3が並列搭載できない(LD-2は並列搭載可能)などの困った点もあります。基本的に777や757と似た設計になっているので、正面から見ると特に777と近い印象はあります。胴体は主に5つのセクションから構成されています。また構造部として機体前方から後方へ走る構造材(ストリンガー)は左右39本の全周78本が使われています。全幅先端には気象レーダーが収められ、これを覆うフェアリングは777と共通のものが用いられています。ウェザーレーダーは上下左右に自由に動き、周辺の雲を観測しています。コクピットウインドウは左右各3枚で、両側中央の窓は内側に引き込む形で開けることができ、乗員の脱出・正面風防清掃の際に使われます。続いてドアを観察します。ドアの配置のことを(諸派ありますが)「ドアコンフィギュレーション」といい、略してドアコンフィグと表記します。一般的なドアコンフィグでは左右対称で最前方、最後方にそれぞれType-Iを、また主翼上非常口(OWE)としてType-IIIが2枚ずつの計8枚が配置されるのが一般的な形式です。一部の機体では主翼前方にType-Iドアを増設し、代わりにOWEを1つにするか、OWEを完全に廃して主翼後方にType-IIを1つおくなどのドアコンフィグを設定することもできました。これらのコンフィグはひとまとめに「ユーロピアン仕様」と称されることが多く、その名の通り欧州のエアラインがこのドアコンフィグを採用しているケースが目立ちます。ドアは真ん中に小さい丸窓があるのみで、ハンドルはドア横にあります。767のドアで特徴的なことは、ドアを上方に収納するスタイルがとられたことです。横のハンドルを持ち上げロックを外し、その後ドア自体を上方へ持ち上げます。独特な設計になった理由は不明ですが、一説としてこの箇所を元マクドネル・ダグラスの技師らが設計を担当した影響(当時のDC-10に使われた技術を流用)とも言われています。この設計では開閉の際、ドアが移動する空間を確保する必要がない点は画期的だと言えます。余談ですが、貨物型では緊急脱出時のスライドが装備されていないため、ロープをつたって脱出します。Type-IIIはOWEにのみ使われ、上方に開きます。ここを開けると後方でスライドシュートが連動して展開するので、主翼上を歩き(そのマーキングが施されている)、その後シュートを伝って脱出します。シュートをロープで固定するためのフックも主翼に取り付けられています。主翼に非常口がある機体ならではの設計ですね。カーゴドアはFWDとAFTの2箇所が設けられています。FWDには2種類があり、-300と初期の-300ERに装備された標準型として1.92m×1.70m(開口部寸法)が装備されていましたが、のちに大型化した3.56m×1.70mのカーゴドアが-300ERの標準となりました。それぞれ前者は-300ERの、後者は-300のオプションとして選択できるようになりました。一般的にこのドアサイズによって-300と-300ERは識別できると言われていますが、どちらのオプションも適用事例があるため、両者を外見から識別する際の指標として頼り切るには若干弱く、個人的にはあまりお勧めしません。AFTのカーゴドアはFWDの標準型と同じものが使われているほか、ポートサイド側の後方にはバルクドアが設けられています。またL2ドア後方にはキャビンの与圧調整に使われるアウトフローバルブがあります。最後方にはAPU関連の装置が各種収められ、APUエアインレットのほかテイルコーンには排気口も装備されています。下面を覗いてみると翼胴には主脚の格納スペースに加えて空調系統が置かれていて、その冷却空気取り入れ口が両側に設けられています。空調系のシステムも737などと同じでエンジンの高圧空気を元に機内空調及び防氷装置を回しています。詳しい与圧の仕組みは(本来737向けの記事ですがおよそ近しいので)下のリンクに譲ります。『【大解剖】737-800』 補足別巻 与圧・空調(AIR COND)システム 〜与圧ってなんだ〜』2年ほど前に(あれからそんなに経つのかい)【大解剖】737-800という記事を出し、定期的にアップデートしてきました。しかしついに字数制限を超え大規模なアッ…ameblo.jp尾部にはテイルストライクの際に構造を保護するテイルスキッドを装備しています。767ではその特性上おおきく迎角を取った状態で接地することもあり万が一に備えこの装備は必須です。3.主翼・補助翼続いて操縦系統を中心に観察してみましょう。操縦系統はフラコンと略したり、FCと書く場合もあります。767ではすべてのフラコンは油圧によって制御されています。操縦系統を概観した図を添えてみます。また777でフライバイワイヤ(FBW)が初装備されたことは知られていますが、反転すれば767にはFBWは装備されていないということです。767では各種動翼の作動にあたってPDU(Power Drive Unit)が特徴的な油圧サウンドを奏でることで知られており、油圧感が得やすい飛行機です。主翼は後退翼を採用していて前縁後縁平均して約31度の後退角が取られています。また地面に対し6度の上反角が付けられています。中心に構造材があり、その前後に動翼が設けられている点も珍しくない構造で、構造部は色の異なるグレーで塗り、また黒線でそれを囲むことによって整備士が歩いても十分な強度があることを示すようになっています。形としては一般的ですが極めて「しなり」が強く、これによって対負荷力をあげています。今や787のしなりが印象的すぎて霞みつつありますが…主翼後縁にはインボードフラップ、アウトボードフラップがインボードエルロンを挟み最も外側にアウトボードエルロンが設けられている構造です。インボードフラップはMAIN FLAPとAFT FLAPの2つからなるダブルスロテッドフラップ、アウトボードフラップはシングルスロテッドフラップを採用しています。フラップの動作機構はフェアリングによって覆われています。前縁スラットはインボードに1枚、アウトボードに5枚があり、前方にせり出す形で動作します。フラップは0を除いて1,5,15,20,25,30の6段階が設定され、前縁スラットは格納状態を除いた12/26(INBD/OUTBD)、30.3/35(INBD/OUTBD)の2段階があります。前縁スラットはフラップが25以上に設定された時30.3/35(INBD/OUTBD)に移行します。このほか短距離離着陸ができるようフラップに改造を施したMFというモデルもありましたが現在は全機が退役しています。万が一不具合でフラップの動作に支障がある場合は電動展開に切り替えることができます。エルロンはインボードとアウトボードの2つが装備され、インボードエルロンは両フラップの間に、アウトボードエルロンは後縁の最も外側に配置されています。インボードエルロンは俗にフラッペロンと呼ばれており筆者もまとめてそう呼んでしまいがちですが、767のインボードエルロンがフラッペロンの定義を満足するものなのかはわかりません。AP動作など諸要件にもよりますが、インボードエルロンの動作角は上下21.5度までとなっており、特に強風時の着陸前は大きく動く様子が見て取れます。スポイラーは片側6枚ずつの計12枚が装備されています。内訳はインボードエルロンが2枚、アウトボードが4枚で、機能としてはエルロンとともにロール操作を補助、またはスピードブレーキがあります。それぞれ信号は別で分けられているのでロール補助の時は操縦桿を傾けるだけでエルロンと連動して動作しますが、スピードブレーキとして使用する際は両方を立てる必要があるので操縦室内のスポイラーレバーを操作する必要があります。スポイラーのうちアウトボードの最も胴体側のスポイラーはスピードブレーキとしての操作系統が切り離されているため減速フェーズでは使用されません。上写真を見てもアウトボードのいちばん手前のスポイラーが動作していないのが見えます。減速でスポラーを立てると(大型機はだいたいそうですが)独特の振動を伴います。着陸時はスポイラーレバーをアームドに設定することによって自動的にスポイラーを展開(Deploy)させることができます。個人的な印象では、バラバラに立ち上がる777や787と違い737のように極めてスムーズにDeployするのが特徴的と感じます。この場合はエンジンを絞っていて、かつ機体が地上にあることが条件で、一旦DEPLOYしても片方の条件が満たされなくなった時はG/Aと判断され自動的にスポイラーは格納されます。逆にRTOの場合も自動的にスポイラーが動作します。余談ですが、インボードフラップのFWD側にはpop-up doorという小さなフラップがあり、ギアアップ・ダウン時にはギアの機構の動作スペース確保のため一瞬ここが開きます。大体音でわかるとはいえ、視覚的にギアダウンを確認できるのも767の特色です。フラコンの括りからは外れてしまいますが、-300ERではアウトボードエルロンの手前にフューエルダンプ(燃料投棄口)があります。製造初期の767がほぼ姿を消した今ではここが唯一と言っていい-300と-300ERの識別点と言えます。というのは初期の-300ERはまたしてもこのフューエルダンプを装備していなかったため、ここもまた-300ERの識別点として100%の信頼をおくことができません。2025年現在ではほぼ信用していいのですが、古い写真を振り返る上では厄介ですね。さらに余談ですがこのフューエルダンプは後付け(!?)することもできます。日本で言うと過去の全機調査でJA8286が当初はダンプなしでデリバリーされたのち追加装備したことがわかっています。つまり理屈上は非ERでも装着可能なので、もしかするとそんな機体もいるのかもしれませんね。また2010年代に入ってウイングレットの装備が可能になり、多くの機体で取り付けが進んでいます。非ERにも装着可能かどうかはわかりませんが、いれば見てみたいところです。WLを有する機体はERと見て良いのですが、WLのないERもあるのでやはり決定的な識別点にはなりません。垂直尾翼(Vertical Stabilizer=V-Stb/Vスタ)は40度の取り付け角が付けられています。サイズがそれなりにあるのでHFやVORなどのアンテナ類はすべて尾翼内に収められ、装備品はラダーぐらいというシンプルな構造になっています。画質があまり良くないですが、ラダーの面積は案外大きく、取り外すと中の構造を見ることができます。ラダーは操縦席のラダーペダルを踏み込むこむと3本のヒンジで油圧によって動作します。ラダー自体はQ400や787のようにAFTラダーのないシンプルな1枚構造です。ラダーの最大動作角は26.5°ですが、A/Pが入っている場合は23°までの制限があります。ヨーダンパーはもちろん装備されています。水平尾翼(Horizontal Stabilizer=H-Stb/ホリスタ)は全遊動式の水平安定板と後縁にある可動式エレベータの2つから構成され、尾部両側に33°の後退角と7°の上半角を持って取り付けられています。操縦桿の操作によって動作するエレベータはインボード・アウトボードと2分割されているのが特徴的な設計です。翻ってホリスタ本体はトリムを取るために動作し、標準角度に対して上方(機首下げトリム)2°、下方(機首上げトリム)最大14.2°まで許容されています。動作機構本体を覆うためホリスタの付け根にはフェアリングが装備され、全日空の場合はここにかかるモヒカンブルーと胴体のモヒカンブルーの角度の際から動作状況を知ることができます。4.ギア767を語る上で外せないのがギアの項目。設計上非常に興味深いところが多いのですが、あくまでそれらの発生要因は公表されていないため「〜だと思われる」の中から選ぶしかないのが難しいところ。正確なところは設計者に聞かなければならないので、ここで紹介するのは筆者が一番納得行ったものをとっているとご理解ください。ギアの配置自体は前脚が1脚2輪、主脚が2脚各4輪の極めてシンプルなものです。ノーズギアは正式(?)にはノーズランディングギアといい、略してNLGと言います。NLGは最大65°まで転回させることができ、格納時は上方に振り上げ格納されます。ギアドアはFWD/AFTの2組があり、FWDはギアアップ・ダウンでギアが動いている時にのみ開閉します。ステアリングのリンケージの関係でギアダウン後もFWD側のギアドアは僅かに開いたままになります。同様の理由で空自のC-2についても地上ではFWDのギアドアが僅かに開いた状態になります。AFTギアドアはギアダウン中は常に展開しています。メインギアは同じくメインランディングギアを略しMLGとよく表記されます。MLGは一つのボギーに対し4輪が取り付けられていて、在空中は前方に17°傾く(Forwar tilt)ようになっています。油圧によるディスク式ブレーキも備え、また接地後速やかに制動に移れるようオートブレーキも装備されています。オートブレーキは速度85kt以上、スラストがアイドルまで絞られてかつMLGがタッチダウンしていることが要件です。この姿勢からフレアをかけたとして、ちょうど主脚両輪が同時に接地するとなると結構な迎角です。上の写真でもわかるとおり基本的に主脚の前輪が先に接地する(してしまう?)のが基本です。このためWOWセンサーも前輪側に接地されています。こうした設計がとられた理由についてはさまざまな議論がありますが、接地後ノーズが急激に落ちやすい空力特性(*)に設計面から対処する手段としてこの前傾設計がとられた(重心移動の面で改善が見えたらしい)と言われており、筆者はこちらを支持する立場です。(*…767のランディングで起こったインシデントにかかる報告書各種でこの設計を持ってしてなお「ノーズがドンと落ちる傾向がある」「Nose wheelの急激な接地になり易い」「(接地後)操縦桿を中立位置以上に前方に押す操作は不要」といった記述があることから、この特性論には説得力がある)ただし注釈に引いたように風の状態や操作によってはノーズが強く降りることもあり、またフライバイワイヤではないために「パワーを絞った瞬間、エンジンの取付位置の関係から機首が下がろうとする力が働きますが、フライバイワイヤー機ではその力を打ち消す力が働き機首は下がりません…767はフライバイワイヤー機ではないので、まずパワーを絞った瞬間しっかりと…操縦桿を支え続け接地します。この支える力が大きく、重く、またコントロールするさじ加減が重さゆえに難しい..」とも語られています( https://www.ana.co.jp/group/767_40th/about_20231020_3.html )ギアはさまざまなアッセンブリによって支えられていて、後方からはその仕組みを見ることができます。主脚は両側に引き上げられ胴体内に収める方式で格納します。格納エリアにはギアドアがついていて、ギアアップ、ダウンのたびに扉を開閉します。5.エンジンエンジンは主翼に1基ずつ、パイロンを介して懸吊されています。767では全型式でGE,PW,RRの3社選択制が取られました。-300では3社とも採用実績があり、それぞれに細かな派生型があります。日本で一般的なのはCF6で、747-400と共通ということもありCF6-80C2シリーズが多数運用されています。日航はクラシックジャンボがJT-9を装備していたため初期期ではJT9D-7R4Dというモデルを装備していました。このエンジンにはFADECがないなどの相違点があり、2016年に全機淘汰されCF6への統一が完了しました。FADECはスラストレバーの操作を機械的に電気信号に変換しエンジンとを繋ぐ装置です。従来はスラストレバーをどれくらい押せばどれくらいの出力が出るかは全て機械で物理的につながっていたのですが、極めて複雑かつ整備の手間(クセが出るので同じレバーセット位置=左右同じ出力とは限らない)がかかるので技術の進歩で電子的に制御できるようになったのです。どのモデルでも共通でリバーサーにはカスケード方式を採用、リバースするとトランスレーティングカウル(リバースカウル)が後方へスライドします。機体重量に対する推力に余裕があるため、他機種と比べて非常に軽々とエアボーンする様子は有名ですね。6.アンテナ・外装品アンテナは一般的なものが装備されています。ただし長期の生産にわたったためVHFではレイアウト変更が行われました。初期では胴体前方(この辺りがセクション43)の上下に取り付けられていました。しかし途中から後方上部(セクション46上部)に移り、胴体下部に2本あったVHFは後方に1本を残すのみとなりました。ギアドア付近に見える黒い四角はカメラで、タキシングの際に機内モニターに外が映るあれですね。コクピットウインドウ付近の小さい煙突のようなものはTAT(Total Air Temparature)プローブで、上空でこの温度計が計測した気温から加速・上昇に伴う温度変化を差し引いた「外気温」を計測するための装置です。その下にカギカッコで囲われたところにあるのは上下が速度を計測するピトー管、真ん中が迎角を計測するAOAセンサーです。側面に目を移すと何やら丸いパーツが目立ちますが、これはスタティックポートと呼ばれる部品で、周辺の気圧などから高度を測定(気圧高度)、表示するためのものです。逆に地面に対して電波を発射し、その反射電波の受信所要時間から高度を割り出すための装置をRA(Radio Alitimetar=電波高度計)といい、ここで収集された高度は着陸前のラジオコールアウト(50..40..30..のあれ)などに使用されます。航法装置としてADFも残されているのは時代ですね。また機体によってはSATCOMを搭載していますが、タイル式で胴体に貼られ(?)ていたりフェアリングが設けられている場合もあります。また胴体の設計が777に近いと書きましたが、アンテナが767ではノーズに近いところにあるのが特徴的です。このほかELTは垂直尾翼付け根にありますが、製造時からあるか、レトロフィットかによって位置は異なります。7.灯火類767で特記すべきものはロゴライトで、なんと-300には標準装備されていませんでした。従って767でロゴライトがついたのは日本ではERから、ということになります。通りで夢ジェットやモヒカンジェットの尾翼はずっと暗かったわけですね。翼端のストロボは、ウイングレット装着機ではウイングレット頂部に移設されています。ランディングライト・ターンオフライトは主翼根元に集中しています。Taxiライトは前脚にあり、これらは基本的に電球色で発光します。アンチコリジョンライトはフラッシュタイプですが、最新の767(FedExなど)ではLEDが使用されています。しかし上方のみで下方は従来のフラッシュタイプであるなど不思議な点も多くあります。ちなみに灯火は発光部分とそれを覆うケースからなる場合がほとんどですが、発光部分を「ライトアッセンブリ(LIGHT ASSY)」、それを覆う部品を「レンズアッセンブリ(LENS ASSY)」というのだそうです。もし覆いの形状が変わったら「レンズの形状が変わった」と言えばいいんですね。8.機内・機内装備品かつてはスクリーンや液晶モニタが装備されていたものの、さすがに現在は時代に見合ったものに変更されつつあります。冒頭の項目と少し重なりますが、セミワイドボディという特殊な特性で2-3-2の配列が基本です。PSU(Passenger Service Unit)は禁煙・ベルトサインと空調吹出口、読書灯・読書灯スイッチ、コールボタン・コールボタンランプからなります。コールボタンを押すと横のランプが呼び出し音と共に光り、客室乗務員がその席へ向かう仕組みになっています。ちなみに全日空の76Pではコールボタンが肘掛けにあるため無意識に押してしまいがちです。満席便だとドアクローズからドアオープンまで鳴り止まない(特に揺れる地上滑走中)こともあるので今度乗る人は気をつけてくださいね。オーバーヘッドビンは古い機材では両サイドしかないという恐ろしい(?)仕様でしたが現在は十分な容量のものが各列に備え付けてあります。また近年では機内照明をLEDに換装することでより新しい機材に雰囲気を寄せている場合もあります。さて、今回はだいぶんと苦労しました。というのも2,3年前まで久しく(10年くらい?)767に乗らない時期が続いていたので書こうにも経験値が無さすぎるという問題がありました。しかし昨年と今年で4回ほど搭乗して浅学ながらも何とか並の中身くらいは書けそうだということでチャレンジしてみました。本当はもう少し奥深いはず機種のはずなのですが、何だか書いてみると意外と手が止まってしまったのは痛いですね。搭乗回数が多くないことと、システム類は特にうっすら知っていても今回やっと真面目に色々調べて学んだところもあるので深いところまで書けないのは当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。737に関しては若干(こんなところに書くのも恥ずかしいですが)多少のことは心得ているつもりでしたが、同じ飛行機、同じボーイングにしてここまで援用できないというのにも少しびっくりしました。いかに浅い気持ちでB6に乗っていたのかを痛感した次第です。これからも何度かお世話になると思うので、そうでなくても色々資料を漁って改訂を重ねたいな、と思っています。非常にコアなファンの多い機種だけに極めている人からすると絶対に物足りない内容になってしまったのですが、飛行機沼に浸かり始めの方であれば何とか楽しめるようにはしたつもりです。それが叶っていれば幸いです。