いよいよ今年から中古機の導入が始まるQ400。

本邦のQ400の歴史において中古機が導入されるのは初めてのことなのであります。

ここから2026年の退役開始と、日本の毛細血管として活躍を見せたQ400の動向はここに大きな転換点を迎えることになります。

 

初期は伊丹のプロペラ枠用としてQ300との併用で運航が始まったQ400はエアーセントラル、エアーニッポンネットワークで活躍。勢力を拡大する過程で全日空グループの再編に伴いQ400の運航はANA WINGSに一元化されました。

 

本稿においてはANA WINGS移管後の塗装を起点に現在に至るまでの変遷を紐解いていきます。

738ほど機数も多くなく、またウイングレットもないので数はそんなに多くないため気軽に楽しむことができます。

 

1. 標準塗装(現存なし)

エンジンナセルに書かれていた"A-net"や"Air central"のタイトルは順次"ANA WINGS"に切り替えられ、大きな塗装変更を伴うことはありませんでした。日航がレインボー、アーク、鶴丸を通してQ400のロゴを書き入れていましたが、機種を表す文字類は一切入れられませんでした。この時期は本家全日空も漢字ロゴから英字タイトルへの更新を完了して2年も経っていない時期。この変更では機種名タイトルが消滅しており、機種を問わず機種名は記載しない方針だったのかもしれません。

JA855Aからはコクピットウインドウ下に小さく"Q400 NextGen"を記入し新型であることを強調していましたが、5,6年ほど経って方針が翻ったのか剥離がスタート。2025年現在ではJA462Aのただ1機にみにしか見られません。

 

ノーマルからは少し外れてしまいますが2010年、初の全面スペマとしてエコボンが登場。同デザインとしては異例の3機体制が取られました。これらの機体は試験的に革シートを搭載し、また後述IOJタグの記入が始まっても依然タグなし状態を維持していましたが2017~18年にかけて通常塗装へリペイントされました。JA856Aではラダーの折れ方によってはヒンジに未だグリーンを見ることができる場合もあります。

 

TOPIC 01:レジ(機体番号)フォントの迷走

Q400で面白いのはレジのフォントです。

初期機ではイタリックスタイル(例:JA842A)だったものが、後期になるとイタリックをやめてしまった(例:JA859A)のです。

...と単純な話で終わればよかったのですが、ここからまた動きが出るのは第一次フルリペのタイミングにつき、そちらの項をお楽しみに。

 

2.IOJタグ記入

2010年にコンセプトとして既に存在していたInspiration of JAPANは2013年ごろから機体へのタグラインとしての記入がスタートします。余白スペースの狭いQ400は他機種と比べて控えめに記載され、また日の丸はL/R1ドア、L2/R2ドア前方に置かれたために最もこれまでの姿に対して違和感のない姿に仕上がったのです。

TOPIC 02:ブーツの大型化

Q400の各翼の前縁に嵌め込まれている黒いパーツは「防氷ブーツ」ないし単に「ブーツ」と呼びますが、一時期全日空ではこれを周りの大半を白で塗りつぶすという取り組みを行っていました。筆者はこれを「小ブーツ」と呼び逆に現行のものを「大ブーツ」と呼んでいます。なんだかブーツそのものに大小あるように感じさせるので呼び方を変えるか考えたものの、これ以上の呼び名が思いつかず諦めました。

この取り組みに関する経緯・詳細は全く公式に紹介されていないので不明ですが効果がイマイチだったか、あるいは他の都合に照らして旧来の方が良いと判断されたのか、またもや元のサイズに戻されました。2014~2020年ごろに撮影していた人は小ブーツ塗装機の写真をお持ち合わせかもしれませんね。

↑試験的(?)に導入されたブーツ塗装形態。うっすらとブーツ全体の輪郭を見てとることができます。

↑本来はブーツ全体が黒色。導入初期と現在はこちらへの統一が完了しています。

 

CIではなくテクニカルステンシルに当たる項目ですが後のトピックで少し触れるためあらかじめ紹介しておく次第です。

<TOPIC ここまで>
 

しばらくはこのIOJタグ機から大きく変化はなく、前述"Q400 NextGen"の消去やWi-Fiステッカーの貼り付け(今は全廃)といった変化しか起きていません。

しかし2018年に突然大胆な変更が行われます。

 

3.第一次フルリペ(現存なし)

2018年夏にJA841A,JA844Aに対してフルリペ(主翼・胴体を含むリペイント)が行われ新デザインが適用されました。

このデザインでは既存のIOJタグ機に対して以下の項目が変更されました。

・IOJタグの大型化

・ANA WINGSタイトルの移設

・Q400タイトルの新設

・Vスタ"ANA"ロゴの大型化

・機番のイタリック化(非イタリック機に限る)

 

→まずIOJタグの大型化はやはり旧来のサイズでは見づらかったのでしょうか。真横から見てスピナーにギリギリかからないサイズまで大型化されましたがこれだけでも随分違うものですね。


→ANA WINGSのタイトルはこれまでエンジンカウルにあったものがAFT CARGO DOOR上に移設されました。どういった経緯なのか、こればっかりはわかりようがありませんが、この部分は交換が多く(111-4に基づく報告でこの箇所の腐食報告が多く、また多くの機体でこの箇所が新品に変わっている事例が多い)、都度都度ANA WINGSタイトルをマスキングして塗装し直していると仮定するとこれは手間になりますので、仮にもそれが理由だとすれば再塗装頻度の少ない後ろに移したそれっぽい理由にはなります。

 

→Q400タイトルの追加はあまりにもいきなりで面食らいましたね。前述の通りQ400 Next Genの小さいロゴすらなくなる傾向にあったのでまさかここへきて機種名を書くとは思えなかったのでした。
しかし738を見るとJA87AN-JA90ANは"BOEING737-800"をそこそこデカく書いていますし789でも78Gは皆"BOEING787-9"を記入しています。あ、エアバスも"AIRBUS A321neo"は書いてありますね。予兆はいくらでもあったのに鈍感なだけでした。


→ANAロゴの大型化はこれは意図・経緯ともに不明です。IOJタグとともに「もうちょい大きくできるんじゃない?」という意見があったのかなかったのか、1機を除く(!)全てのフルリペ機で同様の変更は施されていることから気まぐれではなくなんらかの意図を持って拡大されたとみて良さそうです。Vスタに取り付けられたアンテナを基準にするとその変更が見て取れます。

 

→機番のイタリック化はTOPIC01で触れた通り後期に非イタリックのレジで導入された機体に対してイタリック化するという変更です。非イタリックに統一する、ならともかく旧デザインのはずのイタリックフォントが再びスタンダードに返り咲くという異例の動きです。

 

しかしこのフルリペ、恐ろしいことに方針転換によって2024年に全滅。わずか6年しか見ることができませんでした。

全滅と言ってもマイナーチェンジですが、それはTOPICを挟んで次の項目に譲ります。

 

 

 

TOPICS:03 フルリペの異端児たち

さて、第一次フルリペにはいくつか特集したい項目があります。

 

01.初期限定小ブーツ×フルリペ

まずはエラー塗装では無いのですが、塗装分類に時間軸を投入すると価値が発生する機、JA841A,JA844Aです。

TOPIC02でブーツについて紹介しましたが、現行大ブーツの統一には時間がかかったのです。

小ブーツの末期と第一次フルリペの適用時期はわずかに重複しており、このためにJA841AとJA844Aは第一次フルリペと小ブーツという今から見ればとんでもない組み合わせで飛んでいたのです。

ブーツ塗装の切り替えは必ずしも重整備でなくてもよかったのでこれらの機体も間も無く大ブーツに切り替えられ、この姿の活躍期間は1年前後しかありませんでした。

 

02.エラー?JA460A

JA841A,JA844Aは立て続けに登場したものの、3機目JA460Aの登場には1年半のブランクがありました。

あまりにも3機目が登場しないので1人で2機だけの試行か..?などと予想していましたが無事3機目が出てきて安堵したのですが...

第一次フルリペの変更点に沿って出てきたかと思えばちょっと待った、尾翼を見よ。

ロゴサイズの変更が行われていません。4機目がどうなるか次第でデザイン変更なのかエラーなのかを判定することになりますが、以後のJA847Aで再びロゴサイズが変更されたためエラーに分類することにしました。試行的に戻したのかはわかりませんが、少なくとも現時点で本機のみの限定デザインです。

<TOPICここまで>

 

第一次フルリペが登場したことでこれがどれだけ普及するかが焦点だと思っていたのですが、さすが全日空。ここで特大変化球を投げてきます。

 

4.第一次フルリペ ver.2

JA843Aが第一陣だったと記憶していますが、まさかの機種タイトルを"Q400"から"DHC-8-400"に切り替えるという予想外の動きを見せます。どうやら機種表記の切り替えがあったようで公式サイトもろとも"Q"の字を外し"DHC-8-400"に順次変更が進められています。それに付随して順次これまでのフルリペ機は機種タイトルを切り替えあっという間に初期のフルリペからver.2への更新が完了してしまいました。

 

2023年登場のエコプロ(エコボンとは呼び分けたいのです)が最後まで"Q400"タイトルを残していましたが例外なく機種タイトルの切り替えが適用され全7機のフルリペ機の機種タイトル更新が完了しました。

 

さてさてバリエーション自体で見ると737より落ち着いて見える(737が暴れすぎ?)Q400ですが、時間的に見ると興味深い動きが見えます。
最後にもう少し細かく分類した一覧表を添付しておくのでよかったら参考にしてください。

(画像ファイル容量に制限があるので見えづらいですが容赦願います🙏)
 

Q400は乗っても楽しいですがやはり外からの楽しみも必要です。

スペマかノーマルか、では終わらせたくはありません。少しでもスポッティング(と過去写真の振り返り)が楽しくなれば幸いです。