似た物同士
凸丸パネル(35種)と凸帯パネル(11種)の全て
これまで取り上げてきた日本ブランドが100を超えましたので、似た形状のコンビレンチが多く登場し、どれがどれだか分からなくなってしまうことが多くなりました。
したがい、パネル形状で横串を刺し、似ているのが特に多い凸丸パネル(全35種)と凸帯パネル(全11種)の2種類について、対象ブランド間を横断して比較解説します。
それぞれをメガネ部のオフセット方法である『鍛造設定』と『プレス曲げ』に分け、さらに製造メーカーの『オリジナル』と『OEM』に分けますので、パネル毎に4種類の分類になります。
題して『似た物同士』。
このページの最大の活用者は、たぶん私です。
他にも凸平行四辺形パネルや凹丸パネルなどがありますが、これらは独自形状のものが多く、まだ識別にそれほど困ってはいませんので、まとめは必要に応じてと言うことにします。
※ ブランド名 をクリックすると、ブランド毎のページで詳細を確認することが出来ます。
1.凸丸パネル
1.-1) 鍛造オフセット/製造メーカー・オリジナル
① BEST 第1世代 (1965年~75年)
・BESTの製造部門であった北日本鍛造製。
・横向き写真より鍛造オフセットと分かる。(鍛造時に初めからメガネ部にオフセットが付く)
・同時代のモデルがメガネ部オフセットをプレス曲げで対応している中で、早くから鍛造オフセットを採用。
・凸丸パネルとしては日本で2番目。(1番最初は⑱のN.T.K)
② ASAHI (1994年~現在)
・3種…JIS無し(1975年~94年)⇒旧JIS(1994年~2007年)⇒新JIS/JQA(2007年~現在)
↓1975年頃の短期間だが、凸丸パネルでDINタイプの早回しモデルも製造販売。
③ BEST 第2世代 (1977年~83年+α)
・BEST製造部門の平松工業製。
・製造記号…HA
・BESTモデルとしては比較的早期に生産終了しているが、その後も平松工業が製造元として国内外の複数のブランドにOEM供給。
④ IKEDA (1973年~現在)
・2種…JIS無し(1973年~2007年)⇒新JIS/JQA(2007年~現在)
⑤ TOUGH-1 (1990年頃~2000年頃)
・ダイア精工/TOUGHの内製と思われる。
・このモデルとは別に、AIGOからOEM供給を受けたプレス曲げモデル⑱もあり。
↓同じく早回しモデル。(プレス曲げにも早回しモデルあり)
⑥ NETSUREN (1990年頃~2007年/カタログ掲載終了)
・三木ネツレンは工業用スパナやメガネを主要商品としている一方で、コンビレンチは特殊性の無い汎用品であり、NETSURENの商品群とは少し異なる分野。
・ただし、形状や各部寸法で見ていくと、他の凸丸パネルとは異なる製品になっており、このページに出てくる凸丸パネルのOEMで無いことだけは確か。
・三木ネツレンには鍛造と熱処理工程を有する製造工場があるので、工業用スパナやメガネと同様にコンビレンチも自社製造していたと考えるのが素直。
・しかしながら、NETSURENの商品群と見比べると、共通性が無く、生まれが違う雰囲気もするため、ここには登場しない他メーカーOEMの可能性もある。
・メガネ部の鍛造オフセット形状の比較で、上側から⑥、②~⑤の順。
・ぱっと見は同じだが、良く見ていくと微妙にメガネ部つなぎ形状がそれぞれ異なる。
・1990年代の同様形状5モデルの寸法比較。(寸法記号5部位はJIS規格より)
・NETSURENモデルを13mmしか入手していないため、全て13mmでの比較。
・5モデルの各寸法は若干ながらそれぞれ異なっていて、全てが別モデルであることが分かる。
1.-2) 鍛造オフセット/OEM
⑦ TONE 第1世代-1 (1976年~85年)
・製造識別記号…無し
・メッキTONE第1世代には鍛造オフセットとプレス曲げ⑳の2種類あり。
⑧ HIT (1990年頃~2014年)
・製造記号…KBとHA
・3種…旧JIS(1990年頃~、KB)⇒新JIS/JQA(2009年頃~、KB)⇒新JIS/JQA(2014年頃、HA)
・表面に製造記号…○"I"(IKEDAの製造記号)
⑩ SANKI & SUNKEY (1980年代~2002年)
・製造記号…KB(SUNKEYのJISモデルのみ)
・3種…SANKI(1982年~90, 91年、JIS無し)⇒SUNKEY(1990,91年~94年頃、JIS無し)⇒SUNKEY(1994年頃~2002年、旧JIS、製造記号KB)
⑪ HOZAN-1 (1995年頃~現在)
・製造識別記号…無し(by IKEDA?)
・プレス曲げのクロモリ仕様㉓もあり。
・JAPAN刻印無し。
・OEM元は不明だが、日本製であろう。
・同じSPEEDブランドのスパナで"NTK"と”JIS"が刻印されたものが日本で流通していたことから、NTK製で日本ブランドと推定。
・ブランド元は不明。
・ただし、コンビレンチはアメリカのebayでしか見たことが無いのが気になる。
・ブランド元が不明だが、Japanが刻印された日本製であることなどから日本ブランドと推定。
・ASAHI②と長さや形状が同一であることから、ASAHI OEMの可能性が高い。
⑮ TRUECRAFT by ASAHI (1980年頃~2000年頃/事業撤退)
・大同通商がTRUECRAFTブランドとしてアメリカで販売したモデル。
・日本の大同通商が商標登録をしているので、日本ブランドとしてカウント。
・ASAHI②のOEM。
・同じTRUECRAFTでプレス曲げ㉔もあり、こちらはAIGOのOEM。
1.-3) プレス曲げ/製造メーカー・オリジナル
⑯ KTC (1980年代)
・KTCがアメリカFULLERにOEM供給していたモデルに暫定的にKTC刻印して国内出荷。
・サイズ16mmと18mmの2種類だけ存在。
・横向き写真よりメガネ部手前をプレスで曲げてオフセットを付けているのが分かる。
⑰ AIGO (1965年頃?~2011年)
・AIGOの丸パネルにはメトリックサイズが無く、インチサイズのみ。
・複数の海外ブランドにOEM供給。
⑱ TOUGH-2
・鍛造オフセット⑤とは別で、プレス曲げオフセット。
・スパナ部付け根のエラ形状が大きいのが鍛造オフセット⑤との識別点。
↓同じくプレス曲げオフセットによる早回しモデル。
⑲ N.T.K (1960年頃~1980年頃)
↑凸丸型パネルとしては日本で最初のコンビレンチで、浮き出し文字版。(コンビレンチ全体では日本の4番目)
・BEST第1世代①/1965年が発売された時には既に販売されていたらしい。
↑刻印文字版。
2モデル共に日本で見かけることはほとんど無く、一方でアメリカでは比較的入手しやすいことから、アメリカ輸出専用だったと推定。
⑳ BIG
・IKEDA④の廉価ブランド
・IKEDA④よりもかなり短い。(サイズ12mmで25mm短い)
㉑ ABC (1970年頃~2010年頃/廃番)
・アメリカ向け輸出専用モデル。
1.-4) プレス曲げ/OEM
㉒ TONE 第1世代-2 (鍛造オフセット版⑦と同じなら1976年~85年)
・TONE第1世代⑦は鍛造オフセットが通常だが、サイズ22mmには鍛造オフセットと共にプレス曲げモデルもある。
・製造識別記号…無し
㉓ TOOL MAN (1980年代)
・KTC⑯のOEM。
・KTCがFULLER用に在庫していたボディーにTOOL MANと打刻してOEM出荷したと推定。
・ブランド元は不明。ッキ・
㉔ HOZAN-2
・スパナとメガネのサイズが異なる珍しいモデルで、クロモリ仕様。
・スパナ部が少し大きめになっており、13mm用のボディーを使用してスパナ部は12mmに加工しているものと推定。
・鍛造タイプ⑩とは製造元が異なる模様。
㉕ TRUECRAFT by AIGO (1970年代~2000年頃/事業撤退)
・モデル⑮と同じTRUECRAFTだが、こちらはプレス曲げオフセットで、AIGOのOEM。
㉖ CET-TECH by AIGO (1970年代~2000年頃/事業撤退)
・上のTRUECRAFT㉕の廉価版。
・AIGO⑰のOEM。
・㉕と㉖は同一モデルで、ブランド刻印のみの差。
㉗ KOWA
・日本の他ブランドには無い独自形状になっていて、出所が良く分からず。
・スパナ部のStream Line(流線形デザイン)が独BELZERに似ているのと同時に、材質表示の"Vandium Extra"もBELZERと同じ。
・次の1.-5)海外OEMに入れるべきか?
オーストラリアのブランドでKINCROMEに供給されたプレス曲げです。
裏面にJAPANの刻印があります。
AIGOに形状が似ていますが、長さが異なりますので、製造元は不明です。
1.-5) プレス曲げ/海外OEM
3つのブランド㉘~㉚が台湾INFAR/A-TypeをOEM採用。
★Tender & MARKⅠ
・"Japan"刻印入りの凸丸パネルがさらに2種類。
・ただし、日本ブランドなのかアメリカブランドなのか全く情報が無いため、10x番目の日本ブランドにすることも、『日本製の海外コンビレンチ辞典』に入れることも出来ずにいる。
・上のTenderは、SPEED⑬に似ているので恐らくNTK製で、アメリカと日本の両方で流通。
・下のMARKⅠは、裏面がフラットなのが異形で、今でもアメリカebayで時々見かける。
2.凸帯パネル
凸帯パネルの製造元5社(鍛造オフセット2社、プレス曲げ3社)のモデルは、長さなどの寸法が微妙に異なるものの基本形状は同じであり、見分けが付きにくい。
5社ともに燕三条の製造メーカーであり、鍛造型屋が同じなどの共通性があると推測。
2.-1) 鍛造オフセット/製造メーカー・オリジナル
① S.N.T by ASAHI (1980年頃~現在)
・"S.N.T"はASAHIの廉価版ブランド。
・3種…JIS無し⇒旧JIS(OEM3種の元モデル)⇒新JIS/JQA
② BEST (1983年~1990年頃)
・ASAHI①と同一長さ、ほぼ同じ形状だが、スパナ部付け根の凸帯ラインの処理の仕方が異なる。
2.-2) 鍛造オフセット/OEM
③ Hakubi (ASAHI S.N.Tと同時期販売なら1997年~2007年)
・ASAHI S.N.T①のOEMモデル。
・旧JISモデルのみ。(JIS無しは見つかっていない)
・裏面にASAHIの製造記号…○"A"
・豚カツチェーン"かつや"を運営するアークランドサカモトの工具ブランドで、名前のHalkubi/白眉が秀逸。
④ A・C TOOL/相忠 (ASAHI S.N.Tと同時期販売なら1997年~2007年)
・ASAHI S.N.T①のOEM。
・旧JISモデルのみ。(JIS無しは見つかっていない)
・裏面にASAHIの製造記号…○"A"
・プレス曲げ⑩(OEM by KBS)もあり。
・④と⑩でロゴが微妙に異なり、鍛造オフセットは"A.C"、プレス曲げは"A・C"。
⑤ HERO (ASAHI S.N.Tと同時期販売なら1980年頃~2007年)
・ASAHI S.N.T①のOEM。
・2種…JIS無し⇒旧JIS
・旧JISモデルの裏面にASAHIの製造記号…○"A"
・①~⑤の5本を上下に並べると長さが同じなのが分かる。
・また、メガネ部の鍛造オフセット形状も5種類と同じようだが、一番下のBEST⑤だけちょっと異なる。
↑①ASAHI S.N.T(左側)と②BEST(右側)の比較
・ASAHI S.N.Tは、スパナ部根元の帯パネルの段差が平行のままスパナ部につながっている。
・一方、BESTは、段差が交わってからスパナ部に。
・さらに、BESTはサイズを示す"13"の位置が少しスパナから離れている。
・この2点より、明らかに鍛造型が異なるのが分かる。
2.-3) プレス曲げ/製造メーカー・オリジナル
・生産時期は不明、2008年~10年に工具製造事業から撤退。
・井上製作所のブランドで、1984年に倒産。
・販売製造事業はTOUGH/ダイア精工に引き継がれた。
・JIS無しモデル。
・製造元として複数のブランドにOEM提供すると共に、自らのブランドでも販売。
・2000年頃にKBSブランド工具販売事業から撤退したが、しばらくOEM供給のための生産は続けていた模様。
・旧JISモデル。
・JIS無し⑧に対しKBSの右に"KOBAYASHI"を追加。
・JIS無し⑧とは別モデルで、全体が長くて、スパナが卵から丸に。(↓⑧と⑨の比較)
2.-4) プレス曲げ/OEM
・鍛造オフセット⑤とは別モデルで、こちらはプレス曲げ。
・製造元も異なり、KBS-1のOEM。(スパナの卵形が特徴)
⑪ GLORY/坂謙
・燕三条の部品商である坂謙のブランド。
・裏面の"JAPAN"刻印より日本製と分かる。
・ただし、上のプレス曲げメーカーオリジナル⑥~⑨とは長さが異なり、別の燕三条メーカーによるモデルと推定。
・11本がサイズ13mmで揃っているので、揃い踏み。
・上から①~⑪の順に並べてあり、①~⑤が鍛造オフセット、⑥~⑪がプレス曲げ。
・①と③~⑤がASAHI製、⑧と⑩がKBS製で同一だが、他はそれぞれ別物。
・大阪商社のブランドHEROを除くと全て燕三条。
・燕三条は、似た物同士で、帯パネルがお好き??
【2021年5月1日追記】
⑫ NTK プレス曲げ
・帯パネルの12種類目がありました。
・丸パネル⑱でも登場する燕三条のメーカーNTK製です。
・残念ながらまだ入手出来ていません。
この回、終わり