MITOLOY

水戸工機のすべて

(旧・水戸合金工具製作所)

 

【2023年9月20日 追記】

フラットパネルに"MITO TOOLS"とだけ刻印されたシンプルなスパナを見つけました。

在韓米軍(米八軍)向けと思われる工具ディスプレーボードの"MITO TOOLS"表示に似ていること、ならびに戦後初期スパナの形状であることから、1960年頃の在韓米軍向けスパナと推測しています。

正確には在韓米軍向けインチ仕様の国内向けミリサイズ版で、国内向けの最初のスパナだろうと思います。

スパナの詳細は、本稿内のこちらにて。

最初のスパナ候補も見つかりましたので、本稿は格上げして表題に"すべて"を追加しました。

↓在韓米軍(米八軍)向けと思われるディスプレーボード

 

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・東京で『燕屋大工道具店』を営んでいた社主が、戦前の1940年に茨城/水戸に『(株)水戸合金工具製作所』を設立したのが始まりです。

・戦時中は日立兵器の下請けとして軍向け工具を生産していたとのことです。

・戦後は、1950年からの朝鮮戦争需要で米軍向けに自動車修理用工具の生産を始める形で事業を再開。

・そして、朝鮮戦争の終結を受けて、国内向けの生産を始め、ソケットレンチが主要製品となります。

 ← このソケットレンチのイラスト、好きです!

・1957年にソケットレンチでJIS認証を取得します。

・また、同年から防衛庁に整備工具を納め始めます。

・1961年に『水戸工機(株)』に社名変更。

・1968年にはメガネレンチでもJIS認証を取得。

・なお、スパナとコンビレンチではJIS認証を取得していませんので、スパナにJISマーク付きはありません。

・また、コンビレンチにはJISマーク付きがありますが、全てJIS取得メーカーからのOEM供給品です。

・スパナ(18種)、コンビレンチ(4種)の順に解説します。

 

1. スパナ

 ① フラットパネル /MITO TOOLSのみ刻印 

・フラットパネル、卵形スパナ形状、裏面無刻印 サイズを除くと"MITO TOOLS"のみ刻印であり、戦後初期スパナの基本的な形です。

・代名詞である梅ロゴが無く、また朝鮮戦争後と思われる在韓米軍向け工具ディスプレーボード(下写真)の"MITO TOOLS"に表示が似ています。

・上記2点より、本品は在韓米軍向けスパナと推定します。

・但し、米軍向けはインチ仕様でしょうから、同じ形状の国内向けミリサイズだろうと思います。

・したがい、本品は水戸合金工具が国内で最初に販売したスパナの可能性が高いと考えています。

↑1960年『自衛隊年鑑』の広告

・1957年から防衛庁に工具を納入していることもあり、『自衛隊年鑑』に広告を出しています。

・広告内の『米八軍』は在韓米軍のことで、水戸合金工具は在韓米軍から工具工場の指定を受けていた模様。

・広告内の工具ボードに"MITO means Modern Ideal Tough & Outstanding"と書かれています。

・日本向けなら、このような名称のこじつけはしないでしょうから、米軍向け工具のディスプレー写真なのだと思います。

 

 ②-1 凹帯パネル-1 with 梅ロゴ 

・梅をかたどったロゴ付きスパナが3種類見つかっています。(②~④)

・梅ロゴは、水戸偕楽園の梅から来ているのだろうと思います。

 

 ②-2 凹帯パネル-1 with 梅ロゴ 

・凹帯パネルMITO TOOLSのインチ仕様です。

・ミリ仕様と較べると、"MITO TOOLS"の文字が大きく、かつ最後の"S"の字体が異なります。

 

 ③ 凸帯パネル with 梅ロゴ 

・但し、本品③のロゴはあまり梅に見えません。

 

 ④ 凹丸パネル with 梅ロゴ 

・3種類の内、本品だけが"MITO TOOL"で、他の2種は"MITO TOOLS"になっています。

・本品はスパナがとんがり形状になっていますので、①~③よりは新しそうです。

・①~④の通り、"MITO TOOLS"には4種類のパネルがあることになります。

(フラットパネル、凹帯パネル、凸帯パネル、凹丸パネル+サイズ部凹四角)

 

 ⑤ 凹帯パネル-2 with 梅ロゴ 

・本品には会社名表示が無いことから、メーカーが分からず、正体不明に区分していました。

・MITOについて書いていて気が付いたのですが、スパナ部のロゴはMITOの梅ロゴですね。

・なんらかの理由でMITO TOOLSは表示せず、簡略化した梅ロゴだけを表示させたのだろうと考えています。(なんらかの理由 ⇒ 朝鮮戦争時の在韓米軍向け??)

・スパナ部の梅ロゴ裏側の刻印"DCC"は何でしょう?

・なお、品番DB-1の取り方は、ひとつ上④のCE-6と似ています。

・ちなみに、"DROP FORGED STEEL"の文字の大きさがバラバラであることに時代を感じます。

↑MITOの梅ロゴ4種。

・3、4番目のロゴは、花弁の無い梅になっています。

 

 ⑥ フラットパネル with 手書き風Mitoloyロゴ 

・手書き風のMitoloyロゴ。

・Mitoloyの商標登録は1970年ですが、1961年の広告にこの手書き風Mitoloyが登場しています。(広告は後述)

・是非とも実物を手に入れたいと思っているのですが、この写真以外には全く見かけません。

 

 ⑦ 凹丸パネル with MITOLOY-1 

・JAPAN刻印があることから新しい世代のMITOLOYロゴです。

・"MITOLOY"の左右に4重の "<" と同じ4重の ">" が追加されています。

 

 ⑧ 凹丸3分割パネル with MITOLOY-2 

・上の⑦と同じ<>が追加されたMITOLOYロゴながら、TONE第2世代スパナと同じような凹丸3分割パネルになっています。

・同じ凹丸3分割パネルのKTCブランドSeven-Kに雰囲気が似ていますが、スパナ形状が異なります。

 

 ⑨ 凹帯パネル with 楕円MITO-1 

・凹帯パネルの楕円"MITO"。

・TOPの同型モデルに全体の雰囲気が非常に似ています。

・スパナ形状もサイズ14mm同士を並べると、ほぼ同一なのが分かります。

 

 ⑩ フラットパネル with 楕円MITO-2 

・どこの国製なのか、悩ましいスパナです。

・現在も使われている楕円MITOロゴですが、これまでのスパナと較べると形状や表面処理から世代が新しそうです。

・1980年以降で、たぶん2000年に入ってからの製品だろうと推定しています。

・したがい、"JAPAN"刻印が無いので、台湾または中国製だろうと思います。

・最初の6種(①~⑥)も"JAPAN"刻印がありませんが、その形状から判断して日本製の輸出品にJAPAN表示が義務付けされる前の時代の製品群だと思いますので、①~⑥は日本製でしょう。("JAPAN"刻印が始まったのは1970年代に入ってから)

・同じ"JAPAN"無しでも判断が難しいところです。

・私は、"古さ"と"安っぽさ"を基本的な判断基準にしています。

*"JAPAN"刻印無しで、"古そう"+"安っぽくない"=日本製

*同じく"JAPAN"刻印無しで、"新しそう"+"安っぽい"=中華製


2. 二輪向けOEM供給スパナ

水戸工機は二輪向け車載工具に力を入れていて、カワサキ、メグロを中心にホンダとスズキにも納入していました。

ホンダは梅ロゴ、メグロは文字だけのMITOロゴ、カワサキとスズキは長円MITOロゴが使用されています。

 

 ⑪ ホンダ向け /梅ロゴ 

 

 ⑫ メグロ向け /リバーマーク 

・川崎重工傘下となった1963年と1964年のメグロ、または川崎重工の初期オートバイに車載されていたものと推察します。(1964年にメグロは倒産)

・裏面の"MITO"刻印より水戸工機のOEMと分かります。

・このスパナから川崎重工と水戸工機の関係が始まります。

 

 ⑬ メグロ向け /フライングリバーマーク 

・1966年に川崎重工の第1号オートバイとして登場したW1に、フライング・リバーマークのスパナが採用されていたと理解しています。

・このスパナは10x14であり、W1車載のサイズとは異なるため、初期のカワサキの別の機種に車載されていたものと思います。

・裏面の"M"刻印が気になりますが、"MITO"を示しているのだろうと思います。

 

 ⑭ カワサキ向け /リバーマーク+KAWASAKI 

・カワサキ初の750ccであるZ2、ならびに輸出用Z1(900cc)に車載されていた14x17スパナ。

・Z2の登場は1971年であり、すでに川崎重工の会社ロゴは  に切り変わっていますが、車載用としてはリーバーマークを□で囲った  が採用されます。

・MITOロゴが楕円ではなく長円なのが水戸工機オリジナル品と異なります。

 

 ⑮ カワサキ向け /Kマーク+小文字Kawasaki 

・フライングKが登場します。

・⑪~⑭と比較して作りが現代的なスパナになっています。

・1984年のGPZ900R用(初代Ninjya)の車載スパナと理解しています。

 

 ⑯ カワサキ向け /Kマーク+大文字KAWASAKI 

・大文字の  KAWASAKI のバージョンもあります。

・大文字版と小文字版の使い分けは、一つの車種に混在しているなど明確になっていません。

 

 ⑰ カワサキ向け /小文字Kawasaki 

 Kawasaki は、2007年から川崎重工グループ全体のロゴに昇格しますが、一方でオートバイ用としては1990年前後から  が使われなくなり、単純に"Kawasaki"がロゴになっています。

・車載工具も同じく"Kawasaki"に切り変わっています。

・これも混在されていますので、時期や機種は明確になっていません。

 

↑水戸工機カワサキロゴ4種(⑭~⑰)

・下2種(⑯、⑰)の全長が短くなっているのが分かります。

 

 ⑱ スズキ 

・スズキにも納めていました。

・Kawasaki⑰のスズキ版だろうと思います。

 

3. コンビレンチ

 ⑲ 薄口 

・非常に特徴的なデザインのコンビレンチです。

・スパナからメガネまで完全平坦で、薄口になっています。

・平坦形状ながら、中央部が深い凹パネルになっていますので、れっきとした鍛造であることが分かります。

SANKI/SUMKEY(北陽産業2002年倒産)のモデルを引き継いでいます。

・MITOLOYのコンビレンチは全てOEMを採用していると理解していますが、このモデルはSANKIの時代からOEM元がどこなのか分かっていません。

※"KOWA/Straem Line"と、この"MITOLOY/SLIM"の2つは、OEM製造元探しを趣味にしている私にとって2大ナゾナゾです。

・ちなみに、SANKIの時代からJAPAN刻印がありませんので、日本製ではないだろうと思います。

・現在もカタログに掲載されています。

↓MITOLOYとSANKI

 

・裏面の刻印よりMITOLOYは2014年7月製造(←"14G")、SANKIは1987年1月製造(←"87A")と思います。

 

 ⑳ ミラーフラット 

・ミラーフラットもありました。

・JISマーク付き製品には製造者記号の表示が義務付けられています。

・裏面の刻印"DIA"よりダイア精工/TOUGHからのOEM供給品と分かります。

・ダイア精工は2000年にハンドツールから事業撤退していますので、このミラーフラットも販売を終了しています。

 

 ㉑ 凸丸パネル 

・凸パネルモデルが2つありますが、この丸パネルが現行モデルになります。

・新JIS(JQA)の取得モデルで、裏目刻印の"15B"より写真の商品は2015年2月製造と思います。

・形状と各部寸法よりIKEDAのOEMと考えるのが妥当です。

 

・表面の丸パネル内にある刻印マークを拡大してみたのですが、何のマークか分からずにいました。

・拡大するとかえって分からなくなり、少し引いて見るとアルファベットの『I』と気が付きました。

・これは池田工業が使用している製造者記号です。

 

 ㉒ 凸平行四辺形パネル 

・本品は既に販売が終了し、2015年に前述の池田工業製㉑に切り替わっています。

・表面のパネル内に"AI"の製造者記号があること、および裏面スパナ部根元の特徴的な製造記号よりAIGOからのOEM供給品と分かります。

・AIGOの廃業を受けて、池田工業製に切り変えたのだろうと思います。

 

4. 会社情報

1)登録商標

 

・1970年にMITOLOYを商標登録。(水戸工機に社名変更後)

・実際には早くからMITOLOYを使用していて、1961年の広告に登場しています。

・梅ロゴと楕円ロゴも商標登録されているのだろうと思いますが、旧社名の水戸合金工具製作所や社長名で検索しても見つかりませんでした。

 

・2023年に字体を変更したMITOLOYを商標登録。

 

・2001年にソケットを擬人化させたカラーイラスト商標を登録。

・"ミトロイ君"という名前も付いています。

 

・最初にモノトーン版を登録したのだろうと思っていましたが、実はモノトーン版は5年後の2006年に登録。

 

↑左:第2世代、右:第1世代

・現在のミトロイ君は、3次元に進化した第2世代になっています。

・第2世代ミトロイ君は商標登録されていません。

 

2)JIS認証

・1957年にソケットレンチでJIS認証を取得。

 

・さらに1968年12月28日にメガネレンチでもJIS認証を取得。

 

3)広告

  

↑1961年『機工取引便覧』と同年『日本紳士録』

・Mitoloyロゴは、少なくとも1961年には使われ始めていたことが分かります。

・6本セットのスパナが載っています。(△にMITO TOOLS)

 

4)防衛庁納入資料

↑1957年『自衛隊年鑑』

・1957年に武器整備セットを防衛庁に納入しています。

・1960年『自衛隊年鑑』の広告に『航空機用、自動車用駆動工具』と記されていることから、納入先は航空自衛隊または陸上自衛隊のどちらかでしょう。

 

5)会社解説資料

↑1998年『水戸市史 下巻3』より

・水戸合金工具製作所の創業から戦後の再開等について具体的に説明されている貴重な資料です。

 

↑1995年『水戸市史 下巻2』より

・戦時中の『日立兵器』との関係

 

↑1959年『機械工業名鑑』/水戸合金工具製作所(冒頭と同じ資料)

↑1966年『帝国銀行・会社要録』/水戸工機

 

↑水戸工機HP内の会社沿革から抜粋

 

↑水戸工機の正門写真

 

【参考】1968年当時の会社紹介

1968年『金属製品のモデル工場』より。

 

5.各種情報

水戸工機HP

FactoryGearブログ MITOLOY編

 

6.カタログ

水戸工機HPの現行Webカタログ ⇒ 全ページは、こちら

2種のコンビレンチが掲載されています。

スパナは掲載されておらず、全て廃番になっているようです。

1960年~1980年頃のスパナカタログを是非とも入手したいところです。

 

 

 

 

この回、終わり