BEST-1
はじめに
コンビレンチのブログを書き始めてから半年以上が経ちました。
BESTについては最初の頃からコレクションに力を入れていて、その結果として全てのモデルを揃えることが出来ました。
そして、その間に情報や知識を種類毎に分けて沢山の引き出しに貯めることが出来ています。
今回は、その引き出しを全て開けて、BESTの"完全解説版"を書きたいと思います。
私の知識と情報収集力、推理力、さらに現物入手力の全てを総動員させます。
さらに、海外へOEM供給したブランドを調べるためにネットで世界一周もしています。
ちょっと長めの文章になりますが、じっくりと読んで頂ければと思います。
テンポのある文章を心掛けると共に、目で見て分かりやすいように写真を多めにして100枚ほど使います。
【2020年11月1日追記】
掲載量が増えてブログ規則の4万文字/ページ(HTML言語ベース)を越えてしまい、情報追加が出来なくなったため、国内編と海外OEM編の2つに分割します。
海外OEM編(BEST-2)はこちらです。
1.BESTについて
BESTは金物の街として有名な燕三条の中でも老舗ブランドであり、その85年の歴史の中で多くの魅力的な商品を世に送り出してきました。
現在販売中のコンビレンチは1種類のみであり、このブログを書き始めた半年前には過去の物も含めて3種類のコンビレンチしか確認出来ていませんでした。
しかしながら、少しずつ過去のモデルが見つかっていき、最終的には全部で12種類が存在していることが分かりました。
歴史の長さと商品の種類は比例していることになります。
その商品は多彩で、コンビレンチのコレクターとしてはとても味わい深いブランドです。
また、製造部門である平松工業は、海外ブランド向けのOEM供給にも力を入れていました。
そのモデル詳細が確認出来ましたので、推定写真も含めて海外OEMモデル7種を新たに掲載します。
海外OEM全7種類そろい踏み
写真の背景を"BEST"は青、"海外OEM"は緑にしてあります。
(赤と黒モデルだけは発色のために背景を白にしてあります)
★商標登録
1967年に北日本鍛造/平松商店が"BEST"を商標登録しています。
3.商品紹介
① 第1世代/凸丸パネル(楕円BEST)

製造:1965年~1975年(約10年間)
新潟市にあった(株)北日本鍛造が1965年に平松商店グループ入りし、BESTブランドのコンビレンチが初めて作られました。
最初のブランドロゴは、楕円にBESTでした。
55年前、日本で7番目に登場したコンビレンチです。(日本コンビレンチの販売開始順番はこちら)。
また、まだOEMとして輸出する時代にはなっていないので、JAPANの刻印はありません。
その存在がほとんど知られていない幻とも言える貴重なモデルです。
なお、残念ながら北日本鍛造は1975年に倒産しています。
ヤフオクに出品されていたジャンク品一式の中に紛れていたのを見つけて、入手しました。
② 第2世代/凸丸パネル(斜めBEST)

製造:1977年~1983年(約6年間+α)
北日本鍛造の後を受け、製造を担当する平松工業が1977年に創業しました。
同年に第2世代コンビレンチが誕生します。
第3世代③に切り替わる1983年までの生産となります。
なお、生産開始は北日本鍛造の時代に遡る可能性もあるようです。
ロゴはBESTが継続されていますが、楕円は無くなり、斜め文字に変更になっています。
第1世代と同じ凸パネルではありますが、スパナが卵形からやり型に変わり、またスパナ部根元のエラ形状も大きくなって、現代的な形状になっています。
写真の商品は製造記号がHA86になっています。
Hは平松工業、Aは鍛造型番号、86は1978年6月の生産を示しています。
この第2世代も存在がほとんど知られていない幻のモデルですが、未使用のフルセットをメルカリでつい最近手に入れることが出来ました。
この凸丸形パネルは、日本でもアメリカでも良く見かけるタイプですが、このモデルそのものが国内外に供給されています。
製造:1983年~1990年頃(約13年間)
第3世代のモデルです。
BESTのロゴが継続し、第2世代②と同じ斜め文字になっています。
なお、第1世代と第2世代は打刻文字でしたが、鍛造時の浮き出し文字に変更になっています。
この後、第5世代の現行まで浮き出し文字が継続されています。
ちなみにこのモデルは他の国内ブランドでも採用されています。
④~⑩ フラットモデル(第4、第5世代)
この後、④から⑩までフラットモデルになりますが、3種類の長さがあります。
④が一番短く(超短足)、次に⑤~⑧はちょっと短く(短足)、最後の⑨、⑩はスタンダードな長さになっています。
サイズ12mmで、L=100mm、115mm、130mmになります。
なお、④~⑧は第4世代で、1985年頃の単発的な販売になり、④⇒⑤⇒⑥⇒⑦⇒⑧の発売順序となっています。⑨、⑩は第5世代で、⑩は現行モデルです。
④ 超短足フラット/アパレルメーカー特注品

【以下、修正予定】
短足では無いモデルでMen’sBigiモデルを発見しました。
詳細を最検証中です。
1985年頃、短足フラットモデル群(④~⑧)として、まずアパレルメーカー向けの特注品として販促品6本セットが作られました。
短くて、真っ赤に塗装された非常に珍しいモデルです。
確認出来ているスペックは以下の通りです。
・長さ…サイズ12mmでL=100mm
現代のStubbyモデルはL=約105mmですが、それよりもさらに短くなっています。
・色…赤(朱色に近く、後述の⑦と同じ色)、全面焼付塗装
・表面…鍛造浮き出し文字でアパレルメーカーのロゴ、最初のMとBが大文字で残りは小文字、サイズ表示が両サイドに2カ所
・裏面…材質表示としてCHROME VANADIUM
なお、本モデルは、製造元はベストツール/平松工業ですが、ブランドとしては発注元のアパレルメーカーになります。
⑤ 第4世代(短足フラット)-1/スタンダード

第4世代が1985年頃に登場します。
超短足の④に対して少し長めになっていますが、基本デザインは④を踏襲しています。
と言うよりは、⑤の基本デザインが既に決まっている時に、④特注品の話が入り、短いモデルとして先行で作成したというのが正しいのかと思います。
6本セットで、サイズは8、10、12、13、14、17mmになっています。
ロゴがBESTからBEST TOOLに変わりました。
長さが短いためか余り好評では無かったようで、通常長さの第5世代⑨に早期に切り替わっています。
この第4世代ならびに現行の第5世代にBEST TOOLのロゴが入っていることから、初期よりブランド名をBEST TOOLとしてブログを書いてきました。
一方で、現在のベストツール・ホームページを見るとブランド名は”BEST"となっています。
したがい、今回からブランド名はBEST、会社名はベストツールとして使い分けています。
なお、ブランディングに以下の変遷があったものと理解しています。
・ブランド名BESTで立ち上がり
・第4世代の時にブランド名をBEST TOOLに変更し、商品にもBEST TOOLと刻印
・その後の会社名変更時に、ブランド名のBEST TOOL/ベストツールを会社名に採用
・どこかの時点でブランド名を再びBESTに変更
⑥ 第4世代(短足フラット)-2/ノーブランド

『ノーブランドで、短くて、3種類(10、12、14mm)』という特注オーダーに基づき生産されたモデルです。
発注元は不明だったようですが、発注元がロゴを追加するなどして販促品として使用したのかもしれません。(特注品のベースモデル?)
さらに、このノーブランド3本の残った在庫を処理するため、BEST TOOLロゴ付き⑤の別サイズ3本を加えた6本セットが作られ、ホームセンター向けに格安にて限定販売されました。
私は、この限定6本セットをヤフオクで入手し、ノーブランドモデルの存在を知りました。
最初は『なんで3本だけノーブランドなんだろう』と不思議でした。
ちなみに、⑤も同時期にヤフオクで入手していますが、後述する第5世代⑧&⑨に較べると第4世代⑤&⑥は生産時期が短く生産量も少なかったことから入手が難しくなっています。

⑦ 第4世代(短足フラット)-3/赤塗装

この時期(1985年頃)にいくつかのブランドからカラーモデルが発売されていた模様で、BESTもカラーモデルを発売しています。
赤と黒それぞれ1,000セットほどが作られたようです。
赤は焼付塗装になっています。
私はカラフルな物が好きなので、他のブランドでも同じような塗装モデルがあれば是非とも欲しいと思っているのですが、残念ながら見つかっていません。
黒モデルは、カチオン電着塗装になっていますので、塗膜は赤よりも強いかと思います。
また、電着塗装のため塗装表面も均一で、とても綺麗に仕上がっています。
初めて見た時に黒いハイネック姿のスティーブ・ジョブス/Appleを何故か思い浮かべました。
英語で"Cool"(いかしてる)と表現するのが良いかと思いますが、素敵な出来映えのモデルです。
私個人としては"Best of the BEST"だと思っています。
⑨ 第5世代-1/旧JISマーク(KBシリーズ)

製造:1985年以降~2005年(約20年間)
通常長さのフラットタイプとして第5世代が1985年から1989年の間に登場しています。
胴長の断面形状が第4世代④~⑧は角張っていましたが、この第5世代は丸みを帯びた形に変わっています。
ロゴはBEST TOOLが継続されています。
1985年にJIS認証を取得した工場に生産工程の一部を委託することでJISマーク付きになっています。(旧JISマーク)
製造記号3桁の2桁目が製造年を表しています。(3桁目は月)
製造期間が1985年~2005年ですので、例えば2桁目が"9"ならば1989年または1999年の製造になります。
写真の3本はセット品の一部ですので、同時期の生産と考えれば、A02⇒2000年2月が含まれていることから、"9"は1999年と考えるのが妥当です。
ちなみに、1桁目のAとBは鍛造型の修正履歴を表しているようです。
製造販売:2005年~現在(約15年間)
JIS認証が通産省管轄から財団法人”JQA日本品質保証機構”へ民間委託されたことにより、平松工業も新たにJQA認証を取得しました。
したがい、2005年のモデルから新JISマークのJIS/JQAに変更となっています。
なお、このモデル⑩は今でもAmazon等で入手可能です。
表面に"HK"という製造記号が刻印されており、平松工業製を示しています。
生産は"11Y"より2011年11月であることが分かります。

ちなみに、JISとJIS/JQAの差をざっくり言うと、JIS認証は会社や工場に与えるもの、一方でJIS/JQAは商品に与える側面がより顕著になったものになります。
ただし、JISがかえって商品開発の足かせになることがあり、JIS認証を返上するメーカーが多くなっています。
例えば、JIS認証検討会議の座長だったKTCは、認証取得から12年後の1965年にJIS認証を真っ先に返上しています。
JIS規格の書類内で、英語表記はCombination Wrenchになっていますが、日本語表記はコンビネーションスパナになっています。
時代が梨地からミラーへ移行していくことを受けて、ベストツールとしてもミラータイプへの参入を検討していたようです。
BEST CRAFTという暫定ブランド名にクラウンマークのロゴが入り、1993年(平成5年)頃に試作品が作られています。
KTCがミラーツール(ネプロスの前)を販売していた時期です。
国産ミラータイプには、KTC(Dツール⇒ミラーツール⇒ネプロス)、Tone(ファインツール)、Asahi(DX Tools)の3種類があり、ベストツールは4番目の参入を検討していたことになります。
最終的には、ミラーにするための表面仕上げに工数が掛かることから原価が高くなり、販売には至らなかったようです。
結果的には、ToneとAsahiは早々にミラー市場から撤退し、今はKTC1社だけが生き残っていますので、ベストツールが市場参入を断念したのは正しい判断だったようです。
⑫ ミニコンビレンチセット
小物作業用のコンビレンチ(4~10mm)が発売されています。
ブランドロゴでは無く、会社名のBEST TOOL CO., LTD.が印刷されています。
BESTのコンビレンチとしては唯一の海外製(中国製)です。
鍛造製品では無く、鋼板の打抜き加工品になります。
カラーチタニウムメッキ製で、『虹色がキレイ!』との説明書きが入っています。
現在も販売中です。
以上がBESTのコンビレンチ全12種類です。
③、⑧、⑨、⑫の4種類は今でも入手可能ですが、残りの8種類については入手は非常に難しくなっています。
④の赤くて短い特注品だけは私も入手出来ていません。
TOYOPET工具セット
東京トヨペットが"Original Tool Set"としてBEST TOOLロゴのフラット・コンビレンチ3種を入れた工具セットを出していました。
TOYOTAと言えばKTCツールと相場は決まっていますが、地方(東京)のディーラーですので、自由度が高いのでしょう。
こういう商品にBESTが選ばれるのは非常に珍しいと思います。
なお、新しいTOYOTAロゴがケースに印刷されていますので、1989年以降の商品となります。
また、BEST TOOLのコンビレンチは旧JISマーク付きですので、1981年~2005年のモデル⑧になります。
両者より、この工具セットは1989年~2005年に登場したことが分かります。

プライヤーは、三条のプライヤー専門メーカーIPS(五十嵐プラーイヤー)の商品です。
燕三条の工具商社がアレンジして東京トヨペットに納入されたセットのだと思います。

青い半透明なプラスチックケース付きです。
トヨタの会社ロゴは、1989年に採用された現行のものが使われています。
こちらの商品はメルカリで入手しました。
東京トヨペットは、東京の他のトヨタディーラーと合体し、2019年4月にトヨタモビリティー東京となっています。
4.スパナ
このブログはコンビレンチを紹介するのが目的ですが、BESTの完全解説版として書いていますので、特別にスパナにも登場して貰います。
コンビレンチ⑩と同一デザインのスパナになります。
残念ながら2018年2月に廃番になっています。
但し、Amazonにはまだ在庫があり、今でも入手可能です。
写真の商品は、09Xより2009年10月生産になります。
スパナ-2(品番SSM-60P/旧型)
上のスパナ-1の旧型で、コンビレンチ⑨のスパナ版です。
⑨と同じようにKBシリーズで、A96より1999年の6月生産になります。
ホルダーにexiteと表示されていますが、これはベストツール地元の三条にあるホームセンター"アークランドサカモト"のブランド名です。
ベストツールのセットに自社ブランドのexiteラベルを貼り付けて販売したものと思います。
スパナ-3(品番KS-1B)
仮枠スパナと称する建築作業工具で、5種類のサイズ(左側21、10mm、右側17、7、6mm)が1本で使えるようになっています。
裏面に5種類のサイズが刻印されています。
なお、ロゴはBEST TOOLが使われています。
JAPANの刻印より日本製であることが分かります。(OEM品のようです)
裏面に5種類の使えるサイズが左右に分けて刻印されています。
TOPにも同様のスパナがあります。
同じ物かと思っていましたが、スパナ平面部形状や対応サイズ種類(5サイズと4サイズ)などの違いがあり、明らかに別製品です。
(TOPは21、10、17、6mmであり、7mmに対応していません)
5.別ブランド
ベストツールは、BESTだけでなく、STEP BY STEPなど複数のブランドを運営しています。
ブランドSTEP BY STEPにもコンビレンチがあり、ホームセンター向け廉価版になっています。
本体にブランド名の刻印が無いため、本来は入手対象外にしていますが、BEST関連として特別に入手しています。
コンビレンチとスパナ、メガネがあり、3種共にインド製です。
インド製コンビレンチについては、EASTMAN5種を本ブログで紹介済みですので、参考にして下さい。(インド製ブランドを徹底紹介したブログは珍しいかと思います)
ちなみに、世界のハンドツールの製造拠点は今は台湾や中国ですが、次はインドなのだと思っています。
Step by Step/SK-6P

インド製の割にはかっちりと作られていて、とても良い印象です。
ブランド名(Steo by Step)の刻印が入っていないのがとても残念です。
表と裏の刻印が全く同じというのは珍しいと思います。

同じインド製のEASTMAN 凹パネル(アメリカ向け)との比較

写真の下側、アメリカで手に入れたEASTMANは細部の仕上げが粗く、如何にもインド製らしい作りになっています。
EASTMANのロゴも小さくて、取って付けたようなスタンプ印刷になっています。
写真上側がSteo by Stepで、スパナの端面の表面仕上げが綺麗で、メッキが輝いています。
一方で、EASTMAN(アメリカ向け)は削り跡がそのままで、ちょっと信じられない仕上げです。
EASTMANは5種類のコンビレンチをアメリカ市場に投入していますが、今のままでは販売促進は難しいかと思います。
Step by Step/スパナ SS-6P
コンビレンチと同様にインド製ですが、かっちりと作られています。
表と裏のデザインが同一なのもコンビレンチと同じですが、パネル形状が異なっています。
コンビレンチと同様にEASTMAN(アメリカ向け)との比較です。
スパナ部の端面仕上げもコンビレンチと同じで、Step by Stepは綺麗なメッキ仕上げ、EASTMANは削り面が露出しています。
EASTMANはインドを代表する輸出企業なのですが、どうしたのでしょうか。
ベストツールが運営しているブランド類
さらに、本体にブランド名が刻印されているのはBESTだけになっています。
※平松工業がかつて加入していた新潟県作業工具協同組合のホームページに企業情報が今でも残存しています。(下にも画像データーとして貼り付けてあります)
2)社屋
ベストツールと平松工業は共に新潟県三条市の企業で、いわゆる金物の街・燕三条に立地しています。

↑ベストツール事務所(旧・平松商店)

↑平松工業・工場兼事務所(閉鎖済み)
新潟県作業工具協同組合に残存していた平松工業の企業情報ページ

8.カタログ
赤いアンダーラインの6商品は、本文で現物写真と共に紹介しています。
BEST
STEP BY STEP
BESTの初代ブログは参考のために残しておきます。


















































