《前編》 より

 

 

【IRAをバックアップしていたアメリカ】
 IRAを資金面でバックアップしているのは、アメリカに移住した北アイルランド出身者達にほかならない。 ・・・(中略)・・・ これこそまさにイギリスでは万人が知る移民国家アメリカの許しがたい側面なのである。言い換えれば、アメリカこそ友好国のイギリス(北アイルランド)にテロリストを送り込んでいた黒幕、ということになる。(p.123)
 アメリカが世界中の大方のテロリスト養成に関与していることなど周知のことだけれど、米英の間でも、このような逆撫で関係があったというのは、さすがに意外である。
 とはいえ、英国の圧政を嫌って独立したのがアメリカであるし、帝国主義の時代、極東日本の支配権や、中東サウジアラビアの石油利権を争っていた両国でもあるから、友好国というのは、どこまでも共通する敵が存在する場合のみである。
 むしろ現在は、ロスチャイルド VS ロックフェラー という世界経済の覇権をかけた英米戦争の最終段階にあるといえるかもしれない。
   《参照》   『歴史に学ぶ智恵 時代を見通す力』 副島隆彦 PHP研究所 <後編>
            【アメリカの触手】
            【民政党=米ロックフェラー=三菱 VS 政友会=欧ロスチャイルド=三井】

 

 

【フランスがイラク戦争に反対したわけ】
 フランスがイラク戦争に反対したのは、ジャック・シラク大統領の頃の出来事であるけれど、
 NHKのBS1(衛星第一放送)でフランスの放送局のニュースをチェックしていれば、それが全人口6000万人のうちユダヤ系が60万人、北アフリカからの移民を中心とするイスラム系が500万人を占めるフランスでは、 ・・・(中略)・・・ (p.154)
 ということは、イスラム系住民の反米感情によって、現在のサルコジ大統領も、その後のフランス大統領も、反米路線を継承し続けることになる。

 

 

【カナダ】
「USA」はアメリカ合衆国のことだが、アメリカンやアメリカは 「北アメリカ」 を指し、「アメリカンズ」 や 「アメリカズ」 には中南米まで入ってくる。それをうまく使うと、カナダ人もアメリカ人である、という論理になる。(p.179)
 ついでに、カナダの首都がオタワになったわけ
 カナダのイギリス系住民とフランス系住民の間のフォッサマグナは極めて大きい。だから、首都をオタワにせざるをえなかった。英語圏のトロントとフランス語圏のモントリオールがお互いに譲らなかった結果、中間地点のオタワに落ち着いたのである。(p.184)
 冗談みたいな話であるけれど、これが事実。
 カナダの経済的な主要な地域の殆どは、アメリカとの国境から100km以内にあるというから、アメリカとカナダは、経済圏としては殆ど一緒である。
 ところで、カナダとアメリカにまたがる西海岸に沿って地域国家的な構想を持つ人々がいる。

 

 

【カスカディア構想】
 カスカディアとは、どのような概念なのか? ひと言でいえば、東部エスタブリッシュメントとの対立概念であり、「自分たちはバシフィック・ステイトだ」 という概念である。(p.180)
 バンクーバーとシアトルを中心として、北のカナダと南のアメリカを同面積ほど含んだ地域が想定されている。シアトルは昔からアジアとの玄関口であり、下記リンク書籍に記述されているようなポールシフトが起こるならば、東部地域は氷結してしまうから、カスカディア構想は速やかに実現するはずである。
   《参照》   『天皇祭祀を司っていた伯家神道』 船井幸雄・推薦 〈七沢賢治〉 (徳間書店) 《後編》
               【日本版ダ・ビンチコードの衝撃!】

 金融業界を巣窟としてモラルの劣った人びとが集結してきた東部地域から、IT業界を中心とするモラルの高い人びとが集結する西部地域へ、ワシントンD.C.からワシントン州へアメリカ国政の中心が移るのは、むしろ必然であって、そうなるべくしてなる本来の潮流なのだろう。

 

 

【日本の選択】
 アメリカは ・・・(中略)・・・ EUとの 「アトランティックの戦い」 に疲れて日本にクリンチしてくる可能性もある。だから日本は急ぐ必要はない。じっくり腰を据えてEU,ASEAN,中国の順で10~20年の長期戦略を進めていけば、アメリカとの関係も真のイコール・パートナーに近づいていくだろう。(p.253)
 「アトランティックの戦い」 とは、ドル対ユーロの “通貨戦争” を意味している。

 

 

【ハマス】
 パレスチナのハマスが管理するガザ地区は人口が密集しているうえに失業率が48%を超えている(戦争中はさらに悪化)。これらの人びとにとっては、ジハード(聖戦)さえも福音に聞こえるに違いない。テロリストを追い詰めるのではなく、なぜテロリストが生まれるのかを研究し、解決策を立案、推進する組織が必要だ。(p.264)
 対イスラエル強硬派組織として伝えられるイスラム原理主義のハマスであるけれど、テレビで放映されていたハマスの集会の映像を見ていて一番印象的だったのは、画面が 「緑色の旗」 で埋まっていたことである。
 古代ユダヤの失われた12支族の中のアシェル族は 「緑色の樹木(オリーブ)」 を支族の旗としていたけれど、ハマスにせよ、「緑色の旗」 を掲げるような人々が、本来、戦争を欲するはずなどないと思うのである。緑は戦争やテロとは無縁の色彩である。
 大前さんが書いているように、平穏な生活環境と、日々を困窮せずに暮らしてゆける仕事を与えることが第一優先事項だろう。そしてこれは、格差社会の中で困窮している、世界中の全ての人々にとっても同じことである。

 

 

【So long, America! …. until you come back to yourself.】
 アメリカ合衆国の概念は、グローバルでボーダレスな現代でも十分に通用する。 ・・・(中略)・・・ アメリカの問題はハードウェア(入れ物)ではない。長年の成功がもたらした驕り、アメリカ自身が 「グローバル・コップ」 として自意識過剰になったことからくる過剰防衛、そしてその利権に目がくらんだ人々が動かす政治 ・・・ そうしたソフトウェアの部分で一度オールクリアしなくてはならないということだ。(p.269)
 大前さんは、ご自身が学生として学んでいた頃のアメリカの素晴らしさを語っている。だからこそ、「昔のアメリカに戻るまで、しばし、さようならアメリカ!」 と英文でタイトルを書いている。
 21世紀の経済は、最後には人材の競争になる。ということは、優秀な人材を世界中から呼びこんでいるアメリカが立ち直るチャンスは大いにあるだろう。(p.220-221)
 日本は先行するアメリカの深い轍を最も忠実に辿ってしまっている国である。経済的には抱きつかれ心中のようになってしまうことは目に見えている。
 日本人本来の良さを知っている人々ほど、日本の行く末を憂えている。比較相対的に見て日本はまだましと言える点がいくつかあるとはいえ、それらが日本を浮上させる絶対確実な因子になっているのではない。
 疲弊する民間企業、働かない公務員、利権の構造、教育の低下、モラルの低下。
 アメリカについて言えることは、全く同じように日本についても言えるはずである。
 だから
 So long, Japan! …. until you come back to yourself.
 
<了>