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 2007年10月以来 『SAPIO』 に連載されていた記事が抜粋・再編集されたもの。
 常に世界中の情報に接しつつ、世界の中の日本という視点で具体案を示してくれている著者ある。

 

【「地域国家論」 の要諦】
 私がかねてから提唱してきた 「地域国家論」 の要諦は、地方を再生するためには、実は税金を使う必要は全くないという考え方である。世界を徘徊している約6000兆円ともいわれるホームレスマネー(世界金融危機で減ったが、まだまだ行き場のないカネは世界中にうなっている)を利用すればよいのである。それを可能にするためには、国が政策立案、立法、徴税の3権を(道州単位の)地方に移譲して、地方を自由にすることが 「繁栄の方程式」 の第一歩だ。(p.186)
 今後、与党となる民主党の中には、大前さんのアイデアを実現すべく活動してきた方が数人いるけれど、自民党の出身の政治家が多く存在する民主党の中で、果たして彼らはどれほど活躍できるのだろう。
   《参照》   『ロシア・ショック』 大前研一 講談社 《後編》
            【地域国家論を体現したEU】
   《参照》   『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一 講談社
            【「地域国家」 が生んだ 「中国の発展」 「アメリカの復活」】
 世界中からお金を吸引することによって富と雇用を創出し、さらなる繁栄を手に入れようとする(A)のか、それともこれまで通り日本企業を守りながら国民の税金を使って雇用の創出をすることで現状を維持しようとする(B)のか。これは日本の将来を左右する、極めて大きな分水嶺なのである。(p.196)

 

 

【国家ファンド】
 私は日本も国家ファンドを作るべきだと思う。日本はどの国よりもキャッシュを潤沢に持っており、かつどの国よりも運用実績が悪い。・・・中略・・・。約500兆円が戦略的に意味のないところに置かれている。銀行はそのお金で国債を買う、ファンドに投資する。消費者金融に貸し出す、くらいのことしかやっていない。そういうバカゲタ運用をやめ、塩漬け資金の10%程度、たとえば50兆円で・・・中略・・・。
 50兆円なら世界中が再敬礼する大きな影響力を持つし、仮に全部スッても日本が滅びることはない。 (p.71-72)
 国家ファンドの運用には、経験の浅い日本人ではなく、世界的に運用実績を上げている人材を集めて運用させるべきだと書いている。利権がらみのODAのような腐敗も抑制できることだろう。
 大前さんは、資本主義は、修正や制限が必要な部分を含んでいるが誤っていたのではない、という視点に立っている。サブプライム問題で冷え込んだ世界経済であっても、ファンドを活用して10%利回りが確保できない訳はないと考えている。
 もちろん国家ファンドは年金資金の運用にも活かされる。私は、年金資金(税金ではない2階部分)をファンドそのもので組成すべきだと思っている。これまでのようにドンブリ勘定で下手な運用をしていたら将来は暗い。(p.73)
 実質的に日本の年金制度はすでに破綻していると榊原英資さんなどもはっきり書いている。代案のない人々に任せると、国債を組み込むなどと、破綻を将来に先送りすることしか考えない。
 トヨタやホンダといった企業が、これらの優良企業の価値を見抜いた世界中の人々の資産運用を支えてきたように、日本人も海外の長期安定的発展を見込める企業を組み込んだファンドを作るべきであるとする大前さんの案は、具体的に考えられる唯一のものなのだろう。世界には発展途上の国々がいくつもあり、数十年という長期のサイクルで見れば変動リスクはないのだという。
 具体的かつ発展的な案は、下記の 「発展部隊」 と 「国家ファンド」 のタイアップである。

 

 

【最強国家・日本の戦略】
 つまり 「投資部隊」 による資源外交と 「発展部隊」 による小国の工業発展援助から生み出される影響力を背景として 「4大国」 と等距離外交に持ち込む。この3つを三位一体で同時進行させることが、日本が 「最強国家」 になるための新しい外交戦略なのである。(p.264)
 「投資部隊」 や 「発展部隊」 というのは、大前さんがアドバイザーとして関与している中国、韓国、台湾、マレーシア、シンガポールなどの諸国では当たり前に実施されていることなのに、日本では、政治家個人の利権や官僚の縦割りに分断されたODA程度の国際貢献でお茶を濁されている。
 日本という国を思い、毅然とした意志によって国家全体計画が実施されたことって、この国には一体全体あるのだろうか? 

 

 

【誇りある10%国家】
 このままいくと25年後には、日本のGDPは中国の10%くらいになってしまうかもしれないが、過去2000年の歴史を見ると、日本の国力の規模は、だいたい中国の10%程度だった。その関係が変わったのは明治維新以降の140年間だけである。つまり、歴史的には日本は中国と正しい相対関係に戻るわけで、決して悲観することはない。10%国家というのはアメリカとカナダ、ドイツとスイス、ドイツとデンマークのような関係であり、カナダやスイス、デンマークは少しも卑屈になっていないし、誇りを持って隣の大国と付き合い、利用している。日本も中国とはそういう関係になることを前提として、今後の国家戦略を立てていかなければならない。また。企業はそうした巨大マーケットで大活躍するイメージを持って努力するのが正解、ということになる。(p.85-86)

 

 

【近未来の4大国】
 近未来の4大国は、アメリカ、中国、EU、インドと記述されている。
 EUはロシアを引きこんで強力になるだろう。
 インドに関しては、その潜在力は既に十分すぎるほどハッキリ表れている。
 インドは遠くない将来に中国と比肩する国力を持つ。中国以上に優秀な人材が豊富なことも強みで、 『フォーテュン』 誌が選ぶ世界の一流500社のうち300社以上で、インド人が副社長以上の地位を占めている。(p.86)