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 割切りの良い考え方で、ビジネスマンの人生後半への備え方を示している。50代になっている人よりも、それ以前の若い人々のほうが読んでためになるだろう。

 

 

【松下とフィリップス】
 幸之助さんはフィリップスに出向き、徹底的に組織を学ぶ。松下は大成長を遂げフィリップスを追い越したときに、若い人は、「もう、あんな会社から学ぶことはない」と言ったけれど、幸之助さんは、最後まで「現在の松下があるのはフィリップスから習った手法のおかげ」と感謝の心を失わず、そのありがたさを語り継いだ。
 幸之助さんが94歳で亡くなったとき、デッカーさんというフィリップスの元会長が、わざわざ大阪の枚方までやって来て、足を引きずりながら葬儀委員長を務めていたのは感動的なシーンであった。また幸之助さんの人生の多くを語るシーンでもあった。 (p.18)
 この話は、聞いたことがなかった。よほど報恩感謝に徹していたのだろう。この本のテーマとは、殆ど関係のない記述だけれど、一番印象的だった記述はここである。
            【松下幸之助の交渉力】

 

 

【オール・クリア】
 それまでに積み上げたものを 「もったいない」 と思ってしまったら、オールクリア・ボタンは押せなくなる。守りに入ったらそのとたんに人生は負けだ。  (p.121)
 オール・クリアに至るまでの過程がそれぞれある。大前さんがご自身で経験してきたオール・クリアは、止むを得ないオール・クリアではなく、ましてや投げやりなオール・クリアなどでもなく、前向きで果敢なオール・クリアである。常に前向きに、エネルギッシュに、割切りのいい考え方を貫いている大前さんの人間性まで真似ができたら、その時、本当に有効なオール・クリアになるだろう。

 

 

【大前さんの自己分析】
 95年に都知事選に出馬して落選した時のことに関して、このような自己分析をしている。
 「都政から隠し事をなくします」 は都民の心に響く。でも、「都政は経営だ。経営のプロに任せろ」 は大和言葉じゃない、心に響かない。なんだか妙に納得してしまった。・・・ だって、大和言葉は僕の自然言語の中にはないのである。(p.151)
 私が、大前さんの本(『企業参謀』)を始めて読んだ時、「この著者は日本人離れしている」とはっきり思ったことを記憶している。思考パターンが普通の日本人のそれではなかったからだ。
 考え方を学べることが多いから、私は大前さんの本を多く読んでいるけれど、普通の日本人からみれば、この冴えた知性の大前さんは、やはり風変わりな日本人なのだろう。

 

 

【家族と食事のアポイント】
 大前さんは現在64歳だけれど、現役バリバリのころの凄さは普通ではなかった。
 自宅で食事が殆どできず、カミさんに泣いて抗議され、「わかった、秘書に電話してアポイントを入れろ、そしたらスケジュールに入れるから」 (p.181)
 この話は、大前さんの他の著作、おそらく 『やりたいことは全部やれ』(講談社) の中にも書かれていたけれど、大前さんはこの話を 「仕事一筋で生きろ」 というために書いているのではない。両立というためなのだろうけど、人によってはその逆に読み取ることもありうる。

 

 

【引退後の海外移住】
 国境をまたいで移住するというのは、実はすでに世界の標準になっている。 (p.212)
 これも国際派・大前さんならではの考えだろう。
 私は良質な外国人が、住みたいと思うような日本になってほしいと思っている。

 

 

【「願望を持たな、あきまへんで」】
 松下幸之助さんと稲盛和夫さんは、共通して 「願望を持たな、あきまへんで」 と言っている。成功したいと思ったら、強い思いを、持たなくてはいけません、と、そればかりを行っているのだ。
 マイ・ライフ・イン・ザ・フューチャーに、強い思いをもつ。  (p.220)
 これが、この本の最終ページに書かれている言葉である。50代だけではなく、あらゆる世代のフューチャーに、この言葉は有効である。
 
<了>