イメージ 1

 世界屈指のコンサルタントとして有名な大前さんが、プロフェッショナルのあり方を、御自身の経験からプロフェス(告白)して教えてくれている。2005年9月初版。

 

 

【ビジネス・プロフェッショナル】
 ビジネス・プロフェッショナルのことを、さきほど 「己の技量を一生かけて磨き続ける覚悟ができている人」と述べましたが、正確には 「磨き続けてしまう人」 たちであり、その知的好奇心は飽くことがありません。 (p.27)
 ビジネスの世界には唯一の答えなどない。ましてや21世紀は答えのない時代になってゆくとハッキリ述べている著者。ビジネス・プロフェッショナルの条件として “勉強好き” を挙げている経営者は多い。
 成功するには、成功したいと願い、必ず成功すると信じる気持が欠かせないといわれます。・・・中略・・・、そのような気持はあくまでも必要条件であって、それだけではダメです。離陸し、上昇し、軌道に乗せるまでのブースターみたいなもので、そこから先は知的好奇心というエネルギーがなければ、一流と称される域には達し得ないのです。この点も、平凡と非凡を分ける決定的な要素と言えるでしょう。 (p.28)
 知的好奇心というエネルギーがない人は、横向きならまだしも後ろ向きの反対論者・否定論者になる。時代の激変には関係なく安定した生活を営んでいる公務員には、この手の人々が多いだろう。彼らは 「前例がない(からやらない)」 と言う。21世紀は、明らかに前例がないビジナス環境なのだから、公務員感覚でいたら日本は衰退してしまう。
     《参照》    『本調子』  清水克衛・七田眞・斎藤一人・ハイブロー武蔵・他 総合法令
                  【成功者の条件  <七田>】

 

 

【ファイト・オア・フライト】
 知的好奇心が中途半端な人、すなわち知的に怠惰な人は、ほぼ例外なく自己防衛的で変化に後ろ向きです。なぜなら、チャレンジ精神とまではいいませんが、新しいことへの興味に乏しいからです。常日頃から、目新しいこと、自分の知らないことを貪欲に吸収しようという姿勢が身についていませんから、いざという時、心理学で言われる 「ファイト・オア・フライト」(抵抗するか、逃げるか)になってしまう。 (p.30)
 一般人の中には、「イート・オア・スリープ」(食べるか、寝るか)という豚族も多いことだろう。

 

 

【マッキンゼーの規律】
 この規律とは 「 up or out 」、すなわち 「昇進しない人間、伸びていない人間は去れ」 というものです。・・・中略・・・。入社後の年数でグリッド(階級)をつくり、その範囲で能力を伸ばしていない人には、退社を進めるのです。毎年20%が退社するわけですから・・・中略・・・。これがルールであり、顧客に迷惑をかけない唯一の方法だということを知っているからです。(p.33)
 普通の日本人はおそらくこのような苛烈な規律の会社には志願しないだろう。知的好奇心があったとしても、コンサルタント・ビジネスに嵌るかどうかは、おそらく別問題である。

 

 

【規律の力】
 2001年の9・11同時多発テロ以降、アメリカ航空業界全体が低迷していたなかで、サウスウエスト航空だけが一人、気を吐いていたのも規律の力です。京セラがあそこまで巨大になっても、企業家精神を失わずにいるのは、稲森和夫氏の経営哲学が組織に浸透しているからです。IBMの・サミュエル・パルサミーノがガースナー改革の後トーマス・ワトソン・シニアの 「基本的信条」 に立ち返ったのも規律の力を信じてのことです。(p.35)
 この3社の規律は、マッキンゼーの 「 up or out 」 のような苛烈なものではないだろうけれど、規律は組織の骨格となるものだから、なければ困難に遭遇したとき、立ちゆかなくなるだけである。
   《参照》   『我が心のフットボール』 テレ・サンターナ  ビクターブックス
             【自己管理の要請 : 規律と品位】

 

 

【緊張感を持つ】
 マイクロソフトにしても、トヨタ自動車にしても、経営トップは強烈な危機感を抱いています。かつてビル・ゲイツは、「今日、私が一つ判断を間違えば、この会社は明日にも潰れる。そういう夢を今でもよく見る」 と私に話してくれました。 (p.74)
 こういう世界に生きている人々が対象として描かれているからこそ、ビジネス書は面白い。
 しかし、衰退する地域、衰退する地方の企業には、やはり緊張感がない。そのような地方に栄えている企業というのは、せいぜい親方日の丸大企業から仕事を受けて行うだけの子会社であったりする。そんな受注パイプ役でしかないような子会社の係累社長に、「私たちの地方が発展するには?」 などとインタビューしている地方放送局の取材も間抜けの極致である。何のインパクトも何の具体性もないありきたりな回答を聞かされるだけ、心底アホ臭くなってくる。

 

 

【デジカメの近未来】
 人間の目は300万画素以上の画像を識別できません。つまり、それ以上の画素数は無用です。部品としてのデジタルカメラはこのハードルを超えています。 (p.107)
 私は今でも5年前に買った200万画素のデジカメで十分である。これですらサーバーにアップロードするのにやや重たいらしいのに、安いからといっても1000万画素のデジカメを買う必要をまったく感じていない。
 部品としてのデジカメとは、携帯電話に搭載されているデジカメのこと。単体としてのデジカメは、愛好家によって保たれるだけの狭い市場に依存するしかなくなるだろう。

 

 

【ネット店舗の初期コスト】
 ネット店舗は簡単に開設できますが、アメリカの統計によれば、最初の1ドルを徴収するのに平均84ドルかかります。つまり、ネットは路面店よりも初期コストが高くつくのです。 (p.97)
 「エエッ!」 と思う。クレジットカード決済を行う段階で、殆どの客は逃げてしまうという。分かる気がする。初期登録って結構面倒。このような不都合を回避するためにも、企業はいろんな決済方法を考えている。

 

 

【フリクション・フリー】
 インターネットの世界には 「フリクション・フリー」 という概念があります。摩擦(決済では代価の回収コスト)がより少ないところにヒトもカネも一気に流れていきます。・・・中略・・・。ボーダレスな経済空間での使い勝手を追求するなら、決済通貨が任意に選択できるものが望ましいと考えられます。クレジット、プリペイド、ポストペイドの3機能を兼ね備えた一枚が誕生し、そこにフロート式デビットカードなどで総合口座を自由に組み合わせれば、決済管理のフリクションはより少なくなります。(p.115-116)