ショーン・ダフィシリーズ第六弾。
ショーン・ダフィシリーズ第五弾。本作でMWA最優秀ペイパーバック賞を受賞した。今回は『アイル・ビー・ゴーン』に引き続き、クラシックな不可能犯罪を扱う。
ショーン・ダフィ・シリーズ四作目。
ベルファストに住む新興ブックメーカーの富豪夫妻が、射殺される事件が発生。容疑者と目されていた息子が崖下で死体となって発見される。現場には遺書も残され、家庭内の争いによる単純な事件かと思われた。しかし、息子のガールフレンドが排ガス自殺に見せかけ殺されたことが明らかになり、事件は連続殺人と断定。おなじみクラビーや新米ローソン刑事とともにダフィは真相を追い始める。
折しも北アイルランドでは不穏な事件が続発。外からの武器の密輸が横行、地元の兵器企業<ショート・ブラザーズ>の在庫から対戦車ミサイルシステムが盗まれ、アングロ=アイリッシュ合意の調印に反発する小競り合いがあちこちで起きていた。
暴動鎮圧任務に忙殺されながらも、事件が<ショート・ブラザーズ>の盗難と武器売買を巡るもので、謎のアメリカ人が関わっていることをつきとめる。
このシリーズでは現代史の本当にあった事件の裏側でショーン・ダフィが関わっていました、というお約束の展開がある。今回も著者のあとがきにもある通り色々詰め込まれていて面白い。中でもレーガン政権時代最大のスキャンダルと実際に兵器企業で起きた盗難事件を結びつけてしまう点は感心した。一作目ならこの「おとなしいアメリカ人」をふん捕まえてやろうとしただろうが、自分の手の届かない物事を追うのに疲れた「成熟した人間」は事件ファイルを閉じたままにする。
本書の最大の見せ場はダフィの成長と身の振りだろう。
前三作でキャリアのジェットコースターを経験したダフィは、いままでのスタンドプレーの数々を反省し今回は比較的大人しく振舞う。部下や後進を育成し、特別部の捜査員と仲良く事件を捜査する。さらに前二作で登場したMI5の支部長ケイトからMI5へのオファーがかかる。刑事一筋で頑張ってきたが、警察上層部は彼の存在を煙たがってこれからのキャリアも見込がない。オックスフォードに出張した時には、犯罪捜査に加え暴動鎮圧までさせられ、運転中にRPGを撃ち込まれたりする身の上とモース主任警部の世界そのままの平和ボケしたテムズ・バレー署とに落差を感じる。自分の能力を認めてくれるMI5に転向したほうがいいのではないか? 揺れ動く身の振りの行方は、最後に衝撃の結末を迎えることになる。
シリーズは今のところ2023年で七作目まで書かれているので半分まで来たことになる。翻訳者のあとがきを読むと翻訳続行は期待しても良さそうだが、まだまだ油断はできない。マッキンティを再び作家廃業に追い込む訳には行かないので、できる限り新刊を購入して応援しようと思っている。がんばれ、武藤さん。負けるなマッキンティ。
シリーズ三作目はあのシマソー『占星術殺人事件』のインスパイア作品。
前作で降格になったダフィは、古巣キャリクファーガス署を追われる。そして、当て逃げの濡れ衣を着せられ、退職することに。何もかもが嫌になり北アイルランドから出ようとするダフィを引き留めたのは、MI5だった。彼らは、かつての友人にしてIRAの有能な指揮官、爆弾テロリストでもあるダーモット・マッカンを捕まえれば、犯罪捜査部の警部補に返り咲けるという。刑事に戻りたいダフィは申し出を受けるも、彼の親族、関係者は口を閉ざしたままで埒があかない。しかし、関係者の一人からある殺人事件の犯人を見つければ、ダーモット・マッカンの居場所を教える取引を持ち掛けられる。わらしべ刑事は雲をつかむようなテロリスト探しよりも、得意とする殺人事件の捜査に取り掛かるのだが、それは密室と化した店内で事故死と処理された事件だった。
ミステリファンで「密室物」を積極的に嫌いという人は少数だと思う。紀田順一郎さんは「密室に夕暮れが訪れた。カンヌキのかかった厚い扉をこじあけようとする者は、すでにいない」と半世紀前に密室物は袋小路に入り、すたれると言った。ところが、いまだに作り手と読み手はこのジャンルに熱中する。
シマソーインスパイアと聞いていたので、空を飛んだり、斜めに滑ったり、ピエロが消えたりするのかと想像していたが、超古典的なそれこそ閂がかかった密室物だった。しかし、古臭い密室ミステリも見せ方次第で魅力的な読み物になる。トリックそのものは単純で大したことないが、事故か殺人か、地道な捜査で明らかになる工程が面白い。当時の警察の徹底した捜査に本当に事故ではないかと弱気になるが、同じ時期に同じ町でおきた窃盗事件にひっかかりを覚えたダフィは、その周辺を洗っていくうちに見落とされていた手がかりを見つける。
密室の謎解きが終わっても、本筋の大捕物や歴史の裏ではたらく深謀遠慮の世界を垣間見させる内容で、ぐいぐい引き込んでいく。
今回は、歴史的事実とダフィの活躍の接点がかなり密接なものになっている。1984年10月12日のサッチャー暗殺未遂だ。保守党党大会開催中のブライトンのホテルでIRAによる爆弾テロで議員やその家族など5人が死亡、30人余りが負傷した。サッチャーは無事だったのだが、その裏でダフィがまさに粉骨の努力をしていたことになる。 望み通り、刑事への復職と地位を手に入れたにも関わらず、ダフィ気分は晴れない。北アイルランドの未来を聞かされたダフィは自分たちが身体を張って守っていたものが無意味であるように感じ気落ちする。
本書は2014年に出版された。ヨーロッパ統合がなされ国境の意味がなくなる未来に北アイルランド問題なんて些末なことだとMI5に言わせる著者だが、ブレグジットによって再びアイルランドとの国境問題が取り上げられるなんて、想像もしていなかったに違いない。
マッキンティさんは『レイン・ドッグス』で再び不可能犯罪物をやる。
ショーン・ダフィ・シリーズ二作目。
内紛で混乱しているのに、妙にすっとぼけた、でもしたたかなアイルランド人たちの会話がツボにはまって好きになっている。
前作で警部補に昇進したダフィは、部下のクラビー巡査とトランク詰めにされた切断死体遺棄事件を捜査することになる。検視の結果、死体は冷凍保存された後、切断、遺棄されたようだが、おかしなことに死因は毒。使われたのはトウアズキという珍しい植物から抽出された毒物アブリン。重火器があふれかえっている北アイルランドで、誰がわざわざ毒殺を選ぶのか? さらに被害者の入れ墨から身元がアメリカ人で、しかも歳入庁調査官であったことが分かる。
奇妙な殺害方法かつ被害者が外国人であることから、上司のブレナン警部と部下たちは嫌な予感しかしない。
一方ダフィは彼女と疎遠になりはじめ、私生活が荒れ始めているため没頭できる仕事が必要だった。超過勤務もなんのその、トランクの持ち主とトウアズキという二つの手がかりから捜査を開始する。
今回も実在の出来事や人物を絡めて物語を描く。
フォークランド諸島をめぐってイギリスとアルゼンチンの間に起きたフォークランド紛争。北アイルランドのイギリス軍がフォークランドに取られ、手薄になったため、王立アレスター警察隊の激務に拍車がかかる。治安が乱れ、殺人捜査もままならない。しかし、ねっからの刑事であるダフィは、どんなに忙しくても、やはり気になったら調べずにはいられない。自分の捜査と関係ない事件に首を突っ込み、今回もお叱りをうけることになる。
さらに「バック・トゥー・ザ・フューチャー」でおなじみのあのガルウィングで有名なデロリアンが出てくる。実は解説でジョン・ザッカリー・デロリアンの顛末を初めて知った。
理想の車を作るためにGMから独立して起業。製造工場をイギリスの補助金もあり、北アイルランドのベルファスト郊外につくるデロリアン。ダフィと話しするデロリアンは、電気自動車のことをしゃべったり、いまのテスラに近いことをやろうとしていた早すぎる企業家として登場する。しかし、その正体は・・・。
販売不振、イギリス政府からの補助金停止、会社資金の私的流用、とどめがコカイン所持容疑の逮捕によって、倒産に至るわけだが、この歴史的な事実が、事件に絡んでくる。
つきあっていた女性にふられ、助けたかった女性は助けられず、さらに降格の憂き目にあう。次作で復活はあり得るのか!?
ここ数年お気に入りになった作家。
エイドリアン・マッキンティは最初<翻訳ミステリ大賞シンジケート>で島田荘司『占星術殺人事件』に触発されて、ノワールの作風でクラシックスタイルの密室殺人を書いちゃう謎解き大好きな変わり種の作家と紹介されたと思う。その後ショーン・ダフィ・シリーズが順調に邦訳され追いかけてきたが、謎解きよりもショーン・ダフィの語り口そのものが好きになった。個人的にはルヘイン、ブロック、リューインと肩を並べるくらいの名匠だと思っている。
昔、ちひろ美術館にたまたまに出かけた際に赤羽末吉さんの企画展があったのでみた。名前は知らなかったが『スーホの白い馬』の作画の人だった。調べてみると1980年、国際アンデルセン賞を日本人として初めて受賞した人。赤羽さん、実はスゴイ人だった。
ミステリとメインストリームの中間を狙った感じの小説。
1972年末、英国南端のコーンウォールの絶海にメイデンロック灯台から3人の灯台守が忽然と姿を消した。灯台は内側から施錠、食事も手つかずのまま、時計はすべて8時45分で止まっていた。当時このミステリに様々な憶測や推理が流れたが、灯台を管理する公社〈トライデント・ハウス〉は調査団を立ち上げ、前科者の灯台守が感情を爆発させ二人を殺し、自らも海に消えたと公式見解を出し、事件の幕引きを図る。
それから20年後、1992年ある海洋冒険小説作家ダン・シャープがこの未解決の失踪事件に光を当てた小説を書こうと、灯台守の家族、当時の恋人たちへの取材を開始する。
本書は実際に1900年にイギリスであった海難事件に着想を得ているそうだ。しかし、レーベルがクレスト・ブックスですから、あくまでメインストリームな小説。消失事件の謎解きやホラー幻想の雰囲気はあるがそれを全面に出さないで、事件にまつわる関係者の思いが物語の中心になっていく。作者は本書前に別名義でエンタメ小説を書いていたようで、残された関係者たちの秘密や思惑、過去が明かされていく展開はミステリを読むような感覚で引き込まれる。個人的には子供を亡くす親の話に弱くなっているので、こういう話を読むと辛い。
本書は1992年の物語と1972年の灯台守たちの運命の日までの生活が交互に描かれ、失踪事件の「真相」が明かされているような形にはなっている。
しかし、1972年の物語が作家が書いた原稿であるならば「百通りか、もっとあるかもしれない」物語の一つに過ぎないことになる。この「真相」は関係者の一人ヘレン寄りの内容で、もう一人の関係者ジェニーが読んだら激怒するものだ。作家もヘレンに「あなたの本」と言っているから、やはり読者は作家の書いた「真相」を読んだことになると思う。
現実は「藪の中」だらけで真相が分からない話が多い。本書の場合、死体もないので藪の中どころか、さらに広大な「海の中」になる。海レベルだともう「真相」なんて選びたい放題な状態だ。
しかし、作家やヘレンはあえて「真相」を選ばない。選ぶことで霞んでしまう真相があるならいっそ選ばないで、それぞれの真相の光をそのままにしようとする。
ミステリの文脈でいえばオープンな多重解決物といったところか。思慮に富んだ結末は、唯一無二の解決を知ってスッキリしたいなんて欲求を吹き飛ばす。読後は爽やかで穏やかな気分になる。
イーアン・ペアーズの代表作『指差す標識の事例』は、四部構成になっており、それぞれが一冊の長編並みの長さになっている。文庫上下巻二冊で1000ページ近くするので、思っていた以上に読むのに時間がかかった。久しぶりに歯ごたえがある小説読んだなという気分。17世紀、支配者がかわる動乱の時代で魔女狩りや占星術の迷信と近代科学の萌芽が混在するイングランド、オックスフォードに読者を誘う重厚で、ロマンティックな歴史ミステリだ。
独裁者オリバー・クロムウェル亡き後、王政に戻りチャールズ二世が統べる1663年のイングランド。学問の街、オックスフォードで大学教師ロバート・グローヴが砒素で毒殺される事件が起きる。疑われたのは下女のサラ・ブランディ。病に伏せる母を助けて欲しいと懇願するも断られたことを恨みに思っての犯行と思われた。サラは数々の状況証拠から裁判で有罪になり、絞首刑の後、火あぶりとなった。傍で事件の流れを見てきた関係者たちは各々、手記で当時のことを回想する。ヴェネツィアから来た医学に心得のある青年、父親の裏切り者の汚名を雪ごうとする息子、暗号解読の達人にして陰謀好きの幾何学教授、そして、「事実」の収集を心掛ける学者。食い違う主張がぶつかり、読者は少しづつ認識を補正されていく。
第一の手記「優先権の問題」
マルコ・ダ・コーラは父の命を受け悪徳商人からイギリスにおける商権を取り戻すために使わされるのだが、当面の生活と対策を練るためにオックスフォードのロバート・ボイルを頼る。その途中、彼は貧しい母親の病気を治すことでサラと知り合うことになる。母親を助けるために当時としては初めてとなる母娘間における「輸血」をリチャード・ローワーと秘密裏に行い、命を助けようとする。一方で、オックスフォードで生活し始め、知り合って間もなく死んだロバート・グローヴの死を検証に立ち会う。その死の原因が砒素で、購入したのがサラであり、事件当時のグローヴの指輪を盗んだことが明らかになる。やがて、裁判でサラは死刑となり、ローワーによって無茶苦茶に解剖される。死者を冒涜したローワーと決別し、コーラはヴェネツィアに帰ることになる。
第二の手記「大いなる信頼」
オックスフォードの法学徒であったジャック・プレスコットは、第一の手記をローワーから手に入れ、在りし日の冒険を認める。
王党派として戦っていたが、敵方と内通する暗号文を差し押さえられ、裏切り者として告発された父親ジェイムズは海外に逃走し死んだ。一族は土地や財産を没収された。父親の無実を証明し、プレスコット家の再興を願うジャックは奔走、父親を嵌めた陰謀の全貌が見えてくる。その過程でプレスコットはサラを手籠にした上、親友トマス・ケンがグローヴとの争いを有利に進められるようにサラとグローヴのふしだらな密通の噂を流す。怒ったサラは呪いの言葉を吐きプレスコットはだんだん調子が悪くなり、サラの抹殺を決意。折しもトマス・ケンがグローヴの死の現場にいた事を目撃したプレスコットは彼をかばうためサラに罪を被せる。
第三の手記「従順なる輩」
クロムウェル時代はジョン・サーロウに、チャールズ二世時代はヘンリー・ベネットに仕え、体制転覆をはかる破壊者の監視を続けるジョン・ウォリスは独自の諜報活動のなかで、以前から怪しいと睨んでいたマルコ・ダ・コーラ宛ての一通の解読不能の手紙を入手する。それは折しもジェイムズ・プレスコットが、議会派に内通し王党派を裏切った際に通信に使用していた暗号文書と同じ様式であった。ある時は医学をかじった学究の徒、ある時はトルコ人相手に勇猛果敢に戦った戦士、得体の知れないカトリック教徒コーラが、イングランドを揺るがす重大事件を起こすのでは? と疑惑を深める。やがてウォリスは、大いなる陰謀の世界を覗くことになる。裏の裏はもはや表という複雑なドラマのなかで、ウォリスは、コーラが自分を毒殺する為にワインに毒を仕込んだが、誤ってグローヴが飲んでしまったことを確信するもサーロウの見えざる力によって、サラの死刑に手を貸すことになる。
第四の手記「指差す標識の事例」
三つの手記に脇役で登場したある人物は、三つの手記を読み、それぞれの偽りと誤りを指摘する。コーラはある事を隠すために嘘を書いており、プレスコットは妄想に取りつかれ自分に都合のよい物語をつくり、ウォリスは知ったかぶりの陰謀について書いているが本当のことを知らない。第四の手記の書き手は三つの手記と自分の行為、見知った出来事をつなげていき「事実」を描こうとする。それは誰も想像しなかった愛と奇蹟、そして、決して世間には公表されない秘密についての告白だった。
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』、ジョン・ファウルズ『マゴット』(これは若島正さんの指摘)、アガサ・クリスティ『五匹の子豚』をちゃんぽんしたような感じ。物語はフィクションなのだが、実在の人物が残した「手記」(四番目のは、死後に焼却が指示されている)という形式にすることで、モキュメンタリータッチになっている。それぞれの手記の書き手しか知らない意外なドラマが次々と明かされていく展開は面白いが、如何せん長い、長すぎる。
また、正直なところ王党派、議会派の対立、国教会と非国教会の対立などイギリス史の知識が乏しいので、十分に作品を楽しめたと言えない。本書最大の秘密である信仰とアイデンティティの問題についても、事の重大さは理解できるが、現代の日本を生きる私にはあまりピンとこなかった。しかし、ル・カレを代表するスパイ小説を生み出すイギリスの土壌はこういう歴史から来ているのだなと感じた。
ペアーズはこの作品以降、凝った構成の小説を書いているようだ。訳されるか分からないが、あまりに凝ったものを出されると、柔い小説しか読んでないので、こちらの「歯」がもたないかもしれない。
本書は、イギリスの架空の町フラックス・バラを舞台にした全十二作のシリーズの五作目。
救いを求める匿名の手紙が、警察署長、検死官、新聞社の編集主任のもとに届く。ただの手の込んだイタズラか? それとも本物のSOSか? やがて、時おかずして殺人事件が発生する。
被害者の女性は会社経営者の妻で、金魚を飼うために水を張った庭の浅い井戸に頭から突っ込んで溺死。両足には無理やり持ち上げられた痣があった。
女性のタイプライターを調べると匿名の手紙を打ったものと一致。さらに夫が事件当時にお粗末なアリバイを主張したことからパーブライトは夫が犯人だと見立てる。しかし、他の動機も捨てきれない。
被害者はフラックス・バラで慈善事業を幅広く手に出していた慈善家で、他の慈善団体と揉め事があった。パーブライトは彼女の残した手紙からその揉めていた団体の事務局長にミス・ティータイムの名前を見つける。
折しも、フラックス・バラにロンドンの私立探偵モーティマー・ハイブがやって来る。謎の依頼人〈ドーヴァー〉の指示の下、依頼人の妻の浮気相手を調査していた。色々な妨害がはいりながらも調査をやり遂げたのだが、依頼人の反応はいまいちで捜査の終了を宣言する。鬱屈としたハイブは、ロンドンに帰る前に旧知の女性ルシーラ・ティータイムを表敬訪問する。
かくして警察と探偵の線が女傑のもとに繋がり、崩壊した家庭のブラックな犯罪が浮かび上がる。
謎多きミス・ティータイムの正体は、話の節々からどうやらコンフィデンスマンだということが伺える。
それ故、彼女の友人でかつて別れさせ屋として活躍した私立探偵モーティマー・ハイブが「コンフィデンスマンJP」のダサいけど色男な五十嵐(小手伸也さん)の姿と重なり微笑ましかった。
ミステリとしても面白い。
手紙のトリックは巧妙だが不測の事態で不自然になってしまい、犯行の露見につながる。さらに犯人にとってついてないのが、モーティマー・ハイブが妙に生真面目過ぎたことで、計画そのものが瓦解してしまう。犯人がかわいそうになる。
論創社は引き続き〈フラックス・バラ・クロニクル〉を翻訳してくれるようだ。
特に気になっていたThe Flaxborough Crabを訳してくれるようだ。よろしくお願いします。













