ゆるゆるカエル侍の大冒険 | 読んだらすぐに忘れる

読んだらすぐに忘れる

とりとめもない感想を備忘記録的に書いています。

昔、ちひろ美術館にたまたまに出かけた際に赤羽末吉さんの企画展があったのでみた。名前は知らなかったが『スーホの白い馬』の作画の人だった。調べてみると1980年、国際アンデルセン賞を日本人として初めて受賞した人。赤羽さん、実はスゴイ人だった。



日本画家からアメリカ大使館に勤務など紆余曲折を経て絵本作家に転身した赤羽末吉の画風は墨絵や大和絵が中心。担当する絵本の作画内容や自身のオリジナル絵本も昔話、古事記や平家物語など和風のものが多い。展示されていた雪の情景や戦乱の絵、迫力ある鬼たちなど大人も楽しく鑑賞できる素晴らしいものだった。しかし、そんな赤羽末吉展でひときわ異彩を放っていたのがこの『おへそがえる・ごん』だ。



赤羽晩年のオリジナルシリーズ絵本。伝統的だがポップ、コミカルにしてプリティ。そして、絵本にしては120ページ前後の厚さが3冊と規格外の大作。ひと目で気にいった。


押しボタン式のキュートなへそを押すと怪しげなスモッグを吐き出す不思議なかえる、ごん。愛刀のへそかき棒を腰に携え、人間の子供けんや、両手のある蛇どんと旅に出かける。旅の目的は戦に駆り出されたけんの父親を探すこと。道中にはぼんこつやまに棲むみどりの狐とあかい狸(どん兵衛と逆の色使いだ)、村から女子供を連れ去るおにのさんぞく軍団、戦にあけくれる殿様たちといった悪役が登場。仲間と協力して奇想天外な方法で悪党を懲らしめていく。


絵をみればわかるように国宝、鳥獣人物戯画のかえるがモデルになっている。ゆるーいタッチで楽しいしかわいい。文もゆるーくて面白い。


「鬼の赤羽」の異名をもつ作家の鬼はこんな感じ


『源平絵巻画集』などで描いた戦の描写は本作にもでてくる。


3冊セットで買うのは結構な出費だが、本棚に入れて置きたい素敵な絵本。