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読んだらすぐに忘れる

とりとめもない感想を備忘記録的に書いています。

本書は、イギリスの架空の町フラックス・バラを舞台にした全十二作のシリーズの五作目。



伴侶に殺されるかもしれない、助けて欲しい。
救いを求める匿名の手紙が、警察署長、検死官、新聞社の編集主任のもとに届く。ただの手の込んだイタズラか? それとも本物のSOSか? やがて、時おかずして殺人事件が発生する。
被害者の女性は会社経営者の妻で、金魚を飼うために水を張った庭の浅い井戸に頭から突っ込んで溺死。両足には無理やり持ち上げられた痣があった。
女性のタイプライターを調べると匿名の手紙を打ったものと一致。さらに夫が事件当時にお粗末なアリバイを主張したことからパーブライトは夫が犯人だと見立てる。しかし、他の動機も捨てきれない。
被害者はフラックス・バラで慈善事業を幅広く手に出していた慈善家で、他の慈善団体と揉め事があった。パーブライトは彼女の残した手紙からその揉めていた団体の事務局長にミス・ティータイムの名前を見つける。
折しも、フラックス・バラにロンドンの私立探偵モーティマー・ハイブがやって来る。謎の依頼人〈ドーヴァー〉の指示の下、依頼人の妻の浮気相手を調査していた。色々な妨害がはいりながらも調査をやり遂げたのだが、依頼人の反応はいまいちで捜査の終了を宣言する。鬱屈としたハイブは、ロンドンに帰る前に旧知の女性ルシーラ・ティータイムを表敬訪問する。
かくして警察と探偵の線が女傑のもとに繋がり、崩壊した家庭のブラックな犯罪が浮かび上がる。


謎多きミス・ティータイムの正体は、話の節々からどうやらコンフィデンスマンだということが伺える。
それ故、彼女の友人でかつて別れさせ屋として活躍した私立探偵モーティマー・ハイブが「コンフィデンスマンJP」のダサいけど色男な五十嵐(小手伸也さん)の姿と重なり微笑ましかった。


ミステリとしても面白い。
手紙のトリックは巧妙だが不測の事態で不自然になってしまい、犯行の露見につながる。さらに犯人にとってついてないのが、モーティマー・ハイブが妙に生真面目過ぎたことで、計画そのものが瓦解してしまう。犯人がかわいそうになる。



論創社は引き続き〈フラックス・バラ・クロニクル〉を翻訳してくれるようだ。

特に気になっていたThe Flaxborough Crabを訳してくれるようだ。よろしくお願いします。