実は、本作をノンフィクションのつもりで最初から最後まで読んでしまいましたが、読み終わった後に、あとがきを読んで、実在した人物をモデルにした小説だと気づきました。
本作の内容は・・・
準強盗致死罪で無期刑囚となった佐久間清太郎(実在した白鳥由栄がモデル)は、類稀なる優れた頭脳と身体能力を駆使して、犯罪史上未曾有の四度の脱獄を実行した(昭和11年に青森刑務所を脱獄、昭和17年に秋田刑務所を脱獄、昭和19年に網走刑務所を脱獄、昭和22年に札幌刑務所を脱獄)。最終的に収監された府中刑務所の所長鈴江氏の尽力により、佐久間は54歳で仮出所し、71歳で死去した。佐久間と彼を監視する刑務所関係者たちとの長年にわたる攻防を入念に追跡し、当時の時代背景とともに描き出す・・・というストーリーです。
wikipediaで調べてみたんですが、佐久間氏の人物像や脱獄手口や、佐久間を取り巻く状況などは、実話に基づいてかなり忠実に描かれているようなので、ノンフィクションに限りなく近いフィクションといった感じです。
実話がベースとはいえ、スリリングでドラマチックな展開が続き、一気に読み終えてしまいました。
特に、佐久間氏の頭脳と身体能力、サバイバル能力の非凡さには驚嘆の連続でした。
刑務所に収監されるたびに、監視の穴や逃走経路を見つけ出し、綿密な脱獄計画をたて、周到に準備し、時機を見て脱獄を成し遂げた佐久間氏。
また、挑発的な行動や脅し文句で看守たちを心理的に動揺させ、逃走に有利になるように看守たちを操るという狡猾さも持ち合わせていました。
思いつく限りの厳重な監視体制を敷いても、難なく脱獄を達成してしまう佐久間に対して、刑務所長や看守たちが手を焼いていて、気の毒になるほどでした。
戦時中の看守の人員不足や戦後の社会秩序の混乱といった要因もまた、佐久間の逃走に有利に働いたようです。
中盤までは佐久間が得体のしれないモンスターのように描かれていましたが、終盤では、ある看守長と佐久間との間に絆のようなものが生まれる場面や、最後に収監された府中刑務所の所長に脱獄手口を自慢げに披露するといった佐久間の可愛げのある部分も描かれて、物語に暖かい雰囲気が流れてきてホッとしました。
最後の府中刑務所では、刑務所長の鈴江氏による温情的処遇が功を奏し、以前はあれほど憎たらしかった佐久間がついに改心して模範囚となり、54歳には仮出所まで果たしたことに驚きました。やはり、どんな人間にとっても、環境が重要ということですね。府中刑務所で、佐久間が徐々に心を開いていく過程は感動的でした。
ただ、上述したように、本作はノンフィクションに限りなく近いとはいえ、フィクションなので、どこまでが実話でどこからがフィクションなのかがはっきりしなくて、もやもやした感じが残ってしまいました。
ここまで実話に忠実に記載するのなら、いっそのこと100%ノンフィクションの作品を出版して欲しかったです。
