以前に読んだ「ワイルド・ソウル」が衝撃的に面白かったので、その取材記ということで本作を読んでみましたが、単なる取材記とか旅行記という枠を超えた面白さでした。
垣根涼介さんの小説は好きで、以前からかなり読んできましたが、本作も著者のワールド全開で、面白かったです。
著者は、小説執筆のために、ブラジルとコロンビアの主要都市二十数か所を訪れたそうです。
かなり治安の悪い地域にも滞在されたようですが、あまり危機感を感じた様子はなく、それぞれの現地に溶け込み、現地民たちと親しくなり、現地にすっかり魅了されたようです。
本作では、それぞれの地域の空気感や雰囲気、地元民たちの人間性や魅力が手に取るように描かれ、さすがにプロの作家だと感心しました。
垣根涼介さんの文章力もさることながら、地元民たちに溶け込むコミュニケーション能力も素晴らしいと思いました。
地元民だけでなく、飛行機内とかバーでたまたま隣り合わせた人たちと交流したエピソードも面白く、彼らとの会話から得られた体験談の一部が、「ワイルド・ソウル」にも取り込まれていました。
「ワイルド・ソウル」という傑作は、著者のコミュニケーション力、現地での取材努力、地元民たちの取材協力の賜物だったようです。
「ワイルド・ソウル」を読んでいるときにも思ったことですが、著者の垣根涼介さんのからっと明るい文体は、南米の陽気さや明るさにぴったりはまっていると思いました。
貧困街とか武装強盗団etc.の凄惨な部分にも触れられているんですが、明るい文体のせいか、辛くなりすぎずに読み続けられました。
「ワイルド・ソウル」の元ネタとおぼしきエピソードも数多く出てきたので、「ワイルド・ソウル」を読んだ方は特に楽しめると思います。
取材記、旅行記にとどまらず、エッセーとしても楽しめると思います。