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貧乏暇なし独身女の読書日記ときどき手芸etc.

貧乏暇なし生活の合間に読書するのが生きがいです。面白くない本は最後まで読まないので、面白かった本の書評だけをブログにあげています。だから更新頻度は低いですが、ブログに挙げた本は、お薦めできるものばかりなので、読書好きの方は参考にしていただけると幸いです。

以前にNHKで放送された海外ドラマ「情熱のシーラ」の原作です。

ドラマは観なかったんですが、ストーリーは面白そうだったので、

本作を読んでみました。

映像化作品は、まず原作から読んでみたくなるのは、

読書好きあるあるですよね。


本作のストーリーは・・・
1930年ごろのスペインのマドリード。

シーラはお針子として母とともに洋裁店に勤めながら堅実に暮らしていたが、

誠実な婚約者イグナシオとの結婚を控えた直前に、ふとしたきっかけで

野心家の男性ラミーロと出会ってしまう。シーラはラミーロの誘惑に負けて、

イグナシオとの結婚を取りやめ、ラミーロのもとに走る。

ある事業を立ち上げることをラミーロに提案され、シーラはラミーロとともに

モロッコにわたるが、ラミーロに財産を根こそぎ持ち逃げされてしまう。


すっかり打ちひしがれたシーラだったが、モロッコで出会った

下宿の女主人のカンデラリアに持ち掛けられた命がけの闇取引に成功することで、

大金を稼ぎ、それを元手にオートクチュール店を開業する。


シーラがモロッコでドレスメーカーとして着々と成功を収めるかたわら、

祖国スペインは、ナチスドイツに加担して、参戦しようとしていた。

シーラの美貌とドレスメーカーという職業に目を付けたイギリスの諜報機関が、

シーラに接触する。そして、シーラは、イギリス側のスパイとして、

スペインに滞在するドイツ人たちの動向を調べて情報を流すという任務を

務めることになる・・・という感じです。

スパイ小説ということで、本作を手に取りましたが、

スパイ小説というよりも、平凡な女性の一代記といった方がぴったりくると思います。

もっと詳しく言うと、朝ドラ風味の女性の成長物語といった感じかな。


ヒロインのシーラについては、いかにも危ないタイプの男に引っかかったり、

スパイ任務のルールをうっかり破ったり、簡単に秘密を漏らしてしまったりと、

こんな危なっかしい女性がスパイなんて出来るの?と思いましたが、

後半になると、どんどん有能なスパイに成長していき、

重要な任務を任されるようにもなり、かっこいい女性になっていくのが爽快でした。

上巻、中巻、下巻を通して、ドラマチックなストーリーでしたが、

一番印象に残っているのは、終盤あたりで、

シーラが元婚約者のイグナシオと再会する場面です。

シーラが波乱万丈の数年を過ごし逞しい女性へと成長した一方で、

イグナシオの方も、スペイン内戦後の混乱期を体験し、以前のような

真面目で優しいだけの青年ではなくなっていました。

戦争は人間を変えてしまうということですね。

ネタバレしたくないので詳しく書きませんが、この場面では号泣でした。

この時代は、みんな生き延びるのに精いっぱいだったんですね。

原書がスペイン語のせいか、翻訳が若干読みづらくて、

文体になれるのに時間がかかりましたが、物語は面白かったので、

最後まで読んでよかったです。

翻訳小説に読み慣れている方なら、難なく読み進められる程度だと思うので、

是非、お手に取ってみてください。