有吉佐和子さんお得意の古典芸能+女の生き様を描いた作品です。
昭和初期、日本舞踊の梶川流の師匠である寿々を母にもつ秋子は、家元の血をひく異父妹の千春の誕生後、千春の陰で身を慎んで生きてきた。しかし、戦後の混乱期、梶川流の存亡を賭け、家元は、秋子の容姿を生かした驚くべき出し物を、進駐軍を前にした舞台で披露することを思い立つ。これをきっかけに梶川流での秋子の立場が変わっていき、秋子は日舞の世界での生き方を見いだしていく・・・というストーリーです。
有吉佐和子さんの作品なので、ある程度のドロドロは予想していましたが、予想以上にエグかったです。
主人公が被る過酷さでいえば、同著者の「非色」に匹敵するのではないでしょうか。
中盤を過ぎたあたりで、秋子の過酷度はマックスに到達するんですが、この部分はあまりにもショッキングで一旦本を閉じてしまうほどでした。
それでも、終盤で、秋子が悟りを開いたように、因襲にまみれた日舞の世界での生き方を見い出していく様は、圧巻でした。
本作を読み終えて、改めて、有吉佐和子さんの人物描写と心理描写の素晴らしさを再確認しました。
家元の血筋を盲信するあまり、家元の血をひく千春に執着する一方で、家元の血筋をひかない秋子を冷遇する寿々。寿々からどれだけ酷い扱いを受けても、寿々の愛を求め続ける秋子。寿々からの寵愛を受けながらも、何の屈託もなく寿々を捨てる千春。
こんな寿々でも、全く酷い母親というわけではなく、千春に対するのとは違った形の愛情を秋子にも注いでいることが随所で描かれています。
寿々が秋子を家元に「売る」ような形で、秋子が汚れ仕事をさせられますが、これについても、寿々が自らの梶川流での地位を確保したかったというだけでなく、秋子の立場を強固にしたいという思いもあったのでは。
そのあたりの複雑な人物描写を見事にやってのけた有吉さんは流石です。
それにしても、女たちが強くたくましく生きていくのに対して、男たち(家元、秋子の元恋人、千春の旦那)は、ポンコツですね。
本作も、すごく面白かったです。
やっぱり有吉佐和子さんは天才です。
