厄年に悩まされる男 | 読んだらすぐに忘れる

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とりとめもない感想を備忘記録的に書いています。



圧倒的資金不足、二度目の事務所の立ち退きと42歳、本厄真っ只中のサムスンのもとに女性の依頼人がやってくる。



彼女は、連絡の取れなくなった女友だちプリシラ・ピンを探して欲しいという。
早速サムスンが住所を訪ねるとプリシラは、既に夫を捨てて、町の資産家のドラ息子と駆け落ちしたという。調査の結果を報告すると依頼人は驚いた様子をみせる。サムスンは追加調査を期待するが、依頼人はあっさり調査を切り上げてしまう。二人の行方は気にはなるが、金にならないのでは続ける意味はない。
新しい大家を見つけ、仕事運にも恵まれ、駆け落ちの事なんて忘れるサムスン。しかし、半年たったある日、ドラ息子が森で白骨死体となって発見されことを新聞で知る。駆け落ちした時期には、すでにドラ息子は殺害され埋められたということは、駆け落ちした不貞妻も死んでいるに違いないと警察は判断し、寝取られた亭主に容疑をかける。しかし、サムスンにはどうもしっくり来なかった。亭主の弁護士に働きかけ、事件に関わるようになりプリシラの行方を追い始める。


相変わらず上手い。二つのプロットがある思惑により交差することで入り組んだ印象を与え、複雑な事件と思わせる。事件の前提から勘違いしていたことに気づくサムスンは、目が節穴すぎてパウダー警部補に馬鹿にされてしまう。この手の勘違いはロス・マクドナルドでも有名な作品があるが、ようは男には「バイアス」がかかっているということです。


今回はおなじみのミラー警部補が、仕事に疲れ休暇にでてしまう。代わりに『夜勤刑事』で、腹パン食らわしてきたリーロイ・パウダー警部補が協力してくれる。サムスンとパウダーの出会いは最悪だったが仕事に対する姿勢が似ているので、互いに認めあっている。終盤、事件の真相に近づき興奮状態のサムスンに対して、パウダーは「気をつけろ」と忠告する優しさをみせる。


毎度危険な目にあうサムスンだが、本作も例外ではない。パウダーの忠告虚しく予想以上に血みどろの展開になる。銃で狙われる事二回、鋏で突き刺されそうになること一回。行く先では死人が二人もでる始末だ。セックスに纏わるいざこざは、拗らせるとメチャクチャ修羅場になる典型。まともな職業についていれば、こんな醜悪な事件に巻き込まれないで済んだのにと弱気になるサムスンだが、すぐさま立ち直るところは流石。