世界中で毎年何千本も作られている映画。そんな中でヒットする映画はほんの一握りです。多くの場合、名前さえ知らず埋もれていきます。そういう意味ではほとんどの映画が”マイナー映画”です。このコーナーでは、そんな映画の中でちょっとオススメを毎回10本づつ紹介しています。今回はその第5弾!

 

◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆

「オススメのマイナー映画!」

 <PART5>

◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆

 

マイナー映画は、はっきりした定義がありません。強いて言えば大々的に紹介され公開されるメジャー映画に対して、単館系で公開される映画を指すことが多いです。それらは、規模は小さくても良質な作家性の高い作品が多いです。ただ、ここでは私が見た映画の中で、商業的にはヒットしなくても妙に心に残る映画、カルトほどではないけどあまり知られていない映画、埋もれてしまいそうな古き良質映画、誰かにこっそり教えたくなるような掘り出し映画などマイナー映画の間口を少し広げて「おススメのマイナー映画」として紹介しています。人によっては「マイナー映画」としての賛否はあるよ思いますがご理解ください

 

今回はこの10本!観たことがない人も観たことがある人も興味があったら是非コメントをどうぞ!

 

▼ナイト・オン・ザ・プラネット 

/1991年アメリカ

 

ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの同じ夜に起こる出来事を、個性豊かなタクシードライバーと乗客たちの間に起こる5つの出来事を描いたオムニバス映画です。何と言っても一話目のウィノナ・ライダーが演じるタクシードライバーのコーキーがかっこいい!彼女は歳の若いタクシードライバーで「整備工になりたい」という目標を持ち、好きな服を着てタバコを吸い、ガムを膨らませながら自由に日々仕事をしている。映画俳優にスカウトされた時も「わたしは自分が立てた人生プラン通りに生きていく」と一蹴します。その時の乗客役はなんとジーナ・ローランズでした。その後もニューヨーク~パリ~ローマへとそれぞれの物語は続いていき、どの物語も楽しい会話を楽しめます。監督はインディーズ映画では人気のジム・ジャームッシュ。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ミステリー・トレイン」などあります。この監督の映画はちょっと中毒性があり、見だしたらクセになるかもしれませんよ

 

▼ザ・ウォール

/2017年・アメリカ

 

イラク戦争を舞台に、スナイパーに狙われたアメリカ兵の極限下の戦いを描いたサバイバル・ホラー作品。絶望的な状況の中で反撃を試みるというシンプルなストーリーながら、主な登場人物はわずか二人で、そのうち一人は撃たれて倒れたままという設定が面白い。さらに、無線により見えない敵のスナイパーの声を聞きながら危機を脱する展開もドキドキ感を増長させます。かなり低予算のB級作品ですがアイデア、脚本もよく練られた映画だと思います。ほとんどがアーロン・テイラーの一人芝居で戦争映画ですが密室劇のような作品で、コリン・ファレルの「フォーン・ブース」とちょっと似てます。緊張感があり、個人的には面白いと思いますが好き嫌いはあるかもしれません。ラストは賛否があるでしょうね

 

▼シャンプー台のむこうに  

/2001年・イギリス

 

ヘアコンテストをめぐり、崩壊しかかった家族の修復を描くヒューマンファンタジー。かつては伝説の理容師だったが、今では町の理髪店主となった父の元で働くブライアン。そこへ不治の病に侵された母からの頼みでヘアコンテストに出場することになったのだが・・・。アラン・リックマン、ナターシャ・リチャードソンなどの実力派キャストによる楽しくて心温まる物語です。華やかなコンテストの勝敗の行方を背景に、青年の成長と家族の再生を爽やかに演出しています。家族揃って楽しめる一本だと思います

 

▼カーリー・スー

/1991年・アメリカ

 

ホームレスで孤児の9歳の少女カーリー・スーと、親がわりのビルは詐欺で生計をたてており、ある日エリート女性弁護士に狙いを定めるのだが・・。「素敵な片思い」のジョン・ヒューズ監督によるヒューマン・コメディ。男と少女による口八丁手八丁な詐欺が痛快で、彼らと出会うことで堅物のエリート弁護士の心が溶かされていき、愉快ながら最後はほっこりします。学校に行っていないので学力はないけど頭の回転はよく生意気で可愛いカーリー・スー役のアリサン・ポーターがめちゃめちゃいいです。彼女の保護者であり相棒役が「K9/友情に輝く星」「レッドブル」のジェームズ・ベルーシ。現代版「ペーパームーン」とまでは行かないまでも、お笑いも感動も程よく、気軽に見れる一本です

 

 

▼ブータン山の学校

/2019年・ブータン

 

勤務態度が悪く、ブータンで一番の僻地の村へ転属を命じられた青年教師と村の子ども達との心の交流を描いた物語。ヒマラヤ山脈のふもとにある高地の国、ブータンの風土と人々の純朴な魅力がじんわり伝わり、心が洗われるような気持ちになります。シンプルな物語の中に生きていく上で、大事なモノが全部詰まっているような映画です。写真にも写っている印象的な少女は、映画同様、実際に村から出た事がなく、インターネットやゲームはもちろん、電気やクルマさえ知らないと言います。彼女たちの純粋な心、澄んだ瞳や感性はそうした中で育まれたのでしょう。便利で快適であることが本当に幸せなのか考えさせられる映画です。以前、このコーナーでコメントをいただいた”すずめちゃん”さんからのオススメの一本でもあります。「ヤク飼いの歌」が沁みます。是非どうぞ!

「君は将来何になりたい?」

「先生です」

「どうして?」

「先生は未来に触れることができるからです」

▼ひつじ村の兄弟

/2015年・アイスランド

 

アイスランドの人里離れた村が舞台。隣同士に住む老兄弟グミーとキディーは、40年間全く口を聞かない程不仲だが、お互い羊の世話に人生のすべてをささげてきた。ある日、キディーの羊が疫病におかされ、保健所から殺処分を命じられてしまう。絶滅の危機に瀕した羊たちを守るため、兄弟は40年ぶりに力を合わせることを決意するのだが・・。この映画をコメディと紹介している所が多いようですが、個人的にはヒューマンドラマです。ニンマリする場面はありますが終始淡々とした作風です。雄大な大自然と心を癒される羊たちなどアイスランドの魅力が満載です。そこにしか暮らせない者たちの悲喜をリアルに描きながら、どこか童話のような独特の世界感を醸し出す不思議な映画です。決して万人受けする映画ではないと思いますが一見の価値はあります

 

▼アサルト13要塞警察

/2005年・アメリカ

 

1976に公開された「ジョン・カーペンターの要塞警察」のリメイク作品。閉鎖予定のデトロイト警察13分署に、大雪のため立ち往生してしまった護送車が緊急避難し、護送中だった凶悪犯らを一時監禁することになる。その夜、謎の武装集団に襲撃されてし孤立してしまうのだが・・。アクションだけでなく誰を信じていいのかわからない心理戦が面白い。イーサン・ホークとローレンス・フィッシュバーンに「ユージュアル・サスペクツ」のガブリエル・バーンが加わったサスペンス・アクション!B級映画の様相ですがそこそこ楽しめると思います

 

 

▼さよならミス・ワイコフ

/1979年・アメリカ

 

1954年、カンザス州の保守的な小さな田舎町が舞台。孤独で抑圧された35歳の独身高校教師ワイコフ(アン・ヘイウッド)は、学生や同僚に好かれていたにもかかわらず、仕事に満足感を見出せずにいた。更年期にレイプなど、衝撃的なストーリー展開の一方で、丁寧に描かれる女性の心の描写など見どころも多いです。映画の紹介では暴行シーンばかりクローズアップされていた印象ですが、実は、更年期障害、閉鎖社会、人種差別なども描く社会派ドラマの秀作だと思います。見ていてつらくなる物語ですが、ラストの彼女の表情がすべてを物語っていると思います。主演は「女狐」などで知られるイギリスの美人女優アン・ヘイウッド。現在93歳でまだお元気です

 

▼100人の子供たちが列車を待っている

/1988年・チリ

 

アンデス版「ニュー・シネマ・パラダイス」!南米チリの教会で、それまでほとんど映画を見たことがない子どもたちを相手に開かれる映画教室の魅力的な授業風景を、いきいきと鮮やかに描いたドキュメンタリー!

教会で毎週開かれるその教室では、紙や木で簡単な動画装置を作ったり、一人一コマの「フィルム」を作っていったり、遊びを通して「映画」を学んでいき、子供たちが体験によって「映画」の喜びを知ります。この作品のタイトルにある“列車”とは、1895年リュミエール兄弟によりパリで産声をあげた映画「列車の到着」に登場した “列車”を指します。そして、列車を待っている100人の子供たちは、自由を求めて新しく旅立つための“列車”をも待っています。心温まるすてきなドキュメンタリーです。是非どうぞ!

 

▼YAMAKASI(ヤマカシ)

/2001年・フランス

 

実在するパルクール集団「ヤマカシ」を題材としたアクション映画!自分の身一つでビルをよじ登り、建物から建物へと飛び回る7人の若者グループ「ヤマカシ」は子供や若者たちヒーロー。ある日、心臓疾患がある少年が彼らの真似をしようとして誤って高所から転落してしまう。高額な手術代を肩代わりしようと「ヤマカシ」が立ち上がるのだが・・。ストーリーは平凡ながら、スタント無しワイヤー無しという人間の肉体だけで作り上げられた映像は圧巻です。世界中にあたえたパルクールのインパクトが衝撃的な作品です

 

今回はこの10本!いかがだったでしょうか?「マイナー映画」という括りの間口をかなり広げて制作年度、ジャンルなど幅広く選んでいます。このコーナーはまだまだ続きます。みなさんのオススメ映画があったら是非教えてください。過去、コメントで紹介いただいた映画は時間はかかりますが必ず観ます。そして出来ればまたこのコーナーで紹介したいと思います

 

みなさんのオススメのマイナー映画は何でしょう?

 

 

早いものでもう6月ですね。6月というとジューン・ブライドを思い出しますが、このごろさっぱり聞かなくなりました。昔(30年以上前)はそれなりに人を呼んでの結婚式・披露宴というのが当たり前で、わたし自身も多い時で6月に6回結婚式に出席したことがあります。決して派手にしているわけではなくてもそれなりの規模で華やかに行われていました。今では少人数や結婚式自体挙げないということも多いようです。時代は変わってきました_

 

少し前に、中学時代の野球部の仲間がまたひとり天国に旅立ちました。いわゆる「同じ釜のメシ」を食った仲間で、クラスメートや同窓とは違った強い絆で結ばれた仲間の一人です。奴は、野球は決して上手い方ではなかったのですが、いつも闘志あふれるプレーでスライディングの際はかならず頭からのヘッドスライディングなので、ここでの便宜上の呼び名は”ヘッド”にしておきましょう。”ヘッド”はプレー同様、不器用ですが真っすぐな性格の奴で、どんな過酷な練習でも手を抜くことはありませんでした。補欠の中でも3番手~4番手という立ち位置でしたが、いつ声がかかってもいいように常に素振りをしており、奴の手は豆が固まっていつもカチカチでした。その素振りも多くは報われることがなく、わたしの記憶では、公式戦に代打で出たのは三年間で二度だけです。一度ピンチヒッターに起用された時、左頬にデッドボールを喰らい歯が2本抜けて血だらけになりながらも、口の中にティッシュを詰め込んで試合に出続けた奴です。そんな”ヘッド”も病魔には勝てませんでした

 

 

”ヘッド”の葬式は実家で近親者のみということでしたが、彼の奥さんの希望で参列してきました。”ヘッド”の奥さんとは結婚式以降何度か会っていますが、彼が海外や地方転勤してから疎遠になり、会うのは20数年ぶりでした。それなりの年齢の上にやつれた顔で、気丈にふるまっておりましたが、久々に会って「○○です(自分の名前)」と挨拶したとたん「よく来てくださいました・・」と号泣されました。通夜の夜はずっと”ヘッド”に付き合うことになり、その後、彼女が少し落ち着いてポツリ、ポツリと”ヘッド”のことを話し始めました

「私も彼もあの日のことは一生忘れません」

 

野球部を引退して10数年経ったある日、”ヘッド”から突然電話があり「結婚式に是非出席してほしい」とのことでした。お祝いや打ち合わせを兼ねて彼ら二人と私と彼女の友人の4人で会った時に意外な話を切り出されました・・

 

聞くところによると、彼女の実家というのがある地方の素封家で、いわゆる家柄もよく大層裕福な家で両親、親戚一同二人の結婚には大反対とのことでした。”ヘッド”の家は普通のサラリーマンで、彼女の父親の言葉を借りると「話しにならん!そんな貧乏人に娘がやれるかっ!」で、”ヘッド”が挨拶へはるばる行った時も家にも上げてもらえず、門前払いだったそうです。そういう経緯を聞いて、今度は”ヘッド”のご両親も激怒して「結婚するなら親子の縁を切る」という最悪な話しになったそうです。

「そんなロミオとジュリエットみたいな話しが今時あるのかよっ!」

と笑い飛ばしたのは私だけで、事はかなり深刻なようでした。二人はすでに家を出て同棲を始めていて、結婚式自体をしない予定だったそうです。ただ、彼女の方がどうしてもウエディングドレスを着たいというので、小さくても式を挙げることになりました

 

 

式場は、海の見える某有名ホテル(彼女の夢だったそうです)。当時はバブルということもあり比較的派手な結婚式が当たり前だったにもかかわらず、かなりこじんまりとした式でした。出席したのは新郎新婦を除くと、新郎側がわたしと学校の恩師と幼馴染みの男3人、新婦側が学生時代の親友2人と親に内緒で来たという妹さんの女3人でした。めちゃくちゃ立派で広すぎる会場(そこしか空きがなかったそうです)の中央に三人づつならんで正面に新郎新婦。ひな壇、屏風などは一切なく、広すぎる会場での豪華な食事会という体裁でした。しかもさすがに一流ホテルで、壁際にばっちり正装した係員がずらりと10数人、さらに生演奏者も数人並んでおりました

 

私はその日は、司会兼友人代表兼余興兼カメラマン兼ガヤを担当し大忙しの二時間半でした。小さいながらも式も滞りなく進み、一番最後に新郎新婦から、本来なら両親への感謝を述べるのですが、参列してくれた6人へのお礼を言うことになりました。ところが”ヘッド”が「本日は・・・」と言ったきり絶句して泣き崩れ、それを見た新婦が泣き、それを見た妹さんも泣き、ついには全員が泣きだしました。そして、それまでの式次第を支えてくれていた係の人まですすり泣く声が聞こえ「このままじゃマズイ!」と思い、思わず私が手拍子で歌いだしたのが十八番?の「お嫁サンバ」でした

 

恋する女はきれいさ

決してお世辞じゃないぜ

ため息まじりのほほに

ついこの手のばしたくなる

 

 

うろ覚えの歌詞だったのですが「1,2サンバ、2、2サンバ お嫁~お嫁~お嫁サンバ~」のサビは全員で歌ってくれて、スタッフのみなさんも手拍子で歌ってくれました。わたしも涙でしどろもどろになっていたところ、スタッフのチーフらしい女性の方がマイクを引き継いでくれ、歌詞を先導してくれた上に「最後にみんなで乾杯しましょう!」とグラスを配りはじめ、”ヘッド”が涙ながら「皆さんも一緒に祝ってください、お願いします」と声をかけ、スタッフを含めた全員で乾杯しました。つつましい結婚式でしたが、わたしの生涯で一番思い出深い結婚式となりました。最後の記念撮影も当初は出席者の6人を加え総勢8人の予定が、スタッフの人も加えて20人超になり、まさに笑顔がはじけた写真となりました

 

その時の写真は大きく引き伸ばされ、通夜の席には少し不釣り合いではありましたが、きれいにスタンドに入れられて”ヘッド”のそばに立てかけられていました。あの時大反対したお父さんもすでに旅立たれ、静かに見守ってくれていたことでしょう

「〇〇さん(わたしの名)、あの時はありがとうございました!」

「ハイ・・今思うと、あれで良かったのかと思うことがあります(自分たちだけで8人の結婚式を強行したこと)」

「いいえ、○○君(ヘッドのこと)もいつも自慢してたんですよ。8人だけの結婚式は最高の思い出だって・・」

写真の傍らで眠る”ヘッド”が少し微笑んだ気がしました

 

 

このごろ結婚式に出る機会がめっきり少なくなりました。ひとつは年齢的な問題で回りにその年代が少ないこと、さらに少子化で絶対数が少なくなったこと、そして一番大きいのが結婚式自体をやらない、もしくはごく内輪の小規模でやることが多くなったことでしょうか。式自体はやろうがやるまいがどうでもいいです。ただ、人生の最後に楽しかったという”ヘッド”や奥さんが思ってくれてよかったとは思いました

 

とびきりの笑顔のあの時の結婚式の写真をながめながら、またひとりあの頃を語り明かせる仲間がいなくなって寂しく感じました。いつかは天国でまた野球がやれる日がくるのでしょうね

「おい、また野球やろうな!ただ、その時はもう少し上手くなってろよ!」

そう写真に語りかけひとり帰路につきました

 

 
先日録り溜めた映画の中から久々に見たのが「セイント」。主演は大好きなヴァル・キルマー。ご存じ「トップガン」のアイスマン!そのほか「ウィロー」「トゥームストーン」「ドアーズ」「キスキス、バンバン」など多くの話題作に出演しています。残念ながら2025年に65歳の若さで亡くなっています。今日紹介の「ヒート」にも出演しており、個人的にはこの「ヒート」が彼のベストムービーだと思います
 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ヒート」

1995年/アメリカ(171分)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ロサンゼルスを舞台に、強盗団のリーダーと彼らを追う刑事を描く犯罪アクション!

 

 

 監督

マイケル・マン

 キャスト

アル・パチーノ/ヴィンセント・ハナ

ロバート・デ・ニーロ/ニール・マッコリー

ヴァル・キルマー/クリス

ジョン・ヴォイト/ネイト

トム・サイズモア/マイケル

ダイアン・ヴェノーラ/ジェスティン

エイミー・ブレネマン/イーディ

アシュレイ・ジャッド/シャーリーン

ウェス・ステュディ/カサルス

テッド・レヴィン/ボスコ

ケヴィン・ゲイジ/ウェイングロー

ナタリー・ポートマン/ローレン

 

監督は「ラスト・オブ・モヒカン」「コラテラル」「パブリック・エネミーズ」のマイケル・マンで、人気テレビドラマ「マイアミ・バイス」の脚本・総指揮としても知られています。主演には「ゴッドファーザー」「セルピコ」「スケアクロウ」「狼たちの午後」「オーシャンッズ13」などのアル・パチーノ。もう一人の主役には「タクシードライバー」「ゴッドファーザーPARTⅡ」「ディアハンター」「ミッド・ナイト・ラン」「アンタッチャブル」「レイジンブブル」「マイ・インターン」などのロバート・デ・ニーロ。ほかには「トップガン」「ウィロー」「セイント」「トゥームストーン」のヴァル・キルマー、「真夜中のカーボーイ」「チャンプ」「オデッサファイル」「ナショナルトレジャー」などのジョン・ヴォイト、「青いドレスの女」「トゥルー・ロマンス」「プライベート・ライアン」「レリック」のトム・サイズモア、さらに「ジャッカル」「インサイダー」のダイアン、ヴェノーラ、「コレクター」「エンド・オブ・ホワイトハウス」のアシュレイ・ジャッドなど超豪華俳優が出演しています。そして「メジャー・リーグ」のデニス・ヘイスバート。「コン・エアー」のダニー・トレホ、さらに「レオン」のマチルダ役で鮮烈デビューしたナタリー・ポートマンも出ています

 
とにかく超豪華メンバーでそれぞれが素晴らしい。個人的にはヴァル・キルマーが好きでイカしてましたね。ただ、極端な事を言うと、この映画はW主役のアル・パチーノとロバート・デ・ニーロを観るだけで満足すると思います

 

 

 

▲アル・パチーノ/ヴィンセント・ハナ刑事

▲ロバート・デ・ニーロ/ニール・マッコリー

▲ヴァル・キルマー/クリス

▲トム・サイズモア/マイケル

▲ジョン・ヴォイト/ネイト

ニール(ロバート・デニーロ)率いる犯罪集団は用意周到に現金輸送車、銀行強盗などを繰り返しなかなか尻尾を掴ませない。一方、ロス市警のヴィンセント・ハル刑事(アル・パチーノ)は家庭崩壊寸前にもかかわらず仕事に異常な執念を燃やし、犯罪集団を追い詰めていった。ニールは若い恋人が出来、最後の大仕事の計画を進めるがその動きはハル刑事らに捕まれていた。絶体絶命の中、ニールたちは捜査員の裏をかいて銀行を襲うのだが・・・

組織のボスと敏腕警部による因縁の対決を濃密な迫力で描く

1990年代の傑作クライムアクション!

 

映画は、犯罪者ニール・マッコーリー(ロバート・デ・ニーロ)と刑事ヴィンセント・ハナ(アル・パチーノ)の対立を描いていますが、彼らの関係性は単純な刑事と犯罪者ではありません。二人は互いに異なる道を歩むものの、孤独とプライドを持って生きています。その二人が相対した時、哀しいドラマの幕が開きます

 

 

  「ヒート/Heat」とは?

本作「ヒート/Heat」は、強盗団とロサンゼルス市警察との死闘を描いた作品です。タイトルにもなっている「ヒート」とはスラング(俗語)で、銃火器や強盗団という意味と警察の2つの意味を持っており、まさに本作そのものです

 

サスペンス映画、アクション映画の秀作が多い90年代の中でもひときわ異彩を放っておりストーリー、演出、俳優陣のどれをとっても一級品の犯罪映画です。しかし、ただのクライムアクションではありません。悪と正義、信念と矜持の間で揺れ動く人間の心理を深く描いた優れた人間ドラマでもあります

 

現代はジェンダーレスや多様性が叫ばれ、映画の描写や表現も大きく変わってきています。決してそれらを否定するつもりはありませんが、この映画は”男”が”男”を描いた作品です。もちろん女性も重要な役どころで何人も出てきますが、最終的には「男対男」の対決になります。それは芳醇な深い香りが充満し”男たち”を虜にする映画です

 

 

  171分の長編映画

この映画は171分、つまり約2時間51分の長編映画です。時々この映画を評して「長すぎる」「前半が退屈」などという声を聞きます。ですが、ちょっと待っていただきたい!この映画は、最初に述べたように犯罪のプロのニール(ロバート・デ・ニーロ)と敏腕刑事ヴィンセント(アル・パチーノ)の二人を軸に描く犯罪映画です。前半は、そんな二人の生活や信条を丁寧に描き後半はその二人の対決を描いています。つまり、前半の二人をしっかり追って理解していないと面白さも半減してしまいます。ニールとヴィンセントの別々の物語を同時進行している前半のドラマこそが見どころのひとつになっています。そして、そのふたつの物語が交差する後半に、もうひとつの物語があります

 

敏腕刑事のアル・パチーノを描く物語と犯罪プロのリーダーのロバート・デ・ニーロを描く物語と、その二人が対峙する物語の三本分と思えば2時間51分は決して長く感じないはずです

 

 

 

  史上最も迫力ある銃撃戦

この映画には夥しい銃やライフルが登場します。その方面にはあまり詳しくはないのですが、好きな方にはまさに宝庫の映画だそうです。そうした銃火器の見どころが終盤の警察との銃撃戦です。映画史上最も迫力ある銃撃戦と言われ、CGを一切使わないリアルな描写として、後にクリストファー・ノーラン監督ら多数の監督が参考にしたと言われています。なんと言ってもヴァル・キルマーやロバート・デ・ニーロがライフルでぶっ放すシーンはゾクゾクするくらいカッコイイ!後半の有名な銃撃シーンはわずか13分弱ですが緊張感があり、それまでの静かな映画がクライマックスへ向けて走り出す合図のようでした

 

銃撃戦のずっと前に二人はカメラ越しに対峙しています。とても印象的なシーンで、警察の気配を察知して逃げる時に明らかにカメラに向かって挑発するニール(ロバート・デ・ニーロ)とその彼をにらむヴィンセント(アル・パチーノ)がめちゃめちゃかっこいいです。画面越しににらみ合う二人のアップは直接対峙しているわけではないですが、独特の緊張感がありました

 

マイケル・マン監督は、「コラテラル」「パブリック・エネミーズ」などを見てわかる通り、緻密な演出と革新的な映像美でクライムムービーに新たな境地切り開いたとされています。本作でも圧倒的なリアリズムとスタイリッシュな映像が観る側の胸に刻まれることになることでしょう。クリストファー・ノーラン監督の大ヒット作「ダーク・ナイト」制作において本作「ヒート」を何十回も観て研究したと語っています。そう言われてみれば少し雰囲気は似ていますね

 

 

  ゴッドファーザーの二人の共演

主演の二人は「ゴッドファーザーPART2」(74年)でニアミスをしています。アル・パチーノはヴィトーのあとを継ぎ、コルレオーネファミリーのボスとなったマイケルを演じ、ロバート・デ・ニーロは、マイケルの父ヴィトーの若き日を演じています。二代目を継いだマイケルの闘いと苦悩と若き日とヴィトーがアメリカでのし上がっていくまでを描く二つの物語が同時進行していく映画で、主演の二人とも絶賛され俳優としても確固たる地位を築きました。ただ、実際には共演はしていません。1940年生まれのパチーノと、43年生まれのデ・ニーロは「ゴッドファーザーPART2」では共に30代前半でしたが、本作ではお互い50代で初共演を果たします

 

 

強盗犯ニール(ロバート・デ・ニーロ)は犯行計画に少しでも綻びが生じたら即座に逃げられるよう、不要な繋がりはあらかじめ全て捨てています。その異常なストイックさで完璧に仕事をこなします。対する刑事ヴィンセント(アル・パチーノ)にしても昼も夜もなく刑事の仕事に没頭し、家庭は崩壊寸前で毎日LAの街を闊歩して、悪と対峙しています。強盗と刑事という正反対の立場にいるアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの存在感がこの映画の格を一段も二段も押し上げています。それぞれの信念と孤独が交錯する中で知らず知らずに物語に引き込まれていきます

 

 

  レストランでの二人!

この映画ではたくさん好きなシーンがありますが、映画としてのターニングポイントになっているのが、中盤にニール(ロバート・デ・ニーロ)とヴィンセント(アル・パチーノ)の二人がレストランで会うシーンです

「俺とお前は立場は違うが似たもの同士だ」

「ここでは、俺もお前も普通の男だ。俺たちは他人で俺は俺の道を行く。お前はお前の道を行け。だが、こうして顔を合わせた仲だ、お前をムショ送りにはしたくない。だが、もしお前が俺の邪魔をするのなら迷わず俺はお前を撃つぞ」

「ああ、俺も邪魔はさせない。それに俺は絶対にムショには行かない」

前半でさんざん二人の仕事ぶりを見せられて、二人が面と向かって初めて話しをするのがこのレストランでのシーンです。粋なセリフの応酬で、かつてのフランスのギャング映画の名作「シシリアン」でのジャン・ギャバンとリノ・ヴァンチュラのやりとりを彷彿させます

「ある奴がこう言った。サツの気配を感じたら30秒フラットで高飛びできるよう、面倒なかかわりを持つなって。  そうゆう男を捕まえようって奴が、結婚するのが間違ってる」 

そんな完璧主義者のニール(ロバート・デ・ニーロ)もイーディ(エイミー・ブレネマン)と出会ってから徐々に考えが少しづつ変わってくる。そのニールの心の揺れが最高級アクション映画に絶妙なドラマを生み出しています。ニールとヴィンセントは警察と犯罪者という敵対するポジションなのですが、お互いの良き理解者であるところも面白い。そんな二人はまさに男が惚れるレベルで、最高なクライムアクションであると同時にドラマとしても一級品です

 

彼らの唯一の対話シーンでは、お互いの生き方に対する理解と尊敬がしっかり見て取れます。この映画のポイントは、全く立場が違う二人の間に芽生える奇妙な共感であり、そしてラストの対決に至るまでの緊張感を高めています。つまり、このシーンは、二人の人生がここでクロスし、後半の展開に結びついていくという重要なターニングポイントとなります

 

 

  ドラマを彩る女優陣

 

冒頭に言いましたが、この映画はアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの競演が最大のウリですが、ヴァル・キルマー、トム・サイズモアやダニー・トレホ、ジョン・ヴォイトといったいかにも男気あふれる配役も見逃せません。さらに、男臭い男優陣に対し、あまり目立ちませんがダイアン・ヴェノーラ、アシュレイ・ジャッド、ナタリー・ポートマンら女性陣の繊細さが対照的でドラマの部分の柱になります

 

仕事への異常な執念のため家庭崩壊寸前になりながら、娘(ナタリー・ポートマン)の自殺未遂により妻と和解するように見えて「お前の望む夫じゃない」と言って犯罪の現場に戻るアル・パチーノ。妻役のダイアン・ヴェノーラの熱演も見逃せません。そして、ヴァル・キルマーと妻役のアシュレイ・ジャッド。言い争いの絶えない夫婦生活で破局を迎えながら、警察が張り込んでいるのをそっと教えて逃がすシーンはグッときます

 

 

  ムショには二度と帰らない

 

最後のシーンは、ロサンゼルス空港の近くの倉庫_夜の闇と飛行機の着陸灯が織り成すコントラストは、二人の内面を映し出しています。ヴィンセント(アル・パチーノ)とニール(ロバート・デ・ニーロ)の間には、明と暗、善と悪、法と犯罪という対立構造が存在しますが、先のレストランでの二人だけの対話でもあったように”似たもの同士”という共感と理解があります。できれば戦いたくなかった相手ですが、お互いにプロとしての矜持がそうさせません

 

暗闇の中で瞬間飛行機のライトと影、そして銃声_

「言っただろ?ムショには二度とかえらないと・・・」

いい映画はいくつも見てきましたが、こんな痺れる映画はめったにお目にかかれません。CGのない贅沢この上ない気分にさせてくれる映画です。是非どうぞ!