今日の映画を初めて観たのはもう40年近く前だと記憶しています。某懸賞に応募して「西部劇全集」なるビデオ20本セットをブチ当てまして、その中におさめられていた一本でした。誰でも知っている有名西部劇からB級西部劇まで収められており西部劇ファンならたまらないシリーズなのですが、ビデオということで劣化が激しくもう10年以上前に処分しております
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リバティ・バランスを射った男
1962年/アメリカ(123分)
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新時代へと変わりゆく西部を舞台にジョン・ウェイン、ジェームズ・スチュワート主演の異色西部劇!(モノクロ)
監督
ジョン・フォード
キャスト
ジョン・ウェイン/トム・ドニファン
ジェームズ・スチュワート/ランス・ストッダート
ヴェラ・マイルズ/ハリー・エリクソン(後にランスの妻になる)
リー・マーヴィン/リバティ・バランス
エドモンド・オブライエン/編集長
アンディ・ディバイン/保安官
ジョン・キャラダイン/カシウス・スターバックル
ジャネット・ノーラン/ノラ・エリクソン
ウディ・ストロード/ボンビー
ストロザー・マーティン/フロイド
リー・ヴァン・クリーフ/リーズ
監督ジョン・フォードは、名作「駅馬車」「怒りの葡萄」「我が谷は緑なりき」さらに「荒野の決闘」「捜索者」「三人の名付け親」「黄色いリボン」「アラモ」など生涯50年あまりの監督時代に140本以上の作品を監督している名監督です
▲ジェームズ・スチュワート/ランス・ストッダート
▲ジョン・ウェイン/トム・ドニファン
▲ヴェラ・マイルズ/ハリー・エリクソン
▲リー・マーヴィン/リバティ・バランス
主演は「駅馬車」「赤い河」「アラモ」「三人の名付け親」「黄色いリボン」「リオ・ブラボー」「エルダー兄弟」「勇気ある追跡」など生涯150本以上の映画に出演してるジョン・ウェイン。往年の西部劇ファンなら10本や20本は彼の映画を見ているのではないでしょうか。もう一人の主演は「スミス都へ行く」「素晴らしき哉、人生!」「裏窓」「めまい」「フィアデルフィア物語」など出演のジェームズ・スチュワート。フランク・キャプラ監督やヒッチコック作品に何本も出ています。二人の恋人役には、「間違えられた男」「捜索者」「サイコ」などに出演した美人女優ヴェラ・マイルズ。そして悪玉には「特攻大作戦」「ドノバン珊瑚礁」「北国の帝王」「太平洋の地獄」「キャット・バルー」などのリー・マーヴィン、そして、その手下役にまだ無名だった「怒りの荒野」などのリー・ヴァン・クリーフが出てます

1880年代、西部の田舎町シンボーンが舞台_
大学で法律を学んだランス(ジェームズ・スチュワート)は希望に燃え、東部から西部へやってきたが、途中、無法者リバティ・バランス(リー・マーヴィン)の一味に襲われ重傷を負う。彼は小さな牧場を経営する拳銃の名手トム(ジョン・ウェイン)に救われ、町の食堂へ運ばれた。食堂の経営者夫妻とその娘ハリー(ヴェラ・マイルズ)の看護でランスは傷を回復し、お礼に食堂の皿洗いを手伝うことになった。当時この地方は合衆国の一部ではなく住民は州昇格を運動していたが、一部の反対派の牧場主がリバティ・バランスらの無法者を雇っては住民を脅かしていた。そこでランスは町の新聞社などと協力し、無法者一味と戦う決意を固めたのだが・・・
理想主義の若き法律家と、無法時代を知る銃の名手という二人の対照的な男を主人公に描かれています
倒叙ミステリーの異色西部劇!
物語は、西部の小さな町シンボーンに老紳士夫妻が汽車から降りたったところからはじまります。その二人とは、有名な上院議員をつとめるランス・ストッダード(ジェームズ・スチュアート)と婦人のハリー(ヴェラ・マイルズ)である。夫妻がわざわざやって来たのはトム・ドニファン(ジョン・ウェイン)という男の葬式に列席するためで、この名もない西部男の葬式に、今を時めく上院議員がなぜやってきたのか?かけつけた地元新聞の記者等に問われるままに語り出すところからはじまります
近代化の波が押し寄せるアメリカ西部の小さな町に、理想主義の若き法律家(ジェームズ・スチュアート)と銃の名手(ジョン・ウェイン)の、価値観の違う男たちが育んだ友情と恋を、ジョン・フォード監督とジョン・ウェインの西部劇黄金コンビが詩情豊かに描きあげた名作西部劇です。シロクロ画面でありながら画像は美しく、伝説の中に消えていった男を見事に切り取っています。強い正義のヒーローが悪者をやっつけるという単純なストーリーだけでなく、男の友情と謎解きまで組み入れた新しいタイプの西部劇です
▲「駅馬車」のジョン・ウェイン
西部劇の黄金コンビ!
西部劇は1930年代~60年代あたりまで圧倒的な人気を誇り、ハリウッドと共に歴史を歩んできました。その中で高い人気を誇ったのが本作の監督であるジョン・フォードと主役のジョン・ウェインです。彼は生涯150本以上の映画に出演し半数以上が西部劇で、ジョン・フォードとジョン・ウェインとのコンビで「駅馬車」「静かなる男」「捜索者」「三人の名付親
」「黄色いリボン」「リオ・グランテの砦」「アラモ」など20作以上コンビを組んでおり、本作はこの名コンビの最後の作品となりました。監督がジョン・フォードで、主演がジョン・ウェインの西部劇というだけでお約束的な展開の映画と予想が出来ますが、この映画はジェームズ・スチュアートがもう一人の主役として出演しており、ひと味違った雰囲気の映画になりました
基本的なストーリーは、保安官がならず者をやっつけるというような、正義のヒーローが悪党どもをやっつける単純明快なストーリーですが、本作は銃による対決シーンは終盤までありません。それよりも多くはドラマ性を持たせており、どちらかというとアクションというよりセリフ劇です。個人的にはジョン・フォード監督作品の西部劇の中で一番のお気に入りです
ヒーロー西部劇の終焉
西部劇は、アメリカ西部を舞台に開拓者魂を持つ白人を主人公に、無法者や先住民と対決するというストーリーが大変な人気を得て、20世紀前半のアメリカ映画の興隆とともに、映画の主要ジャンルとして形成され発展してきました。圧倒的な人気を誇っていましたが、時代と共に人気に陰りが見えてきます。ひとつには60年代半ばから世界を席巻したマカロニ・ウエスタンの台頭です。セルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」ジュリアーノ・ジェンマの「荒野の1ドル銀貨」あたりが有名で、勧善懲悪のアメリカ西部劇とは一線を画し、暴力的な作風と、それまでにないアウトローな主人公像で新たな西部劇の境地を開きました。そして時代も新しい価値観が生まれ、西部劇衰退の流れは止められませんでした。69年の「明日に向かって撃て!やペキンパーの「ワイルドバンチ
」などの最後の西部劇と言われる作品によって終焉を迎えます
単純明快な西部劇からドラマ性を持った西部劇が作られるようになったなった訳ですが、そうなると力(銃)がすべてだった西部に近代化によって秩序が生まれ、かつて英雄と言われたガンマンは忘れ去られ不要となります。つまりヒーロー西部劇の終焉を意味しています。このあたりの描き方はその後の「シェーン」「大いなる西部」などに受け継がれているように思います
陰影の美しさ、哀愁を帯びたストーリー、リバティ・バランスとの対決シーンなど見どころ満載です。あまり目立たなかったですが印象的なシーンは、トムの棺の上にカクタスローズが乗っていたことです。それはかつてトムが大好きなハリー(ヴィラ・マイルズ)にプレゼントした花でした。トムとランスとハリーの微妙な関係が切なく感じます
主役二人のコントラスト
なんと言ってもこの映画は、ジョン・ウェインとジェームズ・スチュワートという二人のコントラストがいいです。
法律家で法と秩序の東部の男と、銃が必要だという荒っぽいが優しい西部の男。そんな二人の関係をより際立たせているのが、この映画の題名にもなっている悪党リバティ・バランス(リー・マーヴィン)とハリー(ヴェラ・マイルズ)の存在です。リバティ・バランスは旧態依然としたやり方で儲けを得ようとする牧場主たちから雇われた荒くれ者で、ランスが西部に初めて来た時身ぐるみを剥いだ上、大けがを負わせています。町にやって来ては悪事を働きますが、銃の立つトム(ジョン・ウェイン)には一目置いています。ハリー(ヴェラ・マイルズ)は、ランスを看病しさらに食堂で一緒に働くうちに彼の信念に心を打たれます。もともと彼女は、トム(ジョン・ウェイン)の彼女で、結婚を申し込んでもいないのに自宅を増築したりしていました。そんな中で彼女がランス(ジェームズ・スチュワート)へ心が動くのを知り彼を応援し始めます。法と秩序の男ランスが銃を持ち悪党リバティ・バランスに立ち向かうのですが・・・
この映画での、ジョン・ウェインとジェームズ・スチュワートとはコインの裏表のような関係です。お互いに主張していることはある意味両方正しい。無法者リバティ・バランスを裁くのはやはり銃(力)なのか、秩序(法)なのか?そして、その答えはハリー(ヴェラ・マイルズ)が選んだ人が誰かでわかりますね
ジョン・ウェインを西部劇の中で”敗者”として描けるのはジョン・フォード監督だけでしょうね


伝説を作った男と背負わされた男
回想シーンが終わり、すべてを話し終えたランス上院議員が記事にしてもらってかまわない旨を言ったあと、記者が言います
「ここは西部です。伝説が事実となってしまったら、伝説を印刷する」
そう言い残して真実を語ったランスの取材したメモを破り捨て、去っていきます。亡き友の真実を語ったものの、何も変わらなかったことに、無言でシンボーンを去ります。ワシントンへの帰路、列車内で妻のハリー(ヴェラ・マイルズ)とランス(ジェームズ・スチュワート)がしみじみと語り合います
「ハリー、かまわないだろうか・・ワシントンから越してくることになっても」
「実はずっと考えていたんだ。ここへ戻ってきて暮らそうかと・・法律事務所を開くよ」
「ランス、すばらしいわ。私もずっとそうしたかったのよ。私のふるさとだもの。戻って来ましょう」
「見てちょうだい。昔は荒野だったのに、今は緑にかこまれていて誇らしいわ」
「カクタス・ローズをトム(ジョン・ウェイン)の棺の上に置いたのは君か?」
「そう、わたしよ」
「・・・」
カクタス・ローズは、かつてトムが彼女にプレゼントした花です(上に画像あり)。さらに、かつては無法者が多かったこの地も、リバティ・バランスが撃たれてから、民主主義への街へと変わり、その中心人物がランスだったことは誰もが認めています。ただ、誰にも知られずに死んだトムこそがこの街の功労者であったことを二人は知っています
車掌が通りかかって言う
「お二人のために時速40キロで突っ走ってますよ。用事があったらなんでもおっしゃってください」
「ありがとう。鉄道会社に礼状を書くよ」
「とんでもないです。リバティ・バランスを撃った方のためですよ」
それを聞いて、パイプに火をつけようとしていたハンスは止めて複雑な表情で窓の外を眺めるのでした
真実を話したにもかかわらず、伝説は伝説として語り継がれることを望まれ、もう一人の伝説の男トム・ドニファン(ジョン・ウェイン)は誰にも知られずに、この世を去って行きました。伝説を作った男と背負わされた男。ランスとハリーの二人だけはトム(ジョン・ウェイン)に殉じて彼のふるさとで暮らす決意をしたのだろうと思います。こんな叙情的な西部劇のラストは見たことがありません
単なる西部劇と思うなかれ!
是非ご覧ください










































