『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

 

                     

                  架空ポップカルチャー・マガジン

                   『Adieu Romantique』No.15

    ~特集 : 今、このセカイに流れるべきBGM

                   トゥイー・ポップ【Twee POP】~

                       

 
今週の『Adieu Romantique』の表紙には2008年に12歳でファッション・ブログを始め、一躍有名になり、その後、声優、女優、ファッショニスタとしても活動した女の子、タヴィ・ケヴィンソン的なベッドルームの写真(彼女が撮ったものか、女の子たちの本質を撮る写真家ペトラ・コリンズのものかどうかは分からない)を使ってみた。単なる思いつきなんだけど、それは枕に書かれた「Here you will dream of endless kissing」【ここでは終わりのないキスの夢を見ることになるでしょう】という言葉がまるで今週の特集である「トゥイー・ポップ」【Twee POP】の精神性そのものであるような気がしたから。

 

『特集: 今、このセカイに流れるべきBGM

               トゥイー・ポップ【Twee POP】』

 

かつて。僕が聴いてきた(そして今も)大好きな音楽、PUNKNo New Yorkネオ・アコースティックオルタナティヴGuitar PopGirly PopアノラックC86系脱力系DIYAvant-PopシューゲイザーLo-FiエモコアToy Popなど、それらすべてと重なり合い、共振しながら、80年代後半頃に登場し、現在も進化し続けているトゥイー・ポップ【TWEE POP】のこと。「Twee」とは当時、アメリカやイギリスの若者の間で使われていたスラングで「過度に可愛らしい」とか「気取っていて感傷的な」だとか「大人と子供が混じり合った未熟なもの」とか、そういったニュアンスを持ち、少し馬鹿にしたような感じで使われる言葉だったものを、敢えて「僕たちはTweeだから」と発言し、そういったニュアンスを前向きに捉えて、その言葉が内包する「センシティヴ」「ナイーブ」な感じ、「キッチュ」な感じや「イノセント」「ひねくれた」「青春期の拗らせ感」など、上手く言葉にならないような、どうしようもない感情を表現した音楽であり、現在もTiny PopDream PopBedroom PopFree FolkAnti-Folk などを広く往き来しながらさまざまな形で更新され、僕自身がよく使っていた(やはり上手く言葉にならなかった)「壊れかけたオモチャのような音楽」という感じを含め、(結局、こんな風に音楽ジャンルを並べると、そこに明確な線引きなんてまったくないと感じつつ)そういった音楽の壮大な系譜を総括するジャンルとして、ある種のカウンター・カルチャーとして、そしてロマンティークな音楽として再評価しながら、今、これほどデタラメな時代を呼吸する若者たちの気持ちにぴったり寄り添う音楽はないんじゃないかと思っている(だけど特集のタイトルはちょっぴり大袈裟に過ぎたかな、ともうーん)。
 

遡れば。ブライアン・ウィルソンが全身全霊を込めて制作し、完成時にはメンバーのマイク・ラヴから「こんな音楽、誰が聞くんだ 犬か?」と言われた、1965年リリースのビーチ・ボーイズのアルバム『ペット・サウンド』をその始まりとして、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドや女の子だけのアマチュアリズムの極北と言えるバンド、シャグス70年代のジョナサン・リッチマン、70年代末頃に登場したレインコーツやソニック・ユースなどのバンドやシンガーをその源流に置き、80年代後半のヴァセリンズやインディー・レーベル「C86」を創設したスティーヴン・パステルが率いたパステルズ、或いは「壊れかけたオモチャのような音楽」を代表するダニエル・ジョンストンを経て、彼らの音楽をリスペクトしたニルヴァーナカート・コバーンがそれまでの「ロック=マッチョイズム」というステレオ・タイプの図式から離れ(僕自身も当時、マッチョなロックにウンザリしていて、感覚的に音楽はロックでなければ何でもいいとすら思っていた)、それまでにあった揺るぎない価値観、所謂、ロックを表現するファッションの定番であった鋲を打った革ジャンドクターマーティンの8ホールのブーツを脱ぎ捨て、薄いカーディガンにコンバースオールスターを履いてステージに上がった時から、Twee POPは本格的に始まったと言える。


🎨さて、と。そんな講釈よりも何よりも、(あくまでも僕自身の主観に過ぎないケド)Twee POPを最も早く体現したのは実はアメリカのルーニー・チューンズが1940年代に生み出したキャラクター、Tweetyじゃないかと思っている。とんでもなく可愛くてセンシティヴかと思えば、可愛い囀りで歌ったり、ナイフとフォークをカチン、カチンと合わながらTweetyを食べてやろうと準備している猫のシルヴェスターを見つけると口癖のように「見た!見た!ネコたん」と言いながらからかってみたり。とてもキッチュな存在であった彼こそは(どうやらオスのカナリアらしい)、その名の通りTwee POPの象徴であるとか、特にそうではないとか、まぁ、いろいろ。
 
音譜さて、と。時は1996年。当時はあまり話題にはならなかったような気がするけれど、僕の中ではまさにTwee POPだったタリー・クラフト【Tully Craft】のアルバム『Old Traditions , New Standards』から。疾走感がたまらなくカッコよくて、ロマンティークな曲『Josie』
 

 

音譜タリー・クラフトと同じ時代にデビューしたベネット【BENETT】のアルバム『So You’re Not Coming Over ?』は、Girlyでオモチャ箱のような、当時のインディー・ロックの隠れ名盤。曲はオープニングを飾った曲『Who’s Your Baby ? 』。その後、彼女が次のアルバムを出したのかどうか僕は知らない。
 

 

音譜この頃の日本では「渋谷系」の音楽が全盛だった。例えばロリポップ・ソニック(後のフリッパーズ・ギター)やカヒミ・カリィ峰川貴子が結成していたファンシー・フェイス・グルーヴィー・ネームシーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハーマックドナルド・ダッグ・エクレアロケット・オブ・チリトリとか。今から考えればさまざまなバンドやシンガーたちがTwee POPと言えるような音楽を演っていた訳だけど、そんな中で特に僕が大好きだったのがシトラス【citrus】。当時、大阪では「渋谷系」への拒否反応が強かったし(大阪人はラテン系とよく言われるけど、ほんとは意外といろんな意味で閉鎖的だと思うなうーん)、シトラスに至っては聴いている人に出会ったことがないほど、マイナーな存在だったかもうーん

 

もともと遠藤倫子江森丈晃の男女ユニットだったところに、1997年、正田圭渡辺菜々が参加する形に。その音楽は可愛くて、脱力していてとても魅力的なTwee POPだった(今現在のTwee POPに最も近いかも知れない)。もともと彼らはカセット・テープで音楽をリリースしていて、1994年にようやくインディー・レーベル「Vinyl Japan」からミニCDアルバムを2枚リリース。その後フリッパーズ・ギター小山田圭吾が主宰した音楽レーベル「トラットリア」に在籍してからもずっとシングル盤やミニCDアルバムのみのリリースで活動し、フルのアルバムは結局、最後まで出さなかった。そんなシトラスの早過ぎた感覚によるデビュー・ミニCDアルバム『Citrus Plant For Little Kids』から『911KGGI』とタイトル曲を。

 

 

 
音譜同じく「Vinyl Japan」から1995年にリリースされたシトラスのセカンド・ミニCDアルバム『Sings In Melodydecorder』全曲を。
 

 
音譜今回はTwee POPを特にアーカイヴしようとは思ってない。なのでセレクトはいたって適当だ。だけど一応、Twee POPの源流、ヴェルヴェット・アンダーグランドの曲もUPしておきたい。1969年リリースのサード・アルバム『The Velvet Underground』から、バンドの紅一点であり、ドラマーだったモーリン・タッカー【Maureen Tucker】が歌った『After Hours』

 

 

音譜彼女はヴェルヴェッツ解散後に、いくつかのソロ・アルバムをリリースしている。その中からジャケがウォーホルによるヴェルヴェッツのバナナ・ジャケとリンクするようなジャケのベスト盤CD『I'm Sticking With You : An Introduction To Moe Tucker 』からヴェルヴェッツの曲『Waiting For The Man』のエンジェリックなカヴァーを。
 

 

📷️タヴィ・ケヴィンソンのオンライン・マガジン「Rookie」の写真を撮り、2010年代以降のGirly Photographyを代表するペトラ・コリンズ【Petra Collins】写真も。
 
📷️タヴィ・ゲヴィンソンをモデルに撮ったシリーズ。
 
 
 
 

 

ドキドキアナ・ダ・シルヴァジーナ・バーチを中心に結成されたガールズ・グループ、レインコーツ【The Raincoats】のデビュー・アルバムから『No Side To Fall In 』を。彼女たちの音楽は限りなくパンクに近かったけど、そのヘタウマなボーカルと演奏はTwee POPへと繋がる。因みにアルバム・カヴァーのイラストをよく見ると、日本のお隣の、ややこしいお国の感じが。

 

 

音譜ヴェルヴェット・アンダーグラウンド直系とも言えるバンド、フィーリーズ【The Feelies】が1980年にリリースした傑作アルバム『Crazy Rhythms』から。ビートルズで最も長いタイトルの曲『Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey』高速痙攣カヴァー
 

 

音譜アンドリュー・ブレナーを中心として、デヴィッド・トゥープスティーヴ・ベレスフォードらによっ制作された、The 49Americansの1982年のアルバム『We Know Nonsense』から『Tendency To Lie』イギリス人によって、古き良きアメリカのドリーム・ポップが再生された、変態アヴァン・トゥイー・ポップ。

 

 

音譜ニルヴァーナカート・コバーンがリスペクトしたバンド。ユージン・ケリーフランシス・マッキーによるヴァセリンズ【Vaselines】の曲『Son Of A Gun』
 

 

音譜ビート・ハプニングダブ・ナルコティック・サウンド・システム(カッコいいバンド名だよね)を率いてアメリカのインディー・ポップ・シーンに大きな足跡を残したカルヴィン・ジョンソンが創設した「K-Records」のメイン・バンドのひとつ、タイガー・トラップ【Tiger Trap】のシングル曲【Sour Grass】
 

 

📷️ペトラ・コリンズに影響を与えた写真家であり、インディペンデントの映画作家でもあったリチャード・カーン【Richard Kern】が撮ったTweeな感じがする「Girly Photography」をいくつか。

 
📷️タバコを吸う女の子の写真が何故か「Girly」ぽかった。(遥か昔の映画ではアメリカやフランスの大女優たちがカッコよく煙草を吸うシーンが数多くあったのに)、だけどいつしかそういった写真や映画は時代と合わなくなってしまったのは少し寂しいような気も。
 
 
 
【📖Twee POPを知るための一冊】

 

そして。日本でTweeな雰囲気を牽引し、たくさんの情報を発信したのは、1980年代の終わり頃に出されていたファンジン「英国音楽」を引き継ぎ、当時の日本やイギリス、アメリカのインディー・ロックを数多く紹介してくれた、1993年創刊の季刊雑誌「米国音楽」だった。雑誌名の「米」という漢字をユニオンジャック風にデザインしてアメリカとイギリスのロックを同時に発信する雑誌であることを表明し、ファンジン時代からの精神や音楽的志向を反映させていたところが実に洒落ていた。因みに。この雑誌には毎回、付録として10曲くらいをコンパイルしたオリジナルCDが付いていたのも魅力だった(時にこのCDでしか聴くことができない曲も)。
 
🎦ハル・ハートリーが1993年に撮った『シンプルメン』はそのファッションから雰囲気まで、大人になっても子供の心を失わない、そんな感覚からのTweeな感じが満載の映画。特に劇中、主演の(前髪パッツンがチャーミングな)エリナ・レーヴェンソンらがソニック・ユース『Kool Thing』に合わせ踊るシーンに僕の心も揺さぶられ、そして思わず踊った。
 

 

🎦因みに。この『シンプルメン』のダンス・シーンは、1962年にジャン=リュック・ゴダールが撮った映画『女と男のいる舗道』【Vivre Sa Vie : Film en Douze Tableaux】で、ミシェル・ルグランの音楽に合わせてアンナ・カリーナが踊る「過度に可愛らしい」シーン(振り付けはアンナ自身だったという)へのオマージュであり…

🎦さらに同じく1964年のゴダール映画『はなればなれに』【Bande à partアンナ・カリーナサミー・フレークロード・ブラッスールが当時、フランスでも流行したフィラデルフィア生まれの「マディソン・ライン・ダンス」を踊る、めちゃくちゃスタイリッシュなシーンへのリスペクトであり、オマージュでもあった。そう。60年代ゴダール作品における「過度に可愛らしい」アンナ・カリーナもまたTweeの源流と言えるかも知れない。


音譜ビーチ・ボーイズビートルズをリスペクトするウィル・カレン・ハートが率いたオリヴィア・トレマー・コントロール【The Olivia Tremor Control】の、2CDによるデビュー・アルバム『Dust At Cubist Castle 』(アート・ワークもすべてカレン・ハートが手掛けた)は、カレン・ハートが音楽仲間と主宰した、アメリカのジョージア州アセンズの音楽集団「(The) Elefant 6 (Recording Company)」から1997年にリリースされた。因みに。僕はこのアルバムの、まるでディズニー・ランドのようなポップ・ワールドの迷宮に嵌まり込み、続くセカンド・アルバム『Black Foliage』はもちろん、彼らの7inchアナログ・シングルなども買い集めた他、同じのアップルズ・イン・ステレオニュートラル・ミルク・ホテルオブ・モントリオールなども聴きまくることに。

音譜アルバムの3曲目に収められた、ブライアン・ウィルソンをリスペクトしたかのようなポップソング『Jumping Fences』

 

音譜クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー【Clap Your Hands Say Yeah】のアルバム『Some Loud Thunder』から『』。

 

 

音譜Twee POP From Japan。HALCALIの後を継いだような日本人とフランス人のハーフの女の子、MANON (セルジュ・ゲンスブールの曲のタイトルから付けられたのかも)のRAPが強力に可愛い、2018年リリースのアルバム『Teenage Diary』から『xxFANCY POOLxx』

 

 

さて、と。長い間、世界を席巻していた感があった日本発の価値「KAWAII」を取り込みつつ(現在、世界的に見ると「KAWAII」は失速しているような気がするうーん)エレクトロニカフォークトロニカを通過し、スクリーモmeetsTwee POPトゥイーモが登場したり。変幻自在に形を変えてきた(と言うより、もともと精神性の問題であり、音楽的な形を持っていない)、現在進行形のTwee POPをいくつか。
 
音譜Anti-Folkの女王、キミヤ・ドーソンの脱力ユニットThe Moldy Peaches の、素敵な脱力アルバムから『Anyone Else But You』を。

 

 

音譜ノースカロライナで活動するMelaina Kol のアルバム『Okay That's a Great Idea Because If I Do That Then』から『Lifeheart』
 

 

音譜ダニエル・ジョンストンの曲『Devil Town』へのリスペクトから生まれた音楽レーベル「Devil Town Tapes」からリリースされた、omes のアルバム『boy』収録の『ok』ft.Vivi Milne 

 

 

音譜カナダのトロント発のTwee POPレーベル「dawk26」から。Josephine's Next Million Milesのアルバム『Backle Up』はとにかく僕の音楽嗜好のツボを押しまくってくれる。曲はアルバムから『Summer Song』

 

 
音譜同じく「dawk26」の、clust.r のアルバム『Autumn Break Down』から『We Begin』
 

 
音譜先にセレクトしたシトラスと併せて。シトラスのメンバー、遠藤倫子正田圭が結成したユニット、クレイン【CRAIN】が2000年にリリースしたCDシングル『Crystal Thunder In The Wonder Safari』は今こそもっと再評価されるべき曲だと思いつつ(彼らの音楽的なセンスは色褪せないし、ほんと素晴らしいと思う)。

 

 

音譜イングランド南東部にあるワイト島で育ったリアン・ティーズデールヘスター・チャンバースが結成したWet Leg のデビュー・アルバムからTweeな、あまりにTwee POPな『Chaise Longue』


📷️ジャスティーン・カーランド【Justine Kurland】が1997~2002年に撮った、女の子たちの写真集『Girl Pictures』から、いくつかの写真も。






音譜スローコアの系譜だろうか。特に可愛くはないけど、壊れそうなほどの感情を内包した爆音ギターが「今、このセカイに流れるべきBGM」を響かせる。my guitar is trying to kill me のアルバム『Shield Of Faith』から『Colorado』
 

 
音譜gashのアルバム『at least you know what you're laughing at』から『good and bad』。「今、このセカイに流れるべきBGM」は、曲のラストの絶叫で衝撃的に終わることに。
 

 
【編集後記】
「今、このセカイに流れるべきBGM」なーんてちょっぴり大袈裟なタイトルを付けたけど、それが今の気分にぴったりなのかというと正直、僕にも分からない。だけど、音楽のひとつの有り様としてTwee POPの「何でもありな」自由さは「ありっちゃ、あり」なんじゃないだろうかと思っている。混沌とした感情を抱きつつ、それじゃぁ、また。アデュー・ロマンティーク