架空ポップカルチャー・マガジン
『Adieu Romantique』No.22
~ 特集 : 音楽とファッション~
【 musique et mode】
だけど音楽が、ハイ・ファッションのグランメゾンが提案するテーマに大きなインスピレーションを与えることはよくあるし(音楽だけに限らず昔のアートやポップカルチャーからも)、古くはココ・シャネルが(当日はコレクションなんてなかったけど)友人でもあったイーゴリ・ストラヴィンスキーの音楽やセルゲイ・ディアギレイフが率いたバレエ・リュス、ジャン・コクトーの芸術性から少なからず影響を受けたはずだし。そもそも音楽とファッションはそのどちらかが先行しているという訳でもないし(1960年代にはロックが他の表現よりも一歩先に進んでいたかも知れない)。まぁ、僕自身はと言えば、音楽やアートやファッションなどをひっくるめてポップ・カルチャーとして都合よく捉えているので、同時代的なものはすべてが関連し合っていると思っているし、ある表現ジャンルだけが単独で動いているとは思っていない。
【ファッションと音楽の
関係性を知るための一冊】
音楽とファッションの関係性なんて、そんな簡単に分かる訳はないので(難しく考えても分からない)参考程度に。サックス奏者であり、作曲家であり、プロデューサーであり、文筆家でもある菊地成孔の著作『服は何故 音楽を必要とするのか?:「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽たちについての考察』。この本の中で菊地成孔は「パリやミラノなどのハイ・ファッションのランウェイでは、モデルのウォーキングと、ショーで使われている音楽は決してシンクロすることがなく、音楽に対してウォーキングは常に、つかず離れずの、一定のズレがあって不自然であり、それゆえ独特のエレガンスが生まれる」というような話を書いていてとても面白い考察だと思った。
確かに。日本国内や近隣の国に人気が高い東京や神戸で開かれているコレクションでは、(それがプレタポルテやオートクチュールのコレクションとは異なる、もっと身近なリアル・コレクションでは(例えば「東京コレクション」とか)モデルたちのウォーキングや笑顔、ちょっとしたスキップに至るまでが完全に音楽とシンクロしているにも関わらず、「パリコレ」などのグランメゾンのランウェイを見ていると、モデルたちは、例えどのような音楽が流れていたとしても(音楽など流れていないかのように)ランウェイを無表情、且つ速足で一直線に歩いてゆく。それが世界的に有名なスーパー・モデルであっても、とても画一的で無個性に。そのことがファッションと音楽の関係性を表しているかは微妙だけど、例えファッションと音楽がそのような関係であったとしてもグランメゾンが提案するトレンドには音楽からのインスパイアもあるはずだし、少なくともランウェイで流す音楽にはランウェイを歩くモデルを選択することと同等か、それ以上の細心の注意を払い、セレクトしているはず。
そのようなことで。いきなり脇道から入ったので少々ややこしくなってしまったけどシンプルに、これからの季節に相応しいと思う、一応、僕の中での2026年秋のトレンドとも言える(🤭プッ 自分で言いながら吹き出してしまった)音楽を、ハイファッションの「2026~27 秋冬コレクション」の(僕が個人的に面白いと思った)ランウェイを覗きながら、昔からずっと見ていた、大内順子がMCを努めたTV番組『ファッション通信』のような感じで(このTV番組はとても雑誌的だったということもあって)「Adieu Romantique」的に古い音楽も新しい音楽も関係なくコンパイルしていくことに。
最初は。下田法晴【Michiharu Shimoda】と春野高広(後にLittle Tempoに参加)中心になり活動したバンド、サイレント・ポエツ【Silent Poets】(現在は下田のソロ・ユニットに)の、ジャケもスタイリッシュでカッコいい(下田自身のアート・ワークだ)、1997年のアルバム『For Nothing』から深淵なDUB『Check L'intellect』ft.ejm 。
続いて京都出身のSSW、NTski (単純にエヌティーエスケーアイと読む)が2021年にリリースした、今のところ唯一のアルバム『Calla』から『Milk White Steed』。不思議なカントリー&ウェスタン・テイストなアートも彼女自身によるもの。そのアートも、音響派とも言える、その深いサウンドも彼女の佇まいもすべてが新しい。
問題は、すべてあなたの頭の中にあるのよ
と彼女は言った
論理的に考えれば、答えは簡単なはずよ
私は、あなたをあなたの苦しみから
解放させてあげたいの
恋人と別れる方法なんて50もあるから
女性からの一方的な論理による別れ話の歌。この曲を聴くと何故かいつもウディ・アレンの映画が浮かんでくる。そう、『アニー・ホール』と『カイロの紫のバラ』とか『ハンナとその姉妹』とか。この曲もウディ・アレンの映画もどこか都会の秋を感じさせるよね。
これからの季節にはフレンチ・ポップがよく似合う。ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』やフランソワ・トリュフォーの『突然炎のごとく』などのステキな映画に主演した、フランスを代表する大女優ジャンヌ・モロー【Jeanne Moreau】の、1970年にリリースされた、ジャケも秋っぽい感じがするアルバム『Jeanne Chante Jeanne』から『Juste un Fil de Soie』。
フレンチをもう一曲。ピエール・バルーが主催したフランスのインディ・レーベル「SARAVAH」からの最初のアーティストになる、ブリジット・フォンテーヌ【Brigitte Fontaine】とジャック・イジュラン【Jaques Higelin】が「SARAVAH」以前の、1966年に制作・リリースしたアルバム『12 Chansons D'avant Le Deluge』から『La Grippe』を。時代を超えて、ほんとカッコいいデュオだと思う。



じゃぁ、フォークロア(或いは牧歌的とも)を感じる音楽も。イギリス南西部の地域コーンウォールで即興的な演劇を核にしたLIVEパフォーマンスを行うエイミー・ローレンスのプロジェクト The Worm の、アヴァンギャルド・フォーキーなアルバム『Pantilde』から、恐ろしいほどの「のどかさ」と「脱力」を感じさせる(ケルト文化の影響も)曲『Grass Grows , Pt.1 』。ヴァシュティ・バニヤンの歌をさらに純朴にしたような音楽と言えば少しは伝わるだろうか。いやぁ、とにかく。音楽の可能性に満ちている。







1995年にバーミンガムで、ヴォーカリストのトリッシュ・キーナン(2011年に急逝)とベーシストのジェイムズ・カーギルによって結成されたブロードキャスト【Broadcast】の、1997年にイギリスのテクノ・レーベル『WARP』からリリースされたデビュー・アルバム『Work and Non Work』から。『Accidental』、『The Book Lovers』を。秋に似合う音楽のキーワードは3つ。即ち「メランコリー」、「ノスタルジー」、そして「ロマンティーク」(ほんとうかな
)。当時、よく聴いていた彼らの音楽にはそのすべてが詰まってる。
クィア・シンガー、シド【Syd】の今年リリースのアルバム『Beard』から秋を纏ったようなオーガニックな曲『My Love』。



ジャン=ジャック・ベネックスが1981年に撮った傑作長編デビュー作『ディーバ』【DIVA】(後に彼は『溝の中の月』や『ベティ・ブルー』といった面白い作品を撮ることに)。その美しい映像と共に忘れられない、ウラジミール・コスマ【Vladimir Cosma】のピアノによる、幻想的なテーマ曲『Promenade Sentimentale』を。因みにこの曲は坂本龍一がSpotifyにUPしたプレイリストにも入っていたはず。


【編集後記】
秋に似合いそうな音楽とハイ・ファッションの「2026~27 秋冬コレクション」を交差させてはみたものの、いまいち切れ味が悪かったかな、と少し反省している(ほんの少しだけね)。まぁ、これも僕なりのポップ・カルチャーに対する「冒険」のつもりなので、そこは大目に見てもらえればと思いつつ。心地いい秋風に吹かれて。それじゃあ、また。アデュー・ロマンティーク。























