『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

                     

 

              架空ポップカルチャー・マガジン

                『Adieu Romantique』No.22

             ~ 特集 : 音楽とファッション~

                     【 musique et mode】

              

 今週の『Adieu Romantique』の表紙はアドリアナ・デュークの写真を使って「音楽とファッション」を表現してみた。Chat GPTにうまく指示を出せなくてちょっぴり苦労したけど最終的にはほぼイメージ通りになったかな、と思ってる。

『特集 : 音楽とファッション』
【musique et mode】
 
ハイファッションの世界では世の中よりもワンクール早く、例えば春にはその年と次の年を跨ぐ「秋冬コレクション」を、秋には次の年の「春夏コレクション」を開催するという具合。つまりハイ・ファッションの世界では1年近く前に(制作や準備を含めるともっと前から)次のトレンドを毎回毎回発信していくという慣習のようなものがある訳だ。だけど音楽の場合は新しいアルバムのリリースに併せたツアーはするけど、「コレクション」や発表会はないし、トレンドは雑誌やラジオ、クラブやweb上で評論家やDJ、一般の受け手が聴きながら発見し、発信していくようなところがあるので(古い音楽が再発見されて小さなトレンドを生む場合もあるし)、特に音楽業界全体で新しいトレンドを生み出していくようなことはない。

 

だけど音楽が、ハイ・ファッションのグランメゾンが提案するテーマに大きなインスピレーションを与えることはよくあるし(音楽だけに限らず昔のアートやポップカルチャーからも)、古くはココ・シャネルが(当日はコレクションなんてなかったけど)友人でもあったイーゴリ・ストラヴィンスキーの音楽やセルゲイ・ディアギレイフが率いたバレエ・リュス、ジャン・コクトーの芸術性から少なからず影響を受けたはずだし。そもそも音楽とファッションはそのどちらかが先行しているという訳でもないし(1960年代にはロックが他の表現よりも一歩先に進んでいたかも知れない)。まぁ、僕自身はと言えば、音楽やアートやファッションなどをひっくるめてポップ・カルチャーとして都合よく捉えているので、同時代的なものはすべてが関連し合っていると思っているし、ある表現ジャンルだけが単独で動いているとは思っていない。

 

【ファッションと音楽の

    関係性を知るための一冊】

 

音楽とファッションの関係性なんて、そんな簡単に分かる訳はないので(難しく考えても分からない)参考程度に。サックス奏者であり、作曲家であり、プロデューサーであり、文筆家でもある菊地成孔の著作『服は何故 音楽を必要とするのか?:「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽たちについての考察』。この本の中で菊地成孔は「パリやミラノなどのハイ・ファッションのランウェイでは、モデルのウォーキングと、ショーで使われている音楽は決してシンクロすることがなく、音楽に対してウォーキングは常に、つかず離れずの、一定のズレがあって不自然であり、それゆえ独特のエレガンスが生まれる」というような話を書いていてとても面白い考察だと思った。

 

確かに。日本国内や近隣の国に人気が高い東京や神戸で開かれているコレクションでは、(それがプレタポルテやオートクチュールのコレクションとは異なる、もっと身近なリアル・コレクションでは(例えば「東京コレクション」とか)モデルたちのウォーキングや笑顔、ちょっとしたスキップに至るまでが完全に音楽とシンクロしているにも関わらず、「パリコレ」などのグランメゾンのランウェイを見ていると、モデルたちは、例えどのような音楽が流れていたとしても(音楽など流れていないかのように)ランウェイを無表情、且つ速足で一直線に歩いてゆく。それが世界的に有名なスーパー・モデルであっても、とても画一的で無個性に。そのことがファッションと音楽の関係性を表しているかは微妙だけど、例えファッションと音楽がそのような関係であったとしてもグランメゾンが提案するトレンドには音楽からのインスパイアもあるはずだし、少なくともランウェイで流す音楽にはランウェイを歩くモデルを選択することと同等か、それ以上の細心の注意を払い、セレクトしているはず。

 

そのようなことで。いきなり脇道から入ったので少々ややこしくなってしまったけどシンプルに、これからの季節に相応しいと思う、一応、僕の中での2026年秋のトレンドとも言える(🤭プッ 自分で言いながら吹き出してしまった)音楽を、ハイファッションの「2026~27 秋冬コレクション」の(僕が個人的に面白いと思った)ランウェイを覗きながら、昔からずっと見ていた、大内順子がMCを努めたTV番組『ファッション通信』のような感じで(このTV番組はとても雑誌的だったということもあって)「Adieu Romantique」的に古い音楽も新しい音楽も関係なくコンパイルしていくことに。

 

音譜最初は。下田法晴【Michiharu Shimoda】と春野高広(後にLittle Tempoに参加)中心になり活動したバンド、サイレント・ポエツ【Silent Poets】(現在は下田のソロ・ユニットに)の、ジャケもスタイリッシュでカッコいい(下田自身のアート・ワークだ)、1997年のアルバム『For Nothing』から深淵なDUB『Check L'intellect』ft.ejm 。

 

 

音譜続いて京都出身のSSW、NTski (単純にエヌティーエスケーアイと読む)が2021年にリリースした、今のところ唯一のアルバム『Calla』から『Milk White Steed』。不思議なカントリー&ウェスタン・テイストなアートも彼女自身によるもの。そのアートも、音響派とも言える、その深いサウンドも彼女の佇まいもすべてが新しい。

 

 
音譜UKのMusic Collective、SAULTのヴォーカリストとしても刺激的な活動をしているクレオ・ソル【Cleo Sol】のNew Album『Gentle Woman』から『Sentimental Love』。
 

 

音譜都会の秋と言えば、このアルバムは外せない。ポール・サイモン【Paul Simon】の、1975年リリースのアルバム『時の流れに』 【Still Crazy After All These Years】(プロデュースはフィル・ラモーン)から数多くのセッション・ドラマーとして活躍したスティーヴ・ガットのドラミングに導かれるように始まる洗練の極み『恋人と別れる50の方法』【50 Ways To Leave Your Lover】を。パーソネルはスティーヴ・ガット以外にジョン・トロペイ(g)、トニー・レヴィン(b)、ケニー・アスチャー(org)、ラルフ・マクドナルド(per)の他、コーラスにパティ・オースティン、フィービー・スノウ、(アシュフォード&シンプソンの)ヴァレリー・シンプソンら豪華メンバーが参加している。

 

 

   問題は、すべてあなたの頭の中にあるのよ
  と彼女は言った
  論理的に考えれば、答えは簡単なはずよ
  私は、あなたをあなたの苦しみから

  解放させてあげたいの
  恋人と別れる方法なんて50もあるから

 

女性からの一方的な論理による別れ話の歌。この曲を聴くと何故かいつもウディ・アレンの映画が浮かんでくる。そう、『アニー・ホール』と『カイロの紫のバラ』とか『ハンナとその姉妹』とか。この曲もウディ・アレンの映画もどこか都会の秋を感じさせるよね。

 

音譜これからの季節にはフレンチ・ポップがよく似合う。ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』やフランソワ・トリュフォーの『突然炎のごとく』などのステキな映画に主演した、フランスを代表する大女優ジャンヌ・モロー【Jeanne Moreau】の、1970年にリリースされた、ジャケも秋っぽい感じがするアルバム『Jeanne Chante Jeanne』から『Juste un Fil de Soie』。

 

 

音譜フレンチをもう一曲。ピエール・バルーが主催したフランスのインディ・レーベル「SARAVAH」からの最初のアーティストになる、ブリジット・フォンテーヌ【Brigitte Fontaine】とジャック・イジュラン【Jaques Higelin】が「SARAVAH」以前の、1966年に制作・リリースしたアルバム『12 Chansons D'avant Le Deluge』から『La Grippe』を。時代を超えて、ほんとカッコいいデュオだと思う。

 

 
音譜音楽とファッションを見事なほどカッコよく結びつけ体現したのが70年代を代表するスーパーモデルで当時、アンディ・ウォーホルのミューズでもあったグレース・ジョーンズ【Grace Jones】。彼女がシャンソンの名曲『薔薇色の人生』【La vie en rose】をディスコティークにカヴァーした12inchシングルを。


👗さて、と。ファッションの「2026~27 秋冬コレクション」を挟もう。ニコラ・ジェスキエール率いるLouis Vuittonのランウェイから。ヴィトンの新作は、自然を再解釈した新たなるフォークロア。チェック柄のニットにカラフルなレザーコードを編み込み、動物が描かれたパッチを貼り付けて、伝統と新しさをMixtureしている、とか何とか。ヴィトンらしいのか、らしくないのか僕には分からないけど、まぁ、とにかく可愛いよね。

 
 
👗フォークロアの流れでヴィトンはこんなバッグも。しかしいったい誰が持つんだろう?うーん。ハイジくらいしか思いつかないや。
 

音譜じゃぁ、フォークロア(或いは牧歌的とも)を感じる音楽も。イギリス南西部の地域コーンウォールで即興的な演劇を核にしたLIVEパフォーマンスを行うエイミー・ローレンスのプロジェクト The Worm の、アヴァンギャルド・フォーキーなアルバム『Pantilde』から、恐ろしいほどの「のどかさ」と「脱力」を感じさせる(ケルト文化の影響も)曲『Grass Grows , Pt.1 』。ヴァシュティ・バニヤンの歌をさらに純朴にしたような音楽と言えば少しは伝わるだろうか。いやぁ、とにかく。音楽の可能性に満ちている。

 

 

音譜ナタリー・ワイルドグース【Natalie Wildgoose】の、ステキなアルバム『Come Into The Garden』から。最小限の歌、ギター、ピアノによる天使の曲『Black Berries』と『Angel』を。

 

 

 
👗かつて。「ボロ・ファッション」と共に「黒の衝撃」を生み出したコム・デ・ギャルソン【Comme des Garçons】の「黒への回帰」。何のかんの言っても、やっぱり僕は川久保玲の、(一時期のマーク・ジェイコブスやエディ・スリマンらと同じように)アートや音楽と交感し合うアヴァンギャルドなクリエイションが好きなんだな。1997年のコレクションで「Body Meets Dress, Dress Meets Body」というテーマで「こぶドレス」を発表し、その翌年にはコンテンポラリー・ダンスのレジェンド、マース・カニングハムとコラボレートした時や、2018年のコレクションで高橋真琴のイラストレーションをドレスに仕立てた時は衝撃的だった。
 
音譜黒の世界のステキな音楽を。現在のシャーデー・アデューと僕が勝手にそう呼んでいる、パキスタン出身のSSW、アルージ・アフタブ【Arooj Aftab】のアルバム『Night Reign』から深淵なのにPOPな『Aey Nehin』。バークリー音楽大学を卒業し、現在はニューヨークを拠点に活動していて、その音楽はテリー・ライリーやアビダ・パルヴェーン(パキスタンを代表する女性歌手)などのミニマリズムやニューエイジの影響を受けつつ、母国パキスタンの音楽やジャズ、ポピュラー・ミュージックを柔らかに取り込んでいる。

 

 

音譜こちらも黒の名曲。再びブリジット・フォンテーヌを。アート・アンサンブル・オブ・シカゴとコラボレートした、1969年の名盤『ラジオのように』【Comme à la radio】からタイトル曲を。

 

 
以前、雑誌のインタヴューで川久保玲はこんなことを語っている。曰く「コレクションのテーマはいつもない。何もない中で暗中模索しながら創り始めます。ただ、いつも何かを探していますね。ずーっと。毎日、自分自身を飢餓状態に追い込みながら、いつも一歩先に進むことだけを考えています。言葉に直結しない抽象的なイメージを抱えながら何とか形にしていくので、その時々のテーマを表現する言葉もコレクション直前にパリに行ってからショーのリハーサルをしている楽屋で考えたりしています」と。音楽やアートや過去のポップ・カルチャーからインスピレーションを受けてコレクションを生み出していくデザイナーがほとんどの中で、コンセプトや予定調和的なものを拒絶する川久保玲はつくづくアーティストなんだと思わせてくれる(彼女はビジネスについても同じクリエイションだと考えているところが素晴らしい)。とは言うものの、もともとコム・デ・ギャルソンの呼称は(フランソワーズ・アルディの曲『男の子と女の子』【Tous les Garçons et les Filles』からインスパイアされた「少年のように」という意味だし、過去のコレクションのテーマ、例えば「パンク・バレリーナ」とか「キュビズム」、「不協和音」、「服でない服」、「見えない服」、「タブーを超えて」、「バッドテイスト」、「18世紀のパンク」などを並べると当然のことながらさまざまなものからの得たインスピレーションを受けていることも。
 
 
 👗黒の中で目を見張るピンクのドレスも。
 
音譜Steve Rachmad のCOOLな音響アルバム『Light And Time』から『Reality Programmers』。

 

 

音譜音楽レーベル「Carton Records」からリリースされたBobo & Behaja のアルバム『Aia Haja ?』から『Parepare』。アフロビーツの曲を早送り⏩️したような変態過ぎるアヴァンギャルド音楽。ウォーキングと音楽がシンクロしないランウェイと同じように、音楽とビートがシンクロしていない感覚に陥るような、だけどつい聴いてしまう中毒性も。

 

 

👗川久保玲からクリエイションを学んだ JUNYA WATANABE のランウェイも。
 
👗少し前の「Adieu Romantique」の特集「Ismなきアートの現在形」でセレクトしたヨハンナ・グッドマンのコラージュ作品を思わせる斬新なアッサンブラージュ・ドレス。

 

音譜1995年にバーミンガムで、ヴォーカリストのトリッシュ・キーナン(2011年に急逝)とベーシストのジェイムズ・カーギルによって結成されたブロードキャスト【Broadcast】の、1997年にイギリスのテクノ・レーベル『WARP』からリリースされたデビュー・アルバム『Work and Non Work』から。『Accidental』、『The Book Lovers』を。秋に似合う音楽のキーワードは3つ。即ち「メランコリー」、「ノスタルジー」、そして「ロマンティーク」(ほんとうかなうーん)。当時、よく聴いていた彼らの音楽にはそのすべてが詰まってる。

 

 

 

 音譜クィア・シンガー、シド【Syd】の今年リリースのアルバム『Beard』から秋を纏ったようなオーガニックな曲『My Love』。

 

 

👗さらに同じく川久保玲直系の、noir kei ninomiya のランウェイ。そのランウェイでは長谷川白紙の音楽が流れたらしい。
 
👗まるでクリスマス・ツリーを纏ったような。
 
音譜現在、僕の個人的な音楽トレンドとも言うべき「ただ流麗で美しいだけのピアノ演奏ではない」、「引っ掛かりのある個性的なピアノ音楽」をいくつか。スペインのピアニスト、フェデリコ・モンポウ【Federico Mompou】のアルバム『Mompou Complete Piano Works』から『Música callada I : No. 1, Angelico』。

 

 

音譜スウェーデンのジャズ・ピアニスト、ヤン・ヨハンソン【Jan Johansson】による、スウェーデン民謡をジャズで解釈、演奏したアルバム『Jazz Pa Svenska』から『Visa fran Utanmyra』。このstrangeな美しさはいったい何処から流れてきて、何処へ消えていくんだろうか、と。
 

 

音譜ジャン=ジャック・ベネックスが1981年に撮った傑作長編デビュー作『ディーバ』【DIVA】(後に彼は『溝の中の月』や『ベティ・ブルー』といった面白い作品を撮ることに)。その美しい映像と共に忘れられない、ウラジミール・コスマ【Vladimir Cosma】のピアノによる、幻想的なテーマ曲『Promenade Sentimentale』を。因みにこの曲は坂本龍一がSpotifyにUPしたプレイリストにも入っていたはず。



音譜現代に蘇ったエリック・サティ(なのかな?)。ビョークやジェーン・バーキンらが心酔したピアニスト、チリー・ゴンザレス【Chilly Gonzales】のアルバム『solo piano Ⅱ』から『Minor Fantasy』。

 

 

音譜エチオピアの女性ピアニスト、エマホイ・ツェゲ・マリアム・ゲブル【Emahoy Tsege Mariam Gebru】の曲『Mother's Love』。誰にも似ていないピアノ曲もはやこの世のものですらないような。或いはあっち側の世界から響いてくる音楽のような。その旋律と言い、音色と言い、まるで永遠のような、一度聴くと頭から離れないピアノの音色と旋律。

 

 

音譜ロンドンの音楽家Sam Besteのソロ・ユニット、ヴァーノン・スプリング【The Vernon Spring】のアルバム『Under A Familiar Sun』からタイトル曲を。エマホイ・ツェゲ・マリアムと同じく今までに聴いたことのないようなピアノによるテゴライズ不能の音楽。摩訶不思議なジャケも印象的。

 

 

音譜1980~90年代にかけて、DJ、トラックメイカー、コンポーザー、プロデューサーであり、ストリート系のオシャレ番長だった藤原ヒロシが2001年に音楽レーベル「CRUE-L」からリリースした12inchシングル。フェデリコ・フェリーニが撮り、ニーノ・ロータが作曲した映画『甘い生活』【La Dolce Vita】のテーマ曲のロマンティックDUBカヴァー。バックのロリータ・ヴォイスはカヒミ・カリィ。

 

 

音譜最後は。同じく藤原ヒロシの、昨年のクリスマス・イヴにリリースされ、あっという間にSold Outになった7inchシングル『KOTOBA』で締め括ることに。しかしなんだなぁうーん。藤原ヒロシという人は。成熟した大人の男性なのにこのイノセントでロマンティークな曲や歌詞、歌声はちょっとズルいよね(ただ羨ましいだけだけどえー?)。

 

 

【編集後記】

秋に似合いそうな音楽とハイ・ファッションの「2026~27 秋冬コレクション」を交差させてはみたものの、いまいち切れ味が悪かったかな、と少し反省している(ほんの少しだけね)。まぁ、これも僕なりのポップ・カルチャーに対する「冒険」のつもりなので、そこは大目に見てもらえればと思いつつ。心地いい秋風に吹かれて。それじゃあ、また。アデュー・ロマンティーク。