今日は大好きな70年代の映画から一つ!

 

この映画を初めて観たのは高校生の時で、東京下町の名画座で観ております。「ダーティハリー」「ダーティハリー2」の豪華二本立て!痺れましたねえ~その後何度も!

 

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「ダーティハリー」

1971年/アメリカ(102分)

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ドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッドのコンビでおくる刑事映画の最高傑作!

 

 

 監督

ドン・シーゲル

 音楽

ラロ・シフリン

 キャスト

クリント・イーストウッド/ハリー・キャラハン

 

アンディ・ロビンソン/スコルピオ(犯人)

ハリー・ガーディノ/アル・ブレスラー警部補

レニ・サントーニ/チコ(相棒)

ジョン・ミッチャム/フランク警部

 

クリント・イーストウッドについては今さらですので省略します。ハリー・ガーディノはキャラハン刑事の上司役で、「ダーティハリー3」にも出演しています。映画でもドラマでも多くの刑事役を演じている名脇役です。キャラハン刑事の相棒役のレニ・サントーニは、面白いことに、やはり型破り刑事映画「コブラ」で、主役スタローンの相棒役で出演しています。そして、「コブラ」には本作で犯人役のアンディ・ロビンソンが嫌味な刑事役で出演しているのも面白いですね。失礼な言いかたですが、この顔ぶれをみてもわかるようにB級映画の様相です。主演のイーストウッドでさえ64年の「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」などの人気マカロニ・ウエスタン三部作後にようやくアメリカに凱旋し「奴らを高く吊るせ」「荒鷲の要塞」を経て本作で一気にスターダムに登りつめます

 

 

 

▲クリント・イーストウッド/ハリー・キャラハン

▲アンディ・ロビンソン/スコルピオ(犯人)

▲ハリー・ガーディノ/キャラハンの上司(左)

 

舞台はサンフランシスコ_

屋上プールで泳ぐ女性が何者かに狙撃される事件が発生する。捜査を担当するのは、いつも汚い仕事を任される”ダーティハリー”と異名をもつキャラハン刑事(クリント・イーストウッド)だった。やがて、スコルピオと名乗る犯人(アンディ・ロビンソン)から脅迫が届き、キャラハン刑事と相棒チコ(レニ・サントーニ)は犯人の正体にせまるのだが・・・

 

この映画は、数多くのB級映画を監督したドン・シーゲルと一介のマカロニ・ウエスタン俳優であったクリント・イーストウッドの名を一躍有名にしただけでなく、70年代以降のアクション映画をけん引していくことになります。今では当たり前のようになっているはみ出し刑事モノやアウトロー刑事モノの基本を作り上げた映画です。同時期に作られた「フレンチ・コネクション」と共に、エポックメイキング的作品です!この2本は好きな映画で、刑事映画としても「映画なんでもベストて~ん」や「シネマDEクイズ」で取り上げています

 

 

 

 

 

  70年代を代表する一本!

 

アクション映画の真骨頂は、日常を忘れるような痛快さです。そういう意味でこの映画は、殺人鬼と共に不条理な世の中をマグナムでぶっ飛ばす痛快さが多くの人に共感を得たのでしょうね。オープニングから完璧です。殉職警官の記念碑とオーバーラップして、ライフルの銃身のアップ。そして、緊張感あふれる曲!まだ物語が始まってさえいないのにこのドキドキはなんでしょう。最初の銀行強盗の数分間で主人公キャラハン刑事の人物像を描く要領の良さというか手際の良さは、少ない予算のB級映画を撮り慣れたドン・シーゲル監督の演出の上手さですね。今のCG満載の派手なアクション映画を見慣れるとヌルく感じるかもしれません。時代のせいで画像が悪く見にくい場面もありますがご愛敬でしょう。70年代の殺伐とした空気がなんとも言えません!

 

イーストウッドというより、ハリー・キャラハンの面構え、セリフ、マグナムを構える姿、ツイードジャケットをさり気なく着るスマートさなどどれを切り取ってもカッコイイ!最初から最後までハリー・キャラハンのストイックさと無骨さがにじみ出ています。この映画は、その後のアクション映画に大きな影響を与えた、まさに金字塔という言葉がしっくりきます

 

 

  悪党が目立つほど映画は面白い

 

この映画は、電話によって警察やマスコミを操る「劇場型犯罪」で早い段階で犯人が判ります。過去何度か話しておりますが、映画は悪党(悪役)が目立てば目立つほど面白くなります。例えば「レオン」のゲイリー・オールドマン、「ターミネーター」のシュワルツェネッガー、「ブラックレイン」の松田優作、「ダイ・ハード」のアラン・リックマン、「荒野の用心棒」のジャン・マリア・ボロンテ、「スターウォーズ」のダース・ベイダーなど単なる敵役ではなく、もう一人の主役と言っても過言ではありません。そういう意味では、この映画の犯人役のアンディ・ロビンソン(アンドリュー・ロビンソン)の極悪非道ぶり、鬼気迫る姿は強烈なインパクトを残しました。当時は全くの無名だった彼を殺人鬼役に抜擢したドン・シーゲル監督の采配も冴えわたっています。実は、もともと彼はドン・シーゲルの息子で俳優のクリストファー・タボリの友人で強く推薦されたようです。アンディ・ロビンソンはその後、同じドン・シーゲル監督の「突破口」ではコソ泥役、同じ刑事映画のスタローンの「コブラ」では刑事役で出演しております

 

犯人と撃ち合いの末、キャラハン刑事が悪党に銃口を突きつけながら言い放つひと言!

 

「実は俺も何発撃ったか忘れちまった」

「さあ、どうする?」

 

映画のどのあたりのシーンかは観てのお楽しみ!このあたりは、サム・ペキンパー監督の助手もつとめ、B級作品を数多く手掛けているドン・シーゲル監督の手慣れ感と冴えを感じます

 

 

 

▲「ボニー&クライド/俺たちに明日はない」

▲「真夜中のカーボーイ」

▲「カッコウの巣の上で」

▲「スケアクロウ」

▲「さらば冬のかもめ」

▲「イージー・ライダー」

▲「明日に向かって撃て!」

 

  アメリカン・ニューシネマ!

 

この映画は、悪に対して手段を選ばず問答無用で撃ちまくるキャラハン刑事の無謀さや残忍なシーンは、一部の良識派からは眉をひそまれていたと聞きます。一方、政治不安や凶悪犯罪などの多発に不満を募らせていた大勢の若者や一般市民からは絶大の支持を得ています。単に悪人を退治するという単純な構図ではなく、殺人を犯しながら無罪になった犯人とアウトロー刑事との物語を軸に、加害者と被害者の人権問題を提起した映画なのですここに、この映画が公開された1971年という年に意味があります

 

アメリカン・ニューシネマとは、明確な定義があるわけではありませんが、60年代後半~70年代半ばにかけて作られた、若者層を中心とした反体制的な人々の心情をつづった映画群のことです。ベトナム戦争やケネディ大統領暗殺などの出来事や政治不信が背景にあり、それまでの大作主義や勧善懲悪といったハッピー・エンドの映画作りから、「アンチ・ヒーロー」「アンチ・ハッピーエンド」が特徴の新しい感覚や手法とした映画のことです

 

それまでのハリウッドでは、メジャーな映画製作会社が製作から配給、興行をほぼ独占的に行ってきました。したがって映画監督をはじめとする現場サイドは、その意に沿う映画、つまり既存の価値観の中で映画が作られてきたのが実情です。そういった中で、テレビの普及や世相、価値観の変化を受けて映画業界の経済状況が悪化すると、弱体化の一途をたどります。そして決定的な出来事が68年のヘイズ・コードの廃止です。ヘイズ・コードとは簡単に言うと「最低限の良識ある映画を作るためのガイドライン」です。ヘイズコードの廃止によって、バイオレンスやセックス、政治などの表現の幅が広まり、より自由な映画作りができるようになりました。 これらが「アメリカン・ニューシネマ」誕生の上で重要な要素と言えます。そして、このような時代背景の中で誕生したアメリカン・ニューシネマは当時の若者を中心に多くの人々の共感を得ることになります

 

ここにおススメの「アメリカン・ニューシネマ」12本を挙げます。見るものに迷ったら是非どうぞ!

 

「ボニー&クライド/俺たちに明日はない」/67年

「卒業」/67年

「真夜中のカーボーイ」/69年

「ハロルドとモード・少年は虹を渡る」/72年

「明日に向かって撃て!」/69年

「いちご白書」/70年

「ダーティハリー」/71年

「スケアクロウ」/73年

「さらば冬のかもめ」/73年

「バニシング・ポイント」/71年

「イージー・ライダー」/69年

「カッコウの巣の上で」/75年

 

 

 

 

 

▲オープニングの銀行強盗シーン

▲相棒役チコ/レニ・ガーディノ

 

  本当の正義とは?

 

主人公キャラハン刑事の根底にあるのは「正義」というより、犯罪者に対する「怒り」であり、その犯罪を生み出す社会に対する「怒り」です。若干ネタバレになりますが、ラストで警察バッジを捨てたのは「正義を貫けないなら(警察官の)意味がない」というより、仕方がなかったにせよ犯人を射殺するという誤ったやり方で解決したことで「自分は警官には相応しくない」と判断したからではないでしょうか?実は、そう感じたのは「ダーティハリー2」を観てからで、そこには町にはびこる悪を警官グループが始末していく物語ですが、それを

 

「今の法は完全じゃない。改正されるべきだ!だが俺は守る、それが法だからだ!」

 

とキャラハンが諭すシーンがあります。まさにボーダーラインのギリギリに留まってダーティな仕事を専門に担当していたキャラハンの矜持そのものです。「撃ってはいけない」と思っていても撃たずにはいられない男の哀しい生きざまこそ「ダーティハリー」シリーズの人気の源なのでしょう

 

正義と法の矛盾に対しての憤りをマグナムでぶっ飛ばすキャラハン刑事の雄姿を是非ご覧ください。なお、本作ダーティハリーはシリーズ化されており、PART5まで作られております。ほとんど単発の映画が多いアメリカン・ニューシネマの中にあって、シリーズ化された作品は珍しい。二作目以降も一級のアクション映画としては十分楽しめますが、何といってもこの第一作目です!

 

何度も言いますが「ダーティハリー」はその後の映画・ドラマに登場する「タフで型破りな刑事」の先駆けとなり、新しいヒーロー像を作った画期的な映画です

 

必ず観るべき映画です!