この映画は、公開時銀座で観ております。その時の印象はあまり良くはなかったのですが何度か再見していくうちに自分の中で評価が上がってきた映画の一本です

 

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きみに読む物語

2004年/アメリカ(123分)

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当時、まだ無名だったライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスを主演にした話題のラブストーリー!

 

 

 監督

ニック・カサヴェテス

 

 キャスト

ライアン・ゴズリング/ノア・カルフーン 

レイチェル・マクアダムス/アリー・ハミルトン 

 

ジェームズ・ガーナー/デューク (老人)

ジーナ・ローランズ/( 認知症の女性)

ジョアン・アレン/アン・ハミルトン( アリーの母)

ジェームズ・マースデン/ロン(アリーの婚約者)

サム・シェパード/フランク(ノアの父)

ケヴィン・コナリー/フィン

デヴィッド・ソーントン/ジョン(アリーの父)

 

ヘザー・ウォールクイスト/サラ・ツフィントン

ジェイミー・ブラウン/マーサ・ショウ

レッタ・ヂュボワ/看護師

 

監督は、個性派俳優兼映画監督のジョン・カサヴェテスとジーナ・ローランズ夫妻の息子さんで「ジョンQ」のニック・カサヴェテス。主人公の二人には「ラースと、その彼女」(07)「ラブ・アゲイン」(11)「ラ・ラ・ランド」(16)のライアン・ゴズリングと「シャーロック・ホームズ」シリーズ、「ミッドナイト・イン・パリ」(11)「アバウト・タイム」(13)のレイチェル・マクアダムス。そして、「大脱走」(63)「グラン・プリ」(66)さらに西部劇でも活躍したジェームズ・ガーナー。「グロリア」(80)のジーナ・ローランズ。「ニクソン」(95)のジョアン・アレン、「X-MEN」シリーズのジェームズ・マースデン、さらにサム・シェパードなどの豪華なメンバーが顔を揃えています。シンディ・ローパーの旦那さんデヴィッド・ソーントンも少しだけ出ています。今やスターとなったライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムス はこの映画で大きく注目されるようになりましたね。個人的にはジェームズ・ガーナーとジーナ・ローランズが出ているだけでうれしいですね

 

 

▲ライアン・ゴズリング/ノア・カルフーン 

▲レイチェル・マクアダムス/アリー・ハミルトン 

▲ジェームズ・ガーナー/デューク 

▲ジーナ・ローランズ/( 認知症の女性)

▲ジョアン・アレン/アン・( アリーの母)

 

基本的に映画レビューはネタバレしない主義で、いつもはせいぜい数行の粗筋を記す程度です。ただ、この映画に関してはある程度の筋は知っていた方がわかり易いと思いますのでいつもより詳細に書きます

 

物語は1940年のアメリカ南部の街が舞台_

ワガママで気の強い17才のアリー・ハミルトン(レイチェル・マクアダムス)はバカンスに訪れた田舎町シーブルックで、ノア・カルフーン(ライアン・ゴズリング)という青年と出会う。ノアの強引な誘いにデートを重ね、2人はやがて付き合うようになる。しかし、アリ―は裕福な家庭の令嬢、ノアは材木置き場で働く貧乏な青年だったため、身分違いの恋にアリ―の両親に引き裂かれ、二人の仲はひと夏の出来事に終わる。それでもノアは毎日アリーに手紙を送ったが返事がくることはなかった。やがてノアは戦争へ行き、その間にアリ―はロン(ジェームズ・マースデン)という金持ちの青年と知り合い婚約する。久しぶりに思い出の地シーブルックに戻ったアリーは、ノアへの想いを捨てきれず、会いに行って再び愛しあう。その様子を見たアリーの母親アン(ジョアン・アレン)は、かつて自分も同じように貧乏な男を愛していたことを告げ、その相手がいまだに工場で働いていることを娘のアリーに見せ、自分が正しい選択をしたことを言う。そして、アリーにも別れの決断を迫るのだが・・・

 

▲ひと夏の恋に熱く燃え上がる二人

▲7年ぶりに再会した二人

 

  原題は「THE NOTEBOOK」

 

冒頭、ひとりの老人の独白_

 

「私はどこにでもいる普通の男だ。平凡な人生を歩み歴史に名を残すこともなく、いずれ忘れ去られる。だがひとつだけ他の誰よりも負けなかったことがある。一人の女性を全身全霊で愛した。私にはそれで充分だ」

 

認知症を患い過去を思い出せずにいる老女(ジーナ・ローランズ)にデューク(ジェームズ・ガーナー)がノートに書かれている「恋愛物語」を読み聞かせているところから物語は始まります

 

この映画は、「現在」とノートに書かれている「回想シーン」の二つの物語で構成されています。老人ホームにいる年老いた二人と、回想の中での色鮮やかでポップに描かれた二人が対照的に描かれています。公開時はどちらかというと否定的な意見が多かった本作も、長い時間をかけ今世紀を代表するラブストーリーになった印象です。多くの若い世代の皆さんに支持され、「一番好きな恋愛物語」として本作を挙げる人も少なくありません。映画の中で印象的に描かれるライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスのキスシーン(雨の中のキスシーンなど多数)は多くの観客を魅了し、二人はその年のMTVムービー・アワードにて「ベストキス賞」を受賞しています

 

ストーリーはよくある身分違いの恋、すれ違いの恋でまさに王道の恋愛映画です

 

 

  実話を基にした小説を映画化

 

現在と回想を繰り返し展開していくというよくある手法ですが、やはり演出の上手さが際立ちます。若い情熱的な恋は鮮やかな画像で彩られ、老いた二人のまわりには施設の中ということを割り引いても暗いイメージです。以前レビューしたチャン・イーモウ監督の「初恋の来た道」を思い出しました。見たことのある人なら納得していただけると思いますが、とにかく画像が美しいです。特にオープニングとラストシーン。その他にも、湖に無数に群がる白鳥とボートの幻想的なシーンなど画像が美しく、詩のような語り口です

 

*2015年6月レビュー

 

観覧車にぶら下がってデートを強要したり、深夜の交差点の真ん中に寝そべったりで、危うさと無邪気さの若い二人が眩しく見えます。そんな二人の夏の恋は”身分違い”という名のもとに引き裂かれます。ストーリーは比較的ありがちで平凡です。それでもこれだけ話題になったのは、ライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムス の魅力でしょうね。この映画は過去3回観てますが、初見の印象はあまりよくありませんでした。基本的に恋愛映画は、どれだけ主人公に感情移入出来るかです。どうしても身勝手なアリーに目がいき、ノアの一途さばかりに目がいきました。こういうシチュエーションは恋愛映画の王道で、むかし観たウォーレン・ベイティとナタリー・ウッドの「草原の輝き」(61)とも似た印象です。その映画では愛し合っていた若い二人は結局別々の道を歩む物語でしたが、多くの場合そういう結末がほとんどです

 

本作の場合、7年振りに再会し婚約者ロン(ジェームズ・マースデン)とノア(ライアン・ゴズリング)との間に揺れるアリー(レイチェル・マクアダムス)の心に、またも彼女の母親(ジョアン・アレン)が猛反対し、かつてノアから来た365通の手紙を隠したことを告げます。「あなたのためなのよ」。そう言って自分もかつて同じような決断に迫られたことを明かすシーンが印象的でした。”お金か愛か_”・・母親は「駆け落ちまでした貧乏な青年ではなく、金持ちの今の夫を選んだことに後悔はない」と言い切ります。それなのに未だに肉体労働で生きる昔の男の姿を時々見に来ていました。それは自分の選択に間違いがなかったことを自分で納得させているのですが、明らかに母親の目は勝ち誇った目ではなく、悔いの残った目でした。母親としての決断とひとりの女としての決断を迫るジョアン・アレンが素晴らしかったです。一度は二人を強引に別れさせています。どちらが正しいとは言えない、だからこそ今度は娘に選ばせたのだと思います

 

「正しい選択をしなさい」

 

 

 

  ”若い2人”と”年老いた2人”

 

ライアン・ゴズリングは困った顔や切ない顔が似合う!

レイチェルはおもいっきりの笑顔が似合う!

 

ビリー・ホリデイ、ベニー・グッドマン、グレン・ミラーなど随所にかかる1940年代の音楽がすばらしい。そして当時のファッション、アメリカ南部の風景が目に焼き付きます。その音楽と美しい画像がこの映画の質を一段も二段も上げています

 

せっかく再会を果たしたのに、再び去ろうとするアリ―をノアが引き留める時のセリフがこの映画の全てを語っていました

 

「君は俺を偉そうだと言い、俺は君をむかつく女だと言う。でも、俺は君に気なんて使わない、だって君は2秒で立ち直りまたギャーギャー言うからね。だから俺たちは上手くやるのが難しい。お互いに努力しなきゃやっていけないだろう。だけど、俺は君と居られるなら精一杯努力する。これから先ずっと君と一緒に居たいから。お願いだ、アリー!未来を想像してみてくれ。誰に隣りに居て欲しい?もし、それが奴なら行けよ!俺は一人で耐えて生きて行く。だけど決して楽な方を選ぶな!」

「楽って何よ、どっちを選んだってどちらかが傷つくわ」

「まわりの奴のことなんか考えるな。俺や親が何を思うかなんて忘れろ、君はどうしたい?」

 

画面が今に切り変わって湖畔にいる老カップル

 

「それからどうなったの?その二人」

「幸せに暮したのさ」

「誰と誰がよ!」

「・・・・・」

 

「その二人は私たちね」

 

美しい夕陽が見える部屋で二人はダンスをします

 

 

 

こんな風に人を愛せたら

こんな風に生きられたら

こんな風に死ねたら

 

この映画は、恋愛物語であると共に、今後問題になるであろう介護や認知症問題にも触れていて興味深いですね。僕自身認知症の父と長らく暮していたので、その苦労はじゅうぶんわかっているつもりです。決してきれい事だけでは済まされないと言うのが本音です。しかし、そこには親と子のそして夫婦の愛があることは間違いありません

 

  この物語を書いたのは誰なのか?

 

デュークはベッドで物語が書かれているノートをめくるシーンがあります。そこにはこう書かれています。「愛の物語 アリー・カルフーン著 最愛のノアへ これを読んでくれたら、わたしはあなたの元へ」

 

もうお分かりだと思いますが、物語を聞かせている老人はノアで、痴呆症の女性はアリーです。そしてこの物語を書いたのはアリー本人で、多分まだ軽い症状の時に書き上げノアに贈った物語です。「THE NOTEBOOK」これが原題になっています

 

「わたしたちの愛が、奇跡を起こすと思う?」
「ああ、思うよ」

「わたしたち一緒に死ねるかしら……?」
「ぼくらの愛に不可能はないからね」

 

ふたりは愛を語り「おやすみ」と眠りにつくアリー。デューク(ノア)は「また会おう」と返します。アリーとデュークは手をしっかりとつないだまま、ともに深い眠りにつきます

 

ラストシーンで渡り鳥が飛んでいく美しいシーン・・ここで思い出すのが、回想シーンの海岸での若い二人の会話です

 

「わたし前世では鳥だったかもしれないわ」

「そうだ、君は鳥だ」

「あなたも鳥になってよ」

「ああ、君が鳥なら・・」

 

淡々と見ていたつもりなのですが、ふいにこのセリフを思い出した途端泣けてきました。彼の彼女に対する深い想いを感じました。そう言えば彼女を引き留めた時にいった長いセリフでも彼の想いが詰まっていました。彼の想いを知っていたからこそ、アリーは最後の力を振り絞ってこの物語を書き上げたのでしょうね

 

”奇跡”を起こし、二人は「鳥」になって大空へ美しく飛び立っていきました

 

是非ご覧ください!