安眠妨害水族館的 2023年下半期CD大賞 | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

2023年、最後の更新ということで。

半期に一度の恒例コーナー、下半期のヴィジュアル系CDランキングを発表させていただきます。

完全主観、手が届いた範囲で、ということにはなりますが、CDショップも次々と減っていく中、セレクトショップ的な役割を果たすことができましたら。

 

【レギュレーション】

① 2023年7月~12月に発表された作品であること
② 作品に紐付くアートワークが用意されていること(CDでなくても、アートワークがあれば可)
③ V系シーンをメインフィールドとして活動しているアーティストの作品であること

 

出来るだけ、購入しやすい、あるいはサブスク等で聴くことができる作品を選んでいるのですが、一部販路が限定的だった作品も含まれる場合があるのでご了承ください。

 

 

 

第10位

 

Quiet/RENAME

 

詳細なレビューは<こちら

新体制となったRENAMEによるミニアルバム。

大人の色気や深みのあるサウンドはそのままに、ときおり見せるアグレッシブなアプローチに新しい風を感じます。

収録曲は4曲と、いささかコンパクトではあるものの、夢の中に潜り込むように没入度は極めて高く、たった14分でパラレルワールドの冒険を体験できる充実仕様。

迷い込んだら抜け出せない中毒性を秘めていました。

王道と邪道が入り混じり、触れたことのない音楽に昇華されていく過程を楽しむことができる1枚。

 

 

 

 

 

第9位

 

被告人は、心神喪失の状態にあり…/0.1gの誤算

 

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コテオサ文化を突き詰めて、様々な企画でも注目を集め続ける0.1gの誤算によるデジタルミニアルバム。

本作については、"洗脳と贖罪"をテーマに、古き良きのヴィジュアル系らしさを前面に押し出した作風になっていて、ギミック重視のダークネスを感じないわけにはいきません。

手を変え品を変え、というスタンスは不変ながら、コテコテ系の要素を強めた全5曲をドロップ。

書き下ろした楽曲については言わずもがな、リテイクとなった「オオカミ男と月兎」までメタルアレンジに変貌させており、耽美主義やダーク系のバンドとの親和性を急速に縮めた形。

どこかシリアスな彼らも格好良いじゃないか、と聴かず嫌いたちを納得させるだけのパワーを持った作品です。

 

 

 

 

 

第8位
 

Monster's Theater Ⅲ/Leetspeak monsters

 

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ハロウィンにぶつけてのリリースとなったLeetspeak monstersの3rdフルアルバム。
ダーク・ゴシックな音楽性に、漆黒のファンタジー。
更にはヒップホップやパーティーチューンに昇華させてしまうオリジナリティまで纏っていて、既にシーンの中で比べるものがないバンドになっているのだなと感慨深くなりました。
ある種、どういうものが飛び出してくるか推測できる期待通りのサウンドなのですが、それでも新鮮味が勝ったのが本作。
ハロウィンを意識しての作品は、ホームタウンに帰ってきたような安心感がある一方で、活き活きとした演奏が大きなインパクトを創出しています。

 

 

 

 

 

第7位
 

みんなのうた/3470.mon

 

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発売日が延期となってでも、じっくりと作り上げた3470.monの1stアルバム。
14曲中、新曲は5曲のみと物足りなさはあったのかもしれませんが、発表済の楽曲についても、この中で聴くと味わいが違って聴こえるから不思議です。
お洒落さを演出するのは、Key.SYUTOによるピアノ。
ときに優しく、ときに激しく美しい音色を響かせると、Vo.平一洋のカリスマ的歌唱が待っていて、相変わらずに感情をゆさぶってきますね。
それぞれの楽曲の主張も強いですが、個性を個性と見つけられるのはバンドとして、アルバムとして成立しているからこその証左。
「みんなのうた」というタイトルもハマっていて、彼らのセンスが詰まっていたな、と。

 

 

 

 

 

第6位

 

「えろとぴあ。」/洗脳Tokyo

 

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2023年に、2枚ものフルアルバムをリリースしてしまった洗脳Tokyo。

下半期にリリースされた「えろとぴあ。」は、音楽性の幅を広げようとする実験的な意味合いもあったのであろう作品です。

お得意のミクスチャーロックから、自然体で歌い上げる歌モノまで、もともとバラエティ性には定評のある彼ら。

しかしながら、それで良しとはしなかったようで、もはやヴィジュアル系として手を出したバンドはいないのでは、といった深みにまで潜ったうえで振れ幅を追求。

「夏の幻」のような逆張りのしすぎで大衆性を得てしまったソフトロックが、新たな武器として加わったのは大きかったのですね。

盲点などないのでは、と思わせる全方位的な作品でした。

 

 

 

 

 

第5位

 

EROSIO/sukekiyo

 

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行きはよいよい、帰りは恐い。
聴きやすいと思って踏み込んだが最後、その沼から抜け出せなくなるのがsukekiyoのサウンド。
キャッチーなのか、マニアックなのか、聴けば聴くほど脳が混乱する音楽性を突き詰めたのが「EROSIO」という作品なのかと。
難解な音楽への入門書としても機能しそうで、思春期に少し背伸びをして洋楽を聴くような、そんな感覚を思い出すのですよね。
その頃にヴィジュアル系を開拓した世代にとっては、本作はテレビで放送される懐メロでは味わえない、マニアックすぎる"帰るべき場所"という捉え方もできるかも。
そういう意味では、全世代的に聴くことができる難解さ。
こんなにもポップな"難解"は、広いJ-POPシーンを漁っても、なかなか見つからないのです。

 

 

 

 

第4位

 

哀愁ロマンチカ/ベル

 

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9年間の活動に幕を閉じた、ベルのラストアルバム。
当初はベストアルバムを発表予定だったものの、追加する新曲候補の楽曲が集まりすぎて、オリジナルアルバムのリリースに踏み切ったというエピソードがたまりません。
彼らに敬意を表したいのは、パターンが限られていることもあって、マンネリに陥るか、路線変更を検討するかを迫られる昭和歌謡系の限界に打ち勝ち、常に新しい哀愁レトロを表現していたこと。
「哀愁ロマンチカ」というアルバムタイトルからも想像できるとおり、その姿勢は最後まで貫いた形で、解散が決まっているからと手を抜くことなく、高いクオリティを維持していました。
執念とすら呼べる、間違いなく彼らの最高傑作。

 

 

 

 

 

第3位

 

破戒と想像/kein

 

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ライブでのみ演奏されていた楽曲が、数多く未音源化のまま解散してしまったkein。
再始動が発表された時点で、それらを含めたフルアルバムを、なんて声も聞こえてきていましたが、こうも理想通りに実現されてしまうと、喜びを通り越して戸惑いになるのだな、と学んだ1枚。
23年も時間が経ったことを踏まえれば、アレンジが大きく変わっている楽曲もあって、感想は人それぞれにあるでしょう。
しかし、あえて新曲を含めずに当時の楽曲だけでアルバムを仕立ててくれたことについては、感謝以外の言葉が見つかりません。
ひとつ、過去の未練を断ち切ってから、次に進むという心の整理。
これが出来たことで改めて、keinにも新曲が出来るのではないか、ということにワクワクできるのです。
 

第2位

 

少し大きい声/色々な十字架

 

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暗い話題が多かった2023年下半期、ポジティブな意味合いで話題を集めた彼らは、2023年のMVPと呼んでも良いのではないでしょうか。

勢いに乗り続ける色々な十字架にとって初のフルアルバムは、それまでの配信シングルを網羅した現時点でのベスト的な内容。

しかし、リード曲の「TAMAKIN」をはじめ、話題になるのはアルバム曲の方で、常に新曲に注目が集まる好循環を生み出していたと言えるのですよ。

パロディやオマージュなしに、90年代あるあるを豊富に取り込んだサウンドを展開するセンスがとんでもなく、古参ファンにもしっかりと受け入れられたうえ、これまでになかったタイプのコミック系歌詞は、それを知らない世代にもハマった形。

90’sヴィジュアル系リバイバル・バンドとは言いつつ、ここまでくればオリジナリティのほうが強いですね。

そろそろ、ランキングに彼らを入れることに後ろめたさを感じるのをやめようと思います。

 

 

 

 

 

 

第1位

 

「MOTHER」「STYLE」/LUNA SEA

 

 

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ビッグネームは反則でしょ、2枚合わせての評価はズルいでしょ、と思う読者もいるのだろうけれど、これは仕方ない。

この作品群がリリースされるまでは、今年はkeinと色々な十字架の一騎打ちになりそうだな、なんて思っていたら、圧倒的なものがドロップされてしまいました。

オリジナルの時点で、V系史に残る大名盤。

四半世紀を経ての完全リメイクとなり、思い入れが強いであろうファンからの声はもっと賛否両論あって良さそうなところなのだが、パッションや勢いはそのままに、クオリティだけはるかに上を行く仕上がりになっていたのだから、文句を差しはさむ余地もない状態。

解像度が上がった一方で、世界観としての神秘性は損なわれておらず、SF映画が演題技術で超大作にリメイクされるレベルの革命でした。

LUNA SEAで2枠埋めるのも気が引けたので、多くのアーティストを紹介する観点から、2枚で1枠とすることについてはどうかご理解を。

 

 

 

 

 

これも恒例ということで、次点となった作品も。

最後まで悩んでいたのは、断頭台のメロディーの「1054055/379204027」、LAY ABOUT WORLDの「Beginning Of The End.」、梟の「マイノリティ・マイノリティ」の3枚。

他にも、えんそくの「えんそくの七不死儀」、MAMA. の「ANIMISM」など、結局、これは入るでしょ!という作品を集めたら20枚以上ある、という状態でした。

毎回こんな感じではあるものの、名盤が数多く登場したという意味では、まだまだヴィジュアル系は捨てたものじゃないなと思い知らされます。

 

ビバラッシュが「有頂天ラリアット」でメジャーデビューしたのも明るいニュース。

フェスに強いバンドな気もするので、ヴィジュアル系シーンだけとは言わず、J-POPシーンを掻き回す存在になってほしいですね。

また、触れておきたいのは岡崎さんの「メゾフォルテッシモ」。

活動フィールドがヴィジュアル系のシーンではないため選外としたものの、オムニバスアルバム「NO VISUAL,NO LIFE〜CARPE DIEM〜」に提供された楽曲を聴いていただければわかる通り、ヴィジュアル系の遺伝子は確実に刻まれている方なので、併せて聴いてみてほしいです。

 

まだまだ紹介したい作品は多いのですが、きりがないのでこの辺で。

2024年も安眠妨害水族館をよろしくお願い致します。

良いお年を。