えんそくの七不死儀 / えんそく | 安眠妨害水族館

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えんそくの七不死儀/えんそく

 

1. 裏中野区立E中校歌~歌唱禁止の4番~

2. 嘘売るコックリさん

3. 首吊り先輩がいる

4. 着飾れ臓物ちゃん

5. 真夜中のピアノ係

6. トイレの代理人~密室であそびましょ~

 

2023年7月34日にリリースされたえんそくの7thミニアルバム。

 

"7の月"にこだわりを持つえんそく。

実際は8月3日の発売だったのですが、あえて7月34日と表現するのが彼ららしいのでは。

7月、7枚目のミニアルバムときて、テーマは"学校の七不思議"と、見事に揃ったスリーセブン。

どうせだったら、曲数も7曲入りだったら良かったのに、と思うものの、最後の1曲を意図的に隠しているなんてことがありそうなのが彼らでしょう。

もう少し、このコンセプトが続くと考える方がワクワクできますよね。

 

本作は、1分強のショートチューン「裏中野区立E中校歌~歌唱禁止の4番~」でスタート。

校歌風の合唱曲でSE的な位置づけにするのかと思いきや、後半はバンドサウンドに変貌するので、なんとなくお得感がありました。

「嘘売るコックリさん」からの5曲は、それぞれ、メンバー5人のヴィジュアルコンセプトとリンクする形。

先陣を切る「嘘売るコックリさん」は、ザクザクしたサウンドと、台詞や掛け合いといった過剰なギミックがたまらない。

テンポが速いわけではないものの、ライブ感があるからか勢いをつける役割を果たしています。

続く「首吊り先輩がいる」は、更に激しさやスピード感を強化して、サブカル的なフィルターを通した独自のロックンロールを体現。

七不思議のモチーフを通して、ヴィジュアル系的なダークさと思春期特有の感情の揺れを両立してしまっているのですよ。

 

グロテスクなワードでインパクトを出しつつ、セツナポップを貫くのは「着飾れ臓物ちゃん」。

特異な設定を置いているのに、なんだか共感してしまいそうになる歌詞のセンスがとんでもないな、と。

高めのキーではあるのだけれど、さらりと可愛らしく歌い上げるVo.ぶうの歌唱パターンの広がりにも、成長を感じます。

一方で、「真夜中のピアノ係」は、ある種の真骨頂とも言える、サビ以外は台詞調というサブカル色全開の楽曲。

学校の怪談を耳にするときのゾクゾク感と、陰キャにはグサグサと刺さるであろう内向的な独白がグラデーションを作っていて、どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのかが聴けば聴くほど曖昧になる。

深掘りして聴きたい1曲でした。

 

最後に送り込まれた「トイレの代理人~密室であそびましょ~」は、再び勢いを持ってラストスパート。

マイナーコードで展開しながらサビでは開けるという王道感も、えんそくが演奏するとベタに聴こえないからズルいのですよ。

メロディの良さや、盛り上がること請け合いのリズム感も魅力的ですが、何気にテクニカルなギターのリフだって聴き逃せない。

どのパートにも見せ場がある、本作の総括的なキラーチューンと言えるでしょう。

全体的に、七不思議がどのようにして出来上がったのか、という背景が透けて見える構成になっていて、都市伝説を考察するような面白さがあるミニアルバム。

7曲目を聴いたら死ぬ、なんて噂が立たないうちに、もうひとつの不思議に想いを馳せるとしましょうか。

 

なお、寺子屋通販で購入すると、ぶうさん以外のメンバーが自分のヴィジュアルコンセプトに対応する楽曲を歌うアナザーボーカルCDRが付属します。

レギュレーション上、歌唱で参加できないぶうさんも、それを流しながら実況コメントするという配信ラジオ風のトラックで参加していて、晴れて全員参加といったところ。

コメントの中に、しれっと聴きどころの解説が紛れていたりするので、併せて聴くことで解像度が上がるのでは。

 

 

 

<過去のえんそくに関するレビュー>

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