カミュの左手カフカの右手 後出し盤/えんそく
1. 夜泣く!噂の赤んぼ少女
2. 君はランボー
3. ブルーハ―ツ
4. 14才
5. YES!BUT!堕落道
6. 君の左手ボクラの右手
7. 妖怪ジジィのテーマ
8. バイクde百鬼夜行
9. TDL
10. Dancers.
11. 掌の上の街
12. 「 」
現在はソールドアウトとなっている、えんそくの3rdフルアルバム。
もともとは、2nd&3rdミニアルバムとして、2012年にライブ会場にて販売されていた作品。
一般流通を想定して1枚のフルアルバムとして再編集。
2013年にリリースされたのが、この"後出し盤"となります。
タイトルは、楳図かずおの「神の左手悪魔の右手」と、不条理小説の代名詞であるカミュとカフカをもじったもの。
韻を踏む上手さだけでなく、彼らの音楽性や世界観を端的に伝えている、名タイトルと言えますね。
作風としては、非常に"不条理"。
妙に凝っていて、気持ち良く展開してくれないギミックの数々。
唐突にふざけているようなナンセンスな台詞や寸劇が入ってきたり、かといって、笑い飛ばせるほどキャッチーに仕上げているわけでもなかったり、斜に構えているというか、正統派で勝負するのをあえて避けているというか、サブカル色を強めるための手法として、コミカル要素を取り入れている印象なのですよ。
「君はランボー」、「妖怪ジジィのテーマ」などは、特に象徴的なのではないかと。
ある見方をすれば雑。
ある見方をすれば緻密。
これを両立させることで難解さが生まれており、聴きにくい分、ハマればどこまでものめり込む依存性を持っていました。
それはもちろん、不条理だらけの社会に抗っていくという、彼らのスタンスが反映されたものなのかと。
ともすれば、まったくセオリーを持たずに、やりたいことをやっている身勝手さを感じさせる懸念だってあったはず。
それを媚びずに貫き切ったのは、ある種の才能。
社会や現実といった外側の枠だけでなく、V系シーンという内側の枠にもその牙を剥く尖りっぷりを見れば、その後、異端児としてその名を轟かすのも、必然の流れだったのでは。
現在では、エゴと戦略を使い分けて、すっかり市民権を得た彼ら。
CDの入手は困難でも、デジタルミュージックとして触れることは可能ですので、エゴが強めに出ていた時期の作品を聴いてみるのも、彼らの本質を理解するには有効でしょうか。
<過去のえんそくに関するレビュー>