5次元よりの使者(F盤) / えんそく | 安眠妨害水族館

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5次元よりの使者(F盤)/えんそく

 

1. 5次元ドア-F-

2. 放課後毒電波クラブ

3. 宇宙をボーイミーツガールが密室にする

4. 象男ダダ・フィフィ

5. Go!!Go!!見世物学級

6. 私のブタえもん

7. Fat Father Fake Finch Forever

8. 中二病の救世主(5次元よりの使者Ver.)

9. 超次元合体フナオ

10. 未来のイイコ

 

ミニアルバムである「5次元よりの使者(M盤)」との同時リリースとなる、「5次元よりの使者(F盤)」。

えんそくにとって、5枚目のフルアルバムとなります。

もっとも、2nd 1st ALBUM「惡童のススメ」、2nd 2nd ALBUM 「新世界」がノーカンになっているので、実質的には6.5枚目ぐらいになるのでしょうか。

 

"M盤"は、1曲あたりの密度を濃くしてキラーチューンを詰め込んだのに対して、こちらは丁寧にアルバムとしてまとめた印象。

ストーリーとしての流れが見えるコンセプトアルバムとしても機能しているし、音楽性としてもバリエーションが豊富で、ひとつとして同じような楽曲が含まれていない。

テーマは統一しているのだけれど、アプローチがまったく異なるという面白さがありました。

 

この流れで聴くと、導入的な「5次元ドア-F-」の意味合いも変わってくる。

ドラえもんのテーマのオマージュ的なフレーズは、「私のブタえもん」や「超次元合体フナオ」に繋がるヒントにもなっていて、「放課後毒電波クラブ」の歌詞を借りれば、まさに本作の世界観を紐解く"玄関"になっているのです。

必ずしもすべてが重なるわけではないのだけれど、中二病フィルターをかければ、あの国民的アニメの設定も壮大なセカイ系物語に早変わり。

コミカルな言葉も駆使しつつ、シリアスに響く彼ららしい作品に仕上がったのでは。

「私のブタえもん」というタイトルから、こんなにも切ないメロディアスナンバーを想像できたリスナーはいなかったでしょうよ。

 

ハズシのピコピコナンバーとして挿入された「Fat Father Fake Finch Forever」も、"5つ"の"F"ということで、何気に意味深。

この楽曲までは、世界観の説明をあらゆる角度からしていく、といったイメージだったのだけれど、これを境に一気にストーリーが動いていきます。

シングルとして先行リリースされていた「中二病の救世主」は、サウンド的に盛り上がるハードなナンバーというだけでなく、歌詞においても核心に迫っているな、と。

そして、芝居めいたシーンも多く取り入れて、とにかくクライマックス感をこってりと演出した「超次元合体フナオ」。

どこから見てもナンセンスなネーミングではありますが、アルバムの1曲目から流れに身を任せて聴いていれば、どんなパワーワードも所与のものとして気にせずに没頭できるのだから不思議ですよ。

これは、ある種の博打に成功していると言えるのかな。

ネタがネタではなくなる、えんそく独自の個性として昇華してしまっている証拠なのですから。

 

全体観から考えれば、「宇宙をボーイミーツガールが密室にする」から「Go!!Go!!見世物学級」までの流れも見事。

音楽性をバラけさせながら、彼ららしいコーラスワークでライブ感を演出。

そのうえで、ともすれば暑苦しくてボリューム満点の終盤を見据えて、あっさりとした味付けにまとめています。

前半を良いテンポ感で聴けるからこそ、後半にグッと濃厚な展開が待っていても、胃もたれせずにのめり込める。

"M盤"の楽曲もここに含めていたら、どうにもバランスがおかしくなっていたと思われるので、フルアルバム&ミニアルバムの同時リリースは、奇策ではありましたが、必然だったのだろうなぁ。

 

ライブの予習に、盛り上がりそうな楽曲を押さえたいライト層には"M盤"。

えんそくらしいコンセプチュアルな世界観を堪能したいコア層には"F盤"。

価格的にも、ボリューム的にも、ニーズによってどちらを手に取るか選択しやすいのもポイントかな。

ここまで内容が異なると、"どちらか一方では全曲揃わないなら、どちらも買わない"となりがちな複数売りのデメリットは排除できていると言えるもの。

もちろん、両方買うにしても、ためらいや迷いは少ないですよね。

2タイプ同時リリースと捉えるより、同じテーマを取り扱った連作2枚と考えたほうがしっくりくる作品たちです。

 

<過去のえんそくに関するレビュー>

5次元よりの使者(M盤)

惡道に死す

12モンスターズ

新世界
えんそくの大予言
惡童のススメ
えんそくの思い出
魔冬のマルコム
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