TREE-Wish-/wyse
1. chain
2. wade
3. float
4. 3 years later, I
5. 19回目の夏に僕に見えたものと 見えなくなったもの
6. MORAL
7. Scribble of Child
8. 無色の雪
9. Sweet Rain
10. あの日の白い鳥
TREEシリーズの最終章。
シリーズ初となる、フルアルバムでのリリースとなりました。
これまで、メンバーがそれぞれプロデュースしたセルフカヴァーミニアルバムを4枚発表。
それで完結かと思いきや、ファン投票による5枚目が待っていた。
投票の上位6曲と、メンバーが1曲ずつセレクトしての合計10曲が収録されています。
TREEシリーズだけで24曲、それ以外でも「With...」など、別の機会で再録されている楽曲もあり、既にあらかたの代表曲はリテイクし尽したのでは、なんて考えてみたものの、まだまだあった名曲たち。
ここまで変えてきたか!というものも多くて、"何十回、何百回と聴いてきた新曲"という矛盾した感覚があって面白い。
オリジナルの良さを維持できない懸念もあるが、それ以上の化学反応を期待するチャレンジ精神に溢れていて、アレンジとしては"大人しくなった"ととれるものがあっても、スタンスには攻め気を感じますな。
特に興味深かったのは、お洒落に化けた「19回目の夏に僕に見えたものと 見えなくなったもの」。
ストリングスを強めに出した「float」あたりでもその兆しは見えたのだが、午後のカフェで流れていても違和感がないお洒落ポップに振り切った再構築。
軽やかで、爽やかで、なんというか、余裕も感じる。
リアルタイムでの19歳の視点がオリジナルの良さであるなら、大人になってあの頃を振り返るノスタルジックな空気感が、リテイクバージョンの良さ。
今のwyseで録り直す意味を、メッセージとして確かに受け取ることができました。
ハードなナンバーである「Scribble of Child」も、同期を重ねて華やかに。
スキルとは別次元の問題である粗削りな衝動性を上書きすることは難しいですし、それならば丁寧に作り込んでみよう、という発想。
どちらが好きか、ではなく、どちらも良いよね、という提示方法なのでしょう。
逆に、「Sweet Rain」はオリジナルでは技術不足により表現しきれなかったことを、とことん突き詰めたというイメージ。
世界観はそのままに、感情の"動"と"静"のメリハリをはっきりつけて、繊細なピアノで切なく味付け。
"あの時"の映像がより鮮明になった印象で、オリジナルの発表から18年経ったというのに、相変わらずに涙腺を刺激してくれます。
アルバムとしてのバランスが良いのもポイント。
ファン投票がベースとなっており、ともすれば曲の個性が先だってしまいがちなのだけれど、まったく聴きにくさがありません。
楽曲によって大幅にアレンジを変えているのは、同じタイプの楽曲を極力作らないように配慮した結果だったりするのかな。
4枚のミニアルバムを出してからのファン投票にすることで、わかりやすいキラーチューンばかりにならないようにする絞り込みの効果もあったのかも。
どちらにせよ、頭が下がるばかりですよ。
なお、メンバーセレクト曲は、Vo.月森さんが「Scribble of Child」、Gt.MORIさんが「chain」、Gt.HIROさんが「MORAL(都合の良いモラル)」、Ba.TAKUMAさんが「3 years later, I」とのこと。
なんていうか、"らしい"選曲ですね。
個人的には、過去にリクエストライブで1位となったレア曲、「replay」も再録してほしかったな。
TREEシリーズとしては最終章だったとしても、上手くハマるタイミングがあれば、また過去曲のリテイクには挑戦してもらいたいものです。
<過去のwyseに関するレビュー>
Important order 20+4
TREE-Catharsis-
TREE-Flame-
Surely in the mind
TREE-Evolve-
空と海が繋がるあの場所まで
Imaging
Vision
Beat
DEAD LEAVES SHOWER
With...
Lime
Lazy Mind