Imaging / wyse | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

Imaging/wyse
 

1.Imaging brain
2.かわれない二人
 3.To Shy
4.Shiny
5.やわらかな光
6.Vision
7.LOSER
8.ALONE
9.Faraway
10.NO MORE CRY NO MORE BLUE SCENE

まさかまさか、今になって、wyseのニューアルバムが聴けるとは。
復活ブームが相次いでいることを考えれば、あり得ない話ではないのかもしれないけれど、それでも嬉しいものは嬉しいのです。

ソフトヴィジュアル系全盛期に登場し、瞬く間にトップシーンに上り詰めたwyse。
メロディの良さを活かした、爽やかでアッパーに走り抜ける楽曲たちは、数年の月日が経っても、まったく衰えていません。
これぞまさしく、ブランクを感じさせることがないwyseのサウンド。

ずっしり厚いラウドバンドが主流になった昨今、チャキチャキと刻む爽快なギターは、より一層気持ち良さが増して聴こえますね。
ある種、時代遅れのようなツインギターの絡みですが、それがかえって新鮮に映るくらい。
そして、そこに重なる月森さんとTAKUMAさんのツインボーカル。
バンドが熟成するにつれて、本来ベーシストであるはずのTAKUMAさんが歌うパートが増えていく傾向がありましたが、その辺りは、本作にも引き継がれているようで。
ちょっと前に出すぎと思わないでもないですが、それも含めてwyseらしさなんだよなぁ。

ハードな楽曲や、弾き語りチックなバラードまで、一応のバリエーションは確保していますが、全体的には、ミドル~アップテンポで、ポップセンスに溢れるナンバーを中心にした構成。
方向性としては、ロックテイストが強まったけれど、切ないメロディもほんのり残っていたメジャーデビュー前後に近い雰囲気です。
ライブでは、もっと激しい楽曲もピックアップしていたりしたので、もっとロックに寄るかなと思っていたのですが、メロディアス性も相応に考えてくれていて、嬉しい誤算。

媚びてもいないし、擦り切れてもいない。
等身大の彼らをぶつけたような勢いがある。
結成から10年以上経っているバンドに、これだけフレッシュな風が吹いているのは、解散~再結成というプロセスを伴ったからであることは間違いなく、このクオリティを保ってくれるのであれば、再結成ブームも万々歳と言ったところです。

中でも、インディーズ時代のセツナポップを体現する「ALONE」がお気に入り。
クドいくらいに繰り返されるワンフレーズが、少しずつジャブとして蓄積されていき、とあるポイントを境に溢れてきた感情が決壊してしまいそうになる。
続く、「Faraway」も、これまた名曲。
疾走感と解放感により、切なさ炸裂。
しんみりさせて、一気にカタルシスに誘うというwyseの伝統芸が、ここでいかんなく発揮されています。

一方で、歌詞のパワーは弱まってしまったかな。
相変わらず面白いことを言うな、というフレーズもあるにはあるのですが、多感な時期の「カッコつけたい!でも寂しい!」という少年期~青年期の葛藤をそのままパッケージしたような初期の名曲たちには、とても敵わない。
すべてにおいて全力ではなく、抜くところは抜いて、バランスを保とうという姿勢は、それはそれで妥当な成長だと思うものの、どうしても、もの足りなさを感じてしまいますね。
やっぱり、彼らに求めているのは、無性に人恋しくなる切なさなのですよ。

もちろん、その分、大人になったwyseの魅力を、これから堪能させてくれるのであれば文句はないわけで。
そこまで演奏が上手くなっているって気はしないのだけれど、経験が還元されているからか、アレンジはどれもスムーズ。
まずは、シンプルに畳み込んで、実力を見せつけたという印象です。
ここから、原点回帰に向かっていくのか、新境地に進んでいくのか、あるいは、ここが終着点だったのか。
再結成バンドの怖さは、必ずしも、次の作品があるとは言い切れないところにあると思うのですが、更にフックが効いた作品を期待せずにはいられません。

<過去のwyseに関するレビュー>
Vision
Beat
With...
Lazy Mind