静む体温/Fatima
1. 静む体温
2. Candy Stripper
3. 堅瞑り
77. Tokyo'77
Fatimaが2004年にリリースしたシングル。
初回盤と2nd Press盤が発表されており、初回盤にのみボーナストラックが収録されています。
マニアックで聴きにくい楽曲が定番だった彼ら。
この「静む体温」を聴いたときに、そのストレートさに驚いたのを覚えています。
Moranやウミユリなど、当時はSanaka名義だったHitomiさんの後続バンドを聴いている今となっては違和感がない、彼のロマンチシズムに溢れた楽曲ではあるのですが、切ないバラードがシングルとして切られたという事実は、リアルタイムでは衝撃的だったのですよ。
ともすれば抵抗感からの批判があってしかるべきなのですが、そうならなかったのは、純粋に「静む体温」が名曲だったから。
淡々と紡がれていく中で、サビではメリハリをつけて盛り上げる。
満たされない恋愛体質をテーマに、一度聴いただけで脳裏にこびりつく極上のメロディを歌い上げています。
Cメロで見せる感情の爆発は、Fatima史上でも特筆すべき名シーンなのではなかろうか。
誰かの体温の中に、"静かに" "沈むように"溶けていく感覚を端的に示すタイトルも秀逸ですね。
この楽曲のインパクトに持っていかれそうになるが、カップリングの個性も強い。
イメージ通りのFatimaを繰り広げる「Candy Stripper」が、ここに収録されたのも大きかったのでは。
歌詞カードには、飛散したように不規則に並べられた単語たち。
アラーム音からスタートするカオティックさにしても、煽り曲の体裁をとりながら妙に耳に残るサビのフレーズにしても、すべてにおいてナンセンス。
率直に言えば、ライブのパフォーマンスありきの楽曲ではあるのだけれど、音源としても、その特異さを示していました。
続く「堅瞑り」は、Gt.4geさんによる痛快なナンバー。
ダークな雰囲気があるな、と思いきや、サビでは爽やかに疾走。
間奏では、学校のチャイムや童謡などを模したギターのフレーズも挿入され、モチーフとしてはポップなのだけれど、どこかにマニアックさが見え隠れする、これまたFatimaらしい楽曲と言えるでしょう。
カップリング曲で従来からの個性をしっかり更新しているあたりも、本作が好まれた理由なのかと。
初回盤のボーナストラックは、77トラック目に収録された「Tokyo'77」。
ライブSEとして使われていたインストチューンです。
当時を知っているリスナーならテンションが上がるかもしれませんが、初心者であれば、無理せず2nd Press盤でも問題はないかな。
本編の内容が充実しているので、聴かないままでいることのほうが損、と個人的には思いますし。
Fatimaについては、シングル中心のリリース活動だったので、振り返るにあたってコツコツ集めなければいけないのは難点なのかもしれません。
<過去のFatimaに関するレビュー>
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