SSB / Fatima | 安眠妨害水族館

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SSB/Fatima


1. Star Spangled Butterfly
2. Sticky flower
3. Blue Velvet

2001年に発表されたFatimaの2ndシングル。
初回盤2,000枚を完売させたため、2003年にジャケットを変更した2nd Press盤もリリースされています。

この頃のメンバー構成は、Vo.Sanaka、Gt.Mizuha、Ba.Lay、Dr.Naoという4人体制。
ご承知の通り、Sanakaさんは現在、Moranのボーカリスト、Hitomiとして活動中ですね。
Fatimaでも、当初はHitomiの名前で活動していたため、「Blue Velvet」の作詞のクレジットがHitomi名義だったり、掲載されているSanakaさんのパートが"Vocal"ではなく、"Hitomi"になっていたりと、名残が見受けられる。
また、ドラムのNaoさんは、脱退後に、アリス九號.を結成しています。

さて、内容はと言うと、良くも悪くも、"これぞFatima!"というイメージがある作品。
実に難解でマニアック。
とにかく捻くれていて、想像通りには進まないぞという天邪鬼っぷりが炸裂しています。
後期はストレートなナンバーも増えていきますが、このヘンテコな楽曲構成こそ、Fatimaなのである。

リードトラックの「Star Spangled Butterfly」は、どうやったらこんな展開を思いつくのだろう、という無茶な楽曲。
ひとつひとつのメロの取り方、リズムの取り方に癖があって、率直に言って聴きにくい。
しかも、それぞれの繋ぎが更に奇天烈で、メドレーを聴いているような感覚になってしまうほど。
王道もセオリーも全部無視して作ったような楽曲を、シングルとして堂々と切ってくる勇気も凄いのだけれど、なんだかんだ、これを格好良いと思わせるレベルにまで昇華している彼らのセンスには驚かされました。

左右にゆらゆらと振れるサウンドが特徴的な「Sticky flower」は、ミドルテンポのダークナンバー。
リズムこそ軽快なのですが、不気味さと浮遊感が常に漂っていて、なんとも捉えどころがありません。
サビに歌詞がなく、ファルセットでハミングしているだけという展開も、そんなマニアックな印象に拍車をかける。
そんなわけで、慣れるまでは我慢が必要なのだけれど、ラストの早口での大サビは快感。
最後で爆発するカタルシスの気持ち良さは、病みつきになってしまいます。

ラストは「Blue Velvet」。
メロディ運びや構成については、本作中、唯一ストレートと言ってもいいでしょう。
しかしながら、それでも一筋縄ではいかないのが彼ら。
メロディ部分ではボリュームを最小限に絞ってぼそぼそと。
サビになれば、フルボリュームでガツンと一気に。
このメリハリを、違和感が出てしまうくらいにはっきりとつけて、意図的に聴きにくさを作り出しているのです。
これ、前半の音量レベルに合わせてボリュームを上げて、サビで耳がおかしくなった人、多そうだな…

しつこいくらいに聴きにくさを前に出して、インパクトを残すことに割り切った。
かなり聴く人を選ぶ音楽性であるのは間違いない。
ただし、Sanakaさんの表現力のあるボーカルや、難解な中にもポップさが光るフレーズの良さがあったりして、中毒的にじわじわとリスナーを蝕んでいく要素は満載。
ここで知名度を高めたのも納得できるというものです。

もっとも、本音としては「Blue Velvet」を、もっと素直に聴かせてほしかったよなぁ。
切なくエモーショナルな名曲だとは思うのだけれど、この音量バランスの悪さによって、何度も聴くには耐えきれないのも事実かと。

ちなみに、本作のタイトル、「SSB」は、1曲目の「Star Spangled Butterfly」の頭文字と、本作に収録された3曲の頭文字のダブルミーニング。
色々な部分でギミックが練り込まれていて、CDを手に取って確認してみたくなる仕掛けがあるのも、彼らの作品の魅力でした。
好き嫌いは置いておいて、これを聴かずにFatimaは語れないという一枚。

<過去のFatimaに関するレビュー>
Exit
哀愁の底辺
Downer