惡道に死す / えんそく | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

惡道に死す / えんそく

惡道に死す 惡道に死す
3,000円
Amazon

 

1. 「ここがお前の死に場所だ!!」

2. 合唱リーダー深沢

3. ゴリラの丘

4. 屠殺屋マン4号

5. 机上の空論実行部隊

6. 犬死にマクマーフィー

7. 怪人ラボの夜

8. イルキメラ・キッド

9. 月光病

10. そして計画は続く

11. キャトル

12. 狂ったセカイと時計仕掛けの神様

 

無料ワンマンと有料ワンマンの二本立てという前代未聞のツアーを行っているえんそく。

3年ぶりとなるフルアルバムは、前作「惡童のススメ」の続編でした。

 

惡の秘密結社「ウシノシタ団」が帰ってくる。

詳細不明の組織ではありながら、あえてコテコテ風の衣装を身に纏い、中二病全開の歌を叫ぶ彼ら。

本作においては"死"もひとつのテーマになっているようで、シリアス度合いは前作よりも高まっています。

 

コンセプトがコンセプトだけに、V系シーンとの相性は抜群。

難解で複雑な演奏も、王道的なフォーマットに落とし込まれることで、らしさはそのままに、聴きやすく仕上がっていました。

ときに情感たっぷりに語りかけ、ときに切なく疾走する。

Vo.ぶうさんの描く世界観が、いよいよ本領発揮といったところでしょう。

 

「合唱リーダー深沢」、「ゴリラの丘」、「屠殺屋マン4号」と、タイトルだけを見ればコミカル。

しかしながら、その楽曲に触れれば、なんとなく胸がザワザワする感覚が。

個人的にグッときたのは、「犬死にマクマーフィー」ですね。

このマイナーコードで駆け抜けていく切なさ。

ストーリー展開とも重なって、後半の語り部分が熱いこと熱いこと。

 

面白いのは、後半にいくにつれ、えんそくらしい明るさを取り戻していくところ。

えんそく流のミクスチャーロック「イルキメラ・キッド」の後に、箸休め的な「月光病」、一旦クロージングする意味合いもありそうな「そして計画は続く」が続くと、そこからはパンキッシュな「キャトル」、「狂ったセカイと時計仕掛けの神様」で爽快に突き進みます。

これが足りなかったピースを埋めていくようで、カタルシスは最高潮へ。

 

また、彼ららしいユーモアセンスも至るところに散りばめられていて、シリアスだからコミカル要素は控えめに、というわけでもないから一安心。

モーニング娘。に、hide with Spread Beaver、Dir en greyなど、彼らがキッズだった時代の流行ネタをオマージュとしてぶっこみ、楽曲のスパイスにしてしまっています。

捨て曲がないというよりも、捨て曲を効果的に使って名盤を作り上げた、と言ったほうがしっくりくるかも。

 

一応、アルバムとしてはこれで完結。

ただし、本作の13曲目にあたるシングル「金曜日のチェンソー/天獄への十三階段」が7月にリリースされることが発表されており、まだまだ世界は終わらない、といったところかな。

ヒーローショーの聖地、シアター G-ROSSOでのワンマンも予定されているなど、奇想天外な企画にも注目が集まる彼ら。

充実っぷりが音に反映されているクオリティの高い1枚。

 

<過去のえんそくに関するレビュー>

12モンスターズ

新世界
えんそくの大予言
惡童のススメ
えんそくの思い出
魔冬のマルコム
This is a pan.