全日本おもしろ選手権ツアー@初台DOORS(2017.5.1) | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

Jin-Machineのレコ発ワンマンに行ってきました。

東名阪3ヵ所で行われたツアーのファイナルという位置づけ。

12ヵ月連続ワンマンツアーを締めくくったばかりだからか、本拠地である仙台はツアーに含まれていなかったのですね。

 

内容としては、3月にリリースされたシングル「がんばれ!桜、アディオス」、およびアルバム「全日本おもしろ選手権」の収録曲のみでセットリストを構成したコンセプトワンマン。

アンコールを含めて20曲を演奏しているのに、それでも全曲ではないのだよなぁ。

本当に、多作なバンドである。

 

事前に音源を聴いていた段階では、コミックプログレという方向性を打ち出した難解な演奏と、くだらないネタが融合するカオスっぷりに、これをどうやってライブで再現するのだろう、と心配に。

しかしながら、実際にライブを見てみると、それを杞憂だったとはっきりわかりました。

やっていることのひとつひとつはバカバカしいのだけれど、総合的なエンターテインメントとして完成されており、これ、もしかすると芸術なのかもしれないぞ、と。

 

新曲が多いこともあって、オーディエンスのノリ方も含め、個々の楽曲はまだまだ過渡期といった印象。

ただし、これまでは寸劇や大喜利など、楽曲以外の部分での面白さも追及していたのに対し、楽曲を演奏する中で面白さを表現するというアプローチができるようになってきた。

そのため、工程表だけを見れば淡々と楽曲をこなしているだけに映るかもしれないのだけれど、実は一瞬たりとも面白くない時間がないというくらい、目が離せないステージが繰り広げられていました。

ライブで再現できるのか、という話ではなく、そもそもライブで演奏するための楽曲たちだったのだ。

アルバムだけでは、まだまだ彼らの面白さは完結していなかったのか。

 

抽象的になってしまったので、少しは具体的な内容も。

「僕らはみんなヴィジュアル系 」は、導入としてはもってこい。

完全にネタ曲でありながら、いつの間にかオーディエンスを暴れさせる楽曲構成であり、新曲のノリが未知数である中、シンプルなフリで盛り上がるこの曲でのスタートは、ベストだったと思われます。

 

「ようこそJAPAN 」も面白かった。

途中まではバンド演奏時の布陣なのだけれど、男性アイドルグループを意識したポップなサビでは、閣下、あっつさん、ひもりさんのスリーセンターにフォーメーションを変える。

ひもりさんについては、ギターからハンドマイクに持ち替え、セカンドボーカルも担当しており、これは斬新でした。

歌舞伎風の横モッシュや、獅子舞風のヘドバンについても、思いついたもの勝ち。

 

MCを挟むと、ひもりさんとあっつさんだけが舞台に残り、「二次元シンドローム 」。

正確に言えば、あっつさんはフロアに降りて猛っていたので、実質的にはひもりさんのソロ曲でした。

続く「チャンプロード 」は、水月さんのソロで、コーラスや盛り上げ担当として木村さんも参加。

途中で木村さん手製の段ボールバイクが登場し、二人乗りで旗を振り回す姿には、この日最大の歓声だったかも。

「death海峡のdeath岬」は、水月さん、あっつさんによる演歌ナンバー。

閣下がいない3曲でしたが、見事に会場をヒートアップさせ、全員野球であることを知らしめることができたのではないでしょうか。

 

名阪では演奏されなかった「BLUE MOUNTAIN」は、ジャズセッション風のアレンジに。

ひもりさん、水月さん、木村さん、あっつさんと、ワンフレーズごとに長めのソロパートが用意されていて、演奏力の高さを見せつける…と思っていたら、最後に閣下が登場。

トランペットソロをするのだけれど、音がほとんど出ないというオチ。

本人は、それなりに練習してきた様子なのだけれど、中途半端に音が出るからかえって笑いを誘っていました。

 

「locking for prevention of crime」は、ラウドなサウンドに硬派なステージングで、純粋に格好良い。

続く「キミノテ」も、ネタなしの切ないメロディアスチューン。

閣下にしては珍しく、後半の高音がきつそうに見えましたが、歌い終わりで"ありがとう"と添えたところですべて持っていった形。

もっとも、「通勤モッシュはエブリデイ」の導入、車掌風のアナウンスが入るから、どんなに格好つけても台無しなんですけどね。

「通勤モッシュはエブリデイ」に関しては、一部の平民さんがサイリウムを吊り革に見立ててモッシュをしていました。

バンド発なのかファン発なのかはわかりませんが、閣下が"客側でも、この曲ではこんなことができそうだと思ったことがあれば積極的にやっていってほしい"といった旨のMCもあったことだし、まさにこういうことなんだろうな、と思ったり。

 

ツアーで初出しの曲が半数以上という状況なので、どうしても盛り上がりにはムラが出てしまうのだけれど、「ゴリラ」、「がんばれ!桜、アディオス」と、確実に一体感を出せるシングルで締めたのもライブ全体を見れば良かったのかな。

アルバムのように「チャンプロード」で締めるってわけにもいかないだろうし。

「ゴリラ」では、ひもりさんが"ギターソロ行くぜ!"の台詞の直後に機材トラブルでソロに行けず、ギターフレーズを口で歌い上げるというハプニングや、最後のなぞかけで閣下がグダグダになるも、水月さんのナイスフォローにより事なきを得るというチームプレイも。

やり慣れているはずの楽曲でも同じ演奏にはならないのも、これまたライブの醍醐味ということで。

閣下、もしかしてなぞかけは"新宿"で考えてきていたのかな…

ライブ冒頭のMCで、初台は新宿と言いかけて、オーディエンスに渋谷と訂正されるやりとりがあったので。

 

アンコールでは、まさかの「じんま日本昔話」。

あっつ画伯が、自作の紙芝居をめくるのだけれど、何の絵が描かれているのかがさっぱりわからないというね。

この曲のデスヴォイスのパート、閣下だとは思っていなかったな。

「きみの好きな人は無職」、「絶滅危機!成人向け雑誌」とパンクナンバーが続くパートでは、ひもりさんがやる"メロコアの客のノリ方"に笑ってしまうというMCの流れから、全員が我武者羅に動き回ることに。

はたから見ていても疲れそうけど、ずっと見てきたJin-Machineのノリって感じもあって、アットホームなアンコールにこれを見れて良かった。

ラストは「†夏☆大好き!ヴィジュアル系†」で大団円。

「新曲です、聴いてください」が聴けなかったのは残念だけど、それ以上にレアな楽曲が聴けたから良しとする。

 

完成度という意味では、まだ発展途上。

でも、演目としては過去最高と言っていいぐらいのポテンシャルを秘めているのでは。

エンタメ精神が音楽と結びついたJin-Machineのオリジナル。

ライブに定着しきった数年後、再演してほしいななんて思ってしまう。

 

だからこそ、先日発表された水月さんの脱退は惜しまれますよ。

このツアーでは特にその件については触れない方針のようだったけれど、5人揃ってここまで来たか、と成長を感じられることが、どうしたって寂しさを連れてくる。

間髪入れず行われる次のワンマンツアー、この5人での集大成を見届けたい気持ちが強まりました。

 

 

1. 僕らはみんなヴィジュアル系

2. おれおれ詐欺に気をつけろ!!

3. ようこそJAPAN

4. さくら~NEVER DIE~

5. 二次元シンドローム

6. チャンプロード

7. death海峡のdeath岬

8. BLUE MOUNTAIN

9. locking for prevention of crime

10. キミノテ

11. 通勤モッシュはエブリデイ

12. ロックミュージックシンドローム

13. NEVER SAY NEVER

14. パンチ伝説

15. ゴリラ

16. がんばれ!桜、アディオス

 

en1. じんま日本昔話

en2. きみの好きな人は無職

en3. 絶滅危機!成人向け雑誌

en4. †夏☆大好き!ヴィジュアル系†