破戒と想像/kein
1. Anno Domini
2. Mr.
3. an Ferris Wheel
4. Color
5. 絶望
6. 思い出の意味
7. 嘘
8. Be Loved Darlin’
9. 君の心電図
10. グラミー
11. keen scare syndrome
12. 暖炉の果実
再結成から1年、遂にリリースされたkeinの1stフルアルバム。
本当に出たのか、というのが率直な感想。
残した音源も即日完売、入手困難という状態が続いていたkeinにとって、まさか解散して23年が経ってから、流通作品で、しかもフルアルバムを聴ける日が来ようとは。
収録曲のうち、半数以上が初音源化の楽曲となりますが、いずれも現役当時に演奏されていた楽曲。
ファンが頭の中で妄想するだけだったフルアルバム構想が、曲順のズレはともかくとして、ほぼそのまま実在のCDとして届けられてしまったのだから、その衝撃の大きさは計り知れないのですよ。
内容としては、当時の質感は極力残しているのかな、と。
細かく聴いていけば、Gt.aieさんのギターフレーズは、プレイスタイルの変化に伴いシンプルに削ぎ落としたものに置き直しているなとか、Vo.眞呼さんにしても、無理な高音を出すよりもシアトリカルな表現を重視するようになったな等の違いは見つけられるものの、ある種、「嘘」と「keen scare syndrome」の2曲が先行してリテイクされていたことがクッションとなっていて、時代による変化も受け身がとれないほどではないでしょう。
代表曲の「グラミー」こそ、賛否両論を巻き起こしそうな大胆なアレンジが施された印象ですが、本来、再録するならこれぐらいぶっ壊してしまうのが彼ら。
まずはファンが望んでいるものを、という落としどころが絶妙で、2023年のプロダクションで彼らのサウンドを聴けることへの純粋な喜びを高めてくれていました。
「嘘」については、101Aのnoahさんをゲストコーラスに迎え、再度ヴァージョンアップ。
「思い出の意味」とともに歌モノパートの中核を担っており、ダークサイドに真っ逆さまに落ちていく「Be Loved Darlin’」からの展開を引き立てています。
シングルの1曲目だった「暖炉の果実」がラストというのは少し意外な気もしましたけれど、この不穏で禍々しい空気を背負って終わっていく異質さこそ、keinを通して名古屋系バンドに求めていた格好良さそのもの。
下手に小奇麗な新曲を作らなかったのは、このタイミングにおいては正解だったと言えるのかもしれません。
なお、この勢いのまま「kranke」が再録され、会場限定販売されることが決定済。
こうなってくると、本作に収録されなかった「People」の音源化や「雨音の記憶」の再録にも期待してしまいます。
個人的には、deadmanにて音源化された「ブルーベジー」をオリジナルアレンジで聴きたいのだけれど、これはさすがに難しいか。
モノクロのジャケットに緑のスリーヴケースというデザインも気が効いている、過去と未来を繋いだ奇蹟的な1枚。
<過去のkeinに関するレビュー>