木槿の柩 / kein | 安眠妨害水族館

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木槿の柩/kein

 

1. 嘘

2. keen scare syndrome

 

Vo.眞呼、Gt.玲央、Gt.ゆきの、Ba.律、Dr.響という編成で制作されたkeinの1stCT。

1998年に500本限定でのリリースとなりました。

 

20年前のデモテープ。

しかも、発売して間もなく完売となっている作品。

後に再録されることもなかったこともあり、レア度は極めて高いはずなのですが、名古屋系リスナーには必修科目レベルで知られているのが、この「木槿の柩」でしょう。

 

特に、はじまりを告げる1曲に選ばれた「嘘」のインパクトたるや。

6分半のミディアムバラードで、V系バンドのファーストソングとしてはあまりにも邪道。

しかしながら、陰鬱な世界観、表現力豊かな眞呼さんのボーカル、サンプリング音を巧みに操りながら叙情的に迫るサウンドと、当時のレベルとしては圧倒的なクオリティを誇っており、あっという間に口コミで知れ渡っていきました。

 

序盤はダークで無機質な雰囲気を出しているのですが、一気に感情的になるスイッチの切り替えが絶妙。

サビでは、これでもかというぐらいに切なさを駆り立てます。

ゆきのさんの作曲センスは、この頃から頭ひとつ抜けており、長尺の楽曲ではあるものの、凝った構成により飽きさせないのもポイントですね。

 

カップリングとなるのが、玲央さんが作曲を担当した「keen scare syndrome」。

一転してハードに、衝動的に攻め立てます。

激しさが表面上だけに留まらず、内面から込み上げてくるようで、単に"暴れ曲"と評してしまうのは、実にもったいない。

例えば、ダミ声を使っての芝居がかった歌い方は、シアトリカルな世界観を生み出しているし、ツインギターの絡みを含め、ギミックの工夫を凝らしたサウンドワークは、ライブで盛り上がるだけでなく、部屋でじっくり聴くタイプのリスナーにも、間違いなく刺さっていましたよ。

 

名古屋系という言葉を、それまでの地域性から音楽ジャンルに引き上げるのに、彼らの功績は大きかったはず。

今となっては、残した音源のすべてがレア化してしまい、とにかく聴け、と簡単に言えないのがもどかしいところ。

もう少し、keinの音楽に触れやすくなるアイテムがあれば良いのだけれど。


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