木槿の柩(2023) / kein | 安眠妨害水族館

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木槿の柩(2023)/kein

 

1. 嘘

2. keen scare syndrome

 
TOUR2023「木槿の柩」にて販売された、keinの会場限定デモテープ。
 
本作は、1998年にリリースされた1stCTを、再始動時の編成にてリテイクしたもの。
歌詞ポストカードがセットされ、ジャケットも一新。
時代性に伴い、同内容が収録されたCDも付属しています。
 
レコーディングメンバーは、Vo.眞呼、Gt.玲央、Gt.aie、Ba.攸紀、Dr.Sally。
オリジナルがリリースされた時代から残っているのは、眞呼さん、玲央さん、攸紀さんの3人となりますが、攸紀さんについては、当時はギタリストとして在籍していたこともあり、どのパートにも新しい視点が加わっていると捉えて良いでしょう。
 
「嘘」は、ダークなギミックと、歌モノ要素が絶妙に絡み合い、眞呼さんの表現力がこれでもかと言わんばかりに発揮されています。
終盤の盛り上がりなど、進化したなと驚かせる部分は多々あれど、全体的に目指している方向感は不変。
アレンジを捻りました、というより、音質が向上したことで、これまで聞こえていなかった音がクリアに聞こえるようになったのかな、と思ってしまうほど、自然に溶け込んでいました。
哀愁を帯びたフレーズがより効果的に使われるようになったのは、aieさんが加わった影響か。
これにより、ドラマ性が高まりましたね。
 
ハードチューンである「keen scare syndrome」は、むしろ骨太になった印象です。
シンセギターの演出などもありますが、基本的には鋭さのあるドラムとヘヴィーさを下支えするベースが引っ張っていく形。
構成上のマニアックさはあっても、音の重ね方はシンプルに仕上げていました。
もっと凝ったサウンドにすることも出来ただろうに、あえて当時のデモテープ水準を再現するために、衝動性重視で引き算をした遊び心。
ともすればスカスカに聴こえそうなところ、最低限の音圧や密度を維持しているバランス感覚には天晴ですよ。
エグみのあった歌詞が、一部書き換えられているのが気になると言えば気になる。
もっとも、書き換え後の歌詞も相応にグロテスクではあるので、大人の事情というよりは気分の問題だったりするのかな。
 
deadmanの再始動後の活動実績を踏まえると、keinでも過去の楽曲のセルフカヴァー集はあり得るのか。
残るはちょうどミニアルバム1枚ぐらいで収まるサイズですし、非現実的ということもないのではないか、と。
ただし、それ以上に、ライブで演奏されていた未音源化曲たちの存在が大きい彼ら。
新曲を作ってくれるのなら御の字ですが、これらの正式音源化というのも、期待したくなってしまいます。
 

<過去のkeinに関するレビュー>
気管支カニューレと自失願望
朦朧の実 

自責と蠱毒

木槿の柩