「えろとぴあ。」/洗脳Tokyo
1. 冥土 in 仙桃
2. NEW WORLD ORDER
3. cancer
4. ライトニング光彦
5. exe.VERSE
6. 夏の幻
7. アルテマ
8. Mr.Sunday
9. 「学問のすゝめ」
10. ROMANCE DAWN
洗脳Tokyoにとって3枚目となるフルアルバム。
4月にリリースされた「XQC」に続き、僅か5カ月のインターバルで届けられた本作。
いずれもデジタルリリースとなりますが、2023年に2枚のフルアルバムが届けられるとは、完全に予想外でした。
「XQC」がシリアス性を高めた作風になっていた中で、間髪入れず「えろとぴあ。」ときた。
姉妹作とは言わないまでも、一定の住み分けが働くとなると、彼らが本来持っている雑多さは、こちらに集約されているのではないかと推測できます。
実際、ゴリゴリのミクスチャーロックから、爽やかな歌モノまで、バラエティを大きく広げた印象。
一方で、タイトルほど前衛的なインパクトに傾向することなく、アルバム単位でのバランス感覚が絶妙で、ただ逆張り的に奇を衒っているわけでもないのですよ。
何周か回って、もはや彼らにしか出来ないなというのが「夏の幻」。
ドラマの挿入歌になっていてもおかしくなさそうなソフトロックに仕上がっていて、とにかく切なさを駆り立てられる。
何なら、ヴィジュアル系の匂いをまったく感じさせないほどで、その意味では逆張りとも言えなくもないのだけれど、純粋な楽曲の良さと、アルバム全体で打ち出している雑然とした世界観の中にすっぽり収まっている感覚もあって、すっと受け入れることができました。
最後に訪れる「ROMANCE DAWN」も、イントロの段階で名曲の予感。
節々でアート性の高さを見せつけていて洗脳Tokyoらしいのですが、もっとプリミティブなメロディの良さや等身大の歌詞に目を向けると、またひとつ彼らの音楽の解像度が上がりそうですね。
書き下ろしの楽曲だけでフルアルバムの連続リリースという企画の打ち出し方は、まさに奇才。
ただし、これを遂行したからこそ、彼らの根っこにある音楽性はシンプルに感情を揺さぶる格好良さだということに気付くことができるのでは。
先入観というか、彼らに常人には理解できない感性を期待してしまっていたのが正直なところなのですが、いやいや、むしろ共感力が高いバンドだったのでしょう。
仮にリリースされたのが1枚だけであれば、ストレートな楽曲を集めたコンセプト作品と曲解をしてしまっていた気がしますし、まさにそんな印象を与えていた「XQC」を経て、更に「えろとぴあ。」というネーミングをしておいてこの内容。
現体制になっての洗脳Tokyoの音楽はこれこそ本質なのだな、とようやく納得できました。
アプローチは多彩ですが、ロック色を強めたメロディアスチューンは、ソフトヴィジュアル系の系譜と言っても良いほど。
過去の作品も、聴き返せば新たな発見がありそうだなと思わせる1枚です。
<過去の洗脳Tokyoに関するレビュー>