【目次】
(1)荏原製作所はどんな会社で、どんな職種の新卒募集をしているか?
(2)機電系・土木・建築系を採る工夫と、国は学生を増やす努力を!
[付録] 荏原 畠山美術館と上杉謙信(霜は軍営に満ちて)
(0)理系学生の会社研究の盲点
P: 前回は、新卒・既卒を問わず、自治体が機電・土木・建築系の人材を採用する動きが、ますます活発化している状況を、ご友人のZくんとチェックしました。※1
ただ、東京都内の自治体だと、機電系より土木・建築系の方が足りない印象で、たとえば東大和市は経験者対象ですが、建築技術の通年採用を始めています。
D: 上のページを見ると「建築技術」の関連先が、都市づくり課、管財課なのはわかりますが、都市基盤課(道路など)や下水道課でのニーズもあるんですね。
P: 建築を勉強中の学生だとインフラ関係の会社は、土木の縄張り? と考えてあまり会社研究の対象にしないでしょうし、一方、土木関係の学生でメーカー志望というのも少ないのでは?
D: 機電(機械・電気電子)だと、いわゆる”ものづくり企業”ならどこからも需要があることを、学生も知ってますから幅広く企業研究しますが、土木・建設・建築だと、専門コンサル会社(例)までは意識しても、メーカーは…。
P: たとえば三菱電機でも、「プラント建設統括部」で、
https://www.mitsubishielectric.co.jp/saiyo/graduates/philosophy/place/plant/index.html
インターン募集をしてましたね。
ちなみに、三菱電機で、12の事業領域があるんですよ!
D: 三菱電機だと知名度がありますが、メーカーの多くは、「○○? えっ、なんの会社?」と言われがちです…。
P: 以下で取り上げる「荏原製作所」も、失礼ながら筆者もDくんも「社名を聞いたことがある」レベルでしたが、新卒募集のHPの「職種紹介」で、職種ごとに「知識を生かせる専攻」の案内をしてくれていて、とても分かりやすかったので、今回、Dくんとみていきたいと思います。
(1)荏原製作所はどんな会社で、どんな職種の新卒募集をしているか?
P: 荏原製作所の原点はポンプ製造で、いまも、建築・産業設備向けの機械や、エネルギー関連(タービンなど)、水、廃棄物関連の製品を多く作っていますが、実は、半導体製造装置のCMP装置(化学機械研磨装置)で世界シェア2位、排ガス処理装置なども手掛けています。さらに、新規事業で、
水素事業/航空宇宙事業/エコ・GX事業/マリン事業/バイオ事業
なども。
D: 自社の技術と事業を、周期律表形式にまとめたページ
https://www.ebara.com/jp-ja/technical-personnel/
がユニークですね!
そして、「職種紹介」のページでは、機械・電気が「データサイエンス」なども含めて、たいていの職種に対応しているのが分かりますし、土木・建築だと「施工管理」で活躍できそうですね。
P: 日立製作所もそうなんですが、荏原製作所も、いわゆる「ものづくり」だけでなく、設備建設などを総合的に手がけているようですね。
ポンプを使った排水機場・浄水場などの社会インフラ設備や、廃棄物焼却プラントなどのプラント・機場を建設する事業の「施工管理」に、土木・建築の専門知識が必要だと。
D: 機電・土木・建設系のどれもに関係がありそうな新規事業として、水素発電向け液体水素昇圧ポンプの開発が面白そうですね。
P: さらに、この水素事業が航空宇宙事業ともリンクして、新しいプロジェクトも生まれつつあるようです。
こういう新規事業には、多様な専攻の人材、ただし「今ある現実を疑い、試してみて、新しいものを生み出していく。そういう個の探究心による突破力」を求めているようなので、新規事業に興味のある方はチェックしてみては?
(2)機電系・土木・建築系を採る工夫と、国は学生を増やす努力を!
D:今回は、他社の「機電系・土木・建築系を採る工夫」が聞けるというPさんの誘い文句だったんですが。
P:まずは、オーソドックスな「奨学金返還支援」の話題です。
公的機関、たとえば東京都だと、今年(令和7年度)から、東京都内の自治体(都・区市町村)に採用された職員むけの、奨学金返還支援事業をはじめました。
この「代理返済」では、企業が日本学生支援機構などに、直接返済します。
D: 支援の上限や期間は、各企業でずいぶん違いますね。
差額は、社員が負担するわけですが、仮に上限150万円・5年間として、年30万円の出費が抑えられるわけですから、ありがたいですよ。
P: 当ブログ監修者のSさん(地方国立大学・文系卒)から以前きいた話では、1980年代だと地方銀行や地元有力企業の奨学金をもらって、そのままその企業に就職した知人が何人もいたそうで、いわば「暗黙の了解」だったそうです。
D: 上の記事と同じサイトに、「企業・民間団体の奨学金【採用無関係】一覧」と、わざわざ【採用無関係】とあるのが、逆に…。
P: 別のサイトの情報だと、ソニー、電通、ニトリ、キーエンス、コカ・コーラ、三菱UFJ信託などの有名・有力企業が、財団を設置=別組織で、給付型奨学金を実施しています。
D: その中には「青田買い」を狙ったものもあるかも? と。
P: 優秀な学生と接点をもつのが就活ならぬ企業の「採活」?の第一歩で、Dくんの会社は機電系のリクルーター採用をしているわけですが、荏原製作所は「リファラル採用」をしています。
上の記事は、2021年の記事でこのときは新卒と中途で18人。
現時点(25/12)では、リファラル採用の対象は「キャリア採用」になっていますが、これは数年前に、いろいろな会社の新卒と先輩社員との間の「就活ハラスメント」問題が報道された影響かな。
自治体も、機電系・土木・建築系の「既卒採用」を強化していますので、Dくんの会社も、検討してみては?
D: そもそも、自治体は機電系・土木・建築系がそんなに人手不足なら、自治医科大学のように、全国の自治体(都道府県)が協力して、機械/電気電子/土木/建築などの専門人材を育成すべきだと思います!
P: 自治医科大学の医学部の入学定員は123名ですが、学費などが2300万(9年間の公務員生活で実質免除)! 工学系の専門人材育成費(学費)は、私立大4年間で約600万円なので、すくなくとも年間500人くらいの育成はできそうですね。それでも、都道府県あたり10人程度ですが。
D: 国が、国立大学・工学系の定員を増やしてくれてもいいんですが、とにかく供給の絶対数がたりません!
P: 国と言っても、産業関連は経産省、大学は文部科学省の管轄なので、もっと上のレベル(首相?)が指示しないと、定員増は難しいのかなあ?
ちなみに、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」など、内閣府、文科省、経産省が連携する事業などはありますが…。
企業として、最終手段は、自前の大学、学部の設立ですね。
豊田工業大学とか、京都先端科学大学工学部機械システム電気工学科とか。
D: 京都先端科学大学の理事長は、今、業界外でもニュースになっているニデック(旧日本電産)の永守 重信氏なんですね!
P: 筆者は、2018年夏、関西旅行に行ったときに、太秦の京都学園大学(当時)のキャンパスまで行って、工学部棟の工事中写真を撮影しています。
埼玉大学だと全学部対象になりますが、工学部は静岡大や山形大、茨城大などのように、工学部だけ別キャンパスという大学も多いので、「100円朝食」をピンポイントで提供できますよ。
D: 在学中に、こういうイベントがあったら、ぼくも利用したかったな。
P:社員食堂のメニューが充実していると、新卒勧誘のときも有利ですよ
[付録] 荏原 畠山美術館と上杉謙信(霜は軍営に満ちて秋気清し)
今回、企業研究の対象を荏原製作所にしたのは、やはり当ブログの縁です。
宅建Tシリーズの共著者Sさんに宅建試験受験の感想を港区・白金台で取材した際、Sさんから近くの「荏原 畠山美術館」を奨められて行ったら、美術館の創設者&荏原製作所の創始者、畠山一清氏が、能登の守護大名だった畠山氏の後裔でした。
https://www.ebara.com/jp-ja/innovation-story/first-innovator_01/
能登の畠山氏といえば、上杉謙信が畠山氏の居城・七尾城を攻めた際に詠んだ漢詩
「九月十三夜陣中作 上杉謙信
霜満軍営秋気清
数行過雁月三更
越山併得能州景
遮莫家郷憶遠征」
が、寒い季節になるとレミオロメンの「粉雪」と並んで? 思い浮かぶんですよね~。
三行目の「越山併得能州景」(越山あわせえたり、能州の景)の「能州の景」がちょうど、謙信が七尾城を攻め落として、越州(新潟・富山県)の山々(領国)だけでなく、能登も加わったという喜びをうたっていまして、勝った側は良いですが、では敗れた畠山氏はといえば…無事生き残り、しかも上杉家と奇妙な縁があったようで。
※1 Dくん、Zくんは、同じ大学・院(学科は別。Dくんは機電系)を21年に修了し、現在は別のメーカーのエンジニアとして、都外(違う県)で働いています。
【写真提供】①Pixabay、②Pixabayの写真(給水塔)を筆者が生成AIでピカソ風に、③筆者撮影・荏原 畠山美術館
【BGM】
D選曲:離婚伝説 「ファーストキス」
P選曲:I Don't Like Mondays. 「切ないラブソングはいらない」









































