P: 2019年に「50代の就活」をされて、現在も派遣社員として某機関で就業中のSさんが、24年度「宅建試験」に挑戦されるというので、新シリーズ「宅建T」を始めます。

※当シリーズは、あくまでも「宅建試験勉強中」での執筆ですので、誤りなどがありましたら、コメントでご教示ください。

 

Sさんのプロフィールは、以前も

 ・一時期、東京農工大学工学部情報工学科 K研究室で非常勤のお仕事
 ・当ブログ監修者
 ・80年代に、地方国立大学を卒業(文系)

 ・情報テクノロジー×教育関連の専門職

と紹介していますが、これまで、不動産業界にはまったく縁がなかったですよね。

S: 仕事としてはそうです。ただ、Pくんも、「借り手」として、これまで何回か不動産屋さんのお世話になってますよね。それに、私の場合は、親戚の相続がらみで、実際に登記の手続きの手伝いをしたり、税金の相談に同行した経験があるんですよ。

 

A: 「住み替え」にチャレンジ

① トカイナカへの移住を考える

S: そして今度は、自分や家族のリタイア後を考えると、今住んでいる家を売って、もう少し郊外のいわゆる「トカイナカ」に移住しようか? などと考えはじめまして。

P: 筆者は、いま「3Dプリンタ住宅」に注目しています。

X(旧Twitter)で、セレンディクス社の紹介もしているんですが、この住宅に問い合わせが多いのが、60歳以上の方だそうで。

23年8月には、「Fujitsuboモデル」の限定販売が開始されました。

 

S:  記事中に、「持ち家でも『築30年を超えたので夫婦2人用にリフォームしよう』と考えたところ、1000万円近くかかる」とありますが、そのとおり!

今住んでいる所(東京都多摩地区)で建て替えるよりは、家を売って、一部は貯蓄、残りの資

金で

 ・便利な駅前の中古マンション購入

 ・トカイナカの築浅の中古住宅

 ・トカイナカの土地に、ローコスト住宅(Fujitsuboモデルも候補)を新築

などの選択肢を検討中です。

いずれにせよ、住宅の売り買いのときは、不動産業者のお世話になるわけですが、金額が〇千万円の取引ですから、掃除機を買うようなわけにはいきませんよね。

P: 筆者も数回「引っ越し」をしていますが、十万円くらいの賃貸でも、数か月は悩んで決断しました…。

②立地を検討すると…ハザードマップ、35条書面

S: 家のリフォームは、信頼できる建築士の知人がいるので心配ないんですが、見知らぬ場所に土地を買うとなると、どんな基準で判断したらよいのか? を考えまして。

P: 賃貸だと、Yahoo!不動産が「AIアシスト検索」サービスを22年から始めていますが、ChatGPTといえど、不動産価格の評価は、まだ「勉強中」の段階のようですね。

S: 武蔵小杉のタワマンや、秋田市中心部の冠水など、これまでの予想を超えた大雨などの心配もあります…。あと、地震!

P: 秋田市の災害があった後、Sさんへ洪水や内水(下水道などから水が溢れる水害)の危険度については、国土交通省のサイト(ハザードマップポータルサイト)で確認できると、お知らせしましたよね。

S: そこで初めて「ハザードマップ」を知りまして、調べるうちに、不動産取引のときに、水害ハザードマップを提示して、所在地の位置などの説明することが、20年から義務化された。

そして、ほかにもいろいろ、不動産の契約前に、買い手/借り手に対して、宅地建物取引士が説明しなければならない「重要事項」があることがわかりました。

宅建業法の第35条に規定されているため、宅建業界で「35条書面」と呼ばれる文書です。

内容は、

 

 

P: 上のページの表をざっと見た感じ、けっこう項目が多いですね。

筆者も、今の部屋を借りるとき「建物の賃貸」の「重要事項」の説明を聞いたはずなんですが…。

S: 賃貸なら、引っ越しできますから、そこまで気にしないと思いますが、たとえばPくんが、30~50万のPCを買うときは、徹底的にスペックにこだわりますよね。GPUの発売予定チェックも欠かさないとか。

①でも言いましたが、家の売り買いは、その約100倍のお値段になるんですよ!

なので、スペック(不動産の重要事項のチェック)については、Pくんの数十倍の労力をかけてこだわってもよいかな? と思ったわけです。

 

B: 宅建試験の参考書で住み替えに必要な知識は十分だと思う

P: その「知識を効率よく身につけるための手段」が、宅建試験の参考書だったわけですね。

S: そうです。私は3000円で、下の基本テキストを買いました。

 

そもそも宅建試験って? レベルの初心者にもとっつきやすそうな多色刷りで、内容もわかりやすそうでしたので。

① 「住み替え」検討に必要な重要知識

P: 受験生が持ち運びしやすいように、分冊になっていますね。

S: 宅建試験の試験分野は、大きく3分野。

  (1)権利関係

  (2)宅建業法

  (3)法令上の制限/税/その他

宅建業法の分冊だけでも、150ページ以上の分量があり、テキストの厚みは3.5センチ。

ただし、「住み替え」に必要な知識にしぼれば、せいぜい1/3くらいです。

くわしくは、次回以降に説明しますが、一番重要なのが、先に挙げた

   宅建業法35条書面(重要事項説明書)

と、

   同 34条書面(媒介契約書)

   同 37条書面(契約書)

の3大書面です。

たとえば、家と土地を売るときは、さすがにメルカリではなく、不動産業者に買い手を探してもらいますよね。

P: 「空き家」などについては、インターネットを活用したサービスがいろいろありますが、普通に売れる物件だと、まずは業者に声をかけるでしょうね。

 

S: どういう業者を選べばよいか? はスキップして、業者に依頼するときには、契約形態にも

  「専属専任媒介契約」:1社に媒介(販売)を任せる

  「専任媒介契約」:1社に媒介(販売)を依頼(自分で買い手を見つけてもOK)。

  「一般媒介契約」:複数の会社に媒介(販売)を依頼

の3種類があります。

 

 

P: 「理系就活」での、

  推薦=推薦状は同時に2枚はもらえない。内定辞退はできない。

  自由応募=何社受けてもよい

のようなイメージですね~。

S: 一見すると、複数業者に頼める 「一般媒介契約」がよさそうですが、「就活」と同様、専任媒介契約の方が、業者が熱心に対応してくれるようです。

P:反面、上の記事に書いてある「囲い込み」や「両手取引」などには注意が要りそうですね。

S: そういう宅建業者の手の内を知るためにも、最低限必要な知識が「宅建試験」の「宅建業法」の分野で網羅されているわけです。

P: 『彼(宅建業者)を知り、己を知らば、百戦して殆(あやう)からず』ですか。

②法令上の制限と税

S: その「己を知る」部分が「法令上の制限/税/その他」分野になります。この分野にも

 都市計画法

 建築基準法

 国土利用計画法

 農地法

 税

など、知っておくべき知識がいろいろ含まれています。

 

C: なぜ宅建試験合格まで目指すのか?

P: 宅建試験の参考書1冊で、不動産取引についての知識が効率よく身につきそうですが、そこから、宅建試験合格を目指すようになった理由は?

S: 先ほども言ったとおり、「家の売り買い」は、数千万単位の取引なので、23年の年末から、けっこう真剣に「参考書」を見たりしていますが、やはりある程度体系的に、知識を身に着けたいと思いまして。

昨年は、流行語大賞は逃しましたが、「生成AI」が話題になりましたよね。
23年9月の時点で、司法試験・短答式の一部で、合格者の正答率を上回る回答ができるAIが登場しています。
これから、生成AIが暗記や計算などの作業を代替してくれる時代になって、今の10代~は進路を含めて”何を学ぶか?”考えなくてはなりません。では60代の自分は? と思ったときに「とりあえず学んでみよう」と思ったわけです。

GOALまでのみちすじ…プログラミング的思考

さらに、私が今関わっている教育関係の仕事のキーワードに、「プログラミング的思考」があります。

令和の小学生は、授業でこういうこと ↓を習ってます。

 

このソニーのページにも書いてますが、

「プログラミング的思考」では、STARTからGOALまで、最適(効率的)な道筋でたどり着くことをめざします。

そのためには

 ・ものごとを正しく認識する力

 ・対象を適切に分解(ブロック化)し、一般化する力

 ・このブロックを正しく組み立てる力

などが必要になります。

P: 「ものごとを正しく認識」は、正しい知識を身につけるってことですね。

S: 理系の大学生は、昔から知らず知らずこういう訓練を受けているので、たぶんPくんも仕事に活用していると思いますよ。

で、今回のゴールは「住み替え」なわけですが、そのゴールまでのステップを分解すると、準備段階で、けっこう「正しい知識を身につける」部分が重要だと感じました。

さきほどもふれたように、24年以降もますます進化する生成AIですが、生成AIのいうことを鵜呑みにして、我が家の建物・土地の売買をしようとは思いませんよね?

そこで「不動産取引について、正しい知識を、効率よく身につける」を、中間ゴールとしたときに、「宅建試験」にチャレンジしてみようか? と思った次第です。

ただし、あくまで最終目的は「住み替え」なので、24年10月の試験を受けるかどうか? は、まだ検討中ですが…。

P: 今回、はじめて聞いたんですが、Sさんは大学で文系のなかでも民法のゼミで単位を取られていたそうで(ほかに社会学ゼミ)。

宅建試験の3分野のうち、

  (1)権利関係=法律 とくに民法 (試験50問のうち14問)

や、(2)宅建業法(20問)など、法律関係の学習にあまり困らないという、有利な点がありますよね。

筆者は、「権利関係」で、いきなり「虚偽表示」「心裡留保」などのワードを見て、戦意喪失したんですが…。

なので、宅建試験まで受けるか?? を迷った方は、まず「権利関係」の分冊を読んでみてください。

 

次回は、「住み替え」のステップをSTART~GOALまで俯瞰して、そこで必要になる知識(勉強すべき内容)を、もっと詳しくSさんに解説してもらう予定です。

次々回は、仮題「効率よく宅建試験の独学をするには」。

 

■補足:トカイナカ

 

 

<写真>筆者 撮影場所:港区・虎ノ門ヒルズ、国立市

<BGM>

P選曲:RIP SLIME 「黄昏サラウンド」

S選曲:ティロリミックス YOASOBI 「群青」×Vaundy 「花占い」