P:21卒でメーカーに就職したZくんとDくんが、4月からいよいよ入社3年目ということで、理系の
  ①23卒新入社員
  ②24卒/25卒 就活生(一部、文系)
  ③理系をめざす大学受験生(高校生)
へ、伝えたいことを話してもらいました。
(Zくん、Dくんの簡単なプロフィールを文末にまとめています)。
今回は、第1弾、4月から新社会人/新入社員になる方と、 ②24卒/25卒理系(一部、文系)でメーカーを志望する就活生へのアドバイス。
【目次】
(1)メーカーは、桃栗3年、柿8年? 
(2)ワークライフバランスは?

(3)24卒/25卒へ、OB訪問&インターンシップ参加の勧め

 (3-1) 25卒は要注意!!理系の就活スケジュールも大幅に前倒し

(4)「ガクチカ」がなくなる?

(5) マッチング採用は仕事(適所)選びだ
 (5-1)仕事選びの観点1 収入と可処分時間


(1)メーカーは、桃栗3年、柿8年? 
P: まず、この時期(3月)は、大学院の修了式や引っ越しで忙しいし、マッチング採用の方以外は、いわゆる「配属ガチャ」の心配をしてる方も多いと思います。
文系の営業職だと、何か月かの研修の後に、いきなりC支店配属とか言われることもあるそうですが、理系では就活の「技術面接」の段階で、自分がどの辺のポジションでの採用を想定なのか? けっこう分かるのでは?
Z: 面接の最中は、受け答えに必死で、そこまで考える余裕はなかったです。
あと、実際、入社して分かったんですが、内部の異動に連動して、新人の配属先が変わることは珍しくないってことですね。
P: △△部署は、□□製品担当のつもりで採用したが、部署内で退職や役職者の人事異動があって、連鎖的に新人まで波及するという、あるあるですね。
ただ、メーカーのエンジニアだと、下は24歳の新人から上は65歳の再雇用の方まで、金太郎あめのように並んで、キャリアを積んでいくイメージなんですが。
D: ぼくの職場にも、この道数十年のエキスパートがたくさんおられますが、さすがに担当製品は、時代につれて変わってるようです。
それに、製品自体の生産中止とか、会社単位で吸収・合併というパターンもありますし。
P:
ペンタックス(旭光学工業社)はカメラ・レンズで知られていますが、現在は、
 ・カメラ関連 →リコーイメージング株式会社
 ・内視鏡など医療関連 →HOYA株式会社 
 ・眼鏡レンズ →セイコーオプティカルプロダクツ
にそれぞれペンタックスブランドが引き継がれています。
当然、多くの技術者が、それぞれの会社に移籍したはずです。
Z:ぼくの会社は、本人が希望すれば、今の職場や担当以外にもけっこう行けるみたいで、現に、ぼくのグループからも30代の先輩が、昨年転出されました。
その穴埋めか? 22卒の新人が1人配属されました。
P:では、Zくんの担当する仕事も、2年目で変わったの?
 実験装置αのお世話係だったのが、装置βの担当にかわり、αは新人fくんの担当になりました。
 「桃栗3年、柿8年」といいますが、一番高度な装置εの主担当が8年目の先輩ですから、そこまでは「お世話係」のポジション。担当機器がスライドしていく見通しです。
ぼくの職場だと、全部の装置を使いこなせるようになって、ようやく一人前って感じですね。
上の方は、けっこうリモートワークできるんですが、ぼくらは、ほぼ毎日、出勤の生活が続きそうです。
D: ぼくの職場も、いろいろな機材がないと仕事にならないので、管理職以外は、実験データをまとめたり、技術レポートを書いたりするとき以外、リモートワークは無理ですね。
P: その昔も、情報工学の学生は、自宅に高性能のPCがあれば、研究室に行く必要はとくになかったですが、機械工学、電気・電子、化学などのみなさんは、遅くまで実験室に張り付いてましたね~。



(2)ワークライフバランスは?
P: 技術開発職だと、リモートワークは難しいというのは、分かりました。

あと、新入社員が気になっている点のひとつは、ワークライフバランス。ぶっちゃけ、残業時間とか、ブラックな職場か? ホワイトな職場か? という点だと思いますが。
Z: いまのところ、ワークライフバランスに関しては満足しています。
D: ぼくの会社だと、会社というより、部署の違いの方が大きいですね。
同期でも、担当する製品によっても、違いますし、研究寄り(長期)か、設計寄り(他部署から無茶ぶり…)か? などでずいぶん違いがあります。
P: 大学でも、同じ□□学科で、研究室によってブラック/ホワイトの差がありましたからね。
Z: ぼくの所属チームの業務は、年単位のため、残業なしの時期と、仕上げの繁忙期との差がすごいですね。
P: やはり大学/院で、卒論・修論を、締め切り前に徹夜で書いた経験が生きてますか?
Z: 卒論・修論は、基本個人プレーですが、仕事はチームプレイという違いは大きいです。

締め切り前に、夜遅くまで職場でわいわいやってると、チームの一員になった感はありますね。新人fくんも、そんなことを言ってました。
P:ものづくりの仕事だと、単純な「作業時間」では測れない、「仕事のやりがい」の要素が大きいでしょうね。ただ、就活生が、それを事前に知るのは難しいですが。



 

(3)24卒/25卒へ、OB訪問&インターンシップ参加の勧め
Z: ぼくは、コロナ騒動の影響で、OB訪問に行けたのはG社だけですが、けっこう職場の雰囲気などもイメージできましたので、これから就活の方は、できるだけたくさんのOBに会うことをお勧めします。
D: ぼくは、研究室に来られたOBルートで、推薦ー早期選考ルートで入社を決めたので、あんまり就活をしてないんですが、ほかに複数のOBが研究室訪問に来られて、プレゼンの熱意の差で、「あ、この会社(入社した会社)だったら大丈夫そう」と思いました。

ぼくも、もし今の職場がブラックだったら、会社命令で研究室訪問しても、後輩へ積極的にはすすめないと思います。
P: Dくんの場合は、「逆OB訪問」というか、会社がわざわざ「この専攻の研究室」へと、ピンポイントでOBを派遣してましたよね。
たとえば、定年退職だと1年後に職場の人員が1名減ることを確実に予測できますから、人事としては、そこに新人を補充したい。でも、機電系は昔も今も確保が難しいので、とにかく早期に囲い込む…というパターンだと思います。

なので、わざわざOBが研究室に来られたときは、たとえその会社がマッチング採用をしてないとしても、○○専攻の研究が生かせる仕事に就ける可能性が高いので、まずはOBの話に食いついてみましょう。
Z:インターンシップもおすすめです。ぼくの職場も昨年、短期インターンシップを受け入れましたが、やはり「空き」が出そうな他グループが対応してました。たとえ、数日間でも「ああ、インターンシップに来てた学生だな」と印象に残りますので、確実に1次(人事)、2次(技術)面接では有利になると思いますよ。役員面接は、別次元ですが…。

 

(3-1) 25卒は要注意!!理系の就活スケジュールも大幅に前倒し
P: インターンシップといえば、もう25卒ですね…。

今年は、Zくんたち21卒のときより、就活スケジュールが前倒しになって、現時点(23年3月)で、内々定率30%超。22卒は、17.6%でしたから、出足が早いですね。
そして、
別の調査では、24卒理系の内々定「41.1%」、23卒が同27.0%だったので、25卒理系は、3月で50%まで伸びるかも?
D: ぼくら21卒は、1・2月の選考を「早期選考」と呼んでましたが…。今年も3月1日が採用広報解禁日ということで、ニュースに出ていましたけどね。

Z: Dくんら21卒機電系についての過去記事では、機電系特化型就活サイトUnivaが、春休みころまでイベントを開催していましたが、今年は1月下旬が、業界研究セミナーのラストでした!!   24卒向けは、昨年5月からセミナーなどが始まり、11月が「業界研究イベント」のピークでしたので、25卒はGW明けからWEBサイトのチェックをして、コロナ後の就活早期化に乗り遅れないようにしましょう。

24卒でNNTの方は、Zくんと話した、面接のアドバイスをご覧ください。

 

 


(4)「ガクチカ」がなくなる?
P:あと、24卒以降で注目なのは、
日立製作所(以下、日立)が「ガクチカ(学生時代頑張ったこと)」の質問を廃止するという話題ですね。
文系は、コロナ禍で、サークルやバイトができなかったため、具体的なエピソードが書けない。
22・23卒理系は、「学業」・「研究」をガクチカに書いて切り抜けた人も多いと思いますが、そうなると「研究概要」と別にする意味がない。
D: では、ガクチカの代わりに、何を質問するんですか?
P: 日立は、応募者の志望職種やキャリア志向を見定める「プレゼン選考」(最終面接時の5分間)を、新たに導入するそうです。
Z: 理系の最終面接では、自分の研究のプレゼンは当たり前で、ぼくも10分ほどの発表を、計4回やりましたけど、文系もですか?
P: 実は、日立では、22年7月から、社内の全職種・階層ごとに、仕事内容や責任などを定義した約450種類のジョブディスクリプション(JD、職務記述書)を作成して、全社員へ適用していくそうです。
日本の会社では、とくに文系の場合、異動や転勤などのジョブローテーションをしていくメンバーシップ型(適財適所)でしたが、日立は、ジョブ型(適所適財)を掲げるそうですから、このJDをベースに、文系の方にも最終面接のプレゼンを考えてもらうのでしょうね。
D: それでは、文系でもマッチング採用が、増えるんですかね?

(5) マッチング採用は仕事(適所)選びだ

(5-1)仕事選びの観点1 収入と可処分時間
P: 理系とくに機電系のマッチング採用については、以前、Dくんに話してもらいましたが、そもそも日本企業で「ジョブ型雇用」を採用し始めたのは、
新聞報道だと、
  日立製作所、パナソニックHD、三菱ケミカル、資生堂、JR東日本、SOMPOホールディングス
など、一部の大企業です。

ガクチカを廃止する企業は増えても不思議ではないですが、文系のマッチング採用ができるのは、上記の「ジョブ型雇用」採用企業くらいでは? と思います。
ちなみに、全社員ではなく、高度な技能を持つ一部の人材や、専門職の賃金を上積みするという「一部ジョブ型雇用?」は、IT関連では珍しくありません。
新卒採用でも、以前から
NECなどは、優秀な研究者に、新入社員でも年収1000万円以上を支払う制度を導入していました。  
D:
とくに、AI関係ですね…。
P: 世間では、コンサル業界は高収入ということで、理系でも志望される方は少なくないと思いますが、知り合いからの業務メッセージ送信時刻は、午後11時とか普通ですからね。
24、25卒が、これから、志望企業・業界を決めていくときに「可処分所得と、可処分時間とのバランス」は、けっこう大事な要素です。

(5-2)仕事選びの観点2 キャリアパス
P: エンジニアの場合は、残業時間などの数値とべつに、「忙しさ」の感じ方の、個人差も大きいと思いますが。
Z: 定型的な仕事ではないので、「課題」について、実は休みの日なんかにも、ぼんやり考えていることはよくあります。アルキメデスの「エウレカ」みたいな、劇的なことはありませんけど。
P: 学生のみなさんも、とくに卒論や修論のテーマを決めるときなどに、「あるある」な経験だと思います。
エンジニア職や研究職、IT系の企画職など、非定型の仕事の宿命ですので、そういう仕事に、自分が向いているか? という自己分析も大事ですよね。
大学時代に、工作センターへ日参していたZくんや、Dくんのように「ものつくり」が好きで、今も楽しく? その仕事をやってる方は、もうそのままエンジニアの道を進んでいただくとして。
Z: もしも、配属された部署の仕事がなんか向いていないな? と思ったときに、ぼくの会社だと、上司と相談して、けっこうあっさり異動できるようです。
P: 大企業だとほかの部署への異動もけっこう簡単だし、あと、理系は、データサイエンス系へキャリアチェンジする奥の手もあるので、エンジニアとして入社しても、「社内転職」はいろいろできると思います。
逆に、他部署から異動してくるパターンはないの?
Z: 他部署から、ぼくたちの所への転入希望があれば別ですが、業務自体が、とにかく専門知識がいるので、基本は新人を入れて育てる。
どうも入職10年目あたりで、国内外の他組織へ2~3年出向するようですが、事業自体に問題がなければ、ずっと同じ事業部内でポジションがスライドする感じです。
P: Zくんが新人のころ、「大学の研究室」に雰囲気がそっくりと言ってましたが、24歳の新人から64歳のベテランまで、同じ研究室に在籍というイメージですね。
もちろん、大学でも、○○連携とか、企業や自治体と組んだプロジェクトに参加して、外の関係者とつきあうわけですが。
D: 研究者やエンジニア職の場合、「実験機器」と切っても切れない関係になるので、働く場所も、同僚も「ほぼ同じ」というのが、良い点でもあり、弱点(ガラパゴス化)でもあるかな?
P: ものづくりの場合、製品ジャンルは同じでも、中身は数十年たてばまったく違いますよね。
3月下旬、インテル社の創業者の1人、ゴードン・ムーアさんが亡くなりましたが、インテルCPUの歴史↓をみると、4004 4ビット⁉ とあらためて驚きます。
 
https://www.sanosemi.com/history_of_Intel_CPU_techspecs-mini.htm
筆者は、最近3Dプリンタでの建設・建築に、興味をもってまして、Twitterをブックマーク代わりにして、動向をチェックしています。
ゼネコンの大林組から、スタートアップ企業のセレンディクス、Polyuseなどですね。5年でどこまで進むか? 楽しみです。
D:
2人暮らし用のフジツボモデルで500万円ですか? 
P: 前に、Dくんと話題にした
YKK APあたりの住宅部材メーカーには、直接かかわってくるかもしれません。
あと、チャットGPTについては、会社の業務もそうなんですが、「教育・受験」への波及が大きそうなので、引き続き二人と話す予定です。



 

【プロフィール】
・Z
都立進学校(自校問題作成高校)から、首都圏国公立大学の工学系学部へ進学。
自大学の大学院を修了。

研究開発の仕事がしたいと思って20年6月まで就活を続けて、苦戦(1勝6敗)しましたが、21年4月、大手メーカーの研究開発職に
現在、首都圏(海のある都県)の某市在住。

賃貸物件をさがすときに、「通勤ルートに、お惣菜の充実したスーパーがある立地を選ぶべし」という筆者のアドバイスを守ったおかげで、なんとか生活できているそうです。
・D
地方の(自称)進学校から、Zくんと同じ大学の工学部機電系学科へ進学。
自大学の大学院を修了。

OBルート→推薦で早期選考(20年2月)で就了。21年4月、大手メーカーの開発設計職に。
現在、関東圏の某市在住。学生時代から、自炊で問題なく生活できているそうで、
近くに新鮮な野菜の直売所がある、トカイナカ生活がけっこう合ってるそうです。


中間・最終写真 Pixabay ほかは筆者
【BGM】
Z選曲 フジファブリック×フレデリック 「瞳のランデヴー」
D選曲 Misty Tone 「ひとひら」 feat.石野理子
P選曲 I don't like Mondays 「WOLF VIBES」