2003年から2006年まで、ポーランドのワルシャワの国立劇場の近くの
モリエラ通りの「SAKANA-SUSHI」と云う、寿司バーの周りに水が流れていて、小舟がそれに
浮いて、その小舟に皿に載せた寿司が回る、粋な回転寿司(ポーランド初、新聞の記事になる)
で働いてたことが、ある。
その店に、いつの頃からか、30過ぎぐらいの、髪は肩ぐらいで、顔はぽってりした面長、
体型はうらなり瓢箪のような、どうおせいじに言っても美しくない女が、カウンターに
座って、話を始めた。寿司は頼まない。僕と話をするために来るのだ。
そのうち、慣れて来ると、日本人の奥さん連中と一緒に、寿司を作って、食べるという。
そして、寿司を作るなんて、簡単、、、と、僕をやんわりと嬲(なぶ)り始めた。
けれど、大人な僕は「はあ、そうですか」と聞いてるだけで、気にも止めない。
ある日、僕が休暇で日本に帰るときに、海苔を日本から買って来てくれ、と紙切れに
連絡先の電話番号を書いて、去る。
正直な僕は、100円圴一で買った、海苔を日本から持ってきた。
で、紙切れの女の連絡先に電話をすると、男が出た。女は、ここにいない、と、
そのポーランド人の男が言い、別の電話番号を教えた。そこに電話をかけたら、
その女が出たが、その開口一番の言葉が「なぜこの連絡先がわかったのですか?」と
驚いているのだから、笑える。おまけに、海苔の値段を聞いて、高いから、いらない、
と言う。他の日本人に売ったらいいとも。
何は、ともあれ、この女は、最初から、なぶるために、僕に、日本から海苔を買ってきてくれ、
と、頼んだのは、確かだ。
そうして、何年かした後に、しきりに、何人かのエホバの証人のポーランド人に勧誘された。
そのうちの一人が、僕の気を引くために、「日本人の◯◯さんという女性をご存知ですか?」
と聞いてきた。あの寿司バーに出入りしていた、日本人の女の名だ。
聞くとエホバの証人の会で働いてるという。
その数ヶ月後ぐらいに、別のポーランド人のエホバの証人の集会に勧誘されて、断ったら
サタンのように、言われた。それ以来、エホバの証人は、邪教だと、確信している。
これは、同じ日本人の間でも、よく言うのだが、ポーランドに来る日本人は、変な奴が多い、
と、よく、言われる。そもそも、日本人で、ポーランドに来る、というのが、変わっている。
自分のことを棚に上げて、言うのでは、ないが、確かに、ポーランドに来る日本人を
観察していると、常識のない、非常識な人間が多い。あの、日本から海苔を買ってくるように
注文して、海苔の受け取りを拒否した、女のように。。。
鬼武彦 拝
高倉健「唐獅子牡丹」