本論文は、卵管以外の子宮外妊娠(医学的には異所性妊娠)に関するレビューです。
①Fertil Steril 2023; 120: 553(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.07.014
要約:卵管以外の子宮外妊娠は、卵巣、子宮頚管、腹腔、卵管間質部、帝王切開傷跡部などに認められます。稀な疾患であるため、正確な診断が難しい疾患です。このため、現在のところ確立されたガイドラインはありません。
②Fertil Steril 2023; 120: 563(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.07.018
要約:帝王切開率の増加に伴い、帝王切開瘢痕部妊娠の発生率も増加しています。大量出血、子宮破裂、癒着胎盤のみならず、子宮摘出が必要な場合や命を落とすこともあります。しかし、現在のところ最適な管理方法については定まっていません。
③Fertil Steril 2023; 120: 551(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.07.017
要約:卵管以外の子宮外妊娠は稀で非常に危険な疾患です。 早期診断できれば効果的な治療が可能です。しかし、稀な疾患であるがゆえ、ランダム化試験が実施できません。生殖医療専門医は、この分野に積極的にとりくみ、妊孕性温存に勤める必要があります。
解説:卵管以外の子宮外妊娠で最近増えているのは、帝王切開瘢痕部妊娠です。予防的に帝王切開瘢痕部を切除あるいは縫縮する様々な手術が試みられていますが、ベストな術式は定まっていません。また、早期発見(診断)も重要なポイントです。近年、超音波の解像度(精度)が飛躍的に良くなっていますので、比較的早期に診断することができるようになってきました。注意して観察する目が重要だと思います。
子宮外妊娠については、下記の記事を参照してください。
2023.9.12「ビノレルビン内服による新しい子宮外妊娠治療の可能性」
2023.2.5「☆子宮外妊娠の予測アプリ」
2023.1.30「卵管妊娠治療の人種間による違い」
2022.1.30「副角子宮手術:ビデオ論文」
2021.11.3「子宮外妊娠の新たなマーカー:カルポニン2」
2021.5.7「☆子宮外妊娠の胚は正常?異常?」
2020.12.17「新鮮胚移植での卵巣刺激は子宮外妊娠のリスク増加」
2020.3.9「子宮外妊娠の新たなリスク因子:子宮内膜厚」
2019.8.17「初回子宮外妊娠の方の次回の妊娠予後」
2019.1.7「☆子宮外妊娠のリスク因子」
2017.8.4「子宮外妊娠のリスク」
2016.7.28「子宮外妊娠のリスク因子」
2015.12.9「子宮外妊娠の新たなリスク因子とは?」
2015.9.5「子宮外妊娠のリスクを低下させるには」
2015.4.17「凍結融解胚移植で子宮外妊娠率低下」
2014.12.3「凍結融解胚移植で子宮外妊娠が減少」
2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」
帝王切開瘢痕部については、下記の記事を参照してください。
2023.3.4「帝王切開瘢痕部妊娠の局所塞栓療法:ビデオ論文」
2022.12.29「子宮鏡併用による腹腔鏡下帝王切開瘢痕修復手術:ビデオ論文」
2022.9.19「妊娠初期の帝王切開瘢痕部離開修復術:ビデオ論文」
2022.9.5「帝王切開瘢痕部を修復すべきか:メタアナリシス」
2022.8.23「タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠の治療方法による違い」
2022.6.28「帝王切開瘢痕部子宮内膜症:ビデオ論文」
2022.6.3「帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術:ビデオ論文」
2022.3.30「帝王切開瘢痕部妊娠の治療:ビデオ論文」
2021.12.28「帝王切開瘢痕部妊娠の治療法」
2020.8.10「帝王切開瘢痕部と妊孕性に関する仮説」
2019.5.4「帝王切開瘢痕部の膣式手術による修復」
2019.4.5「帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術」
2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復」
2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復」
2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療」
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」